文化庁 文化審議会
著作権分科会 法制問題小委員会
第三回 (2011年 7月 7日)


ここは、一傍聴者が傍聴の際に残していたメモ・記憶等を元にまとめた非公式議事録を掲載しているページです。正式な議事録は1〜2ヶ月後に文化庁サイト [URI] に上がるはずですので、そちらを参照してください。

政府主催の公開会議においての発言が無編集で伝わると困ると主張される方からの直接の連絡があれば、その旨記載の上で本ページの内容を削除します。その際連絡は kazhiro@marumo.ne.jp までお願いします。

当日配布された資料は以下の通りです。

今年度の他の法制問題小委員会の非公式議事録は以下に置いています。


土肥主査:#

それでは定刻ですので、ただ今から文化審議会 著作権分科会 法制問題小委員会の第三回を開催いたします。本日はお忙しいところ御出席いただき誠にありがとうございます。

議事に入ります前に、本日の会議の公開に関しましては予定されている議事内容を参照いたしますと特段非公開するには及ばないと思われますので、既に傍聴者の方には入場していただいておりますけれども、この決定について御異議はございませんでしょうか。

一同:#

異議なし。

土肥主査:#

はい。それでは本日の議事は公開ということで、傍聴者の方にはこのまま傍聴をいただくこととします。

それでは議事に入りますけれども、始めに議事の段取りについて確認をしておきたいと思います。本日の議事は「1、著作権法 第30条について関係者団体ヒアリング」「2、その他」となっております。

今回もまず著作権法30条の私的複製についての権利制限のあり方につきまして関係者団体から御発表をいただきまして、その後まとめて質疑応答を行いたいと思います。まず事務局から配布資料の確認と、発表者のご紹介をお願いいたします。

壹貫田課長補佐(文化庁 著作権課):#

はい。それでは配布資料の確認を致します。お手元の議事次第の下半分を御覧ください。本日は資料1から資料6まで、および配布資料をそちらにございます一覧の通り配布してございます。

お手元の資料を御確認いただきまして、落丁等ございましたら事務局員までお声掛けを頂ければと思います。

次にヒアリングのご出席者の皆様方を発表順に紹介させていただきたいと思います。お手元の参考資料を御覧ください。

まず、一般社団法人 日本レコード協会 (RIAJ) 、畑 (はた) 様、同じく 楠本 (くすもと) 様でございます。

続きまして、一般社団法人 日本映画制作者連盟の 華頂 (かちょう) 様ですが、只今こちらに向かわれていらっしゃるということでございます。まもなくいらっしゃると思います。

それから、一般社団法人 日本映像ソフト協会 (JVA) の 酒井 (さかい) 様でございます。

続きまして、社団法人 コンピュータソフトウェア著作権協会 (ACCS) の 久保田 (くぼた) 様でございます。

続きまして、公益社団法人 日本文藝家協会の長尾 (ながお) 様でございます。

続きまして、社団法人 日本書籍出版協会の 井村 (いむら) 様でございます。同じく、平井 (ひらい) 様でございます。それから社団法人 日本雑誌協会の五木田 (ごきた) 様でございます。

続きまして、一般社団法人 インターネットユーザ協会 (MiAU) の 小寺 (こでら) 様でございます。

最後に、一般社団法人 モバイル・コンテンツフォーラム (MCF) の 岸原 (きしはら) 様でございます。同じく、板谷 (いたや) 様でございます。同じく、長谷川 (はせがわ) 様でございます。

以上でございます。

土肥主査:#

ありがとうございました。それでは議題に入りたいと思います。本日は 2 時間半の時間を予定しておりますけれども、質疑応答の時間を確保できますように、御発表にあたりましては、誠に恐縮ですけれども 15 分程度の範囲内で御発表をお願いしたいと思います。

それでは最初にですね、一般社団法人 日本レコード協会、畑 様、楠本 様、御発表をお願いします。

畑オブザーバ(RIAJ):#

ご紹介にあずかりました日本レコード協会でございます。本日はこの法制問題小委員会におきまして、著作権法 第30条にかかる我々の意見を述べさせていただく機会を頂戴しましてありがとうございます。

既に当協会の意見については資料 1-1 および、資料 1-2 で提出させていただいていますが、当協会のほうから 30 条について 2 点、本日意見を述べさせていただきたいと思います。

一点目は違法配信を撲滅するための新たな法制度の検討、二点目といたしましては、私的録音録画補償金問題、この二点についてでございます。

まず一点目、違法配信を撲滅するための新たな法制度の検討ですけれども、著作権法が改正され、昨年 1 月より映画と音声を違法と知りながらダウンロードする行為、これが違法となりました。

この法改正の周知につきまして、2009 年のこの著作権法改正からすぐに、国会におけます付帯決議、これにつきまして国民への十分な周知というのが求められたところでございます。

これを受けまして我々権利者団体また関係省庁様のご協力をいただきながら、施行日の前後を期しまして、数々の周知・啓発活動を実施してまいりました。その一部をここでご紹介させていただきますと、例えば知財事務局様あるいは特許庁様の政府広報の掲示板、こちらのほうの施設を利用しまして、(聞き取り不明瞭)での周知を図っておったということがございます。

また当協会を中心としまして、施行前の 2009 年 12 月でございますけれども、JR 新宿駅、東口前のステーションスクエア、ここに特設ステージを組みまして、有名アーティスト動員をかけましてテラスイベント、周知のためのイベントを開催いたしました。

これにつきましては、関係省庁様それから他の音楽権利者団体様にも御来場いただきまして、法改正の趣旨、それから我々が推進しております識別マーク、L マークのご案内、また、ノベルティの配布、そうしたことを中心として、述べ 8000 人の方々にイベントを観覧いただいたということがございました。

通行人レベル、まあ屋外イベントでしたのでその近くを通行する通行人というものがいらっしゃいます。そのレベルでは 23 万人が何らかのイベントを認識したものと把握しているところでございます。

これらイベントというのは主要テレビ局でありますとか、あるいは主要な一般紙等でも御報道いただいたところでございます。

また、皆さまも御覧になったことがあると思いますけれども、映像関係の団体様のご協力をいただきまして、映画館におきまして実施されております盗撮防止のキャンペーン、いわゆる盗撮防止保護という、頒布前の映画コンテンツ上映前に流れるコマーシャルフィルムでございますが、そちらのほうのリニューアルにご協力をいただきまして、盗撮防止の後に違法と知りながら行われるダウンロードが違法になったと周知をいたしました。

これにつきましては、2010年 3月下旬公開の新作映画から上映開始されまして、全国映画館 700 館、推定で約 1 億 7000 万人、「のべ」ですけれども御覧になったということが推定されております。

またその他、施行日前後におきまして、一般紙に法改正の趣旨を解説する記事を掲載していただいたり、またテレビにおきましてもニュースあるいは対話番組において特集コーナーを組んでいただきまして、周知に努めました。

また、ポスター等も作りまして、全国約 1万8千の小中学校に送付しまして掲示してもらっておるというような形で周知をさせてまいりました。

このような形で、多大なリソースをかけて官民一体で周知に取り組んでまいりました結果、法改正の内容は徐々にユーザにも浸透してきているというふうに認知をしているところでございます。

我々日本レコード協会で実施をしました、2010年に実施を致しましたユーザ調査では、10代、20代の若年層の法改正認知率は 55% と、半分を超えたという結果が出ているところでございます。

しかしながら、我々日本レコード協会の認識といたしましては、依然として正規流通を上回る大量の著作権侵害ファイルが蔓延していると、この状態はあまり変わらないと。むしろ改善するどころか悪化しておるのではないかと考えておるところでございます。

資料1-1の1ページ目の一番下の所に参考資料1 というところで数字を表に入れさせていただきましたけれども、違法ファイルのダウンロードについての調査、これを当協会では継続的に実施をしておりまして、その法改正前後の比較をしたものでございます。

法改正前の調査につきましては、2007 年に調査をしましたけれども、これは 2008 年の私的録音・録画小委員会報告書にも掲載されておる数字でございますが、これが左側の列の数字になります。携帯サイト・P2P、こちらのシステムを使った違法ファイルのダウンロード数の調査をしております。

法改正後の 2010 年、調査の時期は夏過ぎでございましたけれども、あらためて違法ファイルダウンロード数調査をしております。こちらの方は携帯サイト・P2P の定点観測と共に、2007 年には調査をしておらなかったその他の類型のシステムの方からの違法ダウンロード調査をしております。

2010 年の調査におきましては、我々、違法な映像・音楽等のダウンロード数は年間に 43.6 億ファイルという推計をこの調査を通じましていたしました。2007 年との比較としましては P2P において若干減少しておりますが、携帯サイトについては微増、また 2007 年には見過ごしてあったその他 PC サイト、これはいわゆるストレージサービスであるとかロッカーと言われますけれども、どこかリンクサイトからストレージにリンクを張って、そこからファイルをダウンロードすると言うサイトがございます。

また、動画サイトからのダウンロード、そちらの方がこの三年間で主流になってきていると、そこの、特に動画サイトからのダウンロードについてはもはや看過することができない膨大な量であるという実態が明らかになっております。

この 43.6 億ファイルの実に約 60% が動画サイト、これは本来ストリーミングで見ることを意図されておるサイトですけれども、そこからダウンロードされておるという実態がこの調査で判っております。

注意点としては、この 25.3 億ファイル、動画サイトからのダウンロードですけれども、これにつきましては、違法と知りながら行われているダウンロード、つまり 30条1項3号の対象となる違法ダウンロードだけでなく、コンテンツとしては公式にストリーミングコンテンツとして提供されておりますけれども、視聴のみが許可されておるにも関わらず、許可なしにユーザがダウンロードしている数字も含んだ数字であるということに御留意いただければと思います。

このような状況を踏まえ、当協会では人々の動画サイトからのダウンロード実態、ここの数字を調査すべく、動画サイトに関する利用実態調査検討委員会の設置をしています。こちらについては、お手元の資料 1-2 の方に参考で記載してございますけれども「動画サイトの利用実態調査検討委員会」開催ということで、座長の方を東京大学の濱野先生におつとめいただき、学者、利用者、それとプロバイダー、動画サイトのプロバイダー、またオブザーバとして関係省庁の方にも入っていただいて、動画サイトからのダウンロード実態を個別調査し、報告書をまとめるという段階の作業を行っております。

こちらの報告書に関しては近く公表できる予定でおります。

このようないっこうに減る様子を見せない著作権侵害ファイルの流通、これに対して当協会は違法対策に力を入れて取り組んでおります。

2010年度、当協会は各種、類型各種サイトの運営管理者、プロバイダ事業者に対して、年間23万5千件の違法ファイルの削除要請を行いました。また、違法な累積ユーザについては簡易請求によって得られている情報に基づき、損害賠償請求をするなど色々な角度からの対策強化をしております。

しかしながら、先ほどの調査結果の数字を踏まえますと、違法なファイル数というのは膨大なものであります。我々権利者だけの努力で対処できる規模をもう超えてしまっているという実態があると。そういった点については御理解いただけるのではないかと考えております。

また先ほど、10代20代の若年層の法改正についての55%あるという調査結果を紹介いたしましたけれども、そういった結果を踏まえますと、現在違法なダウンロードを行っているユーザというのは、違法行為であることを理解しながら事実おこなっておるという実態があると理解しております。

先ほど 2010 年に当協会が行いましたユーザ調査、その一環でグループインタビューを実施しました。これは中学生女子・高校生女子・20代社会人など三グループに分けましてグループインタビューを実施しました。

テーマとしては動画配信の利用実態、有料・無料の使い分け、あるいは音楽にお金を使う事に対する意識、そういったものをヒアリングする為に行ったものでございますけれども、特に10代20代のグループからは、そこの資料1-1の2ページ中段でご紹介するような大変衝撃的な意見・発言がでております。

「やはり、タダで手に入る違法ダウンロードはやめられない」と「皆がやっている中で、自分だけが罰を受けることは考えられない」というような発言がございました。

つまり法改正後の 2010 年調査で判ったことは、法改正の趣旨というのは相当認知されているに関わらず、違法としたことによる抑止効果は十分に発揮されていないと当協会では考えております。

これを放置することは違法行為を行う若年層の犯罪者を増やすということに繋がるのではないかという危機感をもっています。

またこのような違法状況の蔓延というのは正規流通を阻害し、音楽を創作する者に対する正当な対価の還元というものがなくなります。よって、新たな音楽の創作に悪影響を与えることとなり、従いまして、我々としては、この違法アップロードに対する罰則のように、違法ダウンロード、30条1項3号に対する刑事罰の導入をするという法改正の検討をお願いしたいというふうに考えております。

