文化庁 文化審議会 著作権分科会
著作物等の適切な保護と利用・流通に関する小委員会 第1回
(2014年7月23日) [非公式議事録 - 予定地]


ここは、一傍聴者が傍聴の際に残していたメモ・記憶等を元にまとめた非公式議事録を掲載しているページです。正式な議事録は1〜2ヶ月後に文化庁サイト [URI] に上がるはずですので、そちらを参照してください。

政府主催の公開会議においての発言が無編集で伝わると困ると主張される方からの直接の連絡があれば、その旨記載の上で本ページの内容を削除します。その際連絡は kazhiro@marumo.ne.jp までお願いします。

当日配布された資料は以下の通りです。


[冒頭 15分間、主査選任部分は議事非公開のため傍聴できず]

土肥 一史 主査 (日本大学):#

それでは、本日は著作物等の適切な保護と利用・流通に関する小委員会の第1回目となりますので、作花 文化庁 長官官房 審議官 から一言ご挨拶をいただければと思っております。

作花 文雄 審議官 (文化庁 長官官房):#

皆様おはようございます。文化庁 審議官 の 作花 でございます。本日は皆様大変お忙しい中、委員のご指名をご快諾いただいた後、このように暑い中出席をいただきまして誠にありがとうございます。

最初ということではありますけれども、先ほど主査の方からございましたようにこの小委員会は昨年度は法制・基本問題小委員会の元に設けられましたワーキングチームという形で議論してきた訳でございます。

これが本年度はワーキングチームから小委員会ということで組織の位置づけが変わった訳でございますが、ミッションは同様でございます。

一つはクラウドサービスを円滑に実施する上での法制の在り方をいかに考えて行くか。他方では、こういったクラウドサービスをはじめとした新しい技術により著作物が利用される環境の中で、権利者の方々の適正な利益をいかに確保するか。

そういった大きく二つのテーマを同時に議論するという、そういうミッションを負っている訳でございます。

昨年度は法制・基本問題小委員会で数回議論した後に、ワーキングチームでは二回議論した訳でございますが、その審議は本年度こそまさに山場であると、本年度こそ本格的に詰めた議論をしなければいけない時期に来ていると考えております。

昨年は劇的猛暑の中で出版関連小委に属されている先生方には大変なご負担をかけた訳でございますが、今年はこの小委員会にお越しいただきました諸先生方にご負担をかけることになろうかと思いますけれども、そこのところは是非ご協力いただきたいと思います。

昨年度から本年度にかけてですね、クラウドサービスに関連しまして新しい利用形態というものが出てきているし、わが国内においても具体的な企業名はともかくとして、実際にライセンシング体制を構築したサービスというものが今実施されている。こういう状況の変化があります。

また法制面におきましても、これは世界的に見てこの問題について統一した何かのルールを作るという動きは現在のところございません。WIPO の議会におきましてもこれについて何らかの取り決めを作るということは今、具体的には動いておりません。

ということは各国において各国の実情に応じた法制の在り方というものを作っていくことが不可欠であると思います。

要は権利者の方々、そしてサービス事業者の方々、そしてエンドユーザーの方々、それぞれの利益というものをどうバランスを取るかということが要になる訳でございますので、その点に留意しながら建設的な議論というものをしていく必要があろうかと思います。

この数か月の間においても、国内はともかくとして、外国では関連する裁判例も新たに出たり、また新しい法制的な動向というもの生まれております。

そういった状況も見つつ、日本として、我が国として最もバランスの取れたルールメイキングというものを是非、先生方の議論の中で生み出していただきたいと、このように考えております。

先ほども申した通り、非常に今年も夏が暑いかなという感じではございますけれども、なにせ世界的に見ても最先端の議論をしていくという大きなミッションがございますので、そこの所をご理解いただきまして、ご協力いただけますようお願い申し上げましてご挨拶とさせていただきます。

どうぞ、よろしくお願い申し上げます。

土肥 一史 主査 (日本大学):#

どうもありがとうございました。それでは次に二つ目の議事であります、今期の本小委員会の審議予定について事務局から説明をお願いします。また併せて昨年度のワーキングチームにおける検討についてもここで簡単に紹介をいただければと思っております。

よろしくお願いいたします。

菊地 史晃 課長補佐 (文化庁 著作権課):#

はい、それでは資料2と資料3、それから参考資料4と参考資料5を用いまして簡単にご説明させていただきます。

まず資料2をご覧いただければと思います。資料2は 7月 18日、先週開催されました著作権分科会において決定をされました、小委員会の設置についてという資料でございます。

7月 18日の著作権分科会におきましては、文化審議会 著作権分科会 運営規則に第3条 第1項の規定に基づきまして、「法制・基本問題小委員会」それから本小委員会と「国際小委員会」を著作権分科会に設置する旨が決定されております。

本小委員会における審議事項につきましては「2.」の「(2)」にありますように「クラウドサービス等と著作権およびクリエーターへの適切な対価還元等に関すること」を審議することが求められております。

それから資料3をご覧ください。資料3は本小委員会に関係する「知的財産推進計画2014」等で示されております今後の検討課題についての資料です。関係する箇所の抜粋となっておりますので、簡単に紹介をさせていただきます。

まず本年 7月に知的財産戦略本部において決定されました「知的財産推進計画2014」においては「デジタル・ネットワーク社会に対応した環境整備」の中で、「新しい産業の創出環境の形成に向けた制度等の構築・整備」として、まず一つ目の「・」ですが「クラウドサービス等の新たな産業の創出や拡大を促進するため、著作権の権利制限規定の見直しや円滑なライセンシング体制の構築等の制度の在り方について、文化審議会の議論を加速化させ、今年度のできる限り早期に結論を得て、必要な措置を講じる」こと、それからクラウドの検討と併せまして「クリエーターへ適切に対価が還元され、コンテンツの再生産につながるよう、私的録音録画制度の見直しや当該制度に代わる新たな仕組みの導入について検討を進める」ことが求められております。

また本年6月に閣議決定されました「規制改革実施計画」では「起業・新規ビジネスの創出拡大」に関してクラウドメディアサービスが取り上げられており、その内容としてはは先ほど申し上げました「知的財産推進計画2014」とほぼ同様でございますが、「著作権分科会で検討を行い、関係者間の合意が得られることを前提に結論を得る」ということ、それから実施時期について「今年度の上期」に結論を得ることが求められております。

この点に関しまして、18日に行われました著作権分科会における意見交換の中では、委員からこれが「かなり厳しいスケジュールが示されている」ということ、また「『関係者間の合意が得られることを前提に』とされていることから、どのような枠組みで関係者の合意が可能なのか詰めておく必要があり、この課題について著作権分科会の中でも優先的に取扱う必要がある」という意見もいただいております。

今後こうしたスケジュール感等も視野に入れつつ、ご審議をお願いしたく考えております。

なおこの資料3の2ページでは、昨年知的財産戦略本部で取りまとめられました「知的財産政策ビジョン」を記載しておりますが、説明は省略させていただきます。

次に参考資料4と参考資料5に基づきまして昨年度のワーキングチームにおける検討状況について簡単にご説明をいたします。既に各委員ご承知の内容と存じますが、小委員会の第1回目ですので改めて簡単に説明をさせていただければと思います。

まず参考資料4は昨年度の「法制・基本問題小委員会」の下に置かれたワーキングチームの検討結果報告となります。この資料には記載がありませんが、このワーキングチームでの検討に先立ちまして法制・基本問題小委員会においても数回の議論が行われておりまして、その法制・基本問題小委員会ではクラウドサービス等と著作権にかかる課題について関係者よりヒアリングを実施し、それを踏まえてこの議論の対象となるサービスや著作権法上の法的論点について議論をしておりました。

そうした議論の中でより専門的かつ集中的な検討を行うためワーキングチームが設置をされ、昨年の 12月と本年の 2月に検討が行われたというところでございます。

具体的な検討経過といたしましては、「2.」の「(1)」にございますように第1回ではクラウドサービスの実態や著作権法との関係について委員からご発表を行うと共に、米国における裁判例の動向についてご報告をいただき、質疑応答や検討の結果まずは私的使用目的と関連するロッカー型クラウドサービスについて検討を行うこととされております。

また「②」ではクリエーターへの適切な対価還元に関し、Culture First 推進団体から提言についてのご発表をいただき、質疑応答を行っております。

「(2)」の第2回では、ロッカー型クラウドサービスを分類し、その上で今子委員、丸橋委員、榊原委員より事業者としての視点を踏まえ、クラウドサービスの分類についてどのように取り扱うべきか意見をご発表いただき、質疑応答や検討を行ったところでございます。

それから2ページ目になりますが、「②」にありますように私的録音録画に関する実態調査について、株式会社野村総合研究所さまより、その当時の調査の進捗状況についてご発表いただき、質疑応答および検討を行ったところでございます。

本小委員会はこうしたこれまでの議論の流れを引き継ぐものだと考えてございまして、本日はロッカー型クラウドサービスの分類について、浅石委員、畑委員、椎名委員より権利者としての視点を踏まえどのように取り扱うべきか、意見をご発表いただくという流れになっております。

また私的録音録画に関する実態調査につきましても本年の3月に最終的な報告がなされておりますので、その結果について本日の後半の時間帯で野村総合研究所さまよりご発表いただくという流れになっております。

次に参考資料5をご覧ください。これはワーキングチームでの議論の際に配布をさせていただきました、ロッカー型クラウドサービスの分類についての資料となります。簡単にご紹介いたします。

まず図の左端に縦書きで記載しております「視点1」でございますが、クラウド上のサーバーに保存されるコンテンツにアクセスできるものは誰かという視点から、一人の利用者のみがアクセスできる「プライベート型」とそうではない「共有型」に分けております。

また図の上に横書きで記載しております「視点2」でございますが、これはロッカーに保存されるコンテンツを誰が準備するのか、誰が用意をするのかという視点から、クラウド事業者が用意する「配信型」とユーザーがアップロードを行う「ユーザーアップロード型」に分けております。

これらの「視点1」と「視点2」の 2×2 の組み合わせで全部で4つの分類を行っておりまして、これまでの議論では「タイプ1」「タイプ3」の配信型は既に契約によるサービスが展開をされており、また右下の「タイプ4」のようなサービスは権利者の許諾なく行えるようにしてほしいという主張する事業者は居ないのではないかと考えられるなどの意見が示されていたところでございます。

