文化庁 文化審議会 著作権分科会
著作物等の適切な保護と利用・流通に関する小委員会 第2回
(2014年8月7日) [非公式議事録 - 予定地]


ここは、一傍聴者が傍聴の際に残していたメモ・記憶等を元にまとめた非公式議事録を掲載しているページです。正式な議事録は1〜2ヶ月後に文化庁サイト [URI] に上がるはずですので、そちらを参照してください。

政府主催の公開会議においての発言が無編集で伝わると困ると主張される方からの直接の連絡があれば、その旨記載の上で本ページの内容を削除します。その際連絡は kazhiro@marumo.ne.jp までお願いします。

当日配布された資料は以下の通りです。


土肥 一史 主査 (日本大学):#

それでは定刻でございますので、ただ今から文化審議会 著作権分科会 著作物等の適切な保護と利用・流通に関する小委員会の第2回を開催いたします。本日はご多忙の中ご出席をいただきまして誠にありがとうございます。

議事に入ります前に、本日の会議の公開につきまして予定されておる議事内容を参照いたしますと特段非公開とするには及ばないと思われますので、既に傍聴者の方には入場していただいておるところでございますけれども、特にご異議はございませんでしょうか。

(会場より異議なしとの声あり)

それでは、本日の議事は公開ということで傍聴者の方にはそのまま傍聴いただくこととします。議事に入ります前に、事務局に人事異動があったようでございますのでご報告をいただければと思います。

小坂 準記 著作権調査官 (文化庁 著作権課):#

それでは事務局の人事異動をご報告申し上げます。7月25日付けで文化庁次長に 有松 育子 (ありまつ いくこ) が着任しております。

有松 育子 次長 (文化庁):#

有松でございます。どうぞよろしくお願いします。

小坂 準記 著作権調査官 (文化庁 著作権課):#

また、8月1日付けで著作権課 課長補佐に秋山 卓也(あきやま たくや)が着任しております。

秋山 卓也 課長補佐 (文化庁 著作権課):#

秋山でございます。どうぞよろしくお願いします。

土肥 一史 主査 (日本大学):#

ありがとうございました。それでは事務局から配布資料の確認をお願いいたします。

秋山 卓也 課長補佐 (文化庁 著作権課):#

はい、それでは配布資料を確認いたします。お手元の議事次第、下半分のところをご覧ください。本日は資料1〜5といたしまして、奥邨委員、華頂委員、松本委員、笹尾委員、そして杉本委員からのご発表資料を用意させていただいております。それから資料6として私的録音録画に関する実態調査に関する資料。それから参考資料としまして「ロッカー型クラウドサービスの分類について」と題する資料をご用意させていただいております。

落丁等ございましたら事務局員までお知らせください。

土肥 一史 主査 (日本大学):#

それでは議事に入りますけれども、はじめに議事の進め方について確認をしておきたいと存じます。本日の議事は「1. クラウドサービス等と著作権について」「2. 私的録音録画に関する実態調査について」「3. その他」以上の3点となっております。

まず「1.」につきましてはインターネットを用いた放送番組の転送サービスに関して昨年度のワーキングチームにおいて奥邨委員からアメリカの関係判例をご発表いただいておったところでございますけれども、先月新たな動きがあったということのようでございますので、奥邨委員から簡単にご紹介をいただきたいと存じます。

そして前回に引き続き、参考資料の「ロッカー型クラウドサービスの分類」に関しまして主に映像分野の関係委員から意見発表をいただいてそれを踏まえて意見交換を行いたいと思っております。

次に、「2.」につきましては前回に引き続き私的録音録画に関する実態調査について今回は録画部分の調査結果等をご報告いただき、それを踏まえて意見交換を行いたいと思います。

それでは「1.」の議題に入りたいと思います。まずアメリカにおける関係判例について奥邨委員ご紹介をいただければと存じます。それでは奥邨委員よろしくお願いします。

奥邨 弘司 委員 (慶応大学):#

それではご報告させていただきます。資料をご覧ください。最初に感想を申し上げますと、注目された判決ではありましたが蓋を開けますと若干肩透かし的なところもあったかなと思っております。

原告は放送局でありまして、被告は──そもそも何と読んでよいのかというのが諸説あるわけでございますが、仮にエーリオを読ませていただきたいと思います。あまり自信はございません。

ちなみにイタリア語の「aereo」という言葉には「アンテナ」という意味があるようでありまして、今回ミニアンテナが一つのポイントであったシステムでありますので納得のいくところではあるかと思っております。

このシステムの詳細につきましては今ありましたように昨年12月のワーキングでご説明いたしましたので詳細は省略いたしますが、簡単に申し上げますと今回問題になっているのは視聴機能であります。

すなわち各会員に割り当てられたミニアンテナによって受信した放送波を会員専用のトランスコーダでデジタル化し、会員専用の記録エリアに記録し、その直後に再生してインターネット経由で当該会員に宛ててストリーミング送信するというものであります。録画機能は今回はとりあえず問題となってはおりません。

ここで、資料を一点ご訂正願いたいのですが、「(3) 訴訟の経過」となっておりますが、これは「2 訴訟の経過」とご修正願えればと思います。番号を打ち間違えております。

さて、放送局はこの視聴機能によりまして aereo が公の実演権を直接侵害しているとしまして暫定的差止命令を申し立てしました。しかし地裁・控訴裁共に先例であるケーブルビジョン事件判決に基づきまして請求を棄却しております。

ご案内かと思いますが、念の為に申し上げますとアメリカ著作権におきましては音楽著作物・視聴覚著作物で、限定的ですが録音物──済みませんちょっと抜けておりますが──の放送・有線放送・ストリーミング型配信については基本的に公の実演権の対象になるということになっております。

2ページ目にまいりますが、6名の裁判官によります法廷意見でありますが、まずこの判決の争点につきましては二段階に検討することが必要であるというふうに分類しております。

すなわち Aereo の視聴機能によって番組をほぼ同時転送することによって、まず第一段階として Aereo が実演しているのか否か。第二段階は第一段階の答えが YES の場合にその実演は公のものかどうかという二段階検証が必要だと言っております。

まず第一段階につきましては、Aereo 自身は「自分はアンテナと DVR をエミュレートする装置を会員に使用させているだけ」という主張をしたわけでございますが、法廷意見は現行米国著作権法の立法経緯を振り返りまして「議会の意図に鑑みると Aereo は単なる装置の提供者ということではなくて、実演を行っている当人と解すべき」といたしました。

約 40 年前に二つの判決でアメリカにおきましては当時最高裁がですね、CATV によるテレビ番組の再送信は旧アメリカ著作権法上の実演にはあたらないという判断をくだしてきておりました。

これに対して議会は現行著作権法の制定にあたりまして、この最高裁判決を覆して CATV に著作権が及ぶようにするために関連規定の整備を行ったという経緯がございます。

法廷意見は議会が対象にしようとした CATV 事業者も Aereo も著作物である TV 番組を放送と同時に視聴できるようにするサービスを有償で提供しているという点において実質的に同じであって両者の相違点は重要なものとは言えない、だから Aereo の行為も CATV 同様に著作権法が及ぶのだというふうにしたわけでございます。

第一段階がクリアされましたので第二段階についてですが、Aereo 自身はですね、ケーブルビジョン事件判決を踏まえまして、会員専用の個人用コピーに記録されたものを再生して行っている送信自体が実演なので、各実演は一人のユーザーにしか送られていない、従って公の実演ではないという主張をした訳でありますが、これは認められませんでした。

法廷意見は、議会が CATV を規制しようとした事実を踏まえれば、やはりこの Aereo が主張する技術的な事項は舞台裏のことであって重要ではないという説示をしております。

そしてですね、同じ著作物の実演を送信する限り何度かの送信で送信しようとも、一度に送信しようとも法的な評価は変わらないのだというふうに述べております。

項目を一つ飛ばしまして、一つ法廷意見は興味深いことを言っております。実演の受領者が公衆か否かを判断する上では、実演の元になった著作物と受領者との間の事前の関係が重要であるというふうに言っておるわけであります。

もし、その実演の受領者が実演の元になった著作物の所有者または占有者である場合、彼・彼女に対する実演は公のものではないと言えるところ、Aereo の会員は放送番組との間にそのような事前の関係を有しておらず、かつ、多数に及ぶので公衆にあたると判断しております。

法廷意見は一方で、自分の判決自身の影響は非常に限定的であることを繰り返しておりまして、その理由として、そこに挙げております「(a)」から次の3ページ目に行きます「(f)」までの色々な点から自分の影響は非常に限定的であるということを繰り返し述べております。