それともう一つ意見、二点目でございます。私的録音補償金についてでございます。現行著作権法の制定時におきましては、「個人あるいは家庭内の複製は量的に零細でありまして、著作権者等の利益を不当に害するものではない」という考えに基づき、権利が及ばないものとなっておりました。

しかし、デジタル技術などの複製技術の発達によりまして、個人や家庭内においても市販のコンテンツと同等の高品質の複製物を大量・容易に作成することが可能になっております。こういったことから、著作権者等に及ぼす不利益が看過できなくなったということから、平成4年に私的録音・録画補償金制度が導入されました。

その後、現在に至るまで色々な形の見直しの機会があったのでございますけれども、特に私的録音・録画補償金制度については、新たな録音・録画機器が政令指定されておらず、ということで、特に録音については形骸化してしまっているというのが実態でございます。

録音につきましては、携帯音楽プレイヤーなど、今巷で主流に使われている大容量の録音機器がまさに指定しておられないということで、私的録音補償金というのは 2001 年の 40 億をピークに、昨年 2010 にはピーク時の 8%、3億円まで落ち込んでおります。

このように私的録音録画、大量に複製が行われているにも関わらず、権利者は権利制限の適切な代償措置を権利者の側は受けていないという理解でございます。

今こそ、この著作物等の円滑な利用と、著作権者等の権利の保護と適正な調整を図るためにこの私的録音・録画制度の充実、あるいはそれに代わる制度の創設、こうしたことを早急にご検討いただければと当協会は考えております。

以上でございます。

土肥主査:#

どうもありがとうございました。それでは……ですけれども(このタイミングで遅刻されていた華頂オブザーバが到着)御準備ができていましたら。

それでは、一般社団法人 映画製作者連盟 華頂 様と一般社団法人 日本映像ソフトウェア協会の 酒井 様にお越しいただいていますので、よろしくお願いします。

華頂オブザーバ(映画製作者連盟):#

はい。済みません大変遅くなりまして。日本映画制作者連盟の華頂でございます。本日は現行の著作権法 第30条につきまして、このように意見を申し上げる場をいただきましてありがとうございます。

それでは、お手元の資料に沿いまして、映連と日本映像ソフト協会からの意見を手短に御説明させていただきます。最初に私の方から資料2-1で御説明申し上げた後に、日本映像ソフト協会の、隣におります酒井から補足の説明もさせていただきます。

それではページをおめくりいただきまして、2ページを御覧いただきたいと思います。まず、1ポツにありますように、デジタル技術が著しく発達することによりまして、私的複製の範囲が拡大してしまっているのではないかと。そのことへの対応が必要ではないかという意見でございます。

30条1項が不当に拡大されまして、権利者に大きな悪影響をもたらしている一つの原因、これは私共が考えるには同項に用いられている「その他これに準ずる限られた範囲内」という文言が非常にあいまいで、その外延が必ずしも明確ではないというふうなことで、拡大解釈されがちであるというふうなことではないかなと思います。

そこで、いま申し上げた文言ですね「その他これに準ずる限られた範囲内」この文言は削除していただいて、私的使用とは個人が使用すること、それから家庭内において使用すること、この二つであるとして、許される私的複製の範囲・限界を明確にしてはどうかということが一つでございます。

それからもう一つ、著作権法 30条はベルヌ条約9条および、WIPO著作権条約10条などによって、いわゆるスリーステップテストを満たすものでなければならないとあります。

つまり、国内法令で定めることのできる権利の制限規定は著作物の通常の利用を妨げず、かつ、著作者の正当な利益を不当に害しない特別な場合」に限られるのではないかということでございます。

私的複製にも様々なものがありまして、複製対象となる著作物の性質、用途、複製の複製の部数等によっては、著作物の通常の利用を妨げず、かつ、著作者の正当な利益を不当に害しないとは言えないケースがあると思うのです。

例えば、パッケージ商品として、あるいはストリーミングによる商用ネット配信で提供されている映画の本編をそこから丸ごともう一度デジタル録画する行為、これは商品と同等の対象価値があるものを、商品を購入することなく入手する行為であって、そのような行為は元々、パッケージもストリーミングの配信も個人的視聴を目的として提供を我々はしている訳です。ですから、そういうビジネスと衝突して通常の使用を妨げるというものであればという見た目であります。

従いまして、35条1項、2項、それから36条1項、42条1項と同様に30条1項に「ただし、当該著作物の種類及び用途並びにその複製の部数及び態様に照らし著作権者の利益を不当に害することとなる場合は、この限りでない」との但し書きを設けてですね、私的複製の範囲が際限なく拡大することに歯止めをかけていただきたいとの御提案でございます。

それから続きまして、ページをおめくりいただいて 3 ページですけれども、テクノロジーの急速な進歩に端を発する著作権侵害の対応、これが現行法では不十分ではないかという意見でございます。

30条1項3号が新設されたことによりまして「著作権を侵害する自動公衆送信を受信して行うデジタル方式の録音又は録画を、その事実を知りながら行う場合」は私的複製でも違法というふうにされておりますけれども、例えば著作権を侵害する行為によって作成された海賊版などを、それを情を知りながら入手して行うデジタル方式の録音または録画これは、私的複製であるかぎりこれは、現行法では、まあ適法と言いたくないのですが、適法であるという現状でございます。

ただ、著作権を侵害する行為によって作成されたもの、それを知りながら入手して、入手する行為自体が侵害行為を故意に助長することであって、そのようにして入手したものをさらに複製することを認める法制はないのではないかということでございます。

従いまして、著作権を侵害する行為によって作成されたものを、情を知りながら入手して行うデジタル方式の録音・録画、これは違法アップロードからのダウンロードと同様に、私的複製であっても違法とするべきであるというふうに考えています。

さらに現行法では、30条1項1号、2号、3号に該当する行為は違法ではありますけれども、刑事罰の対象にはなっていません。ですけれども、著作権侵害は原則として刑事処罰の対象となるべきであると考えております。

他の権利制限規定についてもですね、権利制限規定から除外されている行為、例えば 32条2項ただし書き、35条1項・2項のただし書き、36条1項ただし書き、42条1項ただし書き、46条かっこ等の該当することによって権利制限規定の適用対象とならない行為は全て刑事処罰の対象となっているという事実がございます。

それからこれはちょっと思いついていなかったので特記できなかったのですけれども、レコード協会さんも同様の御意見を申し上げたと思うのですが、特に違法なアップロードからのダウンロード、これは法改正後も違法となった後も多発しておりまして、刑事罰をもって防止することは必須であると映連としても考えております。

ですから、30条1項、1号・2号・3号に該当する行為を刑事処罰の対象としていただきたいと考えております。

それから最後に、4ページですが、私的録音・録画補償金につきましても、これはテクノロジーの進捗にあわせまして、これは拡充することが必要であろうという意見でございます。

先ほど申し上げた通り、私的使用目的であったとしても、パッケージ商品として、あるいは商用ネット配信によって提供されている映画の本編を丸ごとデジタル録画する行為は、著作物の通常の利用を妨げるものであって、許されるものではないということなのですけれども、映画本編を丸ごとデジタル録画する行為、これは今、テレビ放送からの録画については、現状の所、私的複製を禁止することは現実的では無い、そのようにして録画を皆さん行っている訳ですけれども、その場合は私的録音・録画補償金が確実に権利者に支払われるというふうにしなければならないと考えております。

現在の私的録音・録画補償金制度の下では、汎用機器とかハードディスクですね、これが特定機器・媒体として指定をされておりません。私的録音・録画補償金の対象となっていない媒体によって、大量の私的録音・録画が行われているのは事実であります。

汎用機器及びハードディスクは録音・録画の機能を有しているものが多いのですね、それで大量の録音・録画、これが行われているということなので、なぜこのような機器および媒体が指定から除外されているのか、我々にとっては不思議な現象です。

確かに汎用機器ということであれば、録音・録画の目的意外に使う場合も当然あるのでしょうけれども、あれであればですね、その中の機能、私的録音・録画意外に用いられる機能の割合を、どの割合で録音・録画が行われていて、その機能が使われているか推定して、その割合を考慮して制度設計すればよろしい訳で、単純に私的録画録音補償金から汎用機器、ハードディスクを除外するのは今、この現在では合理的ではないのではと思っております。

今日は遅刻をしまして済みません。映画制作者の立場から著作権法 30条について意見を述べさせていただきました。

このような様々な課題を内在していると思われる現行の著作権法 第30条ですけれども本委員会で集中的にこれから議論していただいて、改善すべきところは速やかに改善するという姿勢でご検討いただければありがたいなというふうに思う次第でございます。

映連からは以上でございますが、それでは続きまして、日本映像ソフト協会から補足説明を致します。よろしくお願いします。

酒井オブザーバ(日本映像ソフト協会 : JVA):#

日本映像ソフト協会の酒井と申します。今日は著作権法 30 条につきまして発表の機会をもうけていただきありがとうございます。私共の方からは映像パッケージソフトを録画元とする私的録画につきまして、用意させていただきました資料のうち、4 ページにつきまして、それを引きながら意見を申し述べさせていただきたいと思います。

まず、私的録音録画の問題でございますが「テープ録音事件」ドイツ連邦通常裁判所判決にありますように、私的複製も本来著作権者の複製権が及ぶべきであると私共は考えております。

それゆえ、著作権者が著作物を発行するに際し、複製制御の著作権保護技術を用いることは著作権者の権利であるというふうに考えております。

そのような権利者が映像パッケージソフトウェアにつきましては、1994年に複製不可の技術手段で保護されるのであれば私的録画補償金は要求しないということを明らかにし、私的録画問題に著作権保護技術によって対応するという姿勢を取らせていただきました。

そして、表現の本質的特徴を感得することができるという点ではデジタル・アナログの相違はございませんので、DVD ビデオや Blu-Ray につきましては総合的な複製制御技術、これら全ての技術を選択しております。

すなわち、Vsyncパルス等の技術によって、VHS等のアナログ録画機器を接続して複製することを制御し、CGMSによってアナログ出力によってデジタル録画機器に接続することも制御し、そして暗号型技術を使うことによって専用機での高速ダビングやパソコンでの複製を制御するところであります。

こうした総合的な複製制御技術は CSS とか AACS と呼ばれまして、ハードメーカもソフトメーカもこれらの技術をライセンス契約によってライセンスを受けて利用し、コンテンツを供給しているところでございます。

これまで、これらの要素技術のうち、DVD ビデオに用いられている CSS の暗号型技術につきまして、これは複製防止技術ではなくアクセスコントロール技術であるとされておりました。本年 1 月の著作権分科会報告書によりまして、これを複製制御技術というふうに位置づけていただきましたことにより、私的複製問題に著作権保護技術で対応するための大きな障害が取り除かれることになったと認識しておりまして、心より感謝申し上げる次第でございます。

この総合的な複製防止技術というのは、バックアップもメディアシフトも、著作権保護技術によって制御されますので、ソフトメーカはそのような複製が行われないものとしてコンテンツを提供しており、パッケージ上にも複製が出来ない旨の表示をして、ユーザの方々にご理解を頂いた上でご購入いただくようにしております。

また本年1月の著作権分科会報告書 40 ページで、憲法の専門家の方が指摘している、「本来利用者に認められる著作物の利用か」という視点から考えましても、映画の著作物は劇場等での視聴が本来のものですし、1956年にビデオ機器が表れてからもビデオグラムで公の上映をして視聴していただくような用途に適用させていただくものであって、提供した媒体から複製して利用していただくようなコンテンツというのは本来の用途ではありません。

ところで、技術的保護手段の回避規制は特定の目的のみで機能するわけではありませんので、その目的を超えた利用がなされるであろうことが容易に推測されます。

事業者に頼んで回避したとしても、やはり技術的保護手段は回避されてしまうので、やはりそれは目的を超えた利用に利用されるであろうことは容易に推測されます。

複製制御の暗号型技術を技術的保護手段と位置付けていただいたとしましても、それに例外規定が設けられますと、回避して複製したものには著作権保護技術の制御が及びませんので、ネットへの流出等を未然に防ぐ手当てはできなくなります。

たとえ一個の複製物が作られたとしても、その影響は甚大なものとなります。もっとも、著作権保護技術によって一定の私的複製のできるような商品も出ております。

携帯端末でご利用の為の私的複製ができる DVD ビデオのパッケージソフトもありますし、また Blu-Ray で用いられております AACS という規定ではマネージドコピーという仕組みも導入されておるところであります。