その上で「タイプ2」を議論の対象とするべきだという意見もあったところですが、この「タイプ2」については──2枚目をお開きいただいて──この「タイプ2」についてさらに細かな分類が考えられるということで、左から「汎用ロッカー型」「コンテンツロッカー型」「変換機能付加型」「スキャン&マッチ型」等と分類させていただいております。

詳細な説明は省略いたしますが、これらの、このようなサービスについて著作権等の適切な権利の保護を図りつつ新たな産業の創出や拡大を促進させるため、どのような議論が必要になるのかということをワーキングチームでは議論をしていただいておったところでございます。引き続き本小委員会でのご審議をお願いしたいと考えてございます。

それから3ページには「クラウドサービスと著作権に関する法的論点」の例としまして、利用行為主体の問題、それから「2.」と「3.」については30条のそれぞれの規定の該当性の問題、それから「4.」では「公衆」についての該当性の問題。それから「5.」は権利者への適切な対価の還元の問題などについて記載をさせていただいております。

長くなりましたけれども、本小委員会での審議の予定とそれに関連するこれまでの検討状況についての説明は以上でございます。

土肥 一史 主査 (日本大学):#

ありがとうございました。それでは三つめの議事である「クラウドサービス等と著作権」に入りたいと思います。本件につきましてはただいま事務局から説明があった通り、昨年度設置されておりました「著作物等の適切な保護と利用・流通に関するワーキングチーム」における議論を引き継ぎ、まずは私的使用目的の複製が関係する「ロッカー型クラウドサービス」について検討する。このようにしたいと思います。

前回のワーキングチームでは事業者側からの委員からご意見を頂戴したところでございますので、今回は権利者側の委員からご意見を頂戴できればと思っております。なお、委員のご都合等の関係で今回は音楽関係の権利者側の委員による意見発表とし、映像関係は次回とさせていただきたいと考えております。

それでは参考資料5、「ロッカー型クラウドサービス」の分類に対する権利者側のご意見ということで、浅石委員、畑委員、椎名委員この三方から順にご意見を頂戴したいと思います。その上で議論ができればとこのように期待しております。

委員のご発表の時間は一人10分程度でお願いできればと思います。それでは初めに一般社団法人 日本音楽著作権協会より浅石委員よろしくお願いいたします。

浅石 道夫 委員 (JASRAC):#

はい。機会を与えていただきましてありがとうございます。JASRAC の浅石でございます。お手元の資料──資料4になります──に基づきましてロッカー型のクラウドサービスに対する JASRAC の考え方をご説明させていただきます。

右の肩上に薄くページを振っております、下の 2 ページでございます。この図はロッカー型クラウドサービスの現状を示したものでございます。現状のロッカー型クラウドサービスとは権利者から見ますと「新たな創作物を生まないフリーライド市場」と言うことができると思います。

このサービスは事業者と利用者の有償または無償の契約が締結されて利用されている訳でございますが、その中で事業者は利用者にサービスを利用させて自社の利潤の最大化を図ります。利用者はサービスを利用して様々な効用の最大化を図ろうとする訳でございます。

ところがこのサービスの中で複製されたり送信されたりするコンテンツについて、外部から見えないため、権利者は利用実態を把握することができません。

後ほどご説明するようにこのサービスの中で音楽が利用されている訳ですが、権利者はこの市場から完全に排除されている訳でございます。ではなぜこの市場が存在しているかといえば、それはコンサートあるいは放送、CD、ビデオ等他の分野からの対価が権利者に還元されているからでございます。

まさにフリーライド、タダ乗り市場でございます。仮に音楽の市場がロッカー型クラウドサービスしかなかったら音楽は枯渇をするだけです。

ページをめくっていただきまして、3ページでございます。クラウドの事業者の方々から「ユーザーの利便性に資する」場合や「新産業の創出・産業の成長や技術進歩」に貢献する場合は「社会的に有用」であるのだから「権利制限をして無許諾・無償でコンテンツを使えるようにするべきである」との主張がございます。

しかしこの社会の中に権利者が含まれていない、すなわち排除されているのでございます。

続いて下の4ページでございます。同じように事業者の方々はロッカー型クラウドサービスの中で共有などによって著作権侵害が発生した場合は権利者からの削除要請や通報を受けて事後的に対応をすれば良いとの主張をされております。

しかしこのサービスはそもそも外部から見えないサービスなのです。従って著作権侵害を発見することも事業者に通報することも実質的に不可能です。

事業者の方々の主張やご意見というものは不可能を前提としたものであり、かつその責任は利用者にあるとすることでございます。到底認めることはできません。

続いて次のページ、5ページでございます。クラウド事業者の方々はロッカー型クラウドサービスの中で何がどのように使われているのか自分たちも判らないのだという主張をされるていることがございます。

サービスの全体を構築し、管理・運営している方々は利用者の利用実態を見ようとすれば見える立場におります。

事業者の方々を前提にして申し上げるのもおかしな話ですが、利用者が保存したファイルについては拡張子やタグ情報等でコンテンツを識別することが可能であると聞いております。

もちろん大量のファイルとなれば簡単ではないかと思いますが、技術的には不可能ではない、やろうとする意志があるかどうかという問題だと思います。

続いて下の 6ページでございます。この場ではロッカー型という言葉を自明の事として使ってきましたが、よくよく考えると大変危険な表現で、場合によってはコンテンツの利用実態を正確に捉えることができなくなるのではないかと懸念しております。

図ではリアルな世界での普通のロッカーをお示ししました。当然のことでございますけれども、預けたものは取り出した時元のままです。個数が増えたりすることは手品でもない限り絶対にありません。

次のページでございます。7ページでございます。ところがこのロッカー型クラウドサービスについては原本の CD を手元に残して、パソコン上でリッピングし、そのコピーした音楽ファイルをクラウド事業者のデータセンターにアップロードする訳です。

つまりオリジナルのデッドコピーが一つ二つと簡単な作業であっという間に増えていく訳です。前のページで確認したリアルの世界のロッカーとは全く性質が異なります。

私は一人秘かにこのサービスを不思議なポケット型ロッカーサービスと言っております。ポケットのビスケットが叩いてみる度ビスケットが増えるという不思議なサービスな訳です。

続いて 8ページでございます。中間まとめとでも申しましょうか、ロッカー型クラウドサービスにつきまして、5つの理由からクラウド事業者の方々が権利者との間で利用許諾契約を締結するべきであると考えております。

第一の理由は、クラウド事業者は様々な機能を利用者の方々に提供しているということです。第二は、ロッカー型クラウドサービスというものは利用者の方が提供するコンテンツを利用して営利目的の事業を行っているということでございます。

第三に、機能を提供している事業者の方々と JASRAC の間には既に許諾実績があるということでございます。第四は汎用のロッカーサービスといわれているサービスに、顕在的にも潜在的にも音楽著作物が利用されている事実でございます。これは後ほど詳しく紹介いたします。

最後に機能を提供してビジネスを行う事業者の方々は利用者の利便性や安全性に配慮して利用環境を整備された方がよろしいのではないか、その方がビジネス自体もうまく行くのではないかという側面です。

以下、詳しく説明をしていきます。ページをめくっていただきまして 9ページでございます。

まず、クラウド事業者は多様な機能の提供者であるということでございます。提供されましたタイプ2の図を左側に小さく記してございますが、先ほど「ロッカー」という表現を大変危険な表現であると申しましたが、絵についても同じ危険性が含まれてございます。

これまでのタイプ2の図では利用者が大きく事業者が小さく描かれていますが、実態は右の図のように多数の利用者が巨大な一つの事業者にぶら下がっている訳でございます。しかもコンテンツの提供と利用以外、全て事業者が行っております。

左側、ちいそうございますが「①〜⑥」までそのことを簡単にまとめてございます。即ち、事業者の方々は「機能を提供」し「利用許諾を作成」し「利用者を誘引」し「共有・公開の機能までも付加」するだけではなく、この事業を「広告・宣伝・営業等に使う」とともに、「利用料金も受け」ているということでございます。

続いて 10ページ、下の図でございます。この図は先ほどの図をさらにシステム上の観点からさらに詳しく記載したものでございます。JASRAC のシステムの担当者にロッカー型サービスを図にしてほしいと要求したところ出てきた図でございます。

システムの詳しいところは私自身も中々判らないところがございますが、このサービスは事業者の方々がシステム全体を構築し、管理・運営し、当然のことですがビジネスとして利益の追及を行います。

一方利用者の方々は容量という制約から解放され、バックアップ・保守・更新を不要とすることなどにより、複製の極大化を図ることができるというサービスでございます。

ページをめくっていただきまして、11ページでございます。この写真はクラウドサービスをコントロールする、いわゆるデータセンターの一部を写したものでございます。

人間の身長以上に大きなサーバー、その他の機械が所狭しと大量に設置されております。このような巨大なデータセンターを設置して、送信・受信・複製・共有・公開、その他の様々な機能を利用者に提供するサービスがロッカー型クラウドサービスです。

このサービスは利用者の限りある領域を限りなく拡大するサービスなのでございます。

自分のパソコンやスマフォの小さな画面で見ていると、あたかもプライベートな空間のように見えてしまいますが、その実態は巨大なデータセンターを設置し様々な機能を提供する事業者の営利目的事業なのです。

利用者の提供するコンテンツも確かに重要でございますが、それ以前にクラウド事業者が提供するインフラや機能がなければサービス自体は成り立ちません。サービス全体を客観的に見ることが必要だと思います。

下の12ページでございます。自らの保有財産は自由に利用できるというモノとデータをごちゃまぜにしたご意見もございますけれども、この図はこれまでもユーザーが提供するコンテンツを営利目的に利用している事業がありましたねという図でございます。

古くは昭和の後半に誕生した貸しレコードに便乗したダビングサービス、カラオケボックスで自分が歌った音楽をメディアに録音して持ち帰ることができるサービス、裁判は継続してございますが自炊代行サービス、そしてロッカー型クラウドサービス。これらに共通することはいずれもコンテンツは利用者が提供するということです。

そしてクラウドサービスでは、記載の動画投稿共有サイトやブログ等では事業者の方々がライセンスを得て事業を行っております。このような利用者提供コンテンツのビジネスにおける権利処理の実態もまた無視することができない事実としてお示ししたいと思います。

めくっていただきまして、13ページです。コンテンツの利用に絡む様々な機能を提供する事業者の方々と JASRAC との利用許諾の実績の一部をお示しするものです。

一部の事業者の方々からは許諾は不要とされる動画投稿共有サイトのサービスであっても、権利処理をなされています。利用者が歌詞等のコンテンツを書き込むブログについても同様でございます。