また訴務長官、ソリシター・ジェネラル (solicitor general) のアミカスブリーフ (amicus brief) を引用する形でクラウドやリモート DVR については正面切って争点となる時に改めて判断するべきであるとも述べております。

さらにどうしてもクラウド関係で心配があるならば、DMCA §512 のようなセーフハーバーを立法することもあり得るのだということも述べております。

続きまして3名の裁判官による反対意見でございますが、反対意見はインターネット・プロバイダのようにユーザがコントロールする自動機器を運用している被告に対して直接侵害責任を問う場合、被告が著作物に向けたボリショナルコンダクト (volitional conduct) ──仮に「意志ある行為」と訳しておりますが──それを行っているかどうかを基準に判断するべきだというふうに述べております。

そしてですね、大抵の場合は機器やシステムで利用されるコンテンツを選ぶことが「意志ある行為」を構成し、そのような者が直接侵害責任を問われるべきなのだというふうに述べております。

つまり本件の場合 Aereo はコンテンツを選択していないがゆえに、反対意見の立場では実演をそもそもしていない、従って公の実演権の直接侵害に問われることもないという結論になるわけであります。

しかも反対意見はですね、法廷意見の基準を「CATV に似ているから Aereo は有責」とするのものだと位置づけまして、何時・どのような場合に適用するか不明確な、混乱の種の基準であると厳しく批判をしております。

最後に簡単なコメントを、詳細なコメントは別途 AIPPI の方をご覧いただくこととして、そうでなくて簡単に申し上げますと、法廷意見はたとえますと均等論的な発想なのかなと思います。

Aereo と CATV は TV 番組を同時転送する有料サービスという本質部分におきまして共通しているから Aereo は CATV と同様に扱われるべきだということに尽きるわけです。その意味では直接的な射程は狭いという話になるのかなとも思っております。

ケーブルビジョン判決は明示的には今回覆されませんでしたが、ただ同判決に依拠した Aereo の主張が結局いれられませんでしたので、ケーブルビジョン判決の有効性には疑問符が付いたということかと思います。同判決を念頭にサービスの適法性を判断していた事業者にとっての影響は小さくないのではないかと思います。

また法廷意見はリモート DVR やクラウドに影響しないという理由を縷々述べておりますけれども、それが下級審に尊重されるかどうかというのは現時点では判りません。今後の状況を注視する必要があるのかなというふうに思います。

それから公衆性を否定する「元になる著作物の所有者または占有者」とは何かというのは、これは本件ではなくて、今後この類の議論になった時にはかなり議論になるのではないかというふうに思います。

最後、少し飛びまして⑥のところですが、正面切った主体論を述べるのではなく、公衆送信──この場合は公衆実演ですけれども──に関係する条文の解釈で解決したというのは「まねき TV」事件を知る我々にとりましてはデジャビュを禁じ得ないところでありますが、一方 CATV との類似を正面に置いて判断しておりますため「まねき TV」よりもさらに事例限定的なのかなという印象を持っている次第であります。

以上でございます。

土肥 一史 主査 (日本大学):#

ありがとうございました。それでは続きまして、ロッカー型クラウドサービスの分類に対する映像関係の権利者側による意見発表として、華頂委員・松本委員・笹尾委員の三名からご意見を頂戴したいと存じます。なお、笹尾委員につきましては本日ご欠席のため、書面による意見発表をご希望されております。

笹尾委員からのご意見につきましては資料 4 として配布させていただいておりますので、後ほどご覧いただければと存じます。また今回は昨年度のワーキングチームでの積み残しとなっておりました、事業者側による意見発表として杉本委員からもご意見を頂戴し、その上で議論できればと思っております。

意見発表のお時間は恐縮ながら一人 10 分程度でお願いできればと存じます。それではまず最初に、一般社団法人 映画製作者連盟より華頂委員お願いいたします。

華頂 尚隆 委員 (映画製作者連盟):#

はい。ご紹介いただきました映連の華頂でございます。本日はこのような意見の発表のお時間をいただきましてありがとうございます。前回、音楽の方から発表があったのですけれども、直球で話しますと同じような表現になりますので、私は意見を壊さない程度のカットボールでお話させていただきたいと思います。

折角ですから最初に、かつて録録小委員会に長いこと参加をさせていただいた頃から度々申し上げておりました、商業用映画のビジネスの概要について今一度お話をさせていただきたいと思います。

資料の 2 の 1 ページの下の方ですけれども、ご覧いただきたいと思います。映画製作者は多額の製作資金を投入して映画を今まで製作をしておりますけれども、その投下資本は必ずしも回収が約束されていないリスクマネーであります。

映画はこのリスクマネーを原資に企画・撮影・編集などの製作段階を経て一つの原版──今はオリジナルデータですけれども──という形に収束して完成します。映画のビジネスはたった一つのこの完成原版をマルチユースすることによって投下資本の回収を目指してスタートいたします。

その根幹は全てにおいて複製ということになります。まず劇場での公開となりますけれどもこれも完成原版から上映スクリーン数分の素材──現在は DCP と呼ばれるデジタルシネマパッケージ──これを複製して各劇場に頒布をして配給。次に DVD や Blu-Ray 等のパッケージ商品の扱いでございますけれども言うまでもなく完成原版から複製して製造頒布。そしてテレビ放送ですけれどもこれも完成原版からテレビオンエア用の媒体、これに複製してテレビ局に納品して放送することになります。後ほどお話をさせていただくクラウド、これを含む映像配信ビジネス等も同様でございます。

このように商業用映画のビジネスは映画製作者が完成原版を機械的にコントロールしながらマルチユースすることで成り立っております。ですから複製行為によって海賊版が作成される場合はもちろん、家庭内で複製物が保存・視聴される場合であっても我々の資本回収の運用と衝突することになるため映画製作者は第三者による複製については原則的に禁止の立場をとってビジネスを展開しております。

ピンク色の囲みの中にありますように、映画館等における映画の盗撮、これは法律によって私的複製禁止となっています。それから DVD 等のパッケージ商品、これも技術的保護手段によって複製が禁止。それから有料放送・映画配信、これらも著作権保護技術によって視聴のみが許容されて私的複製は原則禁止となっているというようなことです。

今申し上げた複製禁止措置ですけれども、これは社会的にもコンセンサスが取れているというふうに思っていますので不都合が生じることはないというふうに理解しております。そのような中で唯一私たちがコントロールできない複製は昔も今も変わることなく無料放送から大量に行われる複製でございます。

すなわち、インターネット上に現在も無限に拡散している複製データファイルでございますけれども、本日はそのようなテーマではございませんのでこれ以上お話することはありません。

さて、今申し上げたような映画のビジネス、これをご理解いただいた上でロッカー型クラウドサービスを含む総合的な商業用映画のビジネス展開について、先般 7 月中旬に興行収入 250 億円を超えまして歴代 2 位の記録を伺う大ヒットでロングラン興行を続けている──皆さんもご存じだと思いますけれども──「アナと雪の女王」を例に具体的にお話させていただきたいと思います。

ページをおめくりいただきください。2ページ・3ページご参照してお聞きいただきたいのですけれども「アナと雪の女王」はディズニースタジオの製作・配給で日本では 3月 14日から劇場公開が行われました。先ほど申し上げました通り 7月 22日には興行収入 251 億円を突破して、観客動員数は 1974 万人、約2千万人ですね。現在でも映画館で上映中でございます。

通常であれば映画館における大ヒット興行を終えてからそれぞれ期間を開けてパッケージ商品の販売、それから配信ビジネス・テレビオンエア、これを展開することになるのですけれども、配給元のディズニースタジオジャパン、これは昨年11月よりネット時代に対応した新しい商品、MovieNEX という商品の販売を開始しております。

この MovieNEX というのはこれまで同様にパッケージの中に DVD と Blu-Ray をセットで販売しております。このパッケージ販売に加えて、中にちょっとしたカードが入っておりまして、クラウド対応のデジタルコピー機能、これも付与されているのが特徴でございます。

今言ったパッケージに封入されている Magic コードと呼ばれるパスワードをパソコン等に入力することによって当該パソコンはもとより、スマートフォンあるいはタブレット端末に当該作品をデジタルコピーして、何時でもどこでもマルチデバイス対応によってお客様が作品を所有する感覚で映画を楽しんでいただけるシステムでございます。

「アナと雪の女王」に戻りますけれども、ディズニースタジオジャパンでは二次利用の収益を最大化するビジネスチャンス、これは「今でしょう」ということで映画館での興行中であるにも関わらず、関係者間のコンセンサスを取ったうえで、7月 16日に「アナと雪の女王 MovieNEX」の販売に運びついたわけでございます。