そのように、著作権保護技術の制御の下で、私的録音に対応する仕組みも予定されているところでございまして、各ビデオソフトメーカそれぞれの判断により、著作権保護技術の契約で私的録画問題に対処することを考えておる次第でございます。

欧州では補償金によって私的録画問題の解決を前提に考えて、技術的保護手段の回避の例外を考えているかもしれませんが、我が国の著作権ソフトの私的録画問題に関しては、著作権保護技術と契約による解決を模索しているところですので、この AACS 等のライセンス契約を無効化するような権利制限の導入というものは避けて、是非是非、それらの権利制限規定が導入されますと、折角パッケージソフトについての私的録画問題が解決に向かったなというふうに思っていたところですが、またこれが振り出しに戻ってしまうというふうになりますのでよろしくお願いします。

パッケージソフトの私的録画の問題につきましては、是非、その他の権利制限も含めてやっていただきたいと考えております。

その他、資料もご用意させていただいている次第については、時間も限られておりますので書面にて発言に代えせていただきたいと思います。以上でございます。

土肥主査:#

どうもありがとうございました。それでは続きまして、社団法人 コンピュータソフトウェア著作権協会の 久保田 様、お願いします。

久保田オブザーバ(ACCS):#

ソフトウェア著作権協会の久保田でございます。よろしくお願いいたします。当協会のほうは非常にシンプルにいたしました。各団体さんデジタル化・ネットーワーク化の中で問題提起されておりますけれども、当協会は今の内であったらデジタルなものですから、全て、他の団体さんが言われているところについては基本的には同じ立場に立っていると考えております。

私どもにつきましては、30条1項3号につきまして、平成21年度1月の著作権分科会報告書において、プログラムの著作物についても録音・録画に限定することなく、明文化というか、入れていただける、検討していただけることになったにも関わらず、昨年度は何も検討されず、今日に至っていることをまことに遺憾と思っております。

何なれば、そういったものの積み上げの中に今日の議論等が結実するというふうに考えておりまして、一つ一つきちんと積み上げていただかないとですね、このデジタルの問題は先ほどの酒井さんが言われたように振り出しに戻ってしまうということが実態があります。

当協会の方の調査レポートに目を移してほしいのですけれども、情報の取得日時が2010年のちょっと古いのと、上から調査状況の6行目なのですけれども、約612万件の「万」が入っていまして、このままですととんでもない数字になってしまうので、これは間違いですから訂正させてください。

古いデータで、当時議論されたままですので、改めてかぶせていうつもりはないのですけれども、ACCS としては、ビジネスソフトや各種ツール、アプリケーションツールなどもたくさん出てきまして、Android とか色々な端末用にですね、小さなプログラムから大きなプログラムまで、沢山ネットワークに上がっている訳でありまして、こうした実態について、なかなか具体的に把握することは難しくなりますけれども、この調査結果、古いですけれども、実態としてはプログラムの著作物という機能がリテラルワークとして表現されている沢山のツールがありますので、こういうことについて、改めて違法とすることについて明記していただきたいと要望しております。

そのほか、この30条の関係で言いますと、47条の3の、プログラムの著作物の特殊性として、47条の3の制限規定があるわけですけれども、こちらで複製が認められるとすると、30条で仮にきちんと明記されたとしても、47条の3で複製ができてしまうと。この問題につきましては、この30条の中でやるのか、それとも47条の3で個別にやるのかということにつきましては議論があろうかと思いますが、47条の3との関係について、是非、プログラムの著作物がきちんと保護されるようにしていただきたいと考えております。

47条の3については、酒井さんの方からお話がありましたように、違法と知りながらダウンロードする行為が違法となった場合においてもですね、違法とされる複製を行って保有した複製物であっても、インストールする行為を業務上使用すると113条で抑えていますけれども、その間に複製ということが適法となる可能性が出てくる、こういうことがポイントでございます。

最後になりますが、この私的使用の問題と、後ほどまた色々とご意見があろうと思いますけれども、クラウド等の技術が出てきたときに、一体その、実質的に私的な領域で今まで法律の立て付けとして認められた当時の立法事実が本当にあたるのか。こういった意味で常に実質的判断を考えていただいて、著作者の正当な利益を害しない、そういうことを前提に議論をしていただきたいと思います。

短いですが、私のほうからは以上でございます。

土肥主査:#

ありがとうございました。それでは続きまして、公益社団法人 日本文藝家協会の 長尾 様よろしくお願いします。

長尾オブザーバ(文藝家協会):#

日本文藝家協会、長尾でございます。よろしくお願いします。特に資料は用意してございません。言うことは一言なので。長い台詞でいうと色々な背景は委員のお二人がきちんと資料を用意してくださっているのでお任せしたいと思います。

何を一言申し上げたいかと申しますと、色々と問題がある中で、私どもの業界の方で一番困ったなと思っているのは例の自炊の問題でございます。先ほどから皆様がおっしゃっているのように、法整備の方が技術の拡充にまったく追いついていないというのが何時の世もあるのですけれども、この自炊の問題に関しましては、スキャナの技術・性能が非常に向上した結果、昔のスキャナのような文字化けがほとんどおきません。

断裁されてしまった書籍を高速スキャナでスキャンしてしまうと、まったくそのままのデジタルデータがすぐにできてしまう。しかもそれが一冊幾らの本であっても 100 円でできてしまうということが今現実におきて居ります。

それで違法な業者は、自分が違法だということをちゃんと判っている業者も多く「著作権法上問題があると思うのですが、大丈夫ですか」とユーザが聞くと「問題があると思われる方はご利用を控えてください」というふうに仰っておられる業者の方が多く、中には特に優良な業者さんがおられまして、最近それが一件ありました。

許諾の申請がお客様の方からありまして「自分は難病でページをめくることができなくなった、全20巻の全集があるのだけど、四巻目から先はもう読めそうにない。寿命になる前に全部読みたいので業者の方に出してもよろしいか」とお問い合わせがありました。著者の方に伺いましたら「判らないので、申し訳ないが難病指定のコピーをいただきたい」ということで、その趣旨をお伝えしましたら快く送っていただけました。

ということは、自炊の必要は世の中にはあるのだとここで判ったのですけれども、それはごく特殊な場合に必要で、これは難病に限らず、脳梗塞の後遺症で手が不自由になったのだけれども、読書はしたい。学者の先生にも結構いらっしゃいます。

そういう場合自分で自炊をすることは不可能であることは十分に察せられます、業者も必要なのだと思います。が、そこに何か課金制度を制度化するなり、違反業者にきちんとした刑事罰があたるのであって、それも一年以下、50万円以下とかそういうものではなく、5年以上500万以上というそういったとんでもない額を法令化していただけますと、違法な業者がいなくて、しかも安全に使えて、ニーズにあった利用のされ方がするのではないかと私ども考えておりますので、その点をお考えいただければ有難く思っております。

もう一つございます。「自炊の森」という会社がございます。今は秋葉原にしかないので、なんとなく見過ごされているような気もします。なにかアキバの人は特別と、皆さんは思っていらっしゃると思いますが、とんでもないと思います。

これが、ターミナル駅に例えば、JR さんが自炊の森をテナントとして入れた場合、これは全くとんでもなくて、出版社はほとんど全部潰れてしまうと思いますし、作家は食べていけなくなります。

自炊の森はなにか「裁判で勝ったよ」と言って威張っていらっしゃるのですが、これも何らかの形でお取り締まりいただく法制度を必要としているように思います。私どもからは以上です。

土肥主査:#

ありがとうございました。それでは続きまして、社団法人 日本書籍出版協会の 井村 様、平井 様、それから、社団法人 日本雑誌協会 五木田 様、お願いいたします。

井村オブザーバ(書籍出版協会):#

日本書籍出版協会で常任理事を務めております、井村と申します。本日は私ども出版会に発言の機会をいただきありがとうございます。本日の私どもの発言の趣旨ですが、お手元の資料にありますように、著作権法30条の附則第5条の2の削除に関するものでございます。

昨今の複写・複製技術の発達により、これまでの紙から紙への複写から、紙の本をデジタルとして複製することが容易になりました。これいより、これまで主流であった、専門書や参考書などの、必要な部分のみの複写から、全てのジャンルの全文にわたる複製が容易になり、またその使われ方もこれまででは考えられなかったほどに広がりを見せつつあります。

本日は書籍協会と雑誌協会を代表し、二名により実態の説明をさせていただき、附則5条の2の削除をお願いする次第でございます。

それではまず初めに、書籍協会の知財委員会、副委員長である平井より現状についてご説明申し上げます。

平井オブザーバ(書籍出版協会):#

平井でございます。資料に沿ってご説明させていただきたいと思っております。表紙、一枚めくっていただけますでしょうか。まず皆様に、現状の出版業界を俯瞰するような形で整理をしたいと思っております。現在出版社数は 3979 社、10数年前は5000社ほどありましたが、減ってしまいました。売り上げ金額も 2 年ほど前に 2 兆円を割り込んだと大騒ぎしておりましたが、その後も順調に下がっております。このうち、書籍が 8200 億円、雑誌が 1兆500億円ということになっております。この雑誌の中にはコミックが含まれておりますのでご了承ください。

推定販売部数が、年間約 29 億冊。内、書籍が 7 億冊、コミックが 10 億冊、雑誌が 12 億冊となっております。

ついでに参考データとして付けさせていただきましたが、中古書店協会の最大手の一社がですね、2億8185万冊を年間で売り上げていると、従いまして本邦最大の書店は中古書店であるということが言えます。また、公共図書館の個人向けの貸出部数が、書籍の販売部数とほぼ見合っているという面白い結果もございます。

書籍の貸出というのはかならずしも図書館の無料現物、図書館だけで行われている訳ではございませんで、いわゆる有料レンタルですね、出版会と著作者の皆さんでですね、出版物貸与権管理センターというものを運営させていただいておりまして、昨年時点での有償許諾部数が663万冊、これは数年かけて数十回転する、何度も貸出されるという数字でございます。

その出版界、現在に至るまでの状況ですが、1996 年にピークを迎えました。日本の多くの産業はバブルの時期に一つのピークを迎えて、その後上がったり下がったりというのを繰り返してきたかと思いますが、出版界はこの書籍と雑誌を足した数で考えると 96 年から下がりっぱなしです。一度も上がっていることはありません。

そういう風に下がり続けている出版界ではございますが、電子書籍の部分では少ないながら伸びております。昨年は電子書籍元年などと言われて大騒ぎをしておりましたが、今年も順調に伸びておりまして、ここに書かせていただいたのは 2009 年段階の数字ですが、今日、まさに今日、2010 年のデータが発表されました。

2010 年では 650 億円、対前年比 113% ということになっています。内訳は構成比では相変わらず携帯が一番多く、携帯で 88%、加えて昨年発売されましたタブレット端末ですとかスマートフォンですとか、そうしたものが 4% を占めておりまして、それ以外の部分が PC/MAC となっております。構成比はあまり変わらないのですが、新しく入ったスマートフォンやタブレットも PC 同様に 30 代がメインというレポートがされております。

これから、先ほど長尾さんに言われたしっかり数値を読むというところに入らせていただきます。

まず書籍・出版物の複製というと、複写機ですが昨年の段階でほとんどの複写機はデジタル複製機でアナログ複製機の出荷はゼロに近いというふうなことらしいです。モノクロ・カラーを足して、50万台を超えるということですね。これらコピー機のほとんどは業務用で、従って5年リースで作られていると思われます。

そう考えると、これを 5 倍した数字が利用されているのかなと考えてます。また、最近増えているのが中古市場ですね、リースアップしたものの中古市場も活況を呈しているようです。こちらは数字がないということなのですが、それも勘案すると、日本国内でかなりのコピー機が日本で稼動しているということです。

最近はコピーだけではございませんで、スキャナで読み取ってデジタル複製し、それからプリンターに出力するというものも結構あります。プリンターの台数は御覧の通りで、スキャナの台数も書いてございまして、スキャナはどんどんと増えている、前年比出荷台数が増えているということです。プリンターや商品は市場は一種、飽和して買い替え重視になっているのに対して、プリンター(スキャナの言い間違いか?)はどんどん増えているということです。ここに OCR 専用機というものもあるようです。

続いて数字を申し上げますが、パソコンの普及率はこれは総務省さんの調査によると既に83.4% と、全ての家庭におけるインターネットの私的利用率ですね、これは半分を超えているということで、その普及したパソコンに対して、プリンターの普及率は 90% になっており、このプリンターでここ数年出荷されたプリンターの大半は複合機となって考えて間違いないようです。