続いて下の 14ページでございます。これは汎用型ロッカーサービスに保存された音楽ファイルだけを抽出して、ストリームで聞くことのできるアプリケーションソフトの一部でございます。

スマートフォンで音楽を楽しむ光景は、電車などでもしばしば見かけますが、音楽ファイルを保存できる容量が限られています。

また1年単位で新しい乗り換えることも少なくないようです。このアプリケーションソフトはそのような問題をできる限り解消し、保存容量やスマフォの機種を気にせずにストリームで楽しむことを可能にしております。

めくっていただきまして、15ページでございます。先ほどのアプリケーションソフトの内、CloudBeats の利用方法を図示したものです。5つのクラウドサービスに対応し、SkyDrive──現在は OneDrive と名称変更していますが──そこにアクセスすると音楽ファイルだけを選択し曲名やアーティスト名が表示され、クリックするとストリームで再生されるという仕組みです。このアプリは500円ですが、無料のアプリもあるようです。

ちなみに表示されている楽曲はすべて JASRAC の管理楽曲でございます。

下の 16ページでございます。これまでのまとめでございますが、ロッカー型クラウドサービスというのはリアルの世界のロッカーとは違って、様々なインフラを整備して様々な機能を利用者に提供する営利目的事業であり、しかもそこでの音楽利用の可能性は先ほどのアプリケーションソフトが示すように拡大する傾向にあります。

他方、ロッカー型クラウドサービスは外部からその利用実態を把握することが不可能なサービスです。このサービスに関与する事業者や利用者の方々が著作権侵害の責任を問われる可能性は完全に払拭はできません。

このように考えると、お客様である利用者の方々のリスクを一括して解決することができるのはクラウド事業者の方々以外に存在しない訳です。

クラウド事業者の方々が包括的な利用許諾契約を締結することは、自社はもちろんのこと、お客様が安心して利用できる環境整備につながると考える次第でございます。

めくっていただきまして、最後の17ページでございます。事業者の方々は社会的に有用であるから権利制限をしてコンテンツを無償許諾して利用させるべきであるという、なんとも急進的なご意見もございましたが、すべての方々がそのようなお考えになっている訳ではないということをご紹介することでございます。

そのままご一読いただければ、日米を代表する企業や業界団体の方々がクラウドサービスにおけるコンテンツの利用をすべて無許諾・無償で使わせろと仰っている訳ではないこと、特にここではプライベートコンテンツロッカーサービスとして保護と利用のバランスが不可欠であると考えていらっしゃいます。

本委員会の委員のお名前もあるようです。さすがに日本を代表する企業の方々のお考えかと感慨深く拝読したものでございます。

少々長くなりましたが、JASRAC からのご説明は以上の通りでございます。ご清聴ありがとうございました。

土肥 一史 主査 (日本大学):#

ありがとうございました。それでは次に 一般社団法人 日本レコード協会より、畑委員お願いいたします。

畑 陽一郎 委員 (レコード協会):#

はい。日本レコード協会の畑でございます。本日お手元の資料として資料5をご用意させていただきました。当協会は先ほど文化庁さまからもご紹介がありました通り昨年度の取りまとめ、検討過程の中で分類されたタイプ1〜4に従って意見を述べたいと考えております。

まず 1ページ目、総論というところで我々レコード協会の基本的な考えというところをまとめさせていただいております。

我々レコード協会、そして会員レコード会社といたしましてはロッカー型クラウドサービスを利用者が高度な利便性を享受しうるサービストして今後の発展を我々も期待しておるところでございますし、サービス事業者と権利者が協力して推進するべきビジネスであるという考えを持っております。

ステークホルダーとしましてはクラウドサービス事業者、利用者、それとクリエーター・権利者という三者がこれには関与する訳ですけれども、この三者が WIN-WIN となるということがこのビジネスの成功においては不可欠な仕組みなのではないかという考えを持っております。

先ほど JASRAC さまのご説明にもございましたけれども、このロッカー型クラウドサービスにおきまして、特に音楽分野におきましては既に多くのサービスが契約で処理をされて実現をされているという実態がございます。

サービス事業者の方々からは法制度、特に権利制限に関する規定の見直し等によりましてコンテンツを使いやすくしてほしいと、ひいては無許諾・無償の利用がそれによって拡大するということがあるとすれば、先ほど申し上げました通り既に多くのサービスが契約で実現をしておりますので権利者のビジネスを著しく阻害する可能性があるということは明らかではないかと考えておるところでございます。

従いまして、後ほどまた述べますけれどもサービス事業者と権利者が良好な契約関係を構築する、これがロッカー型クラウドサービスの成功のキーではないかと考えております。それによりましてユーザーがこのクラウドサービスを適法かつ安心に利用できる環境を構築できる。それによりましてサービス事業者も安心してビジネスできるという環境が構築できるのではないかというふうに考えております。

次のページ以降、少しそれぞれの部分について述べさせていただきます。

まず2ページ目は先ほどもご紹介がありました通り、四つの分類でございます。視点1がプライベート型か他の利用者と共有するタイプなのかという分類、視点2がコンテンツを事業者が用意する配信型なのかユーザーがアップロードするユーザーアップロード型なのかという四つの分類でございます。

そのうち、タイプ2については汎用ロッカー型からスキャン&マッチ型までの小分類ということで昨年整理されたところでございます。

ページ3でございますけれども、まずタイプ1・タイプ3の配信型につきましては、ここにつきましてはあまりもう議論はないかと思いますけれども、既に多くのサービスがサービス事業者と権利者の契約で実現できており、ここについてはますます今後も拡大するサービスとして我々レコード協会、そして会員レコード会社も積極的に取り組みを行っておるところでございます。

ここについては特に制度上の兼ね合いもなく、特にこの委員会での検討の必要性はないものという認識をしております。

一番、おそらく今後の検討の中心になってくるであろう部分が次のページのタイプ2であろうかと思いますけれども、ここのタイプ2の現状といたしましては、小分類の「B コンテンツロッカー型」および「D スキャン&マッチ型」については既にサービス事業者と権利者との契約で実現された事例が出てきております。

一番記憶に新しいところでは今年の 5月 2日でございますけれども、関係権利者との契約が整いまして、Apple社が iTunes Match、いわゆるスキャン&マッチ型のサービスを日本で導入をいたしております。

これにつきましては次のページで、レコード協会の方で作成した図でございますけれども、スキャン&マッチの概要を少し簡単に説明をさせていただいております。

一番大きい枠組みが、iCloud という Apple社 のクラウドサービスの総称としての領域がございますけれども、個人のデバイス、これはパソコンであったりタブレットであったりそういうデバイスに iTunes という Apple社 のソフトで管理をされるライブラリがあるというのがまず出発点でございます。

個人のデバイスの iTunes で保有している楽曲をまさにスキャン、どういう楽曲があるかということをスキャンをして配信事業者、サービス事業者がコンテンツを用意した iTunes Store こちらのデータベースと照合──マッチ──をすることにより、二つのコンテンツの分類──下側──に分かれます。

まず、元々パソコン・タブレット等で持っている・保有している楽曲が元々 iTunes で購入した楽曲の場合、これについては以前から導入されているサービスでございますけれども、その購入した楽曲はクラウド上のサーバーに置いて、個人が保有するデバイス、10台まででダウンロード又はストリーミング再生ができるという利便性が高い利用ができるという形になっています。

5月に新たに導入されたのが右側の、赤の点線の部分でしてここがいわゆる iTunes Match と呼ばれるものでございます。これは簡単に言えばユーザーが iTunes で購入していない楽曲でも、ユーザーの端末・デバイスに音楽ファイルがあれば、それをクラウドサーバーと連携して利用ができるというものでございます。

非購入楽曲、これは元は CD からリッピングした物等、色々あるかと思いますけれども、最大2万5000曲の範囲につきまして自らのデバイス上にあるものをクラウド上のサーバーにアップロードして、それを端末でもダウンロードまたはストリーミングで利用できるというものでございます。

ただし、そのユーザーが自分のデバイスで保有している楽曲のうち、iTunes で販売している楽曲と同一のものがある場合、マッチする場合には iTunes が、サービス事業者が用意したコンテンツをファイルを利用可能にするということで、サービス事業者が用意したコンテンツを利用できるという形になります。

一番右側がこのところですけれども、iTunes で販売しない楽曲でユーザーが保有するものがある場合にはそれをファイルごとクラウドサーバーにアップロードして、それを他のデバイスでもダウンロード・ストリーミングで再生できるようになると。ここにおきましては一曲 200MB までという容量制限があるのでございますけれども、そのようなサービスが 5月に導入されております。

この iTunes Match はいわゆる音楽を1曲ずつ購入する課金とは別のサービスになっておりまして、別途の課金によってこのサービスがユーザーが利用できるようになっております。

料金は年額3980円と聞いておりまして、そのうち一定部分につきまして一定のルールにもとづいて権利者の方にコンテンツの対価としての分配を受けることができるという形でこれが契約として成立しているという事例でございます。

ちょっとまた元の4ページに戻りますけれども、そういった iTunes Match のようなものが契約で実現できていることを踏まえれば、このタイプ2の各類型、「C 変換機能付加型」「B コンテンツロッカー型」ひいては「A 汎用型」に至るまで契約で対応できない道理はないのではないかというふうに我々考えておるところでございます。

仮にユーザーの行為が私的な行為であったとしても、様々な検討するべき法制上の課題がある訳で、そのような課題につきましてもこの契約という処理を促進していけば今でも解決をし、サービスとしての実現性があるのではないかと考えておるところでございます。

契約の方法は、個人として使うものであればまずは個々の利用者が契約を結ぶということも理屈としてはある訳でございますけれども、中々これはやはり皆様もお判りの通りあまり現実的なところではないというふうに考えております。

やはりサービス事業者が複製等の場を提供し、運用・管理しておるということ。またサービス事業者がどういったコンテンツが利用されているのかという実態を把握しうるということであれば、やはりそのサービス事業者が権利者と契約をし、良好な契約関係を構築し、ビジネスとしての取り組みを促進するということがこのビジネスを早期に実現というところに導く解決策なのではないかと、それによって利用者も安心して適法に早期にこの先進的サービスを利用できる環境が整うのではないかと考えているところでございます。

従いまして、我々としましては法制度の見直しということではなく契約を促進していくということで対応するべきテーマではないかと考えております。

最後、共有型でございますがここにつきましては従前の検討の場でも述べさせていただきました通り、契約が無い場合にはまさに無許諾アップロードの典型類型ということで我々レコード協会も日々違法対策、特に削除要請等の対象としている類型でございます。