その結果、16日から 4日間、7月 20日の時点で MovieNEX は200万枚の売上を突破しました。レンタル回数も 100 万回を超えております。それから同時に展開したオンデマンドでも 14 万以上の視聴を突破しまして、今申し上げたデジタルコピーの利用も 12万件を超えている状況でございます。

「アナと雪の女王」を例にして本年度上半期最大の映画の成功事例をご説明させていただきましたが、要するに映画のビジネスは「アナと雪の女王」に限らず現存するあらゆる視聴方法を機動的にお客様にご提供することによってお客様にご満足をいただき、その結果私たち映画製作者もビジネス上の収益を得て次の映画の再生産につなげていくことができるということでございます。

ページをめくっていただいて資料の4ページでございますが、今申し上げたようなことを踏まえましてロッカー型クラウドサービスの分類について敢えて申し上げるならばですね、冒頭の映画ビジネスの概要でご説明いたしました通り、利用者が用意したコンテンツをロッカーに保存することを前提とする、タイプ2とタイプ4、これはそもそも複製禁止を原則として展開している映画ビジネスではあり得ない態様でございます。

MovieNEX に象徴されるように、事業者が責任をもって用意した映画作品であるタイプ1とタイプ3の配信型クラウドサービスで存分に楽しんでいただけるものと自負をしております。

クラウドサービスにおきましては権利制限規定、これを拡大する必要があるのではというような声があるようでございますけれども、その必要性はないと断言させていただきたいと思います。

なぜなら配信ビジネスにおいても私たち映画製作者と事業者、場合によってはユーザーの皆様と直接許諾契約を取り交わすことによって様々な方法で作品をお届けすることは既に実現しているからでございます。

「アナと雪の女王」をご覧いただいていない委員の方がおられましたら話題に乗り遅れないように映画館・パッケージ・オンデマンド、そしてクラウドサービスによるマルチデバイスのデジタルコピーの多角的な視聴が今現在可能になっておりますので、有料ではございますけれどもこの方法を選択してご鑑賞いただくことを期待しております。

5ページ目を最後になりますけれども見ていただきますと、このように現実のビジネスでお客様に多いに喜ばれながらですね、何の問題もなく展開していることをご認識いただければ、先ほどからもしゃべっているように、こと映画のビジネスにおいては無許諾・無償を基本とする権利制限規定の拡大などの法的措置は不要であるということをご理解いただけるものと思っております。

映連からの意見は以上でございます。今後の議論に反映していただければ光栄でございます。ありがとうございました。

土肥 一史 主査 (日本大学):#

はい。どうもありがとうございました。次に一般社団法人 日本動画協会より松本委員お願いいたします。

松本 悟 委員 (日本動画協会):#

はい。日本動画協会の松本でございます。このたびは意見表明の機会をいただきありがとうございます。当協会はアニメの業界団体でございますので映像の中で特にアニメの特徴と併せてご説明させていただきたいと思っております。

まず、アニメビジネスにおける配信の位置づけです。2ページ目でございます。アニメ業界のいわゆるプロダクションへの権利収入の数字を表しております。アニメは殆どがテレビ放送を最初の公開の場とし、その後ビデオ化権、配信権、商品化あるいは海外販売といったそれぞれの作品毎に事業をそれぞれ眺めながら二次利用を進めることで収益を上げております。そして当然クリエイターへの権利配分も含めて報酬として支払っております。

深夜帯の放送が増えた 2000年代以降はテレビ放送をプロモーションとして捉えてビデオグラム収入で収益を回収するという一種のスキームがアニメでは確立されております。現在に至るまで続いておりますが、2006年、この表の左の欄にありますけれども 2006年をピークにしましてビデオグラム権での収入は減少の一途を辿っております。

これについては、アニメはまだ比較的減少は穏やかというか緩やかなカーブになっておりますけれども、近年横ばいの状態でございますが、それでも最盛期の 2006年、左の年に比べると 2012年の数字は 5割・6割程度まで少なくなっている現状でございます。

これに替わって伸びているのが黄色で囲ってございます配信の部分でございます。ビデオとは逆に 2006年からこの 2012年にかけての数字はちゃんと大きく伸びてございます。特に 2012年度については倍近い伸びとなっております。非常にアニメにとっては回収の一つの手段として配信の部分のウェイトが大きくなっております。

ビデオグラムと配信はいずれも映像自体をユーザーに届けるものでございますがそれぞれ対象が異なります。高額ではあるものの手元に残すことができる、高画質で多くの特典が付くビデオグラム製品ですとか、安価で手元には残せないけれどもビデオが楽しめるゲーム機というような手段もございます。これらをまとめて次のページに、3ページ目でございますけれどもアニメユーザーを取り巻く環境ということでまとめまさせていただきました。

アニメのコンテンツの視聴はこれだけの出口がございます。従来からの主体となるテレビ放送あるいはケーブルテレビ、そしてそれに続くパッケージ、パソコンでの視聴、それに加えてモバイル端末では同時に認証可能な台数制限がございますけれども視聴されております。VODもストリーミング視聴でデータが残らない形でダウンロードはもちろん必要という形で配信をしております。ゲーム機においても昨今動画の視聴もできるようになっておりますが、ダウンロードレンタルという形で 1週間ですとか時間の制限を設けてレンタル、ダウンロードレンタルという形で視聴をしていただいております。

これらすべてを、アニメの本当にユーザの環境としてこれだけのソースがあるのですけれども、すべて事業者と我々権利者との間での契約ですべて権利許諾をしているという形をとっております。

今回の課題でありますクラウド関連ということでも、これまでの事業、各事業と同様にユーザーとではなく、権利者あるいは権利者と事業者との間の中で権利処理をすることで十分に運用できるのではないかというふうに考えております。

続いて資料 4ページでございます。アニメユーザの視聴親和性というものを表しておりますけれども、アニメユーザーはパッケージにおいても、左の線でございますけれども、ビデオカセットの時代から現在の DVD・Blu-Ray の時代まで同じ作品をそれぞれのメディアにあわせて何度も商品として購入して楽しんでおります。

その流れの中でパソコンを含み、テレビではアナログ放送から地上波デジタル放送、配信も SD クオリティからハイビジョンクオリティ、プラットフォームも PC からモバイル端末、色々な手段が流れてきておりますけれども、アニメのユーザーはそれぞれの部分をそれぞれのツールを使って楽しんでいるというのが現状であります。

この長い年月の中でもアニメのユーザーは色々なプラットフォーム、色々な配信の手段、色々な放送システムですねそれぞれの利害を選んでというか手段の中でも視聴を含めて効率の高いアニメを視聴するということを進ませていると捉えています。

これらすべて先ほど申したように放送・配信において契約で対応しておりクラウドサービスも然りと考えております。こうしてアニメのユーザーは色々なプラットフォーム・色々な機械、色々な仕組み・システムが出てきてもそれぞれの環境の中で長く楽しんでと言いますか、ユーザー部分でユーザーはそれに付いて来てくださっているというのが現状ということですね。

続いて資料の5ページ目でございます。ロッカー型クラウドサービス」における現状のアニメの利用状況ですけれども、まずタイプ 1 と 3 は配信型ということで事業者との契約に応じて配信が行われておりまして、そういうふうに書いてございます。

次に右側のタイプ 2 と 4 ですが、そもそもアニメの場合は先ほど申したように自由にやり取りができるデータをユーザに販売を行っておりません。すべて下の中で行っております。ビデオグラムの場合はコピーガードがかけられており、放送の録画にあたってはダビング10により複製に関するルールが定められております。その範囲制御をしているということです。配信については基本はストリーム配信でございますが、ユーザーの手元にデータが残ることはありません。ダウンロードについては先程申したように時間で制限するという形をとっており将来的に残るという形をとっておりませんので、それぞれ認証等もあり、そういう縛りの中で見られていると考えております。

ユーザーのアップロードの中では正規のデータはほぼ現状では使われていないと考えております。その上でタイプ 2 については現状何らかのサービスを提供しているという事例がなく、かつ、ユーザーの利用状況も把握できていないために現時点では特段の問題提起をすることができませんが、タイプ 4 については明らかに何らかの著作権侵害でありますので、その場合は我々は権利行使を行うということになろうかと思います。

最後の 6 ページ目でございます。今後のロッカー型クラウドサービスの目指す方向性を当協会なりに考えたものでございます。簡単にご説明申し上げます。

権利者としてはある作品をどの媒体に露出していくかという機会のコントロールをすることが一般に重要ですけれども、ユーザーの要望や社会の流れなどを考えますと、今後は個人で購入する作品は個人の端末でどこまでも楽しめるようにするというのは流れとしては確かにあるのではないかと思っております。その中で、権利者と事業者はお互いの立場を尊重した上で利便性の高いサービスの実現に向けて取り組んでいくことが求められるのではないかと考えます。