これら技術の進歩に関して、技術的なことは私ども素人なものですからあまり揃えられませんでしたが、例えば国産初の普通複写機が出たのが 1979 年、現行著作権法が制定されたときですね。そのころ複写機、コピー機というのはものすごく大きくて高いものでした。さらに言えば現在のように詳細ではなくて、よく見ればプツプツと点が見えるぐらいのクオリティしかなかった訳ですね。

複写機本体も高いですが一枚の複写するランニングコストも無茶苦茶高かったものですから、おそらくは大量に紙の本からコピーするということをおそらく想定していなかったのだと思います。それが現在では家庭までデジタル複製機が入り込んでいるという状況を使ってメディア協会さんの言うことが見てとれると思います。

そのスキャナなのですが、一番安いものは8300円でした。これは新品でです。高級なマシンでは、これはすごいですね、100万円を超えるものもあるという話です。とはいえ、その中で一番使われているものは、家庭用・SOHOなどの小さな予算などで使われるようなものは、現状、先週の相場では 4 万円程度で手に入ると。毎分20枚40面ですから、5分もあれば200ページがコピーできてしまう実態です。

こういったスキャナを利用しているのだと思いますが、これも長尾さんからしっかり言えと言われているところですが、自炊管理業者の多様化というのを次、7 ページに記載しました。自炊請負業者がですね、ネットで検索で調べてみると、90 店舗、全部で 90 店舗ありました。

一冊あたりの額は最低で 50 円、最高で 300 円と色々なオプションがついたりして変わっているようですが、価格帯としては一冊あたり 100 円ぐらいのが一番多いというのが実態です。

それ以外、自炊自体をしないのですが、自炊スペースと機材の提供をしている業者もあります。有料提供ですね、場所貸しをしている。それから自炊スペースと機材の提供施設の同一の店舗内で断裁済み書籍をたくさんそろえておき、それを要望に応じて貸し出すなどというような、ちょっとこういうものが広がったらということを想像したくないような凄まじい業態が出ております。

先日のヒアリングで、自分が持っているものをメディアシフトするような用途であれば良いのではないかという意見を出されていた団体がおありでしたけれども、これを見ていると、自分が持っているものではないですよね。他人が持っているものを、法的に問題がないだろうと、勝手にデジタル化している実態があります。

さらには、色々とコピーというのは生活一部としてカジュアルにどんどん色々なコピーがされていると思いますが、ビジネス用途では自分で持っているものは中々コピーしませんから、他人から借りたものなんかをコンビニで簡単にコピーしてしまうと。しかもそのコピー機は昔と比べて安くて早いということです。

またさらにちょっとダメ押しをいたしますが、31条、図書館における複製、第1項ですね、こちら図書館であれば定期刊行物、雑誌であれば一定期間を経れば雑誌の内の一つの記事・論文を全部コピーできる。書籍であれば一部分までについてはコピーできる、全部をコピーしてはいけないよということになっておりますが、これが一旦貸し出されたら、コンビニで全部コピーできてしまう訳ですよね。

ある大学図書館、最近ある大学図書館では、紙の裏に広告が書いてあって、その紙を使ったコピーは無料でコピーができると。大学図書館の隣にある大学生協で無料でコピーできてしまうのですね。これは違法ではないと。附則5条の2がある限り違法ではないという実態がございます。

数年前になりますが、首都圏のある公立図書館では「この図書館内に置いているコピー機は30条の為のコピーです」とわざわざポスターを貼ったという実態までございました。これに関しては私ども抗議を行い、少なくともポスターの掲示はやめていただきました。

こういう例もあるということで 8 ページ目、最後に書かせていただきましたが、コンビニにコピー機が置かれています。それと同時に雑誌も置いています。雑誌を立ち読みしていて、面白いなと思ったら、その見開きをコピーしてまた雑誌の棚に戻すというユーザがいます。これはやめてくださいという法的な根拠がありません。コンビニの店員のアルバイトの方が止めてくださいと言ったら、なんで悪いのかと居直られるという実態もあるようです。

そもそも附則5条の2が、30条の当時の改正の際に設けられた理由なのですが、これは加戸先生の著作権法逐条講義によりますと、全文を読ませていただきます。「文献複写の分野については、既にコピー業者がかなり広範に営業しており、利用者の数も多数に上がっているにもかかわらず、まだ、それに関する権利を集中的に処理する体制が整っておりません。このように集中的権利処理体制が未整備の現状の下においては、権利者も実際の権利行使が困難であるばかりではなく、利用者および聞き提供者も権利者の許諾を得ることが実際上困難でありますので、権利を及ぼしてもいたずらに違法状態を作り出すという結果をもたらすことになります」というふうなものでした。

それから随分経ちまして、我々も権利処理の仕組みをきちんと運用できております。例えばですね、日本複写権センター、これは長いことやっておりまして、現在……これは最新版の数字ですね、1991 年から運営をしていまして、委託者数は 1100 者の出版物発行者で、さらに、文藝協会さんなどでして 13,106 名の著作者の方に委託をいただいております。

さらに複写権センターのような包括的許諾以外にですね、これも出版社だけで足しあげて、前身の組織は2001年からですが、この組織(出版社著作権管理機構 JCOPY)は 2008 年からで、委託者として 192 の出版者が委託をしておりまして、徴収額は昨年実績で 8 億円となっております。

従いまして、この附則 5条の2 が作られた時点でのその立法理由というのは既に消失しているものと考えております。

最後にまとめさせていただきます。附則 5条の2 自体に「当分の間」というふうな文言が入っております。この「当分の間」というのが 27 年に及んでいるというのは如何なものかなと。日本の法律で「当分の間」というのが 50 年を超えることがあるのは承知しておりますが、少なくとも著作権法でそうした状態を許す必要はないと考えております。

また先ほど申しましたように、附則 5条の2 をあえて作らなければいけなかった理由というのは既に消失していると考えております。

また、自炊業者に限らない直接サプライヤーという業態もございますが、営利を目的とした出版物の複製業者がどんどん増えていくというのは権利者を不正に害するものであるという結果になると、これは断言しても良いと思います。

以前に比べて、瞬時に大量に丸ごとの複写ができてしまう訳ですから、事情が全然違ってきているという風にお考えください。現実に中古市場に断裁済みの書籍が溢れはじめました。オークション市場にでも断裁ずみという書籍が物凄い数出ています。

これは、自分の持っているものをメディアシフトというのではなくて、中古市場での売買というのは著者の先生方や出版社に何の利益ももたらしませんし、そこだけで回ってどんどん副生物がデジタルに作られていくというのは、我々としても、本当に衰退産業に例えられるような出版業としてはちょっと容認できない状態であります。

またこれは最後になりますが、今まで出版物の複製というのは紙から紙へというのが主流でした。この場の多くの皆さんも環境として持っておられると思いますが、現在大量に行われているのはペーパー・トゥ・デジタルです。ペーパー・トゥ・デジタルのものが大量に行われている。これは今まで多くの団体の皆様が発言されていらっしゃいましたが、デジタル複製されてしまうと、これは一度デジタル流出すると回復不能な被害になってしまうということは、皆様のご経験で明らかですので、本当にこれは何とかしないとと思っております。

現実に、デジタル複製されたものが数多く海外を中心とするサイトで新分野として出てきています。特にコミックなどはダウンロードではなく閲覧させると、数百万タイトルを閲覧させるというふうなものも実際に出ておりまして、我々はそれに対しても色々な手を打っておりますが、入り口の所を何とかしたいと。

そのためにも附則 5条の2 は削除していただきたいというのが、重ねて申し上げますが、我々のお願いでございます。

コミックのように世界に冠たる日本の文化、あるいは日本語の文化、これは日本人自身の手で守るより他にない訳です。是非とも日本語の文化、日本の文化を守るためにこの変更を考慮いただければと思います。

後、雑誌協会さんに少し補足を頂きます。

五木田オブザーバ(日本雑誌協会):#

はい。雑誌協会の五木田でございます。二点ほど補足させていただきます。主に自炊についてなのですけれども、自炊業者の多様化というのも先ほど平井の方から発言をいたしましたが、一つの例としてお聞きいただきたいのですが、CCC、カルチャア・コンビニエンス・クラブの TSUTAYA さん、ご存知だと思いますが、様々なレンタルをやってらっしゃいます。この TSUTATY さんが二店舗で自炊の実験をされております。

場所が大阪の枚方市駅前店、こちらは昨年の10月10日から、もう一店舗が横浜のみなとみらい店で、これは今年の 2月2日からでございます。我々は TSUTAYA さんと商売上のお取引がございますので、そういう所からお話を伺うことができました。

非常に数が、まだ実験という形で数が少ないので、例えばでございますけれども、3月の利用者、これは横浜のみなとみらい店ですと 50人が 99 件、これを実施したと。大阪の枚方市駅前店は、3 月のみですが 24 名 61 件の自炊が行われました。

なぜ TSUTAYA さんがこんなことをはじめたかというと、顧客のニーズとしてどれぐらいのニーズがあるのか、それを把握することで基本サービスとしての可能性を探るという位置づけだそうです。あくまでもサービス目的で、TSUTAYA さんで本を購入しなければいけないという制限はついていません。持ち込んだものでも、そこで買われたものでも結構だということで、料金としてはやや高めの、店頭でのスキャン料は 300 円、裁断手数料は二組頼むと 100 円ということですが、現在は無料サービス中だということです。スキャン後のデータは当然消去していると。裁断後の本はお客さんに持ち帰っていただいているということです。

どんな本が自炊されているかというと、ここにリストがありますが、これは店員さんが肩越しに覗き込みながらどんな本をスキャンしているのかとノートに書き留めたリストでございます。ほとんど多いのがやはり参考書とかビジネス書、ビジネス関連の単行本、HOWTO ものが多いのですが、中にももちろんのことコミックス、それと雑誌、これがかなりの数に上ります。文庫もございます。見ていますと、書籍のほとんどの分野が自炊の対象とこの先なるのではないかと伺える実験になっております。

TSUTAYA さんは 5 月現在で全国に 3832 店ございます。現在でも月当たり 2・3 店舗ずつフランチャイズが増えてございますので、全国展開やられてしまうとこれは自炊関連業者、自炊請負型技術店舗となっておりますが、これの倍数になってしまいます。

もっと言いますと、現在コンビニのコピー機、これにスキャン機能がついたものが増えております。例えばコンビニのコピー機はふたを開けて一枚ずつスキャンしなければいけませんけれども、そうしたやり方でスキャンはできます。

たとえば USB メモリを差し込むことができるようになっていますから、データに入れられて持ち帰れると。機械に詳しい人に聞きますと、今蓋を開けなければできないコピー機を自動的に流し込むような機能にするには、上のところを取り替えればいいそうなので、そんなに大したお金をかけずにもしニーズがあるとなればそういう機能を追加することは、大したお金をかけずにできると。

もしコンビニがそういう対応を取るようになったら、これは全国数万の規模でございますので、とても太刀打ちできるものではございません。

もう一点、これはある、文藝家協会さんではないのですけれども、ある著名な作家さんが所属する団体がございまして、その著名な作家さんがこの自炊の請負業者のニュース等で見て、なんとかならんのかと。各社の担当者に一斉にメールを送りました。

で、各社担当者あわせて、技術・総務的な、法務的な部署に駆け込んでどうしたらいいのかと、で各社代表者がその団体の理事会にご説明に伺いました。そこで自炊業者の実態等をご説明いたして、出版社には訴えれる権利がございませんので何とか原告になっていただきたい、出版界あげて全面的にバックアップしますというお願いをいたしたのですが、理事のある方から、その裁判は絶対に勝てるのかとというお尋ねがありまして、裁判には絶対がないというのはこれはもう皆さんご存知だとおもいますが、あたりまえのことですが、絶対はございません。

ただ、出版社としては最高裁までバックアップいたしますというお約束をしたのですけれども、この方が知り合いの弁護士さんにお尋ねしたところ、附則 5条の2 があるからひょっとしたら負けるかもしれないというお答えだったと言われて、その理事会の他の理事の方々も、絶対に勝てない裁判をやると作家というのは個人の商売だから、例えばブログが炎上してしまったり、2ch でなぜこんなことに目くじらをたてるのかと袋叩きにあったり、立場が非常に弱いのだと。

団体としてやれるのであれば良いけれども、個人で作家で全責任を持ち、商売的なものもあるので、読者を敵に回すようなことはしたくないというのが理事会の空気となってその著名な作家さんも自分だけが立つというふうなことは言えなくなってしまうということがございました。

著作権の改正ということであって、ここに権利者の方が一杯いらっしゃいますけれども、出版界というのは著作権者と共にここまでやってこれた訳です。著作権者の方の代弁者として是非申し上げたいのは、附則 5条の2 の撤廃、これを是非実現していただきたい。これをお願いしたいと思います。