ただし一部のサービスにつきましては関係権利者の理解により、契約により導入されておるという事例もございます。これにつきましては侵害実態を外から見ることができれば我々権利者は違法対策としての対策をしております。

また先ほど JASRAC さんのお話にもありました通り、共有者の範囲に制限がある場合には中々外からどのような実態があるのかというのは把握できない場合もあると。その場合には、削除要請は十分に機能しないということも想定されます。

そのような実態を踏まえるとここにつきましては法制度、権利制限規定の見直しという解決策は不適切なのではないかと。やはり契約によってしか解決する道はないのではないかと考えておるところでございます。

当協会の考えは以上でございます。

土肥 一史 主査 (日本大学):#

ありがとうございました。それでは最後に公益社団法人 日本芸能実演家団体協議会より椎名委員お願いいたします。

椎名 和夫 委員 (芸団協):#

はい。お手元の資料6でご説明をしたいと思います。JASRAC さん、レコード協会さんと繰り返しになってしまう部分もあろうかと思いますが、まず、私的録音録画補償金制度が制定された当時、想定されていた総量を遙かに超えて、夥しい数の複製物がユーザーの手元に蔵置され、またそれらがネットワークを介して縦横無尽に駆け回る状況が現実化していると考えています。

夥しいという言葉をあえて使いましたのは、後ほどご紹介いただけると思いますが、野村総研さんの行われた実態調査の分析等を進めることによってその辺が出てくるのではないかと思っています。

そういう状況、いわゆる技術革新によるユーザーの利便性向上に否定的なクリエーターというのは存在していないと思いますが、むしろこうした状況下にあるアンバランスについて冷静に是正していくことが必要だと考えています。

このアンバランスとはなにかということなのですが、やはりクリエーター・権利者・それから複製手段の提供者、それからユーザーさん、この三者間のアンバランスということを挙げています。

複製手段の提供者である、例えば機器メーカとかこういうクラウドサービス事業者は一定の割合でコンテンツの訴求力から発するユーザーニーズに応えるという部分に乗っかって、それに合致する製品やサービスを提供して利益を得ている訳ですね。

ユーザーはもちろん複製とかいう行為から利益を享受する一方でまたその機器やサービスを有償で購入するという点で一定の経済的負担を伴う訳ですけれども、メーカーやサービス条業者さんは何のリスクも負担しないままただ利益を享受し続けている訳であります。

クリエーターがコントロールできない流通が増大し続けている現況下にあっては、それが例えば権利制限の補償金であれ許諾に伴う使用料であれ、コンテンツの訴求力から生じる果実を享受するメーカー・事業者等がクリエーターに対する対価の還元について一定の負担をしていく仕組みを確立することこそが重要なのではないかと思っています。

また一方で違う側面から見ますと、ユーザーさんに対して法的なリスク等を伴わない安全・安心な機器やサービスを提供することがメーカーさんや事業者さん等の重大な義務なのではないかと思っています。

そういうような立場から見ますと、応分の負担ということを伴わないで、こういうクラウドサービスが無償かもしくはそれに近い形でユーザーに提供されることがあるというのは、このアンバランスさを示す象徴的な事例なのではないかと思っています。

おめくりいただきまして、これは何度も何度も出している図で恐縮なのですが、基本的にこういう音楽を購入したユーザーさんが様々な私的複製の手段を通じて著作物を複製していく、ブランクメディアにコピーしたり、リッピングしたCD音楽ファイルをネットにアップするような部分、ロッカーサービス、汎用ストレージサービス、SNS、YouTube、違法音楽サイト、ファイル共有ソフト。

色々な部分があると思いますが、これを自分で使う形でやっている部分と、ブランクメディアでも友達に渡したり、あるいはネット上に上がったファイルを友達に視聴させるあるいはダウンロードさせるという部分が生じると。

この友達が、※印がついている訳ですけれどもこの左側に立ち戻ってまた親になれる訳ですね。それがネズミ算式に広がっていくという構造があると思います。

これは友達ならば良いのですけれども、今度、友達でもない人が例えば掲示板に載っちゃったりするというようなことで、友達じゃない人がそれを入手してまた※印になっていくというような複製のサイクルというのが存在している訳です。

そういった状況の音楽産業への影響というのは非常に深刻でありまして、ユーザーが行う私的複製に端を発した複製物が、権利者のコントロールの及ばない領域で多数流通していく実態が、クリエーターを含む音楽産業全体のビジネスモデルを破壊し、音楽制作の創造のサイクルが壊れつつある、これが現実にそうなって来ています。

どういうことが起きているかというと、新人アーティスト育成部門の弱体化、売れるものにしかフォーカスされませんから裾野が段々小さくなっていって、様々な多様性が失われていくということが起きています。

制作予算の緊縮化ですとか、制作時間の短縮化、これは音楽の質そのものにかかってきています。アーティスト・ミュージシャン・プロデューサ等優秀な人材の廃業・転職ということもあります。

レコーディングスタジオ、音楽制作プロダクション等の音楽関連企業の倒産・廃業等、これは1998年か2000年辺りには、レコーディングスタジオというのは都内に75軒ぐらいありました。今は25軒ぐらいに減ってしまっています。

そういった影響を見ますと、やはりクリエーターのコントロールが及ばない領域の流通をきちんと捕捉すること。それからそこからクリエーターへの対価の還元機能をきちんと確立することが必要なのではないかと思います。

おめくりいただきまして、今回は私的複製との関連からタイプ2をまず議論していきましょうということについて考え方を示しておりますけれども、公衆設置自動複製機器という項目がございます。

これは例えばレンタル屋さんなんかに今借りたCDをAドライブに入れて、Bドライブに今買ったCD-Rを入れるとその場で複製してくれるというようなものが、実際にあったのか無いのかは判りませんが、そういうようなものを使って複製するものは私的複製ではありませんよというふうに法律に書いてある。

またそれだけではなくてですね、そこで複製が行われているあるいは使用が行われているエリアが私的な領域なのかなんなのか、私的な領域をはみ出るものなのか、様々な議論があるところだと思っておりまして、タイプ2で行われる複製を私的複製とみなすことにはそもそも無理があるのではないかというふうに考えます。

事務局に例示していただいた論点ということが整理されておりますが、一応現時点で考え方をまとめてみました。

まず利用行為主体ということですが、これについてはですね、JASRACさん、レコード協会さん等のプレゼンにもありました通り、既に手段の提供者が許諾を受けて事業を展開しているという例がございますので、利用主体をサービスを提供する事業者とすることが現実的なのではないかというふうに思います。

むしろその処理の仕方をいかに円滑化するかということに注力していけば良いのではないかというふうに思います。

それから利用が、個人的にまたは家庭内その他これに準ずる限られた範囲内にあるのか、それに該当するのかということについては、これは利用行為主体を事業者とした場合に議論の必要がなくなってくると思います。

それから公衆設置自動複製機器該当性でございますが、これはもう少し詳しく言いますと、もし仮に、クラウドサービスと同等の機能を実現するために、ユーザー自らがサーバーなどの複製手段を自前で調達して行う場合──これ不可能じゃない訳ですね──この場合は私的複製という風に解される可能性があると思いますけれども、この場合はまさに30条において否定されている「公衆の使用に供することを目的として設置された自動複製機器」に該当すると思います。よって私的複製ではあり得ないと考えます。

それから送信について公衆であるかどうか、公衆送信であるかどうかという論点が提示されていますけれど、まずもってタイプ2というのはプライベート型で共有機能を持たないという整理がされているのですが、僕自身の経験から言ってタイプ2に厳密に分類されるサービスというのは少ないのではないかなと思います。

例えばユーザーがURLとかパスワードを頒布することによって、事実上第三者との共有を実現する機能を有している場合には、これは公衆に該当する部分を含むと解しても良いのではないかと思います。

それから最後に権利者への適切な対価の還元という項目ですけれど、これは繰り返しになりますけれど、対価の還元を考えるにあたっては、クリエーターとサービスを提供する事業者と、ユーザーの三者間における適切なバランスに配慮する必要があって、かつ、サービスの提供者はユーザーが安心して利用することができる適法な機器やサービスを提供する義務があると思います。

その為にはサービスの提供者がクリエーターに対する対価の還元について、ここでは許諾を受ける、許諾料を支払うということを意味していますけれども、応分の負担をしていくことが重要なのではないかと思います。

この場で議論をしている訳ですけれども、この場ではこの三者が WIN-WIN-WIN となる結論を導くための議論をしていると理解しています。

その一方で、先程来、企業が行う営利活動についても無許諾・無償でこれを産業活性化とかベンチャーを助けるとか、様々な美辞麗句を弄しておられますけれども、要するに開発をするからそこの土地を立ち退けという地上げとかそういったニュアンスをつい感じてしまいます。

クリエーターもですね、細々と自らの知財の権利を元手に創造のサイクルを展開している訳ですね。そこでは小さな産業とも言える訳でして、その何か、それに先んずる価値があるかのような形で、もう貴方達は我慢をしなさいみたいなことを言われている気がして、それはおかしいのではないかと思います。

やはり関係者がみな良い形での解決をしていくための話し合いをするということが非常に重要なのではないかと思います。

以上でございます。

土肥 一史 主査 (日本大学):#

ありがとうございました。それでは時間的な制限はありますけれども、これから質疑それから意見の交換、これを行っていきたいと思っております。ご質問・ご意見ございましたらどうぞお願いいたします。松田委員どうぞ。

松田 政行 委員 (弁護士):#

畑委員に質問です。ご説明いただきました、この 5月からサービスが開始された iTunes Match についてお答え願いたいと思います。

(資料5の) ページで言うと4ですか、4の従来の「iTunes・既導入サービス」はこれは分類で言えばタイプ2について契約で処理した形になるのかという理解でよろしいでしょうか。そして次は iTunes Match の方のマッチした場合のサービスの音楽の提供ですが、これもタイプ2と理解してよろしいのでしょうか。

その場合、既導入サービスとマッチした場合の送信との違いは、既導入についてはデータそれ自体はユーザが購入した楽曲のデータであるという理解でよろしいのでしょうか。そして iTunse Match の方のさらにマッチした場合の送信音楽データは予め Apple の方が用意したデータを流しているというふうに理解してよろしいでしょうか。

そうだとするとこれはタイプで言うと2として理解して良いのかどうか、4タイプのうちのどれと理解して良いのかどうかです。まずはその点について。

畑 陽一郎 委員 (レコード協会):#

はい。ページで行きますと5ページの概要の図だと思いますけれども、一番左の「既導入サービス」つまり自分が iTunes で購入してその従来までのデバイスで使えるというのは、ここは2ではなく、1もしくは3と、4分類に入れると配信型の類型ということになろうかと思います。