最後のページですけれども、協力して取り組んだ事例ということでご説明いたします。ヤフーオークションをはじめとするネットオークション事業者と権利者側との間でインターネット侵害品流通防止協議会、CIPP という組織を立ち上げておりまして、そこでは以下のように相互協力をして枠組みを作ろうということでいわゆる「日本方式」という形で命名をされて活動を続けております。

日本方式の原則としては下側に参考項目がございまして「1. 両者は互いの立場を十分に尊重した上で、自身の利益のみならず何よりも消費者の利益を守るために、共通の敵である権利侵害者に対して共同で立ち向かうべきであるとの認識に立つこと」「2. 権利者は権利とは自動的に保護されるものではなく自らエンフォースメントを行うべきである」「3. オークション事業者はインターネットの健全な発展のために積極的に知的財産権の保護に努めるべきである」「4. 両者は対策の推進にあたり知的財産権を保護する意義と利用者の営業の自由や通信の秘密が担保されることの意義を対等に認め、それら両方の価値を毀損しない対応をとるべきだとの認識に立つこと」ということしています。

当協会も CIPP では設立当初から参画しておりまして、今も権利者と事業者がより利便性の高いネットオークションサービスの提供に向けて協力活動を続けております。

また後ほど発表される杉本委員がいらっしゃる前で恐縮でございますが、ニコニコ動画さまとも何度か話し合いをさせていただいた結果、ユーザーの著作権侵害には迅速に対応される一方で、多くのユーザーが安心して楽しめるサービスになろうかとしています。

当協会といたしましては権利制限という法改正ではなく今まで申し上げたように、あるいは前例通り、権利者と事業者が協力してロッカー型クラウドサービスを普及させていくために、契約による権利処理がスムーズに行われる環境を整えることが大事だろうと考えております。

個々の契約では救われない契約主体が考えられる場合には何らかの協議をしていく必要性はあるだろうというふうに考えております。

以上、日本動画協会で考えられる形を述べさせていただきました。ご静聴ありがとうございます。

土肥 一史 主査 (日本大学):#

松本委員、どうもありがとうございました。それでは次に株式会社ニワンゴより杉本委員お願いいたします。

杉本 誠司 委員 (ニワンゴ):#

はい。株式会社ニワンゴの杉本と申します。どうぞよろしくお願いいたします。本日はこうした機会をいただきまして大変光栄に思っております。ただし私自身が決して法務等の法的業務に従事している者ではないので、今回のコメントにあたっては特に言葉が適切かどうかというのは甚だ疑問なのですけれども、私どもというか私なりの私見としてのコメントを述べさせていただければと思っております。

これまで様々な方が色々とコメントを述べては参りまして、そういった資料も拝見させていただきました。その上で方向性としてはさほどブレるものではないので割と似たようなコメントにはなってしまうのですけれども、ただ、論点整理をしていかなければいけないのかなということを前回欠席させていただいた身ではありますけれども、その辺り感じているところです。

色々なサービスが技術革新とともに世の中に出てきております。それに対して現状の法律に照らし合わせた形で「それができるのか」「良いのか」「悪いのか」という議論というのは果たしてどれぐらい価値があるのかということに関しては大いに議論をするべきじゃないかなというふうに思っております。

我々のようなネット事業者というか、いわゆる IT 系の技術を後ろだてにした企業から色々なところを見ていくとですね、当然色々なサービスというか色々な技術革新の企画というのはこれは出てきて当たり前だと考えるのですね。

ですので、それはそもそもコンテンツ利用サービスありというよりは意志があるのかないのかといったところに関して、それをきちんと確認していくプロセスをというのがですね、色々なサービスが出てきた後で判定する以前に見極めていくというプロセスをどこかに組み込んで行くということですね。これはいわゆる話し合いであったりとか対話だったりとかに他ならないのですけれども、こういったものをきちんと関係者一同が意識していかなければならないかなというふうに思っているのですね。

その意味で、その点と言って良いのか判らないのですが、その意味でですね、コンテンツ利用サービスであることの目的・意義というのをしっかり持って、色々な論点を整理していかなければいけないのではないかということを、最初のページに記載をさせていただいているのですけれども、この辺りは先ほど動画協会さまからもご案内いただいた通りに我々も色々時間をかけて色々な団体の方あるいは権利者の方々と話をしてきました。その経験則にもとづいた形で話を進めさせていただければと思います。

ページをめくっていただいて、「(ロッカー型)」と書きましたがクラウドサービスの手段というのを、当委員会のこういった分類というのをしていただいて、これはこれですごく現状を把握するには非常に良い資料かなというふうに思っております。

分類そのものでですね、サービスがどういった技術であったりとか機能で実現されているかといったことに関してはサービスを知る上では非常に重要なことではあるのですけれども、これもですね紐解いていくとですね、これをどういうふうに法律的に解釈するかという資料というふうに考えるよりも、当然これも、私が赤でふたつコマを付けさせていただきましたけれども、配信型かユーザーアップロード型みたいなことに関しては、いずれにしてもこれがコンテンツデリバリーあるいはそれを視聴・聴取するサービスとして考えるのであればどこでライセンスを発行するかであったりとかライセンスするかというようなタイミングの話でしかないと思うのですね。

さらに縦軸に関しては、プライベート型か共有型に関してはこの次のページでも述べているのですけれども、私的利用か公衆型かという議論に配置されているのですけれども、ここに関しても究極的にはライセンスの話でしかないと思っています。それは私的ライセンスなのか共有ライセンスなのかということですね。

共有に関しては当然バリエーションが出てくるものではあるのですけれども、そういう意味ではこれそのものがサービスをどのように認定していった上でそれに必要なルールというのは何なのかという話し合いは必要なのですけれども、出てきたものに対して現行のものがどう解釈できるかということに関してはあまり時間をかけていく必要はないのではないかなと思っています。

ここにおいても、あくまでもそれぞれのサービス、サービスと言えるのかどうか判らないです、それぞれの機能に対してそれがサービスとしての意識があるのかないのかですね、それは当然当委員会でもかなり話し合われてきた通り、権利者の方々も含めた形での利害の一致ができるのかできないかといったところが論点で入ってくるかどうかというのはかなりのポイントになってきます。

ですので、当然そういったことが前提としてあるいは中途でも構わないと思いますけれども、事業者と権利者の間できちんと話し合うことができているのかどうか。それを含めた形で、そもそもそれが利用者、ここではユーザーと書かせていただきましたけれども、それがユーザーのどのようなニーズに基づいてそういったものがサービス化されようとしているかというのが全体設計としてきちんと議論された上で、改めてこれの在り方というのを論じる必要があるのかなというふうに思っております。

続きましてはその次のページなのですけれども、同じ話の延長にありますが、私的複製と公衆複製についてといったところについても、これもやはり論点整理ということが重要なのかなと思っているのですね。

当然私的利用目的であったとしても先ほどの分類のいくつかの機能をもう少しオープンに適用しようとした場合には、当然その技術的見解からすればですね、いわゆる既存の法律に照らしあわせると公衆複製装置を使うのが非常に効果的であるというような話になりえるのですね。

ただし、それに関してはあくまでも公衆複製を目的としたものではございませんので、当然私的複製をするための機能として公衆複製機と呼ばれたものを使用するということに過ぎないと思います。

ですので、そういったものに対してやはり目的をもってその機能をどう分類するかといったところ、機能をもって目的を分類するというのはどちらかと言うとナンセンスだと思いますので、その辺りの順番をやはり間違えないようにしたいと思っています。

そういう意味では私的利用目的に関してはそこに書かれた通りですね、その範囲そのものは大いに議論する必要があるとは思うのですけれども、やは昨今のですねデバイス辺りとかメディア、あるいはインフラの方が大いに多様化している時代です。

それにすべからく対応していくというのは一つのサービス事業者、もしかしたら権立者側の人も商機会を得るという意味では非常に必要な段階になって来ていると思うのですね。

そういった意味ではやはりライセンスという意味でここをどう管理して行くかということがまず必要になってきてですね、究極の話をするのであれば、必要に応じて複製のデータが増えていくというのはもしかしたら必然かもしれないと思っています。それをどう管理するかということについては、やはりライセンスという議論をしっかりしていくことだと思うのですね。

それとですね、共有利用目的、いわゆる公衆送信をしたいあるいは公衆化したいという、これのニーズがあると思うのですね。これもそもそも、他人・第三者とのコンテンツ共有ということを目的とするのであれば、これをサービス化あるいは事業化するということをやはり前提においてやっていくことが必要なのだと。