拝聴ありがとうございました。

土肥主査:#

ありがとうございました。それでは続きまして、一般社団法人 インターネットユーザ協会の 小寺 様、お願いします。

小寺オブザーバ (インターネットユーザ協会 : MiAU):#

一般社団法人、日本インターネットユーザ協会の 小寺 でございます。本日は当協会の意見を述べる機会をいただき、まことにありがとうございます。委員の皆様もお疲れの様子が見られるので手短にお話を、もうしばらくお話させていただければと思います。

私共インターネットユーザ協会はですね、インターネットやデジタル機器の技術発展、利用者の利便性に関わるような事柄についての意見の表明であるとか、あるいは種々の活動を行うこと目的としております。

インターネットユーザの立場として、私的利用の為の複製に対する権利制限を記した第 30 条の規定というのはユーザの行為への大きな影響を持つものと考えています。これに対して、当会の意見を 4 項目に分けて述べさせていただきます。

まず 1 としまして、録音録画補償金制度について述べさせていただきます。録音録画補償金制度はですね、05年から06年にかけて、法制問題小委員会で抜本的見直しの必要性というのが指摘されて以降、議論が続けられてまいりましたが、未だに「抜本的」と言えるような制度の改革というのは行われていないように思われます。

少なくとも、その制度について周知が未だ十分とは言えず、制度の趣旨あるいは実施方法に関してもデジタル時代のあり方と乖離しているのではないかというユーザの意見もございます。

周知に関して近年は意識調査が行われず、近々の資料があまりないという状況にあります。今年、ユーザアンケートの形で約 1 万人に対してアンケートをしたところ、制度を知らないと答えたユーザが約三割おりました。実際にユーザがデジタルコピーをした権利者に対してダイレクトに支払われるかどうか確認できないということが、こういった意識になっているかと思います。

また、現行の制度はですね、コンテンツの再生機と消費メディア、ベースがそこにあるのですけれども、現在はメディアを消費するという行為がだんだん衰退しておりますし、また専用機というものもなくなってきておりますので、そういった実態とあわなくなっているという視点もございます。

それからユーザといたしましては、DRM と補償金というものがどういう関係にあるのかということが明らかになっていない現状では、制度に対してユーザからの積極的な支持というのは得られないのではないかというふうに考えます。

録画補償金制度に関しては現在デジタル放送専用機の支払いに関して訴訟が行われていまして、今後の裁判の行方も注目されるところではあると思いますが、この件に関しては事情が複雑でありまして、総務省のデジコン委員会の議論もございます。それからダビング10の実施、それから文科省・経産省の両省合意等様々な要素が複雑にからみあっておりまして、補償金制度一般を考える題材としては特殊すぎるのかなと考えております。

補償金制度に関しまして、消費者の複製行為の実態が、補償が必要なほどコンテンツビジネスに影響を与えているのか、また、DRM のあり方とバランスが取れているのかといった点について、消費者の意見が反映されることを強くお願いしたいと思います。

現在の複製行為について考え、ご説明しますと、現在のコンテンツ利用における複製というのはフォーマットあるいは CODEC 変換を含んでおりまして、デジタルプレイヤーで 1 bit の狂いもなくコピーするという行為はあくまでも主流ではありません。

デジタルコピーといっても技術的にはアナログのように非可逆の劣化が起こっているのです。つまりデジタルだから単純に同じものができるという理解は実態からは乖離しつつあるように思っております。

また 2010 年に Disney が KeyChest という著作権管理、視聴権管理技術というものを発表しまして、最初にコンテンツを購入した時には視聴権を購入している。であればその権利を他のユーザに移転したりできるという仕組みなのですけれども、このような形であればユーザに馴染みやすいのではないかというふうに思います。

続いて2、アクセスコントロール回避規制導入につきましてです。

1月25日に文化審議会 著作権分科会で報告書の中でまとめられた報告書の中で、第1項のアクセスコントロール回避規制を盛り込むという旨の記載がございます。しかしこの件に関しては、ユーザの正当なコンテンツ利用および我が国の ICT 技術の発展を妨げる恐れがあります。その点について我々もパブリック・コメントを提出してございますけれども、これをもう一度、4 点に分けて簡単に説明させていただきます。

まず 1 としまして、ユーザが正規に購入したコンテンツを長期的に鑑賞できる保証がないという点が上げられるのではないでしょうか。というのは、消費者が正規に購入したコンテンツであっても、技術が発展していく中で、記録メディアが劣化したりでありますとか、再生機や再生フォーマットというものが陳腐化していく、その結果、その中身が視聴できなくなるということがこれまでにも実際にございました。

その時に、新しいメディアフォーマットにコンテンツを移すという作業がユーザとしては必要になってしまうわけですけれども、アクセスコントロール回避規制はこの行為を違法化することになるというふうに思います。

資料のほうに書いてございますが「自ら選んだ様態でアクセスできるのがよい」というのがユーザ自然な欲求としてございます。例えば音楽の例で言いますと、サラウンドのフォーマットを使った盤面がありまして、私も沢山買ったのですが、多分、今もう現状フォーマットが衰退していますので、今後 10 年後にはもう再生できないであろうと。

その時に、10年後にまた新しいフォーマットに買いなおせば良いことになるかもしれませんが、大本のマスターが 2ch の音源しかございませんので、これからまたサラウンドのフォーマットで再販される可能性はない訳ですね。なので、ユーザがサラウンドが良いからと言って購入したものが、その様態で聞くことができなくなる可能性がありますので、同じ様態で長期的に聴きたいというユーザのニーズに対してご配慮いただきたいというふうに考えます。

それから二つ目の理由として、アクセスコントロール技術の技術的正当性が検証できなくなるという面がございます。過去アクセスコントロール技術として使用された RootKit および CCCD といったものがございますけれど、これはユーザが保有していた CD プレイヤーを誤動作させるという、誤動作させる結果ですねコンピュータに対してはセキュリティホールが発生し、また CD プレイヤーに対してはハードウェアの故障の原因になるということもございました。

このような問題は、ユーザの間で解析によって検証され、インターネットを通じてその問題がはじめて明らかになったという経緯がございます。この規制は、そのような請求をすることを難しくなり、その結果ユーザが安全にコンテンツを利用することが難しくなるというふうに懸念しております。

三点目の理由として、侵害コンテンツの流通防止に対する法的枠組みは既にあるという点でございます。回避規制導入のきっかけとなったのはゲーム機の「マジコン」等だと思っておりますが、マジコンについては不正競争防止法で、侵害コンテンツの不正流通防止は著作権法の自動公衆送信権および送信可能化権で十分に対応が可能です。既存の対応策を活用しないまま新たな規制を導入することは、ユーザの家庭内におけるバックアップ行為等にも大きな影響を与えるなど、懸念をしております。

四点目の理由として、著作権法が実質的に特定のハードウェアやプラットフォームを保護してしまうことになるのではないか。著作権法はそもそもソフトウェアあるいはコンテンツの保護と利用のバランスを図った上で、文化の発展に資することを目標としておりますけれども、この回避規制の導入は特定のプラットフォーム・ハードウェアでの再生を禁止することを可能とし、特定のハードウェアやプラットフォームの囲い込みを著作権法で保護することになるので、著作権本来の目的を逸脱してしまうのではないか。そして、健全な市場競争の阻害し、国際競争力の押し下げてしまうのではないかという懸念をしております。

そして主張の三つ目、権利制限の一般規定についてです。

現在、インターネット上ではユーザによるコンテンツの批評などが幅広く行われています。たとえばテレビ番組が対象となっているようですけれども例えば参照として、静止画であったり、動画の一部を掲載したりリンクを張るという好意が行われているのですけれども、これらはどのような形態であれば引用となるのか不明であります。ユーザの間でもそれに関して色々な意見が散見されています。これらの行為に対して、引用との関係が明らかになるまでは一般規定で手当てすることはできないのだろうかという意見です。

また 2 でも述べましたけれど、再生プラットフォームの変化に伴ってコンテンツのフォーマット変換が必要になる状況があるわけですけれども、消費者自身が行うということになる訳です。ただ、消費者といいまして、個人個人の知識であるとか技術レベルというのは、必ずしもそういうことに対応できるとは限りませんので、プラットフォームの陳腐化に伴うフォーマット変換に関しては全てのユーザ、購入者が等しくコンテンツの鑑賞を正当にできるよう、権利制限の一般規定として事業者の関与を認めてよいのではないかと。

何故かと言いますと、それらの事情によるフォーマット変換は、複製元のフォーマットは再生できなくなってしまう訳でございまして、そういうことを考えると、複製数として、再生可能なフォーマットが増えたとは言えないのではと考えるからです。

そして四つ目の、送信可能化権および公衆送信権の整理についてです。

まねき TV 裁判というのがございまして、最高裁で判決が出された訳ですけれども、該当サービスでテレビ局の公衆送信権および送信可能化権を侵害しているとの判断を示しています。しかしこの結論が導かれる過程で、1対1通信しかできない機器であっても、自動公衆送信装置で、あるいは誰とでも契約できるならその送信は自動公衆送信であるという解釈がなされています。

この解釈は既に現時点でもクラウドサービスも日本国内で展開するのに大きな障壁となりはじめています。ユーザの健全な利用であっても、アップロードあるいは利用行為が、事業者の違法行為に加担するものとして、潜在的な違法状態に置かれてしまう可能性もあります。

まねき TV の最高裁判決で示された法解釈は、国内のコンテンツあるいはインターネットビジネスの障害となるばかりか、世界規模のクラウドサービスから、いわゆる日本パッシングを呼ぶ可能性がございます。これらはユーザにとっては非常に大変不利益となると考えています。

したがいまして、送信権可能化権ならびに公衆送信権については隣接権者の一部の権利を保護するかわりに多大な違法状態を生み出すといったことがおこらないように、解釈の範囲をより限定的にすべきと考えていて、そのために法改正であるとかあるいはガイドラインを作成などの、具体的な対応を講じるべきだろうと考えます。

最後になりますけれども、コンテンツのユーザというのはですね、権利者、メーカさん、あるいはサービス事業者さんの中に無数に存在しているわけではなく、みなさん家に帰ればコンテンツの自由はない訳です。より豊かな、そしてレベルの高いコンテンツ享受というのは、国民の文化的生活の向上に直結していて、その利便性と私的複製というものが切り離せない状態というのは既に説明の通りです。

今後の著作権法においては是非、この利用者の視点というものを取り込んでいただければと我々は考えます。以上です。どうもご清聴ありがとうございました。

土肥主査:#

ありがとうございました。それでは最後になりましたけれども、モバイル・コンテンツ・フォーラムの 岸原 様、板屋 様、長谷川 様、どうぞお願いします。

板屋オブザーバ(モバイル・コンテンツ・フォーラム):#

はい。モバイル・コンテンツ・フォーラム、板屋でございます。本日は発言の機会を与えてていただきまして、まことにありがとうございます。簡単にですが、著作権法 30 条にかかる意見を述べさせていただきます。お手元の資料を捲り、2 ページ目を御覧ください。

まず初めに、スマートフォンなどのモバイル機器の環境なのですが、クラウドサービスとソーシャルサービスが今後求められてていくのではないかと、そのように思われますので、どのようなサービスかを述べさせていただきます。

クラウドサービスなのですが、図示しましたように、このサービスはサーバ同士をつないだネット環境ということであります。ここではその代表的な一類型であるストレージサービスを取り上げております。ストレージサービスでは、クラウドサービスのサーバーを使用して、利用者が私的複製をした著作物を個人的に使用するために蓄積している面があります。

これは、自らのモバイル端末のハードにデータを蓄積しないため、例えば機器を紛失したとしても、その私的なデータを失うことがないという点で、便利なサービスでもございますし、私的複製をした著作物を携帯端末でも PC でも個人的に利用できるといった点で、利便性が向上するサービスになっております。クラウドサービスも今後進歩していくというふうに思われますので、それに合わせて私的複製の範囲の整理が必要ではないかと認知しております。

3 ページ目をお願いします。ソーシャルサービスでございます。ソーシャルサービスはネットの世界で利用者同士が繋がっていき、ネットの中で関係を構築して、利用者同士の物理的な距離は関係なく、コミュニケーションができるというサービスでございます。

ソーシャルサービスの代表例としては、わが国では Mobage、GREE、mixi 等、グローバルにおいては Facebook や Twitter 等がございまして、資料のように、利用者人口も、経済的な面からも急成長しているというコメントになっています。