マッチした楽曲については、ここは事業者がコンテンツを用意しているという観点では、ここもタイプ1もしくは3ということになろうかと思います。それでマッチしていないアンマッチの部分につきましては、ここは類型としてはタイプ2という類型になろうかと思います。

昨年度の分類、タイプ2のさらに細かい小分類の所でも、スキャン&マッチにつきましてはタイプ1とタイプ2のミックスだったという整理がされておりまして、このアンマッチの部分がタイプ2、それ以外の部分がタイプ1もしくはタイプ3のミックスサービスということで理解をしておるところでございます。

土肥 一史 主査 (日本大学):#

松田委員よろしゅうございますか。他に、ご意見ございました。

津田 大介 委員 (MiAU):#

まず浅石さんに……あ、よろしいですか。

土肥 一史 主査 (日本大学):#

どうぞ、津田委員。

津田 大介 委員 (MiAU):#

浅石さんに質問なのですが、一つ気になったのが、この汎用型ロッカーサービスの、色々なクラウド技術等の利用実態が例には挙げられていたのですけれども、これは……僕もスマフォで音楽を楽しんで、沢山聞いているのですが、あまりここで挙げられているこの「広がる汎用型ロッカーの音楽利用」というので、これがすごく日本の音楽愛好者にすごく広く普及している実態というのはあまり知らなかったもので、これは実際に利用者とかその辺りの実態というのはどうなのか。

それで、これが利用されていることによって、実際の音楽のビジネスにとってどれだけの悪影響があるのかということも、ちょっとそこの論理的なというか、データみたいなものが欲しいなということがまず一個あるということと、仮にこういったロッカー型クラウドサービスに対して包括許諾をしろと言った時に、ほぼ全て米国の事業者でもあるので、それをどうやって許諾していくのかなという辺りも気になるところなのですね。

やはり後、根本的なところ、これは椎名委員の話とも繋がってはくるのですけれども、僕はこのクラウド型アプリを使っている訳ではないのですけれども、似たような利用はしていて、自分は僕の自宅にあるデスクトップパソコンに所謂サーバーですね、音楽をストリーミングするサーバー、Subsonic というサーバーこれを入れて、それをスマフォでストリーミングして再生している訳ですね。

もちろんそれは公開している訳ではなくて自分専用の私的複製の延長としてストリーミングで利用しているのですけれども、それとこういった他のアプリを利用している方のほとんどは公開する目的ではなくて、自分で持っている音楽ライブラリ、最近だと最初から iTunes ですとか、Amazon ですとか音楽ファイルで CD を購入して、それをどこでも聴きたいからストリーミングで聴くという利用がされているという中で、ほぼ利用実態としては私的複製として利用しているところで、それをまた包括許諾でクラウド事業者から取ると以前あったハードディスクの議論と同じように、これは二重取りになってしまうのではないかというところがあるということですよね。

後はやはり、これは椎名さんへの質問なのですけれども、椎名さんは先ほどの発表の中で、ユーザーがサーバーを調達して自宅で自分目的で利用することでもそれでも公衆用の設置の自動複製機器じゃないかということで──(マイク外でやり取りがあった模様)──そういう理解ではないのですか、それではない。僕が誤解をしているのでそれは違うということですね。判りましたじゃあ椎名さんへの質問は無しで、浅石さんにそのあたりを伺いいたいなと。

浅石 道夫 委員 (JASRAC):#

よろしいですか。

土肥 一史 主査 (日本大学):#

どうぞ。

浅石 道夫 委員 (JASRAC):#

このアプリをここに紹介したというのは「これだけ多くやっていますよ」という意味でデータを持ってやっているということではなくて、汎用型なのだから何が行われているか判らないという議論はもうないでしょうということと、こういうアプリケーションソフトが音楽に特定してあるということはそれなりのニーズがあるということではないですかということでお示しした訳です。

このアプリケーションのサービスから何か著作権使用料をいただこうとかということではなくて、ここは基本的には何の法的な行為もしていないだろうというふうに私共は思っています。

津田 大介 委員 (MiAU):#

例えばじゃあこれは、アプリを呼び出す、クラウドから呼び出すアプリというのと、それと対応するストレージというのがあると。その場合包括契約指定を求めていくのはアプリ側なのか、それともこの DropBox・Google Drive といった……どちらの

浅石 道夫 委員 (JASRAC):#

クラウド事業者に対して求めていくと。

津田 大介 委員 (MiAU):#

いわゆる Google Drive であるとか DropBox とかに。

浅石 道夫 委員 (JASRAC):#

はい。

津田 大介 委員 (MiAU):#

ただおそらくですね、そうなると DropBox のほとんどの利用者というのは音楽利用ではなく、日常的なファイル共有、まさにこれは 2005年の私的録音録画小委員会でもあったように、ハードディスクとほとんど同じように利用されている方が多いという状況だと思うので……それは例えばクラウド技術というのは DropBox に上げているファイルを音楽目的として利用しているので、そういう意味では音楽目的に特化しているという考え方はできると思うのですけれども、それは DropBox は一方で、音楽目的に使っている利用しているユーザーというのは実際の利用というのはまだ判らないですけれども、ほとんど居ないでしょうし、DropBox に音楽の著作権を払えというような話になって、それがエンドユーザーに上乗せされるとなると多分ほとんど多くのユーザーが納得ができないという事態が出るのではないかと思うのですけれどもそのあたりは如何でしょうか。

浅石 道夫 委員 (JASRAC):#

それは仮定の話だと思うのですけれども、これまでの汎用型クラウドサービスというのは中に何があるのか判らない、個人の感覚として音楽が使われているだろうとか、使われていないのじゃないかというお話だったと思います。

ただこういう、いわゆるアプリがあるということであれば、事業者さんはもっと簡単にどれだけ自分のところで音楽の利用があるのかないのかということがはっきり判るでしょうと。

無いのだとすれば私共は許諾を求める必要はない訳でございます。

津田 大介 委員 (MiAU):#

例えば、僕も DropBox の利用者なので拘りたいのですけれども、DropBox にはファイルを置いていて、ほとんどのファイルは仕事で使っているようなファイルであると。

ただ一方で、クラウドというのは自分のパソコンとかがクラッシュしてしまった時のための保険としてファイルの置場であったりもするなかで、僕は当然そこに、音楽ファイルをストリーミングする目的ではなくて、バックアップ目的で音楽をドロップボックスに置いていたりする訳ですけれども、その場合はどういう理解になるのでしょうか。

浅石 道夫 委員 (JASRAC):#

当然私共としては最初から申し上げている通り、サービス事業者さんが行為主体だという理解をしておりますので、権利処理というものについては事業者さんがしていただくと。

つまり営利活動の一環で機能を提供して、それに色々なものを上げられることができるサービスを機能として提供している、その中に音楽もあるのじゃないですかと。そうでなければこういうアプリというものができる可能性もないのだろうということで、これはまだ実態として DropBox さんとかにどれだけ音楽が入っているかは判りません、ただ、判る状態になってきていますねと……

津田 大介 委員 (MiAU):#

というとつまりじゃあ、Google Drive とか DropBox とかクラウド事業者さんにその利用されているユーザーがどのようなファイル利用しているか実態を提供してくださいというようなことを求めていくということであるということですか。

浅石 道夫 委員 (JASRAC):#

当然そうです。

津田 大介 委員 (MiAU):#

ただそれって事業者にクラウドのファイルの中身を全部検閲しろという話にもなりかねないというか……そこまでの話ではないのですか? 今、拡張子という話もありましたけれども、これはまた別の問題も出てくると思うのですけれども。

浅石 道夫 委員 (JASRAC):#

私共は「誰が」例えば津田さんがどんな曲を上げているかということを求めているのではなくて、サービス全体で音楽ファイルというのはどのぐらいあるのですか、あるいは利用曲目を出してもらうに際してもこのサービスでどれだけの曲が使われていますよということだけです。津田さんがとか浅石がとか、誰が幾ら、どんなものを上げているのかということは一切求めていません。

これまでも例えば YouTube さんにしてもニコニコ動画さんにしても楽曲を当然届け出ていただきますけれども、それは「これこれの期間に何回使用されたか」というだけで、個人が特定するようなことを私共は求めている訳ではないということでございます。

津田 大介 委員 (MiAU):#

ごめんなさい最後なんですけれども。これは椎名委員と浅石さんの両方に共通すると思うのですけれども、いわゆるクラウドサービスは純粋なハードディスクの代用品としての目的として私的複製のために使われているということではなくて、多くのクラウドサービスというのが利便性を考慮して不特定多数とファイルをやり取りするファイルの公開機能が付いている。

だから公開機能が付いているサービスについては利用許諾を求めていく、その機能がついているサービス全てにクラウドサービスとして求めていくという理解でよろしいですか。

浅石 道夫 委員 (JASRAC):#

基本的にどちらから見ているかということだと思うのですけれども、津田さんは個人の側面から多分見ているのだと思います。私共は事業者の側面から見てございますので、当然ながら事業者の行為としては全てが対象であると見ております。

[議事録作成者注記 / ファイル公開 (送信可能可) 機能に対して許諾が必要と考えるのではなく、クラウドストレージへのファイルコピー (複製) に対して許諾が必要と考えるので、全てのクラウドストレージで許諾が必要であるとする立場であることを再表明した発言]

土肥 一史 主査 (日本大学):#

はい、ありがとうございました。じゃあ椎名委員どうぞ。

椎名 和夫 委員 (芸団協):#

津田さんが自分のユーザーの個人的な感覚から仰っていることは、そこの所は非常に判ります。僕も自分の感覚から言わせていただくとですね、さっき津田さんが仰ったクラウドサービスがこういう形になって、音楽産業に一体どのような影響を与えているのですかと。

必ず不利益の立証という話が出てくるのですけれども、僕は1970年代から音楽の仕事に携わっていまして、LPからCDのシフトも経験していますし、CDがどんどん売れるようになっていったこともまさに経験してきた一人です。

やはり、SCMS というものが一定程度の抑止力になっていた時代から、パソコンで CD が焼けるよとなった時に、やっぱり音楽産業がどんどんシュリンクしていったのを肌感覚で見ているのですね。

そこは不利益を立証しろと言われたら、無理やり売上がこんなに落ちました、パソコンこんなに売れてますという程度の表を作るしかないのですけれども、やはり実感として、不利益が、不利益がじゃないですね、その音楽がそんなふうになっていった要因、そういうふうに言うと津田さんは「そればかりじゃないでしょ」ということを仰ると思うのですけれども、そればかりじゃないだろうと思います。