これもある種、ここにマルチライセンスという、これはあくまでも造語ですけれども、ライセンスの仕方ということで整理させていただいたのですけれども、色々な機能に依存してそれぞれが利用されるとは思うのですけれども、はっきり言ってここはそのライセンスをどう適用していくのか、どう認識していくのかと言ったところに対してしっかりと議論していければ良いのかと思っています。

ただこれに関しては当然それぞれが機能上できてしまうということに関しては目的が主になるのですから、そこは規制あるいは制限するべき論点だと思います。そこでやはり重要になってくることは当然そのライセンスをどういった形で発行するのかであったりとか、どういう形で認証するのか、それをどういうふうに明示するのか、あるいはそれそのものをどういうふうに申し込むのか、あるいは許諾するのか。

こういったところの機能をどう確保していくのかに関しては大いに議論が必要だと思っていますし、場合によってはそういった機能・機構そのものを具体化していく必要があるというふうに思っています。むしろそういったところに対して議論の時間を割いていっても良いのではないかなというふうに思います。

そこに関しては本日も、あくまでも提言等の中からお話をさせていただいているとおり、多くの権利者の方あるいは事業者の方とですね、我々も時間をかけて話をしていった上で、そういったものの必要性があるのではないかというふうに感じております。

そういった意味で、さらにページをめくっていただいて、機能そのものがどういうふうに解釈されるかというよりも、サービスあるいはビジネスとしてどのように成立させるのかということに対して、きちんと論点をですね、具体性をもってですね、アイデアを落とし込んでいったりあるいは機能を落とし込んでいくべきではないかというふうに思っています。

そういった意味では、原則これは全て先ほどライセンスと申し上げました通り許諾に伴うものだと思うのですね。ですから許諾と言わずに契約というのかどうか甚だ疑問ではありますけれども、ここでは契約というふうにお話をさせていただくと、許諾契約に基づく関係性というのをきちんと整理する。しかもその場合には権利者と事業者と利用者という部分の、この三者がプレイヤーとして認識されると思います。そういった方々のそれぞれのニーズをどのように落とし込めるかというようなことを具体化していく話し合いの場が必要ではないかと私は思っているのですね。

本委員会、その他のところでもですね、出てくる無許諾・無償等での機能提供者というのは出てくると思いますけれども、これはそもそももって、この論点からすると目的外の使用者ということになってしまうので、これはそもそもなにか論点となるのかなというところなので、除外対象としても良いのかなと思うのですね。

当然無許諾でやりたいというニーズがある訳ではないと思っていますので、それに関しては何らかの形で許諾の意思を確認した上で、今の話し合いに入れ込んでいって、こういった無許諾・無償というのがそもそもニーズではないのであればそれは取り込んで行く価値が大いにあると思っております。

二番目は色々と物議をかもしそうなのですけれども、あくまでも好意的にサービス化したいとかいう必要があると思っておりますので、そういった意味では許諾をした上で色々なことを結んでいくというのはどちらかと言うと時間がかかりがちですので、そういった意味では制度的に対応することも含めてですね、許諾範囲の想定を超えた場合の対応というのはオプトアウトなんかの方が色々とサービスの発展は早いのではないかと感じております。

そういう意味ではすべからく利用促進、これはコンテンツの文化を拡大、コンテンツの創造と利用ですね、こういったものの文化を拡大する、あるいはそれを提供するためということを将来的に考えてみたところ、促進するということを、是非ですね、モデルをきちんと作っていくことが必要なのだろうと思います。

ただし、特に色々な事業者の方が色々な機能提供をしていくにあたってですね、利用者の方々も意識しているしないに関わらず、そのニーズは多様化を極めています。そういった意味ではそれを代弁・代行する形で事業者が権利者の方ときちんと話し合いを持てる土壌があればそれはそれでよいのですけれども、まだまだそうではない状況もあると思うのですね。

そういった意味では、そういった多少多様化したニーズをきちんと把握していく、あるいは問い合わせる、あるいはそれに対して申し入れをするというような窓口そのものは社会の中に必要になってきているのではないかなというふうに思っているのですね。

これはやはり我々の経験則から言ってもなのですけれども、権利許諾をしようとしたときに、そもそも誰と話したらよいのか判らないというのは現実的に生まれます。それそのものが公的な窓口になっていないことも多々ございますので、たまたま我々は色々なところの方々と話をして、このような時間をかけて許諾を取ってきたという自信はあるのですけれども、やはりそれが短時間に中々進まないという状況はまだまだ残っていると思いますので、そういったことをある種フォーカスしていくということは求められるのではないかなというふうに思っているのですね。

これは先ほど述べさせていただいた、いわゆるライセンス管理というかライセンスの発行であったりとか、やはりそういったものに対しても権利者団体が必要ではないかと思っております。

ただしですね、やはりこういったことをやろうとした時に、ちょっと言葉としてはきついですけれども、利権化する恐れというのは当然ありますので、そういったところに関しては細心の注意を払って物事が進められていくべきだというふうに思っております。

そしてさらにページをめくっていただいて、本委員会でも論点・議論の対象になっております「権利者への適切な対価の還元について」という部分に関しても、ここに関しては、我々は実際に多くを語る立場ではないのでそういった前提の下で、あくまでもそういった立場を踏まえた上でコメントをさせていただくと、先日の通り、色々な形でビジネスモデルとしてきちんと論点整理がされていて、それがモデルとして機能するのであればですけれども、原則的にこれは契約関係のビジネスとして整理がつく話です。

そうすると機械化することそのものは補償するという考え方ではなくなるのではないかというふうに、ちょっと極端ですけれども思っております。その辺りは、適切な対価の還元というのはビジネスモデルにおいて担保されるはずであるというような考え方ができるのではないかと思うのですね。

ただ、当然これから将来にわたってですね日本のコンテンツそのものの製作力だとかコンテンツそのもののですね、連続的な製作過程そのものがきちんと担保されていく土壌をま守っていく必要性は大いにあると思います。

クールジャパンにも代表されるようにですね、日本のコンテンツ力そのものがグローバルに展開する日本の戦略的なですねハードになる構成というのは既にあるというよりは既になっていると思うのですね。

ですからそういったものをきちんと、逆に言えば担保していく、あるいは支えていく、育てていくという意味では、呼び方の問題かもしれないのですけれども、補償金というよりは健全なるクリエーターの育成と創作拡大に向けた支援基金というような形できちんと設立する、あるいは環境そのものを考えていくという、それそのものが必要だと思っています。

そこに関しては我々も僭越ながらですね、クリエーターの育成の基金的なものというのを事業者の立場でやっておりますし、やはりそういう立場・支えがないとなかなかクリエーターそのものが育っていかないのも事実だと思いますので、そういったものをむしろ権利者の方もそうですし、当然事業者もそうですし、周りの人たち利用者の方も含めてこういったものを支えていって国際競争力をしっかりと持った日本のコンテンツを育てる土壌を作っていくというような話がむしろ大切だというのも一つの考え方かなと思いました。

ここは少し差し出がましい話なのですけれども、そうした考え方もあるかと思います。

そして結論と言うよりは提言なのですけれども、やはり、皆さんのプレゼンテーショとほぼ同じ結論になるのですけれども、無許諾・無償等の行いに対して権利制限を語るというよりは、そういったもので、そういったものを逆に言えば足がかりに、色々な機能があればどんどん生まれてきています。

それは当然正常な技術革新と企画力、色々なサービスのニーズに応じてですね、こういった企画革新の部分を技術革新に乗せて色々なアイデアが出てきております。当然それをどのようなものであるかという判断をすることは必要であるのですけれども、むしろそれを、どのように我々が正しいかという議論よりも、それを我々も確保していくかという点に対してやはり大いに議論するべきであるし、時間をかけていく方が我々のメリットにかわるものにもなるというふうに思っていますので、その辺りを是非、以後の議論に反映していただければと思っています。

色々と所感めいた話ではあるのですけれども、ニコニコ動画というよりは、素人の個人の考え方の通りでして、事業者側の視点として述べさせていただきました。どうもありがとうございました。

土肥 一史 主査 (日本大学):#

杉本委員どうもありがとうございました。それでは質疑応答と意見交換に移りたいと思います。ご質問・ご意見ございましたらどうぞ遠慮なくお出しください。松田委員どうぞ。

松田 政行 委員 (弁護士):#

今の杉本委員のお話から質問させていただきたいと思います。資料の3枚目の上の図で、結局これに収斂するようにお話を聞きました。ここに示されている権利者と事業者が一体となって話し合いをしてビジネスモデルに対応したライセンスを締結していこうということのように私は聞きましたが、その場合には権利者・事業者というのは当然のことながら権利者団体と事業者団体というか、かなり協約的な権利処理のやり方をしていかなければいけないのではないかなと感じました。