4 ページ目をお願いします。さて、著作権法 30条1項3号についてでございます。同号は利用者によるの一定のダウンロード行為について著作権違法であることが定められており、現状罰則はございませんが、関係各者の多大なご努力もございまして、特定のダウンロード行為が著作権法違反であることを、認知向上した点で有効な改正であったと考えております。

ただし利用者においては、自らの行為が違法ダウンロード行為なのか、判断が容易ではないという現状があるように思います。というのは、ダウンロード対象が本当に違法アップロードされた著作物であるのか、判断が容易ではないということでございます。また、悪意がなくとも法上の「事実を知って」に該当してしまう可能性があるものなのかという点でございます。

このような現状の中で仮に罰則が定められてしまいますと、判断が容易でないために、利用者がネット環境における行動を萎縮させてしまうという、そういったことが想定されます。そうなりますと、著作物の利用も阻害されることになりますし、文化の発展も、新しいビジネスも生まれにくくなると、ひいては社会全体に悪影響を及ぼすのではないか、このような危惧をしている訳であります。このような理由からも、利用者保護、文化の発展、経済発展の観点から、同号の厳罰化は慎重になるべきであるとの意見を持っています。

次のページの 5 ページ目をお願いします。引き続き同号については問題をシンプルに捉える必要があるのではないかと考えております。著作権者の保護の観点からも同号の違法ダウンロードに対してではなく、そもそも著作権法に反してアップロードをしている者に対しての問題が大きいのではないかという基本に立ち返って考えることが妥当であろうと考えております。

罰則が改正され強化された著作権侵害に対しては、こちらも団体関係者様等のご活躍がございまして、多大なる成果をあげておられることは周知の事実であることと認識しております。ですから、現状の同号の厳罰化は慎重にするべきであり、規制対象としての問題の大きい、違法アップロードした者に対しての対策を検討することが妥当と、そういう意見を持つに至っております。

6 ページ目を捲ってお願いします。最後に MCF としての意見のまとめになります。著作権法 30条、私的使用の為の複製というところでございますけれども、著作権者の独占排他的な権利の保護と利用者保護、文化の発展、経済の発展のバランスが重要であると考えています。このことが大原則であろうと考えております。

我々としては三つの意見を持っております。法目的に適い、著作権者の権利を事実上害しない範囲で、著作物の私的複製の範囲を、文化および経済の発展を阻害しないように判断することが妥当であると、こういう意見をもっております。

で二つ目でございます。特に利用者保護の観点から、30条1項3号の厳罰化というものは慎重にすべきであり、著作権者の保護の観点から、違法アップロード側の対策を検討することが妥当と、そういう意見を持っております。

三つ目です。技術的保護手段の回避規制については、利便性としての関係で、保護強度等に差異があるとしても、文化及び経済の発展に必要なものであり、実態として利用されている技術的保護手段が網羅されるように定義することが必要であろうという意見を持っております。

ここまでが意見なのですが、最後にあくまでもご参考にということなのですが、7 ページ目を御覧いただけるでしょうか。今後のこれに鑑みますと、将来考えられるサービス事例としまして、クラウドサービスとソーシャルサービスが例えば融合したような、ここでは利用者同士がネット環境を利用して、物理的な距離は関係なく、自宅で BGM を流しながら歓談するというサービスもありうるのではないかと、そういうことを意識して図示しております。

わが国においては文化の発展と、将来の新しいビジネスの創出や育成など、現行法において、まずリアルな環境で認められている範囲においては、このようなネットの世界でも実際に認められる必要があるのではないか。これはあくまでもご参考でございます。

簡単ではございますが、以上でモバイル・コンテンツ・フォーラムの意見を述べさせていただきました。ありがとうございました。

土肥主査:#

どうもありがとうございました。それでは残る時間を質疑応答や自由討議にあてたいと考えます。まず出席者の皆様方に対するご質問、ご意見等ございましたらお願いします。どうぞ、ご遠慮なくお願いします。

はい、大須賀委員どうぞ。

大須賀委員:#

日本書籍出版協会の方にお伺いしたいのですけれども、附則 5条の2 を削除するということのご意見はよく理解できたのですけれども、そういうことにした上での出版業界のですね、未来像というのでしょうか、そういうものをどのようにお考えになっているのかお聞きしたいと思ったのですけれども。

ちょっと、このように単純化してしまうと適切ではないのかもしれませんが、あえて単純化して言うと、旧来の紙ベースの書籍本の購入者層を一定程度確保して、部分的にはそれが少しずつ電子書籍の購入層に移っていくと。その紙ベースの電子書籍の購入層の方と、電子書籍の購入層の方が、従来どおりの数で保持されると。そういうふうな未来像なのかどうか、それともそれとはちょっと違ったものなのか、その辺が良く判らないところがあるのですけれども、教えていただければと思います。

平井オブザーバ:#

大変難しい質問でございます。我々商業出版物を出している団体でございます。商業出版物に限らずというところで見ますと、日本人の活字、活字というと印刷物になってしまうのですかね、文字情報の享受に関してはかなり地殻変動がおきてしまっているのだろうなと思います。

2000年代に入ってからは、多くの方々が印刷物による文字情報の取得よりも、ディスプレイ等による文字の取得が逆転しているのではないか。これは調査方法があるわけじゃないので、そういう印象を持っています。

一方で、電子出版がどんどん発展しているといわれながら、この 10 年間でまだまだ 650億円程度という事実があります。それを考えますと、ディスプレイで文字を読む習慣はかなり広がったにも関わらず、それぞれの読者が趣味や楽しみの為、あるいは勉強や仕事の為、研究の為に必要としている情報はまだまだ紙の方が圧倒的に多いと、商業出版物に関してはデジタルに対するニーズよりも、紙の出版物に対するニーズがまだまだ多いというふうに感じています。

日本の出版界は 10年以上電子出版に携わっておりまして、その都度その都度、10年後には逆転しているのではないかというふうに考えてやってきましたが、中々読者のコンテンツ享受の嗜好というのは変わらないものなのだなという印象を持っています。

ただ、これから若い世代が、生まれ育った時からデジタルによる文字情報の取得が日常であった方々がマーケットに参入してくるということですので、これから少しずつ変わってくるのかなと思っております。ただその場合でも、我々は全ての日本人、日本語を利用する全ての方々を読者に、その中から生まれた書き手、一定以上のクオリティを持ち、反復的に作品を生み出せる書き手の皆さんと一緒にできるだけ多くの読者に、紙であろうがデジタルであろうが、読者が望む形で提供していきたい。

何かの事情で、どこかの段階で紙よりもデジタルの方が増えていったということになれば、それはそれで読者の欲求ですから当然だと思います。我々出版界は読者のニーズに対してその都度その都度最適なものを提供していければということを考えています。

これぐらいしかお答えできないのですが、よろしいですか。

大須賀委員:#

もう一度ちょっとよろしいですか。先ほどお伺いした趣旨は、要するに文字書籍であれ、電子書籍であれ、第一次購入層というのを固定化して維持しているという方法で考えていると。まあ考えているというのは一つの考え方で、まあそれは業界を維持していく為にはそうした考え方が出てくるのは理解できることなのですが、一次利用者と二次利用者を少し分けて考えて、二次利用者が出てくるのは已むを得ないと、二次利用者のところは業者を介在させてそこから利用料金なりを回収すると。その額は一次利用者を固定して維持するということよりは下がっていくのかもしれませんけれど、今の情報の流通の仕方で、非常に、有料情報流通と無料情報流通の比率で無料情報流通の比重が非常に高まっているわけですね。

その中で、出版業界の未来を考えるときに、あまりその現状の一定の固定的な形で考えることが本当に良いのかどうかということが疑問としてあるような気がするものですから、あえてお伺いしている訳です。

平井オブザーバ:#

実は私どももそちらの方向には努力はしておりまして、例えばレンタルコミックへの対応ですね、あるいは私的利用以外での複製に対してのライセンスシステムですとか、そういったものはどんどん出してございます。

ところが、出版社というのはご存知のように隣接権がございませんがゆえに、主張のお金も法根拠があまりないですとか、あるいは附則 5条の2 がある故に、要求できるはずの対価が要求できないというようなことがございますので、中々この分をビッグビジネスに持っていけないという恨み辛みがございます。

さらに言えば今後の検討でいくつかお願いしたいと思っているのですが、デジタルへの複製ですから、これは我々も私的録音録画補償金のようなタイプの補償金の対象となってもおかしくはないのではないかということまで考えております。

こういう次第ですから、二次利用の部分をできるだけ多くのビジネスにしていこうという試行錯誤は今、まさに行っているところであります。

大須賀委員:#

ありがとうございます。

土肥主査:#

他に如何でしょうか。上野委員お願いします。

上野委員:#

それでは私の方から2点お伺いできればと思います。一点目は日本書籍出版協会さんに対して、二点目はモバイル・コンテンツ・フォーラムさんに対してであります。一点目に関しては今、大須賀委員からかなり大所高所からのご質問がありましたけれども、私は細かい点についてお伺いしたいと思います。

おそらくご趣旨は附則 5条の2 を削除するということだと思いますけれども、この点に関しては確かに「当分の間」という文言が25年以上にわたって続いているということや、また、その当時前提にしていた文献複写機器といったその性能が向上してきたということは、ご指摘の通りかと思います。

ただし、これを削除しますと著作権法30条1項1号が残りますので、例えば文献複写機、コンビニのコピー機を用いたコピーであれば、たとえ私的使用目的であっても著作権侵害ということになろうかと思います。

そうするとこれからどうするのかということになりますけれども、そうするとご趣旨はどういうことか良く判らないのですが、複製権という許諾権を残した上で、これを複写権センターを拡大したようなもので処理していくということなのか、それともいっそのこと、報酬請求権や補償金制度などのようにして、マクロ処理をするということかもしれません。

私は個人的には、私的複製に限らず、図書館や教育その他の権利制限について利用者の利便性をより拡大していくと共に、報酬請求権化していくという方向性は一つの選択肢であろうかと思います。ただその場合問題になるのは徴収・分配の問題が避けられないということになろうかと思います。

特に文献複写に関しては利用者の数も権利者の数も膨大で、非常に広範囲に及ぶ訳です。するとこれをどのようにカバーしていくかということが課題になるのではないかと思います。

先ほどのご報告では複写権センターや JCOPY が十分にその機能を果たしているというふうなお話でした。加戸守行さんが懸念しておられた集中的権利処理体制が未整備だという状況は今はもうないというお話だったかと思います。

そのことに関しまして、現状としてお伺いしたいわけですけれども、利用者側の方に関しましては、先ほどのご紹介で複写権センターは書籍で言えば 8 万点強、JCOPY の方が約 7万点というご紹介でしたけれども、これは実際に行われている複写のどれぐらいをカバーしていると理解したらよろしいでしょうか。

また他方、権利者の方に関して言えば、出版社の委託の数がこれぐらいあるということはお聞きしましたけれども、現状は、もちろん出版社の権利というものも別途問題になるところで、私も意見を持っておりますけれども、著作権の処理ということからいたしますと、出版社が著作者であるという場合ももちろんあるでしょうし、出版社に著作権が譲渡されている、あるいは権利管理が委託されているという場合もあるでしょうけれども、こうした著者と出版社の権利の管理というのはどれぐらいあり、それがどれぐらい実現していると理解したらよろしいのかということをお伺いできればと思います。

確かにこのことは簡単ではないということは私はよく理解しているつもりですが、やはり集中管理や報酬請求権としてこれを再構成していくという際には、やはり重要かと思われますので、現状の点と、また将来的な改善の可能性や方策など含めまして、その展望などがもしございましたら、ご教授いただきたいと存じます。

これが一点目です。長くなって申し訳ありません。二点目はものすごく簡単に申し上げます。モバイル・コンテンツ・フォーラムへお聞きしたいのですけれども、先ほどのご説明の中で 5 ページ目で仰られていたことは、ダウンロード行為についてではなく、アップロード行為についてシンプルに捕らえて、そちらを基本に立ち返って対策を検討するのが妥当だというお話でした。確かにアップロードが無くなればダウンロードを違法化する必要もないと思いますし、30条1項3号はもしかしたら要らないのかもしれません。

ただ、その具体的方策として何かイメージはお持ちでしょうか。例えばプロバイダに何か義務を課すとかあるいはスリーストライクだとか、色々言われているのは周知のところだと思いますが、何かそういったことが難しいから、あるいはそうしたことがそれはそれで問題があるから、今こうして議論になっているのかなと思ったのですが、もし何かイメージがございましたらご教授いただければと存じます。