だけどやっぱりそういう象徴的なところで、複製ということが音楽産業に与えてきた影響は僕の感覚では非常に、感覚として鮮やかに持っているので、そこの所は不利益の立証ということを言っていても始まらない。

やっぱりステークホルダーが色々な自分の利益等々があったとしても、例えばコンテンツの訴求力を使うのであったら、一定の応分の割合でそこに配慮する、配慮しあうという姿勢がすごく大事なのではないか。そのことで恐らくは私的録音録画補償金制度の再構築などもそこのところがキーだと思っているのですね。

なので不利益を保障してくれということじゃなくて、やっぱりコンテンツの訴求力を元に一定程度商売をするのであれば、やっぱりそこは応分な負担をしてもいいのじゃないかというのが僕の考え方です。

土肥 一史 主査 (日本大学):#

ありがとうございました。他にございますでしょうか。

津田 大介 委員 (MiAU):#

すみませんひとつだけ。

土肥 一史 主査 (日本大学):#

どうぞ。

津田 大介 委員 (MiAU):#

DropBox などの汎用的なクラウドサービス機能の中の公開リンク機能があったとした時に、多分 DropBox や Google Drive みたいな汎用クラウドサービスを使った公開機能で楽曲を公開して、それが大量にダウンロードされてそれによって逮捕された事例というのはまだほとんど聞かないのですね。

何故かというと、ほとんどがやっぱり個人的な利用でやっているからというところもあって、これはずっとワーキングチームの時代からクラウドというのは一杯あってややこしいというところがあったというのはあると思うのですけれども、ただ現状やっぱりこの今のクラウドサービスというのは、一般的な広く普及していてユーザー数が多いクラウドサービスの現状で言うと、その公開リンク機能があって、そこで侵害行為が行われていたとした時には個別対処が可能だと思うのですね。その為に僕は送信可能化権というものが用意されているものだと思うので。

多くは私的利用というものの、私的複製みたいなことに対してそういう包括なことでやるよりかは、これはレコード協会さんの発表にあった iTunes Match のようなああいった音楽的な利用に特化したようなものを契約で調えて行くという方が僕は現実的ではないかと思います。

土肥 一史 主査 (日本大学):#

ありがとうございました。今現在、一般ユーザーのご意見それから権利者側のご意見をいただいておりますけれども、事業者ですね、事業者のお立場にある委員の方もここにおいでになると思います。何かご発言いただければと思いますがいかがでしょうか。

あ、どうぞ、榊原委員どうぞ。

榊原 美紀 委員 (JEITA / Panasonic):#

順番に幾つかあるのですけれども。浅石委員の資料についてなのですけれども、まず4ページ目で「権利者から見えず事後的対応不能」だということで、これはプライベートロッカー型、タイプ2の場合に、共有であれば判るのですけれども、個人の場合ですね、その場合にも事後的対応が必要だということをおっしゃっているのかということを確認したいと思います。

スライドの9ページ辺りに、事業者は機能を提供しているから主体であり、許諾を取れということをご主張されているのですけれども、この機能というのは先ほど津田さんのお話にもありましたけれども、色々なアプリでユーザー側にある場合もあればクラウド側に置かれる場合もあって、例えば文書作成機能なども今まで自分のパソコン側にあったものがクラウド側にあるとかそういうこともある訳ですけれども、こういう機能について、別にコンテンツを提供している訳でもないのに機能に対して許諾を受けろという理屈がちょっと理解ができませんでした。

それから13ページとか14ページで実績がご紹介されているのですが、ここに、例えば13ページに沢山ある中で、これはすべて「動画共有投稿サービス」とあるので、タイプ2のものについて実績があるという訳ではないと理解をしましたけれども、それで正しいのかどうかお尋ねしたいと思います。

それから、事業者が主体になって許諾を取るということを求めておられる訳ですけれども、これはすべて求められているのか、スキャン&マッチ型だけということなのか。スキャン&マッチ型であると、先ほど配信型混在とか、コンテンツ事業者が用意しているということで、経済界としてはユーザーがコンテンツを用意している場合には認めるべきではないかという主張ですので、そこが、事業者が用意している iTunes Match のような場合については許諾が必要だということは判るのですけれども、コンテンツをユーザー自身が持っている場合には、一旦どこかで以前に対価を払っていて、事業者にもう一度お金を払うように求めるということは、結局消費者に事業者は転嫁しますので、ユーザーからすると二重取りになるのではないかと、そこまで求められているのかということ、これについてはレコード協会さんについても同様なご質問になりますのでお答えいただければと思います。

土肥 一史 主査 (日本大学):#

よろしいですか、そのぐらいで。はい、全部で四つぐらいあったかと思いますけれども、質問と確認と……じゃあ浅石委員からお願いします。

浅石 道夫 委員 (JASRAC):#

まず4ページですけれども、我々に要求することが全く権利者としてできないことを言っているということを表現しております。ですから共有なのかあるいは個人で共有していないということすら我々には見えないですねと。

ですからそういったことを、何かあった時、要するに権利侵害があった時に事後的対応で済むのだということは我々は全くそういったことができませんよということをお示ししている内容でございます。

それから機能の問題につきましては、これは12ページで、個人の提供コンテンツを利用した部分は自分が持っているのだから良いだろうというところですけれども、この12ページの絵を見ていただいて、ユーザ提供コンテンツを利用した営利目的事業というのは過去からずっとあって、個人が用意したのだからあるいは自分の声だろうなどという点についてもちゃんと事業者さんが権利処理をしてございますよということでございます。それから機能の部分についてはですからそういう意味合いを持っているということでございます。

それから仰る通り、13ページについてはいわゆる共有サービスだとかブログでも外に出るものですけれども、いわゆるこういった形で事業者の方たちが許諾を受けて事業展開をするということが実際できる訳ですから、これはプライベートのものであってもこういう許諾というのは当然ながらできるでしょうという形でのお示しをしたということでございます。

簡単ですが、回答にさせていただければと思います。

土肥 一史 主査 (日本大学):#

では畑委員お願いします。

畑 陽一郎 委員 (レコード協会):#

先ほど iTunes Match というものを例示させていただきましたけれども、その中でもユーザーがコンテンツを用意してクラウドサーバーにアップするという部分は含まれます。

当協会の意見の趣旨としましては、タイプ2、こういったスキャン&マッチ型から変換機能付加型、特定のコンテンツに特化したロッカー型、汎用型までありますけれども、契約で、事業者と権利者の契約で適法に利用者がこういったサービスを利用できるという解決策があり得るのではないかと。

そこに向かって知恵を絞るということが成功の近道なのではないかという趣旨でご説明させていただきました。

その中で、ユーザーが用意するコンテンツについては既に一度対価を払って得るもの、あるいは対価を払わない形で得るもの、色々な形態があるかと思いますけれども、そこに含まれる、含まれると言いますかコンテンツによって入手する著作物、すべての利用について対価をお支払い済みだという訳では必ずしもない訳で、そこにつきましては環境を用意する事業者が契約という解決策を取ることによって物事が上手く行くのではないかと。

そこについては事業者がそれによってサービスの対価を得てあるいは直接ユーザーから対価を得ない形であってもおそらく広告収入なり何なりの運営するための収入は得る訳ですから、そういったサービスを運営する上でのいくつかあるコストの一つとして権利処理のコストもあるべきではないかということを説明をさせていただいたという趣旨でございます。

土肥 一史 主査 (日本大学):#

榊原委員、よろしゅうございますか?

榊原 美紀 委員 (JEITA / Panasonic):#

機能について対価の支払いが必要だという点が……ご質問を、浅石さんの資料にご質問させていただいたと思うのですけれども。

浅石 道夫 委員 (JASRAC):#

機能を提供することによって利益を得ているというのがこのサービスでしょうと。ですから営利目的事業なのですから、当然ながら著作物の使用料を支払っていただきたいというのが趣旨でございます。

ですからこのサービスというのは事業者の方達が機能を提供しているのが実態でしょうというのを申し上げている訳です。その機能を提供していた事業者の方たちの営利目的の事業なのだから、当然、畑さんが仰りましたようにコスト計算の中にそういったものが含まれて然るべきものではないでしょうかと申し上げております。

土肥 一史 主査 (日本大学):#

よろしゅうございますか? もちろんまだまだ色々な議論が当然出るはずなのですけれども、この後もう一つ予定をしております関係で今回は音楽関係の権利者のご意見を伺って、次回映像関係の権利者のご意見を伺うという予定になっているかと思います。

もし可能であれば、今、ご質問をあるいはご意見を述べたいという委員の方もおいでになるのだと思いますが……じゃあ松田委員どうぞ。

松田 政行 委員 (弁護士):#

短めに、榊原委員の質問の一つ「自分の買った音楽コンテンツをクラウドに格納する、このことでもう一回料金が取られると二重払いになるのじゃないですか」というご意見ですよね。

それを踏まえまして、私が一番最初に質問させていただきました畑委員の資料5ですが、結局この iTunes Match は従前のタイプ1にタイプ2を加えたということになるのだろうと思います。そして iTunes Match という別途料金で提供していますよと、これが契約でなされたというのはその通りだと思います。

果たして、従前のタイプ1のサービスの料金に加えて、アンマッチの時のタイプ2の料金というのは別料金になるのですか、それとも料金を取っていないのですか?