個々の権利者・事業者ではなくて団体間かなと思います。まずそういう点で理解がよいのかどうか。

多分そういうことになりますと権利者の方は許諾を想定した範囲を超えるから、自分の作品についてはその協約から抜けたいのだという場合にオプトアウトというものを行使してはどうでしょうかというのがこの真ん中の一文なのかなというふうに思います。

そういう理解でよろしいのでしょうか。

杉本 誠司 委員 (ニワンゴ):#

はい。概ねその通りです。

当然、合理的かつ効率的に話を進めたい場合はそれぞれのポジショニングの方々、この場合は権利者と事業者の方々ですけれども、そういった方々を包括的にまとめている団体間協議というのはやはり効果的にモノが運ぶのかなとは思うのですけれども、ただそれを実際に、じゃあ本当にやってみましょうみたいな話になった段階で改めて、多少なりとも時間をとった上で、それぞれの──まあ事業者団体がそもそもあるのかみたいな話もあるのですけれども──それぞれの団体としての、すべからくそのフレームで意見がきちっと集約できているのかどうかに関しては一度調査した方が良いかなというふうに思っておりますし、そこからこぼれた人たちを、逆に言えばどう収斂していくのかといったところは、第三の手というのは何かしら機会なり場所というのを作っていかなければいけないかなというふうには思ってはいます。

土肥 一史 主査 (日本大学):#

ほかに如何でございましょうか。

丸橋 透 委員 (ニフティ):#

映画製作者連盟さまのプレゼンで、私もまだ見ていないのですけれども「アナと雪の女王」の MovieNEX の話が大変興味深く伺いました。

これでですね、すべての映画のマルチウィンドウ、すべての事業者がこれをやる方向なのか、それであれば大変結構なことなのですけれども、そういうタイムシフト・プレースシフトが同時に走っていくということは大変結構なことなのですけれども、その辺の見通しと、仮にそれで権利制限というか今後の行く末を考える上でこういうタイムシフト・プレースシフトを提供することが全ての事業者に義務付けられたらどうなるか、という話にお答えをいただきたい。

華頂 尚隆 委員 (映画製作者連盟):#

MovieNEX の話なのですけれども、これは本当に初めてのケースと言いますか、劇場で公開していながらにして、パッケージ・オンデマンド、それからクラウドを利用したデジタルコンテンツということで、先ほどの話のように様々な視聴方法が同時に可能になっております。

けれども通常の映画はですね、これは「千と千尋」が304億円で映画の興行収入がトップなのですけれども、二番手が260億円だったかな「タイタニック」これを抜くような勢いで「アナと雪の女王」が走っていて、こういう映画だからこそこういう MovieNEX の発売を劇場公開している内に可能になったのですけれども、通常の映画はお話の中でもしましたけれども、一応ウィンドウを各々設定して間を置きながらやっていくというのが映画ビジネスの基本で──そもそもワンソース・マルチユースですから──だから通常の映画はこれからもそのようなワンソース・マルチユースのウィンドウを設定してやっていくと思うのです。

けれども、私個人の考えからすればこれだけ爆発的にヒットした映画です、ディズニースタジオが本当に決断してですね、パッケージを色々な視聴方法を同時に提供したことは画期的なことだなと。本当に個人的な意見ですけれども、一番よい状況でお客様に提供できているのかなとは思います。

けれども、全ての作品がすぐにこの MovieNEX を展開するというのは考えにくいところがあります。それから「義務付け」なのですけれども「義務付け」というのはどういうことなのでしょうか。誰が誰に義務付けるのでしょうか。

丸橋 透 委員 (ニフティ):#

こういうタイムシフト・プレースシフト可能化されていないサービスについては、クラウドなり中間事業者他でタイムシフト・プレースシフトサービスについて強制許諾と言って言うのですけれども、そういうふうにして全部の穴を埋めるようなことが考えられるのではないかと思ったということです。

華頂 尚隆 委員 (映画製作者連盟):#

私自身は、 5 ページ目に結論めいたことを書いているのですけれども、この上の方の 2 行に集約させていただきました。「機動的かつ多角的に映画作品をお客様にお届けすること」このことが我々の使命でもあってですね、もっと我々本位で言えば重要なのはあらゆる視聴方法でお客様にお届けするのが我々のビジネスチャンス。そのビジネスチャンスを各々種類を最大化して次の映画の製作に繋げていく訳ですから義務付けをする必要はなく、現存している視聴方法すべてでお客様にお届けしてお客様に喜んでいただいて我々も収益を上げられるということが結論なわけです。

義務付けなんというのは必要ないと思います。必ず、その作品の規模にもよりますけれども、とにかくビジネスチャンスを作り上げて収益を最大するというようなことを行っています。

丸橋 透 委員 (ニフティ):#

それはディズニーだからできたことであって、勿論、個人的なご意見として全ての映画がことをこういうふうに進む方が良いというのは素晴らしいことだと思うのですけれども、そういうところまで販売する手段を探せない映画について、ニコニコさんでも良いのですけれども、そういうクラウド事業者も出る幕というのを、映画の促進に寄与する方策はないのかなということです。

華頂 尚隆 委員 (映画製作者連盟):#

映画は去年の統計を取ってみるとですね、公開作品は異常に今増えています。去年は邦画・洋画を併せて1800本を超えたのですけれども、邦画だけでも590本ぐらいかかっているのですね。

その全ての作品、色々とレベルはあると思うのですけれども、お客様はどのぐらいその視聴に要求しているのか。だから、視聴を要求されていない映画も、こういっては何ですけれどもあるというその映画に対して、全ての視聴方法を提供する必要があるのかどうか。

お金がかかるわけですから、経費ですね。ですからそこら辺は映画を作った製作者が責任をもってどこまで展開するかというのは自由に決めてもらう必要があるかと思います。

土肥 一史 主査 (日本大学):#

はい。よろしゅうございますか。それでは津田委員お願いいたします。

津田 大介 委員 (MiAU):#

丸橋委員の質問とは関連すると思いますけれども、丸橋委員の今のやり取りをユーザーの視点から捉えるとですね、華頂委員の MovieNEX の動きは非常に良いと思うのです。ユーザーにとってもこういう形で提供されてくるとこれは便利だし、適正な対価を払って自分の好きなデバイスという環境があるのは素晴らしい事例だなと思う一方で、華頂委員の説明を伺っていると「お金になるものだったらやるけれど、お金にならないものはやらないよ」という言い方にも聞こえると思うのですよね。

これは勿論当然コンテンツの回収のやり方というのはあるのですけれども、同時にやはり、コンテンツを広く──ユーザーの視点から言えば広く、あまねく、適正な対価を払って見たいというメニューと、映画の場合、最近は地方でもシネコンとかあってだいぶアクセスが良くなったとはいえ、例えば iTunes のビデオとか映画で自分のタブレットとかで好きに見れるサービスが出て来てはいても、単館上映の作品とか、この作品を見たいのだけれども地理的な条件で見れなく終わっているというのがユーザーにとっての大きな不満でもある訳ですね。

なので MovieNEX の事例は先進的な事例ではあるのだけれども、これが本当に全部のほとんど映画に、業界全体で広まって行けばユーザーとしては手を叩いて喜びたい方向性なのですけれども、どれだけこれが映画業界全体の流れとしてなっていくのか、あるいは映画製作者連盟さんがそれを──丸橋さんは「義務化」と仰いましたけれども──むしろ映画製作者連盟さんがどんどんアプローチをするみたいなそういったところの取り組みについておうかがいをしたいなということなのですけど。

華頂 尚隆 委員 (映画製作者連盟):#

今、津田委員の方から単館系の作品と仰いましたけれども、単館系の作品を何故単館でやるか、東京だけでやったり、大都市だけでやったりという作品があるのですけれども、これは要するにその映画を作った方あるいは外国映画であれば輸入した方が総合的な資金力の裏付けが無いから、単館系、少ないエリアでやっていくと。

それはどういうことかと言うと、全国公開をすれば全国で宣伝しなければいけないのですね。それから300スクリーン・500スクリーンであれば、それ相応の素材を作らなければいけない。そういうようなことがあります。宣伝というのは劇場の方から求められますから、そういう資金力がなければ単館系でやっていくしかないというような事業者の規模というようなことになると思います。

ですけれども単館系で一番顕著な例というのは昔でいえば「アメリ」の例ですね。これは1館から始めて莫大なものすごいロングランをして興行収入を得たという作品もあります。それは興行自体が宣伝となって全国で支持を得たと。単館系の事業者というのはまさにそこを生命線にしてやっていますので、最初から大きな資金力がないというふうなことで事業者の規模の問題があるということです。