長くなって失礼いたしました。

平井オブザーバ:#

まず現状、委託作品数でございますがこの数字はあくまでも私的利用目的に必要なものは全く含んでおりませんので、例えば JCOPY の委託に関してであれば、JCOPY で日常的に複写が取られているであろうジャンルはほぼ全て網羅されており、それ以外のものであれば、JCOPY あるいは出版社に対して複写の要請があった段階ですぐに委託できるという体制をとっております。

ですからこの辺は、何冊委託されているかというよりも、何社が契約しているかということを見ていただく方が良いのだと思います。必要があればその都度委託作品に加えていくというふうなことです。必要というのはユーザからのリクエストがあった時に加えていくということで、あるいはユーザリクエストが多いジャンルについては、あらかじめ全部やっておくと。

その根拠なのですが、書籍出版協会が公表しております出版契約の雛形において、複写に関するライセンスについては出版社に委託するという条項が含まれておりますので、出版契約を結んだ段階でこれは出版社に委託されるということで、これは非常に意義のあることになると思います。

分配の方法ですが、これはやはり何らかのサンプリングを行うということにならざるを得ないでしょうね。それから徴収の仕方、これはユーザ個人個人というのが難しいといことは理解しております。複写機器を提供している業者さんとかそういったところとの交渉になるのだろうと考えております。

この問題は出版界だけで解決することはございませんで、色々な方からどれだけの協力がいただけるか、日本の出版文化の為に一肌脱ごうという方が多くいらっしゃれば色々解決は早いと思いますし、出版なんてなくなってもいいのだよという、もし、日本人がそういう選択をするのであれば中々進まないのだろうなと考えております。

岸原オブザーバ(モバイル・コンテンツ・フォーラム):#

先ほどご質問がありました、アップロードに関する具体的な内容ですが、仰っておられたように対策としては色々考えられるのだと思います。まずここでご提示させていただきたいのは考え方ということで、やはり今、ダウンロードの違法化を含めて、今は非常に違法の範囲を広げていくと、その中で対策を取っていくということが言われているのじゃないかなと思うのですが、曖昧な範囲がどんどん広がっていくことによって著作物の利用も阻害されていきますし、逆に取り締まりも厳しくなって、難しくなっていくと。

本来あるべきは、悪意のある、本当に問題のあるところをきちんと罰していくということが、今行われていないということが一番大きな問題であるということで言うと、まずダウンロードする部分とアップロードする部分ということで考えていくと、まずアップロードという部分が第一義的に考えられて、その中でもアップロードの中でも全てに対策を採るのではなく、真に問題を起こしているようなものを特定して、その上で先ほど仰られたような対策を取っていくべきではないかなというのが今回の趣旨でございます。

土肥主査:#

よろしいですか。他にございますか。それでは松田委員どうぞ。

松田委員:#

モバイル・コンテンツ・フォーラムの資料を見ながら質問させていただきます。2 ページと 7 ページにクラウドの図が、ほぼ同じ図が記載されています。7 ページを見ますと、多分これは携帯端末向けコンテンツを持っているユーザが、私的利用のためのある領域を借りて、そこにストレージし、それが何時でもないしは他の端末でも当該個人であれば、利用できるようにして、例えばこの図で言えば音楽の鑑賞ができるようにしましょう、こういう図のように思えました。おそらくこれは間違っていないだろうと。

そのように、個人がストレージしてそれを楽しむということと、このクラウドの他のサーバーが繋がっておりますけれど、この関係はどのように考えたらよろしいでしょうか。

それが一点でございます。

岸原オブザーバ:#

ここの部分はインターネットの概念を示したものでして、そこのコンテンツがどのように広がっていくということをイメージをしたものではありません。

松田委員:#

いえ、そういう質問をしている訳ではございません。インターネットであればサーバーからユーザの間にネットがなければいけないのに、サーバー間にネットがあるわけですから、これはむしろクラウドというよりも単純にストレージサービスの一態様ではないのでしょうか?

岸原オブザーバ:#

ご質問の意味がよく判らないのですが、クラウドとストレージの違いということを今議論されているのでしょうか?

松田委員:#

では、クラウドと言うのは、もっと高度に考えると、例えば企業が PC ないしは自社のサーバー上にはコンピュータプログラムもデータも、今までは保有していたものも保有しないで、最も適正なデータと、最も適正な機能の高いプログラムをクラウド上で利用することができて、そのサービスを受けた時に料金を払うという形態がもっともクラウドに見合う形態だと思いますが、自分がアップロードしたものをダウンロードする、他の人たちはそれを見たり聴いたりはできないということは、こういうサービスということは別にクラウドと言わなくても良いのではないかと思いますが、如何なものでしょうか。

岸原オブザーバ:#

すみません。クラウドサービスというのは技術的な部分を指していると思いますので、先生が仰られたようなことはビジネスモデルの定義になっているかと思います。要するに、これからクラウドという環境がこれから出現してくるというのは疑いようのない事実で、これはユーザ利便性あるいは著作物のより拡大ということも当然おきてくるかと思います。

その上で、先生がおっしゃっているような部分は、一つのビジネスモデル、利用形態としては当然考えられことだと思うのですが、それがクラウド上ではそのビジネスモデル以外は駄目だということを法規制するのでなければ、それはこれから色々なものが出てきて、その中で淘汰、あるいは拡大してくるというふうになるのではないかなと思います。

松田委員:#

私の質問に直裁に答えていただけないのは残念ですが、クラウドが 30 条等の問題でクラウドの発展に支障になるという図というか、例は何ですかというと、この図が上がってくるのですよ。クラウドがあって、アップロードしてダウンロードする。これは……まあクラウドの一例だと言えば、じゃあ置いておきましょう。

じゃあ、他の例はありませんか。30条が障害になって、クラウドコンピュータシステムが発展しない例というのはどういうものがあるのか。この例以外に。私はこれ以外に見たことがないのですよ。教えてください。

岸原オブザーバ:#

サービス形態は色々考えられるかと思いますが、一般的に世の中に出てくるところで言うと、iCloud であったり、Amazon の Cloud があったり、これはアップロードするかどうかということと違いますし、コンテンツを格納する仕組みも多分違うと思うのですが、基本的に、ここで我々が全てビジネスモデルを提示して提供するというよりは、技術用件といいますか、環境としてそういうふうになっていくと。なぜこれをやっていくのかというと、クラウドがやりたいというよりは世の中のニーズ、あるいは流れとしてそうなってきていると。

モバイルコンテンツはこれまで非常に良い環境にあって、国内の著作権者の皆様方と、デジタルコンテンツで 6000 億のマーケットを作ってきていると。多分これは全世界の中でもデジタルコンテンツとして非常に大きな部分だと思うのですが、逆に、今の環境であれば、我々国内事業者としては(クラウドサービスを)ほとんど提供できないという環境になる可能性もあります。

そうすると海外から来たサービスモデルに、これは当然考えられるシナリオでありますし、既に起こっている事なのですが、事業者さんが行うものを全世界的なグローバルスタンダードになって、国内の事業者あるいはコンテンツのホルダーの方たちも皆、それに合わせなければいけないという最悪のシナリオになるのではないかという事で、今後出てくるサービスについてですね、国内の事業者あるいはコンテンツを持たれている方、それぞれ話をして環境を作っていくのが良いのではないかなということをご提案しているとご理解いただければと思います。

松田委員:#

それと 30 条の関係を示してくださいと言っているのです。新しいクラウドビジネスが生まれることは判っているのです。それと 30 条の関係で、このストレージサービス以外のもの(があるのか)を。

岸原オブザーバ:#

すみません。そういった意味では法的な部分でということでいいますと、当然ながら複製というところについてはある程度この 30 条の中に入っているかと思うのですが、当然ながら、日本の中では送信可能化権というものもあるので、そういったことも含めてどうやって整理していくのかなということがこれから必要になるのではないかなと思います。

土肥主査:#

松田委員もお尋ねのことなのですけれども、それはまだ十分なお答えがいただけていないのではないかなと思うのですけれども。

松田委員:#

このタイミングではいいです。

土肥主査:#

それでは挙手された中山委員お願いします。

中山委員:#

自炊について長尾さん、平井さんに伺いたいのですが、けしからんので止めてほしいのは自炊それ自体なのでしょうか、それとも自炊代行業なのでしょうか。あるいはその両方なのでしょうか。

長尾オブザーバ:#

先ほど、最初にちょっと申し上げたように、ご自分が買ったものを、煮て食おうと焼いて食おうと漬物石にしようと勝手だということがございますのですが、実際にお困りになっていて、デジタルにならないと使えないという方もいるので、自炊そのものを規制してほしいと言っているわけでは私どもございませんで、自炊代行業者でございます、それも違法だと判っていたら、俺たちに頼むなよと言っているような悪質な自炊代行業者をどうにかしていただきたいと、そう申し上げたまででございます。

中山委員:#

(平井オブザーバに)同じでしょうか?

平井オブザーバ:#

同じです。前回のヒアリングで思ったのですが、30条について「自ら行う」というようなものがあって、代行させても良いのではないかと、自分のものをメディアシフトするだけならば良いのではないかという意見がありました。しかし、それについては先ほど説明したように、必ずしも自分で買ったものでもないものをどんどん自炊してしまっているとか、あるいは中古市場で買って、それをどんどんペーパーにしたら複製が増えていくというふうな申し子である自炊業者および自炊行為はこれは是非とも何とかしていただきたいということでございます。

特に、本が沢山置いてある所に自炊の場所を提供するというふうなビジネスが合法に成立してしまうということは何とかしてほしいと思いますね。

五木田オブザーバ:#

すみません、補足させてください。自炊代行、代行というのは請負ももちろんですけれども、自炊機器の提供とそのスペースを与える、これも我々としては止めていただきたい。附則 5条の2 を外していただくことでこれも止められると考えております。

自宅にスキャナを買ってきて、自分の本を裁断してスキャンする。これまでは止められないのはもちろんのことです。しかし、公衆の用に供されるコピー機・スキャナ、これに 附則 5条の2 の適用を外していただいて、例えばさきほどご紹介した TSUTAYA さんのようなところにこうした機器を置くのは止めていただきたいと考えております。

土肥主査:#

五木田さんの説明の補足的に説明をお願いしたいのですけれども、大阪と横浜の一月間に TSUTAYA さんがおやりになったということをご紹介されて、一月間と仰っておられたかと思いますけれども、数としては伺った限りそう多くないように思えました。一人あたりの数が 1冊か 2冊程度の数を自炊されているという風な数字だったと思いますが、そういうふうに御覧になることが、それはそれでよろしいのでしょうか。

五木田オブザーバ:#

人数等の把握を TSUTAYA さんが把握されているのが大阪・横浜共に 3月の一月間の実績ということでございます。それぞれサービスとしては昨年の 10月と今年の 2月からはじめられておられて、これは現在も実験として続けていらっしゃいます。

トータルでどうなのかということでは TSTAYA さんの方で人数としてではなくて、利用金額、売り上げという形で出していらっしゃって、人数として把握しているのが 3月の一月間という意味でございます。ちなみに、大阪の枚方駅前店では昨年の11月で千……これは単位が……、3月分の売り上げが大阪の枚方店が 17,465円。みなとみらい店が 27,743円となっています。ああ、数として把握されているものもあります。枚方のほうは 11 月が 6 人、12月が 9 人、1月が 13 人、2月が 39人、3月が 24人、それでみなとみらいの方は 2月から始まって、2月が 56人、3月が 50人という人数だそうです。

土肥主査:#

自炊というもので大変出版界の方々が被害を受けておられるとか、あるいは今後を非常に懸念をされているようなのですけれども、仰っておられるような数字を懸念されておられる、そういうことでしょうか。

五木田オブザーバ:#

いいえ、今のはあくまでも TSUTAYA というチェーンが、500 店舗以上持っているチェーンが、2 店舗で実験的に一台ずつ置いて行ったというもので、大きなビジネスとしてやっているわけではないのですね。

自炊請負業者の最大手なのですが、これは報道記事によるデータですけれども、最大手の一社、そこは 1 冊 100 円でやっています。そこは 300 人近い作業員が朝から晩までやっておりまして、一冊 100 円でその他のコストを払うのですから高性能のスキャナで 1時間に数冊できるのでしょう。そこに、今この段階で本を送って自炊してくれとお願いすると、出来上がるのに 3 ヶ月待ちです。

実際にどれぐらいの量がされているのか判りませんが、少なくともその規模があるにも関わらず、それだけの時間がかかるのであれば、相当数が自炊されているという蓋然性はあると考えています。