これをお聞きしたいと思います。

土肥 一史 主査 (日本大学):#

じゃあ畑委員お願いします。

畑 陽一郎 委員 (レコード協会):#

ページ5の図につきまして、左側の既導入サービスの所はここは基本的に1曲毎にユーザーがコンテンツを買ってその時に対価として支払っているということでございます。

そこと別にこの iTunes Match という点線で囲っている大きい部分がありますけれども、このマッチの部分とアンマッチの部分、ここを含めて別途年額3980円のサービスとして展開をされておるということでございます。

松田 政行 委員 (弁護士):#

全体として、ということですね。

畑 陽一郎 委員 (レコード協会):#

この赤点線の部分ですね。

松田 政行 委員 (弁護士):#

それではアンマッチの部分については個別に料金を徴収している訳ではないというのはそれはそれで良いのですね。

畑 陽一郎 委員 (レコード協会):#

はい。全体としてです。

土肥 一史 主査 (日本大学):#

はい、じゃあ椎名委員どうぞ。

椎名 和夫 委員 (芸団協):#

松田先生のこの二重取りの話ですけれども、おそらく、自分の購入したコンテンツをクラウドに上げることによってまた違う所で利用できるという行為そのものは、複製物を作っている訳ですよね。

例えば公衆設置型自動複製機器というのがあったのかないのか知りませんけれども、CD-Rを入れるスロットが二つぐらいついていて、100円玉を入れるといった時に、その100円というのは複製の対価じゃないですか。

その CD を買った対価というのは全く無関係な、複製の対価ということになると思っていて、そうするとその CD を元々買った時の対価とその事業者が徴収する対価というのは別に二重取りにはならないのではないかと思うのですが。

土肥 一史 主査 (日本大学):#

ありがとうございました。その支分権該当行為と機能という関係はおそらく色々と議論があろうかと思います。それについてはまた今後の議論の中で検討を深めていきたいとこのように思っております。

少なくとも今日用意されている時間は限りがございますし、この後私的録音録画に関する実態調査のご報告もいただかなければなりません。恐縮ですけれども次の議題に進めさせていただきたいと思います。

それで、四つ目の議事である私的録音録画の実態調査に移りたいと思います。本件調査につきましては前回のワーキングチームにおきまして一次集計結果の概要をご報告いただいた訳ですけれども、本年3月に最終報告書が取りまとめられたものと承知しております。(委員の)机の上にあるのではないかと思います。

本日はこの実態調査を行っていただいた株式会社野村総研の方にお越しいただき、前回ご報告から新たに判明した事項を中心に調査結果等についてご報告を頂戴したいと思います。

分量の都合上、今回は音楽分野についてご報告をいただき、映像分野については次回に回したいと考えております。

それでは株式会社 野村総合研究所 小林さまどうぞよろしくお願いいたします。

小林 孝嗣 参考人 (野村総研):#

はい。ありがとうございます。それではお時間をいただきましてご説明させていただきます。まず、このような機会をお与えいただきましてありがとうございます。

まず資料7の所をご覧いただければと思います。一部昨年度のワーキンググループでお話ししました点と被っていることございますが、基本的には主に最初に出てきたことをご説明をしたいと思います。

途中長くなりますので若干割愛しながらお話させていただきますが、まず 1ページ目ですね、今回の調査はこれも確認でございますと、WEBと郵送調査ということで同じような質問を取りつつ、かつそれぞれ同じように一次調査ということでデジタル録音機器の保有調査を広くあまねく調べて、デジタル録音をしている人について二次調査という形で深堀をしているという調査の設計になっております。

今回は、基本的に報告書の方が基本的に WEB 調査の結果を主にご説明した形になっていますので、今回もそれで進めさせていただければと思います。特に調査実施時期はですね、去年の、平成25年の11月から12月というところでアンケートを行った結果でございます。

2ページ目でございますが、2ページ目はデジタル録音機器等に関する保有状況なのですけれども、お時間もないのでこれは後でご覧いただければと思います。

3ページ目についてご覧いただきます。3ページ目はデジタル録音・コピー・ダウンロード、以降録音等と略しますが、録音等の行為を、1年間の行為を聞いた実施率でございます。

この棒グラフでございますように、一番上の音楽 CD の複製や音楽CDからのデジタル録音 (データのリッピング・コピー) からはじまりまして、一番最後の音楽ロッカーサービスというところの 7つの行為を過去1年間にしたかどうかというところを聞いておりますと、一応音楽CDのリッピング等が28.1%ということであとはずらずらずらっと並んでおりまして、1番〜7番の行為をいずれも行わなかったという方が60%という形になっております。

ちなみに、当然ここに上がっていない例えば自分が既に持っている音楽データをさらに複製したとか、そうした行為はここに書かれていませんのでそういうものは今回除外されて、聞かれていませんが、1番〜7番の行為を行った方が40%程度いらっしゃるということでございます。

ちなみにこの図表のタイトルがほぼ質問文になっておりますので、その後もそのような形に読んでいただければと思います。あとちょっと、若干補足ですがとタイトルの下に SCQ13 とありますが、SCQ というのが一次調査の結果になりまして、次の次のページに出てきます Q5 とか Q9 というのが二次調査の結果のことを示しておりまして、それもちょっとご理解いただければと思います。

続きまして4ページ目ですね、録音した機器として何を使ったのかということを聞いた質問でございますが、最も使用したものに着目していただきますと、棒グラフの半分からちょっと下の所のパソコン (光学メディアドライブ付き) というところが 48% で最も録音に使われた機器でございます。二番目がスマートフォンでして、iPhone/iPhone 以外で 17%、次がポータブルオーディオプレイヤーで 14.6% ということになっていまして、大体この三つの機器が最も使用された危機のナンバー3という形になっています。

次のところ5ページが本調査の結果になっているのでございますが、一年間でどれだけ録音しましたか、何曲録音したかということを聞いたのが5ページ目の結果でございます。この表の見方としては過去1年間に録音した曲数を1か月平均に均すとどれぐらいですかという形で聴いている答えなのでこの曲数は一か月平均に均した形というふうにご覧いただければと思います。

5ページ目の上の表の方がですね、これは見ていただければ判りますが、新規・既存と大きく分かれてございますが、新規というのは例えば自分が新規に購入した市販のCDから何曲コピーしたかとか、自分が借りたレンタルCDから何曲コピーしたかということで、既存というのは自分が以前に録音等していた音楽データをサブコピーした場合とか、自分が既に持っているCDからコピーした場合ということで、まずこういうふうに10いくつの項目を設けてそれぞれ曲数を聞きました。

簡単に申しますと、新規の小計が大体21.2曲ぐらいになります。既存が6.1曲でトータルで27.3曲ぐらいが一年の月平均でコピーしている曲数ということになるということが判りました。

それから下の表の方が、じゃあどこの所にコピーしましたかというのを聞いた曲数でございまして、上の方はCDから1曲コピーしたら1曲カウントというふうに聞いているのですけれども、下の方はCD 1曲をパソコンとスマフォにコピーした場合は2曲と答えてくださいという形で聞いていますので、当然上の結果と比べて下の結果が少し増えています。

それで聞いた結果になりますと、新規の方だと26.2曲コピーしていまして、既存の方だと8.0曲、トータルで34.2曲という形で、1年間の1ヵ月平均に均してみると、そういう形にコピーしていると判りましたというのが実態でございます。

6ページはこれは性・年代別のアンケートなのですが、これはお時間もないので後でご覧いただければと思います。

7ページの方はですね、今コピーしたところの録音の行為がですね、これは主観なのですが、この人本人にとって過去3年前と比べて増えたか減ったかというイメージで聞いているのですけれども、この帯グラフの真ん中ですね、37.7% というのが「変わらない」という答えの人で、これが最も多いのですが、その真ん中から比べまして左側の3つが増えた人、右側が減った人なのですけれども、増えた人と減った人を比べると増えた人が27.6%に対して減った人が34.6%なので、若干減った人の方が多かったという形のコピーの量の変化量の意識です。

次の8ページの方がじゃあ増えたという方に増えた理由を聞いた質問なのですけれども、ここは「好きなアーティスやジャンルが増えたから」とか「移動中や外出中に聞くようになったから」とか「音楽を聴く時間が長くなったから」とか「音楽データで聴く方が増えたから」という形で、この辺がこのように順当な、ぱっと思って出てくるような答えが並んでいますという形です。

続いて次の9ページが今度は逆に減った理由なのですけれども、減った理由は増えた理由とは少し傾向が変わっていまして、「音楽を聴く時間が減ったから」というのが一番これが多くて6割ぐらい出ているのですけれども、次に「YouTubeなどで無料の動画投稿・配信サイトでストリーミングで聴くようになったから」という答えが35.4%とそして「好きなアーティストが減ったから」が32.5%という形で音楽を聞くスタイルが変わったというところが一定数を占めていることが判りましたということでございます。

続いて10ページがですね、自分自身が聴くためにデジタル録音等したデータを何個コピーしていますかというのを期間に拘らず聞いた結果なのですが、この結果で言うと「0個」要は一度ダウンロードしたらそれをそのまま聞く人が29.4%で、1個以上が36.1%とか2個が14.6%と並んでおりまして、平均1.7個ぐらいコピーしているという答えが出ております。

次の11ページは今の自分自身が聴くために録音したデジタルデータを家族や友人にあげたり共有しましたかという質問なのですけれども、これで申しますと、11ページの上の図ですね、これによると右側の23%ぐらいが家族や友人・知人にあげたり共有したということでございます。

その23%の人に、じゃあ誰にあげましたかというのが下の図表1-11でございまして、これによると家族が大体75%ぐらい、ごく親しい友人の人が半分ぐらい、それ以外の友人・知人が17%ぐらいという形でそれぐらいあげたり共有したと。それぞれあげた人、共有した人の平均人数は0.5人〜2人であるという形で、こういう形で共有されているという状況が判りました。

12ページはですね、音楽データをそもそも音楽を音楽データとして聴く理由というのは皆様ご想像の通り、CDをそのまま聴くより便利だからというのが一番多くて、あと続く4つぐらいの項目は、大体自分が聴く機器、パソコンやポータブルオーディオプレイヤーとかでして、デジタル音源視聴機器でそれで聴くために聴いているということで、需要から来ているということでこの辺は一般的に感覚と沿っている形となっています。

次のところの13ページ・14ページは音楽を視聴している状況なので、これは後でご覧いただければなということで割愛させていただきまして、次の15ページ・16ページなのですけれども、15ページの方はですね、音楽データをコピーしてどのような機器・メディアに入れていますか・保存していますかという所を聞いた質問でございまして、このグラフを見て貰えば判ります通り、パソコンに内蔵のハードディスクというところが一番多くて58.6%、次いで大体ポータブルオーディオプレイヤーの内蔵メモリ、その次にスマートフォンの内蔵メモリ、あとCD-Rに保存している方も3割ぐらいいらっしゃるというような結果でございます。

それぞれの機器に何曲ぐらい保存されているかというのが次の16ページでして、このNというところを見ていただきますと、これは回答者数なので、機器によっては少ない回答者数の平均曲数を平均していますので曲数はバラついたりもしていますが、先ほどメインに上がってきたハードディスクで言うと大体1017曲ぐらい、ポータブルオーディオ内蔵メモリだと一番上の778曲ぐらい、スマートフォンのメモリで言うと310曲ぐらい、CD-R/RWだと392曲ぐらいという形ですね。こういう形で保存しているという結果が判りました。