津田 大介 委員 (MiAU):#

僕はドキュメンタリーが好きでよく見ているのですけれども、いくらか、ドキュメンタリー映画というのは資金調達以前にやっぱりなかなか掛けてくれる映画館が無くて困っている映画監督の方が多くて、やはり話を聞くと全国に広げるときに自主上映会というのを結構やっているのですね。

DVD とかを貸して、それでこの映画を掛けてくださいということで、かなり人づてに口コミで広めて行くということがあるときに、これは委員会の趣旨で考えると、やっぱりそういう時にクラウド事業者は利用できやすくなるんじゃないかと思っています。

例えば今年で言うとドキュメンタリーで「アクト・オブ・キリング」という映画がすごく話題になって、あれも東京だと渋谷のイメージ・フォーラムで単館だったのですけれども、ものすごく人が押し寄せちゃってなかなか入れない状態になって、それで宣伝にもなったという状況があるのですけれども、だから全国に宣伝していくみたいなところのフリーさみたいなものを、ネットというのはやはり時間と場所という、もしくは宣伝費とコスト、流通コストというのを爆発的に下げてくれるという効果があるので、単館上映した後、それが終わった瞬間、すべてのマルチデバイス、タブレットなんかで上映できるような環境を整える、そういうところで逆にクラウド事業者と映画業界さんが組むことによってよりそういう環境を構築しやすくなるのではないかなと思っているのですけれど、その辺りは……

華頂 尚隆 委員 (映画製作者連盟):#

ええ、あまり公表はしていないのですけれども、今津田委員が仰るように単館系でやるとその地域に限定されたお客様が来ると、他のエリアの方々はなかなか来にくいというころで、本当に公表はしていないのですけれども、試験的に単館、劇場が限られている映画をネットで、エリアを限定して期間を限定して配信していくというのは劇場公開と同時に、やっている例は試験的にですけれどもあります。

津田 大介 委員 (MiAU):#

それはすごい面白い取り組みだと思うのですけれども、ネットの方にエリア限定をかけている意味はどこにあるのでしょうか。

華頂 尚隆 委員 (映画製作者連盟):#

それは劇場とぶつかるとまずいじゃないですか。

津田 大介 委員 (MiAU):#

それは同時の時期にということで……

華頂 尚隆 委員 (映画製作者連盟):#

はい、劇場で公開しながらそのエリア外で、たとえば東京で掛かっているものを大阪で配信とか……

津田 大介 委員 (MiAU):#

そういうものがあるのですか。じゃあ終わった後はそれが全国に変わるみたいな仕組みでしょうか。

華頂 尚隆 委員 (映画製作者連盟):#

それは当然、劇場のファーストランが終われば、ファーストランというか劇場の公開が終わればそのあとパッケージ、テレビ、配信という従前と同じですから。

津田 大介 委員 (MiAU):#

判りました。

土肥 一史 主査 (日本大学):#

よろしゅうございますか。じゃあ今子委員どうぞ。

今子 さゆり 委員 (ヤフー):#

杉本委員の資料を見てご質問させていただきたいと思います。先ほど松田委員からも質問がございまして、「サービスとして実現するための要素」というページがあるかと思うのですけれども、この中に権利者団体的なものと事業者団体の協約のようなものであるというお話がございました。

先ほど、事業者すべてをまとめるのは大変かもというお話もあったのですけれども、私は権利者の団体をすべて集めるというのは中々難しいのではないかと懸念しております。

先ほどの話で、タイプ2的な利用者がアップロードするような形のクラウドについてもこちらで対応できるのではということだったのですが、その権利者と言いましても、様々なタイプの著作物があることから、色々な権利者の方がおられると思います。

例えばクラウドの中に PDF のファイルがあったりとか JPG があったりとか、色々なものがありまして、音楽ですとか動画に限らず、様々な著作物がある中、すべての権利者を集めないとそのクラウドサービスを始められないというようなことなのかどうか、教えていただければと思います。

杉本 誠司 委員 (ニワンゴ):#

はい。質問ありがとうございます。そこに関しては当然できるところから始めて全然構わないと思っておりますし、やはりケースをきちんと見せていくということがやはり最大重要だと思うのですね。

なので、すべからく権利者の方々と事業者の方々と話し合いの場を設けていかなければいけないとは言いましたけれども、やはりスピード勝負のところもありますのでまずはモデルを作っていくということに対して積極的にご理解を示していただける権利者と事業者の間でそのモデルを作って行っても良いのかなというふうに思っております。

なおかつ、そのコンテンツそのものがアップロード型であるにしろ、ダウンロード型あるいはストリーミング型であるにしろ、色々な形でデータフォーマット等色々多様化しているということも理解はできますが、そこに関してはむしろヤフーさんであったりとか我々のような事業者が積極的にその技術をきちんと使って行くということが、きちっと使っていってそういったモデルを成立させるということに前向きにならなければいけないのではないでしょうか。

今子 さゆり 委員 (ヤフー):#

ありがとうございました。

土肥 一史 主査 (日本大学):#

それじゃあ松田委員どうぞ。

松田 政行 委員 (弁護士):#

私の意見に関連するから。権利者団体の方は音楽のことを考えれば実質的にはレコード協会を抑えればそれで済むのではないですか。レコード協会はレコード会社の持っているコンテンツを、それは当然実演も含むし、そのルートで JASRAC はレコード協会と必ず話をすると思います。

そしたらレコード協会を抑えれば音楽コンテンツについては事業者と話し合いができるのじゃないでしょうか。権利者団体はそんなに複雑ではないと思います。

ただ、レコード会社が全てのコンテンツを、日本で流れるようなコンテンツについて音源としての権利をもっているかどうかは判らない、漏れるものはあるとは思いますけれども。

土肥 一史 主査 (日本大学):#

じゃあ、畑委員お願いします。

畑 陽一郎 委員 (レコード協会):#

松田先生に奇しくも名指しをいただいたので、少し見解を述べたいと思います。レコード会社・レコード協会としては前回我々の意見を述べさせていただいた通り、新しいクラウドサービスに対して、まさにそれによってユーザーに利便性の高い環境を提供すると、そこについては全く機を同じくすると言いますか、どんどん進めていけばよいと考えています。

その中で、レコード会社が許諾できる音源の範囲、あるいはそれをレコード協会が取りまとめる可能性がある範囲、そういったところについては先ほども杉本委員からお話がありました通り、まずこういうビジネスなのだ、ビジネスモデルなのだということがあって、事業者と権利者が話し合いに着けるのではないかというふうに考えております。

そこにおいてレコード協会もできる範囲のとりまとめということをしていくことは検討中ではないかと考えておるところでございます。

土肥 一史 主査 (日本大学):#

ありがとうございました。それでは……先に榊原委員お願いします。

榊原 美紀 委員 (JEITA / Panasonic):#

ご発表色々とありがとうございました。どの方も皆さん「契約で上手くいく」というような、一言でいうとそういうご意見かなと理解しました。それならばそもそもこういう委員会は設置をされていなかったのではないかなということを思います。

先ほど、すべてのモノが可能かという視点を何人かの委員から仰られていて、すぐには出てこないと。例えば「アナと雪の女王」とても例外的でコレだからこそできたのだということを仰ったり、あとはやはり全ての音源というものの許諾はできないだろうというような話であったりということもありますし、やはり、今までと何も変えなくて良いと。

契約であれば今までと同じなわけですね。じゃあ何故できていなくて、これだけ事業者とかユーザーから問題提起をされて、この会議の設置になったのかということだと思います。

ちょっとご紹介をしたいと思うのが、与党である自民党の知財戦略調査会の提言とりまとめというもので「今後の新たなサービスに対応することができるよう、柔軟性のある規定の制定を含めた審議をするように」と「遅くとも今年度前半には結論が得られるようにという」ふうな宿題が出ています。

前回の会議の冒頭で、知財本部や規制改革会議からは宿題が出ているというご紹介はあったのですけれども、こちらの自民党の方からの宿題はご紹介がなかったので不思議に思ったのですけれども、やはりビジネスというのは色々な形態、新しいビジネスというのは色々なものがあり得るので、固定的ではないという意味で柔軟性のある規定が必要だということは簡単に判ることだと思うのですけれども、やはりユーザーが「何時でも何処でも」という言葉を先ほども仰られたのですけれども、コンテンツが見たいというニーズがあって、しかし色々なサービスができていないと。だからこの委員会に対してそこを解決しろと、解決策として「柔軟性のある規定」が必要ではないかという宿題にもなっていると思うのです。