土肥主査:#

はい。それでは大渕委員。

大渕委員:#

2点ありますけれど、全然違うことなので切ってお伺いして、まずは書籍関係、今の自炊の所なのですが、先ほどお伺いしていて、非常に強調されていたところとして「自分の物でもないのに」というところを非常に強調されていたのですが、これはどの程度重みがあるのか、これは自分の物とそれ以外、そこで切ってほしいという強い意味があるのか、それとも全体的なトータルな中での一番目という意味で言われているのかという点が一点と。

先ほどのご質問への回答で自炊を個人でやっている人が悪いのか、それとも業者かということで、若干のニュアンスは別として業者が問題であるということでしたが、その関係でお聞きすると、附則 5条の2 を削除してしまうと、30条自体は個人が直接的に対象になっている訳で、30条1項1号が生じてくるから、インパクトとしては直接的には個人の方に行って、その関係で業者がどうなるかは別として、そちらの方にいくわけですけれども、これと、先ほどのように業者の方を抑えたいということと、この附則 5条の2 を削除ということを強く打ち出しておられることの関係をまずお伺いいただければと思います。

平井オブザーバ:#

附則 5条の2 に関しては先ほどお話の通りです。個人というものを強調、自己所有について気を使っていただきたいのは、前回のヒアリングで自分のものをメディアシフトする分については良いのではないかという団体さんが二つ三つあったので必ずしもそうでないよということが言いたかったのと、自己所有のもの、通常の民間市場から購入された自己所有のものであれば確かに我々出版界にも著作者にも直接的な被害は及ばないということがあり、そういうことを目くじらを立てるものではないかなと思っております。

附則 5条の2 については、確かにコンビニコピーの問題、これは多くの場合個人です。ところが、業者の方は附則 5条の2 ではなくて30条自体の問題がありまして、いわゆる手足理論だとか、そういうことを用いてこれを30条だというふうに言い張っている業者もある訳ですね。30条に手足理論を持ち込むと、結構ズブズブで何とかなってしまう可能性ってありますよね。福祉目的とかそういうものは別の条項で何とか対応していただいて、30条は手足理論だとかそういうものがあまり入り込む余地がないような優位性を持っていただければ、我々が自炊の業者に対応しやすくなると思います。

大渕委員:#

ありがとうございました。それから全然違う点なのですが、インターネットユーザ協会にお伺いできればと思うのですが、先ほどユーザ関連の団体としてはモバイル協会の方ではこのペーパーの4ページにあるように30条1項3号の刑罰化については慎重にすべしというご意見だったのですが、同じユーザ関係で今回特にそういう関係等のペーパー等での出された書面が無かったので、今の点についてインターネットユーザ協会はどういうふうにお考えかという所をお伺いしたいというのが 1 点でありまして。

もう一点目がインターネットユーザ協会が出されたペーパーの一番最後の所で、4 点目の公衆送信可能化権の整理というところで、法改正やガイドラインの策定等の具体的な対策を講じるべきであるというご主張があるのですが、法制化というと、細かなことは結構ですので、大体出すとしてどのような形に改正してほしいということがお伺いできればと思います。

小寺オブザーバ:#

30条1項3号はダウンロード違法化の話ですね。ダウンロード違法化に関しては、私ども元々ダウンロード違法化に反対するために結成された団体でございますので、当然反対の意を表しております。

大渕委員:#

違法化自体というよりは、違法にした上での刑罰化についてそちらにむしろ焦点を当ててお伺いできればと思います。

小寺オブザーバ:#

私共はまず厳罰化の前に、ダウンロード違法化がされて、周知が 55% の状態で効果がないので違法化ということですが、もっと認知をあげてからその後の議論に進むべきかなと思いますので、まだ早急であるとこの問題では考えております。

それから二問目ですが、資料の最後の法改正等をということですが、この最高裁の判例を拝見して、読み込んでみてのですが、公衆送信権と送信可能化権という概念自体が非常に難しいので、一般ユーザの行為がこれに関わるものであるのに、非常にどのように解釈して良いかが良く判らないという状況ですので、もう少しこの権利を開いた文書が少なくとも必要なのかなと考えます。

そうすれば、ユーザも元々悪意を持っていないはずだったのが結果的に問題になってしまうという部分があるので、そういうところはかなり下げられるのかなと思います。

土肥主査:#

中山委員どうぞ。

中山委員:#

また自炊に戻って申し訳ないのですけれども、出版業あるいは著作者が自炊によってどう困っているのかということについてもう一度伺いたいのですが、学者にも自分の本を自炊してかばんに入れやすくしている人は一杯いるわけですね。

先ほどの話を伺うと、切断したものを中古本屋に売るとか、あるいはデジタル化したものをネットにアップする、それが困るのだという話、それでよろしいのでしょうか。

平井オブザーバ:#

そうですね、自分のものをメディアシフトするのは一向に構わないと思います。基本的な対価を支払うことなく、自炊の対価だけ支払って、あるいはコピー代金だけ支払ってお金を払った気になっているユーザがいて、コンテンツには全然お金を支払っていない。

先ほども例にあげた、コンビニの雑誌を立ち読みしながら、1ページコピーして金を払ってコピーしているのに何がいけないのかと開き直るような方々がいると。そういった、なんというか、本をコピーしたりデジタル化するのは誰の許諾を得る必要もないのだ、空気のようなものなのだという雰囲気が醸成されるというふうなのが、我々としては長い目で見て一番嫌だなと思います。

それからペーパー・トゥ・ペーパーの時代から、ペーパー・トゥ・デジタルになると。本自体に DRM をかけるのは不可能ですから、デジタル化がいとも簡単にできてしまうという時代に始めてなって、それが何の手立てもないまま、そのデジタルデータがどうなっていくのかということを、他のメディアの皆さんの現状をずっと見ていまして、今、それを恐ろしい思いをしています。

現状において直接的にどのような被害があるかということを今数字として申し上げることはできませんが、将来における逸失利益を最小化にする為には何かできないかという観点が大きいと捕らえていただければ有難いと思います。

中山委員:#

デジタル化されるとネットなんかに簡単にアップできるから困るというのでしたら、別にこれは自炊業者の話というよりは、自炊自体の話になってくるのではないでしょうか。

平井オブザーバ:#

ネット業者自体も、先ほどの資料で 90 社ですか。データの管理をどれぐらいできるのかということがすごく心もとないというのと、データの納入もですね、一番安い方法だと、クライアントに対してメールで送り返しているのですよ。これも恐ろしい話ですね。これは一対一の通信だから公衆送信ではないと。

それは悪意がなくとも、不可抗力で流出してしまうと。それも自炊業者から大々的に出てしまうと恐ろしいと考えております。

長尾オブザーバ:#

ニ点ほどありまして、今先生がご指摘のデータ化されてしまうとという問題があって、まだそうした被害の報告は私どもはまだ受けておりませんけれども、自分でやろうと思えばできるなということがございまして、デジタルになっているデータを自分でオンデマンドでペーパーの本にすることが今、とても可能なのですね。

おっしゃったような、非常精巧なコピー機、複製機能のあるものが、実は私の個人の家にございますので、やろうと思えばすぐできちゃうという恐ろしさがあります。それはまだ今のところ実害の報告がないので、あるかもしれないという可能性のようなのですが。

現におきていることとしては、先ほど申しましたある業者さんの所には壁一面にもう断裁された本が並んでいます。それをそこにある、お店の人はやってくれませんけれども、自炊のスキャナの機械を使ってデジタル化を自分ですることはそのお店ではどう扱っているかと言うと、まずお客さまが「自分で購入していない本を複製することは合法ですか」とお店の人に聞きます。するとお店の方は「図書館で借りた本をコンビニでコピーすることが合法であるように、あなたがお買いにならなかった本でも、自分が私的使用の為にコピーすることおよびスキャンすることは合法ですよ」と言って 100 円をもらって「使っていいよ」と仰るのですね。

その本は例えば コミックでしたら 500 円とか、そんなことはないと思いますけれども、私どもの 1600 円程度の本を、本当ならば本屋さんで買ってほしい。ところが 100 円でできてしまっている訳です。完全にこれはもう権利を侵害されております。これはまだお店の数が少ないので、コミックの先生以外はまだそれほど被害は出ておられませんけれども、TSUTAYA さんのような、あるいはコンビニエンスストアでそれが始まった時には、権利侵害どころの侵害ではなくて、うちの理事などは生活権の問題だと申しております。

そういうことが始まらないように、始まる前にどうにかしていただきたいとご意見を述べさせていただいております。

中山委員:#

なにか自炊の問題よりも、もっと違う、デジタル化に伴う様々な問題ではないかという気がするのですけれども、自炊だけを敵扱いしても中々そういう問題というのは解決しないのではないかと思うのですけれども。

長尾オブザーバ:#

それはその通りなのですけれども、自炊というのが物凄く、言葉だけが流行っているのかもしれませんけれども、テレビなどでもどんどん紹介されまして、自虐的な割と若目のオーサー・著作者の方が、じゃあ文藝家協会の会議室に自炊機を持ってきて、著者と一緒に自炊しようサロンを作ったらどうかなどと言う方もいるぐらいになってしまっておりまして、デジタル化そのものがというところまで話を広げてしまいますと、これは皆様に検討していただければ大変助かりますが、もぐら叩きのようにはなりますけれども、目立ったところからどうにかならないかなと、会の方から代弁してまいれと申し付かっております。

平井オブザーバ:#

中山先生の仰るとおりです。従って、これほどペーパー・トゥ・ペーパーやペーパー・トゥ・デジタルの複製機器が一般的で普遍的になってくるということは、やはり録音録画補償金のように何らかの手当ても今後考えていかなければいけないかなと感じております。

土肥主査:#

他にいかがでしょうか。はいそれでは松田委員。

松田委員:#

ちょっと自炊から離れさせていただきます。3号なのですけれども、レコード協会さんの資料の 2 ページを見ますと、刑事告訴ができるような刑事罰の導入をと書かれているページです。

多分実態はこういうことなのでしょうということで、10代20代のグループの主な発言ということで「皆がやっていることだから、自分もやっても大丈夫、お金を払うつもりはないよ」と。こういう実態を刑事罰を導入したら告訴するのですか。

畑オブザーバ:#

ダウンロード行為を行っている人間をどうやって特定するかというのは色々難しい問題があるかと思います。ただダウンロードが、違法なダウンロードが刑事罰の対象となってアップロードを行っている人と共に罰則の適用範囲が広がることは摘発の強化ということに繋がると考えております。

土肥主査:#

はい。山本委員どうぞ。

山本(た)委員:#

日本レコード協会に一点お伺いしたい点があります。簡単な質問です。音楽レコードの違法配信がものすごい量だということだということはよく判っているのですが、また実際に CD を違法にコンテンツ配信をしようとすれば非常に簡単で、パソコンを使えばよいというのはよく判るのですが、それだけに、例えば DVD であれば CSS という技術的手段がとられましたし、またそれが回避されるような状態になると、また Blu-Ray では AACS という新しい技術的手段が取られていますが、CD の場合はほとんど無防備に、CGMS だってまったく無駄ですから、であるのに対して、違法配信を撲滅したいのであれば、なぜコンテンツ保護手段を取られないのか、あるいはその動きはいまなさっているのか、その点だけお願いします。

畑オブザーバ:#

モバイル、パソコンなどで音楽を配信する環境については、それぞれ配信技術がもっと高く、それぞれコンテンツ保護あるいは DRM ということで保護を図った上で配信されていますが、CD は 1982 年から現在までに発売されている CD に関しては先ほど MiAU さんから RootKit とか CCCD 等ご紹介いただきましたが、やはり一番難しいのは なんらプロテクションを解除、デコードする機能のない CD をベースにしているという中で、何らかの CD をプロテクション化する手段がなかなか見つからないという部分が一番大きな根っこになっていると認識しております。

そういった意味では、そういった技術は今、現時点では我々、世の中にあるという知識を持ち合わせておらないという状況です。

土肥主査:#

他にございますか。時間も、おあずかりしていた時間も予定していた時間が来ておりますが、如何でしょうか。よろしゅうございますか。

本日をお話を発表いただきました皆様方には感謝しております。ありがとうございました。

それでは本日はこのぐらいにしたいと存じます。前回と今回の出席者の皆さんからヒアリングでいただいたご意見については、参考にさせていただき、今後の検討委員会において議論をしてまいりたいと思います。

それでは、次回の予定につきまして事務局からご案内をお願いします。

壹貫田課長補佐:#

本日は皆様ありがとうございました。次回の小委員会の日程は決まり次第またご連絡させていただきたいと思います。以上です。

土肥主査:#

それでは第三回の法制問題小委員会を終わらせていただきます。ありがとうございました。