以上済みません、駆け足でしたけれどもご報告とさせていただきます。

土肥 一史 主査 (日本大学):#

ありがとうございました。ただいまのご発表につきましてご質問・ご意見等ございましたらお願いいたします。はい、奥邨委員どうぞ。

奥邨 弘司 委員 (慶応大学):#

私は文系なものですから、数学というかその時点で良く判らないのでちょっと教えていただきたいのですが、10ページの資料で複製個数が平均1.7個と仰ったかと思うのですけれども、それから先ほど飛ばされた中で、13ページの資料で音楽を聴くのに使用している機器が平均1.6台というふうになっていたかと思うのですけれども、こういうクロスの見方は良く判らないのですが、何か素人考えに考えると、1.6台持っていて1.7個コピーするというのは持っている個数だけコピーしているということで、大体これは重複していると考えて良いのかなと思ったのですが、そういう風に見るのはあまり統計的な見方はできないということになるのでしょうか。これは単なる偶然なのでしょうか。

小林 孝嗣 参考人 (野村総研):#

そういう意味ではこの質問は別々に聞いているので、結果としては偶然だと思います。ただ、後でクロスで見れば何台持っていれば何個コピーということは判りますが、今のところとしては偶然とお考えいただいた方が安全かなと思います。

土肥 一史 主査 (日本大学):#

ありがとうございました。河村委員、お手を挙げられたと思いますけれども。

河村 真紀子 委員 (主婦連):#

済みません、ありがとうございます。調査についての感想も含めて、先ほど意見を言う機会を無くしたので、一応初回ということで一般消費者としての感想のようなものを述べたいと思います。

私的録音録画についての実態調査については、すごく消費者としての、なんといいますか先ほど椎名委員が肌感覚と仰いましたけれども、消費者としての肌感覚には非常にマッチしているような気がいたします。

それで先程来の音楽権利者さん達のご発表内容と私この調査結果は少し、少しと言うよりも大きく、感覚としては離れているような気がいたします。

録音元で言えば自分が借りたレンタルCDですとか自分でその期間内に新規に購入した市販のCDが多いということですとか、あとちょっと皮肉な結果ですけれども録音等が減っていると。その中に減った理由が音楽を聴く時間が減ったからという事が60%近くになっていて、先ほどの椎名委員の肌感覚というのは何か以前から私的複製とか今回のクラウドですか、そういったものによってということを何時も仰るのですけれども、やはり他の理由ということで、音楽の世界の地図が変わっているということも目を向けなければいけないのではないかと思います。

複製の個数が1.7個であることですとか、共有した相手がほとんど家族であったということを考えますと、先程来 JASRAC の方や音楽著作権者の方々が仰っていた状況とは私の中では一致しているようには思えません。

それで、WIN-WIN-WIN ということで結論を見出す小委員会ということで、今回が1回目なのですけれども、正直申し上げまして「仰っていることが良く判るな消費者として」という感覚になれないご発表であったことが非常に残念に思えます。

一つには、JASRAC の方のご発表が非常に極端なことを仰っていて、何かクラウド型のサービスは CD 一枚が魔法のように何か沢山の価値を持つものになるということでしたけれども、消費者の感覚から行きますと、例えば一曲の音楽をクラウドに上げたとして、その音楽を鑑賞するという、その音楽を聴けるということに対して何も付け足されない、色々な形で、色々な自分が持っているデバイスで聴けるということがあっても、一曲、自分で買った一曲の鑑賞ということは何か魔法のように膨れ上がっていくことではないのですね。

二曲買えば二曲分楽しめる、三曲買えば三曲分楽しめるということでございまして、何か魔法のように広がっていくような言い方ですとか、例えば配信型の事業者に対する許諾のことと、今から議論しようとしているタイプ2のサービスを一緒のことのような俎上に乗せているようなご説明の仕方にも納得行くことがなかなかできません。

それは椎名委員のご発表にも同様でございまして、今から検討しようとしているタイプ2の事について、それ以外の SNS も YouTube も違法音楽サイトも皆一緒くたに議論いたしますと、そもそも先ほどの調査の中で期待としてごく普通の人たちがやっている一般的な、家族と共有するぐらい、お友達にあげる、しかもさほど沢山いなかったという中で考えようとしていることと、極端に非常に不利益を呼ぶようなものと一緒にしたりですね。

一番納得できないなと思ったのは椎名委員の資料の5ページ目なのですけれども、4番の「公衆該当性」の所にですね、タイプ2と言っても「ユーザーによるURLやパスワードの頒布等により」と書いてあって、もうそうなるとタイプ2を検討するということが最初から考えられていないというのでしょうか、タイプ2のようなサービスをユーザーが便利に使えるようにしていこうというよりは、もうそういうことではなくて、沢山の不利益を呼んでいる様々な全く別の類型が行っていることの権利者に与えているものと一緒くたにして考えていくということになりますと、そこは消費者としてこの土台から行きますと、それこそデジャヴは嫌なのですけれども、何に対して何を、どういう意味付けで対価を得ようとなさっているのか判らないなと。

もう少し調査結果に沿ったような、ごく普通の人たちがタイプ2のようなサービスを受ける時に乗り越えなければならない問題をここで対処していくと整理していただけたらと思います。

土肥 一史 主査 (日本大学):#

じゃあ、椎名委員どうぞ。

椎名 和夫 委員 (芸団協):#

誤解されていると思いますけれども、2ページ目の図は如何に世の中にファイルが出回っているかということの影響を書いたもので、この検討に直接結びつく図として書いたつもりはありません。

それから公衆に該当する部分を含む、即ちここで書いているのはサービスが明示的に共有できますよと謳っていなくても、例えば URL とパスワードを友達に送るということで実現しちゃうものは含むかもしれないということを言っている意味で、厳密にそれがタイプ2にカテゴライズされているのか、タイプ4の方に入っているのか僕には判らないので、「可能性を含む」という書き方をしただけです。そこは誤解しないでください。

この調査結果は僕もすごく肌感覚にピッタリ来ている部分があります。この調査の分析については後ほどやらせていただきたいと思いますが、一点だけ。

今、河村さんはあらかたの人は買ったCDからやっているのではないかと仰ったのですが、3ページのこれは野村総研さんも補足されていましたけれども、ここで聞いているのは音楽CDの複製や音楽CDからのデジタル録音から始まって、すべてダウンストリーム、パソコンの方に取り込む形での利用を聞いているのですね。

例えばパソコンの中にある既存のファイルをUSBに移したり、あるいはクラウドに上げたりということを除外しているのですよ。ですからCDからの複製に集中するのは当たり前の話であって、そのあとの質問で次の5ページを見てもらうと、ここで録音しているというか、さっきの録音か何かをやっているということを答えた人に対して、過去1年間における録音元・先別の録音曲数の比較というとこで、ここは既存のファイルをどうしたかを聞いているのだけど、ここで聞いている既存のファイルをどうこうした人というのはさっき言った六項目をした人だけの数なのですね。

だからそこはちょっとその録音の総体を把握するという意味じゃこの3ページの質問というのは抜かったのかなという気がしていて、そこら辺を含めてこの調査結果をもうちょっと精密に読み込んでみたいと思います。

土肥 一史 主査 (日本大学):#

今ので、小林さん何かありますか。

小林 孝嗣 参考人 (野村総研):#

今のは仰る通りの事実だと思います。これは私見なのですけれども、3ページの1番から7番に上げた行為というのは、音楽ユーザであればやるだろう、音楽を楽しむ人であれば一年間になにかしらやっているだろう行為をあげています。

これをしないで、これを一年間で一回もしないで、自分が持っている音楽データを、それだけをアップロードしたりコピーしたりという人は確かにいらっしゃるとは思いますが、そのボリュームはいかばかりかと、我々もそれほど多くないのではないかと私見があったのでそこから外したという形だと思います。

土肥 一史 主査 (日本大学):#

よろしいですか。

椎名 和夫 委員 (芸団協):#

多いか少ないかということを僕は聞きたいのじゃなくて、その部分が落ちていますよねということが……

小林 孝嗣 参考人 (野村総研):#

その部分はその通りです。

土肥 一史 主査 (日本大学):#

おそらくまだあるのではないかと思うのですけれども、現在(予定時刻を)10分過ぎております……津田さんどうぞ。

津田 大介 委員 (MiAU):#

要望なのですけれども、権利者団体の方と映像関係の方の意見表明があったので、是非、河村さんや、ユーザーや消費者の意見表明の場もこのどこかで設定していただければと、これは要望です。

土肥 一史 主査 (日本大学):#

事務局と相談して対応させていただきたいと思います。はい、榊原委員どうぞ。

榊原 美紀 委員 (JEITA / Panasonic):#

済みません。中身にではないのですが、委員に席上配布されている実態調査の報告書原本について、ページ数がないのですけれども……傍聴者の方もいらっしゃるので判るようにご説明しますと、目次があって前書きのようなものがあって、その後に委員名簿というものがありまして、委員名簿の中に JEITA の理事が入っております。

その後、この調査は私的録音録画実態調査委員会が第1回から第4回まで開催されてアンケート設問項目等の確認をしたというのが開催記録を見ると判るようになっているのですけれども、ここに委員として入っているのは、委員会には元々入っていると思うのですけれども、この調査をされる時に JEITA としてはクリエーターへの適切な対価還元がされているかということが本来の調べるべきことなのではないかと、クリエーターはコンテンツを作成して、最後にユーザーが利用するまで、上流から下流と言う表現をしますけれども、色々な流通経路を通ってユーザーの手元に届く。

私的録音録画というのはそのユーザの直前に機器が販売をされて、ユーザーの手元で行われることなので、そこだけに着目されてクリエーターへの適切な対価還元の資料として作られるのは設問項目として不適等ではないかということで項目について異議を申し上げましたけれども、全く反映されなかったということでこの会からは抜けましたので、そのことを申し上げておきたいと思います。

土肥 一史 主査 (日本大学):#

はい。承知しました。よろしいですかね。大体今日の所はこれぐらいということにさせていただいて。

本日はこれぐらいにさせていただきたいと思います。

最後に事務局から連絡事項がございましたらお願いいたします。

菊地 史晃 課長補佐 (文化庁 著作権課):#

本日はご議論ありがとうございました。次回の著作物等の適切な保護と利用・流通に関する小委員会、本小委員会ですけれども、次回は 8月 7日 木曜日の 10:00〜12:00 の日程で、本日と同じ東海大学校友会館において開催することを予定しております。以上でございます。

土肥 一史 主査 (日本大学):#

ありがとうございました。本日はこれで著作物等の適切な保護と利用・流通に関する小委員会の第1回を終わらせていただきます。本日は熱心なご討議ありがとうございました。