けれども、それに対して「契約で全部できるのだ」と、出来ている部分は何の問題もないから良いと思うのですけれども、出来ていないから宿題になっているので、そこの答えになっているのかなというのが非常に疑問に感じました。以上です。

華頂 尚隆 委員 (映画製作者連盟):#

今「アナと雪の女王」以外はマルチユースができていないみたいなことを仰いましたけれども、「アナと雪の女王」は偶々劇場公開も含めて同時にすべてのことができているのであって、通常の商業用映画はそれを間を段階を踏んでマルチユースをしていくと。

ですので必ずやりますよ。劇場・パッケージ・テレビ・オンデマンド・配信。そうしないと収益のアテがありませんから。商業用映画の場合ですよ。

榊原 美紀 委員 (JEITA / Panasonic):#

映画の場合は配信の場合を仰っているのだと思うのですけれども、それは契約でできるのだろうと思います。ただそれは例えばテレビに流した場合にはできないのではできないのではないでしょうか。

テレビで映画が放送されているものに対して例えばユーザーの方が家で録画するとか、家の外で視聴をするということについても、一定限度外から視聴をするということはできますけれども、それは今、自由には出来ていないという声は強いと思いますが。

華頂 尚隆 委員 (映画製作者連盟):#

自由と言うよりも放送権を、我々の感覚としてはテレビオンエアするものはリアルタイムで見てくださいというような契約の下にやっているのですけれども、機械が発達してですね、今は HDD に録画してタイムシフトして皆さんは、まあ私もそうしているのですけれども、まあ、そういうことだと思うのですけれども。

松本 悟 委員 (日本動画協会):#

よろしいでしょうか。テレビ放送事業者、放送局ですね。サイドと放送権の契約をしています。自由に放送している訳ではないし、日本の場合は地域、日本全国にありますので、そこから全く規定されていない地域、海外に配信を含めてやっちゃうとかいうことは、また別の基準・条件をおいて契約をしていますので、それはテレビ局との契約書に基づいてやっています。

だから自由にやっているという今の発言はちょっとおかしいかなと思います。

土肥 一史 主査 (日本大学):#

じゃあ河村委員どうぞ。

河村 真紀子 委員 (主婦連):#

杉本委員に質問をしたいのですけれども。ページが…… A4 の 2 ページ目の下、他のところにも同じようなことが書いてあると思うのですが、「私的利用」か「共有利用」かというのはライセンスの取得タイミングの……上で言いますとライセンスの取得タイミングの話と書いてありまして、下のところは共有なのか私的なのかという分け方なのですが、この私的のところにシングルライセンス適用と書いてあるのですが、私が買って手に入れた CD を自分のロッカー型クラウドにアップして、自分のデバイスで楽しみたいというときには、どういう、ここではどういうことになるのでしょうか。シングルライセンスが必要なのでしょうか。

杉本 誠司 委員 (ニワンゴ):#

はい。河村委員ご自身が色々な形で自分で聞きたいというニーズがあるのであればシングルライセンスですし、それを第三者に聞かせようと思った瞬間にマルチユーザライセンスが必要となると思っています。

河村 真紀子 委員 (主婦連):#

クラウドにアップする時にライセンスが必要ということですか。

杉本 誠司 委員 (ニワンゴ):#

いえ、そのコンテンツそのものがライセンスされているということが前提です。

河村 真紀子 委員 (主婦連):#

普通に販売されている CD を今ウォークマンで聞いて、私的複製だと思っているその延長でこの便利なクラウドという──昔はなかったかもしれませんけれども──クラウドにアップして自分のデバイスで聞くということを、自分が買った自分が持っているものでやるというときに、これが当てはまるのでしょうか。

杉本 誠司 委員 (ニワンゴ):#

それは今日現在実現できているものはないと思うのですけれども、例えばそれがパッケージにしろダウンロード型にしろ共有型にしろ、それを購入したという事実は何らかの形で痕跡として残せると思うのですね。プレイヤーとして。

それと色々なクラウド上にある──それをどう管理するかということはこれから考えなければいけないですけれども──河村さんがお持ちの ID というものは存在すると思っていますので、それとの紐づけすることによってその購入したそのものがコンテンツそのものであれば、それをシングルライセンスとして扱うのか、マルチライセンスとして扱うのかは購入段階の認証によって管理できると思うのです。

河村 真紀子 委員 (主婦連):#

今後、そういうふうにコンテンツを売ったらという意味ですか。最初の時点から。

杉本 誠司 委員 (ニワンゴ):#

はい。

河村 真紀子 委員 (主婦連):#

今、私が持っている CD を、クラウドを使わなければ色々なところにコピーして自分が聞くことができているのですが、それをクラウド使って同じようにやるということはダメということでしょうか。

杉本 誠司 委員 (ニワンゴ):#

それは後付けで処理するために、現状のロッカーのような機能みたいなものがこれから将来にわたって機能改善するということをもって使っていくということは有りだと思っています。

当然過去に購入したものに関して、それにライセンスをどういうふうに振っていくか、それをどう管理していくかということは課題として残ると思うのですけれども、それに対しても後処理という形でそれぞれの方がやって行けるのであればそれは残ると思うし。

ただ、当然その処理が行われないものがある程度流出してしまうということに関してはそれは別途対応を考えなければ、それはやはりいけないと思っていますし、それはむしろ課題です。

ですからそこをどう考えるかといったところをむしろ時間と技術をどう使っていくかということを論点に使ってはどうですかという提言をしたわけです。

河村 真紀子 委員 (主婦連):#

ありがとうございました。意見を申し上げてもよろしいですか。

もういつも繰り返しで、素朴な意見なのですけれども、今日色々な、華頂委員からも発表がありましたけれども、こういう色々な便利なサービスが出ることには大歓迎ですし、それは本当に色々な契約関係の中で提供していけばよろしい話であって、それについて何か賛成とか反対とかは全くない訳です。

おそらくここで言っているのは消費者自身が持っている、自分が違法ではなく正規に持っているものに関して、今まで色々なクラウドではないデバイスで出来ていたようなことをクラウドを使って、折角技術が進歩したのだからもっと便利に自分が取得しているものに関して自由に楽しめたら良いのにというところを私は求めています。

それは例えば、今申し上げた買った CD であったり、正規に配信で求めた音楽であったり、きちんとしたルートで手に入れた動画であったり、あるいはテレビ放送の録画であったり。

ここでテレビと言うとすぐに「映画」はとか「アニメ」はという話になるのですが、映画がどうかとかアニメがどうかということよりも、無料放送に流れているものを、今、消費者は録画ができているわけですから、そこに関してニュースであろうとなんであろうと、今できているような自由な録画行動とタイムシフト・プレースシフトがクラウドを使って便利にできて然るべきだと思うのですが、そんな簡単なことも今はできないと。

そういうことを解決していくということがこの委員会なのかなと私は思っておりました。

土肥 一史 主査 (日本大学):#

はい。榊原委員どうぞ。

榊原 美紀 委員 (JEITA / Panasonic):#

済みません。先ほどのやり取りの補足を。松本委員ですかね、誤解を招いているといけないなと思いますので。「自由に」という言葉をどこで修飾で使ったか、自分では少し前の記憶がないのですけれども、「自由に」と言ったのはユーザがですね今は私的複製で録画ができたり見たりできるわけですけれども、それを持ち出したり自由に色々なところで見たりというのはやっぱり CD と同じで、自分で適法に入手したものは自由に使えるべきであろうと。

ただすごく限定的にしかできなくて、先ほど、リアル視聴が基本だというご指摘があったのですけれども、それはやはり社会の今のニーズ、一般の国民からするとかけ離れていると思うのですね。

スキマの時間を利用してテレビを見たいとか、音楽もクラウドに置いておいて自由に使いたいというニーズは非常に使いたいというニーズは非常に大きいと思うので、それができている部分については契約でやればいいと思うのですけれども、出来ていないものが一定限度残っていると。

それは杉本さん華頂さん仰ったと思うのですけれども、そこをやっぱりどうやって解決するのですかということに対して、今まで同じ契約ではできないわけですから、それに対する解がやっぱり要るのではないかというご意見でした。以上です。

土肥 一史 主査 (日本大学):#

はいありがとうございました。それでは畑委員どうぞ。

畑 陽一郎 委員 (レコード協会):#

先ほど、河村委員と杉本委員のお話をお伺いして、一つ杉本委員に確認をしたいのですが。杉本委員の資料で、「手段と目的」のコンテンツのライセンスと書いてあるところ、「配信型」か「ユーザUL型」かというところと、その下のページのシングルライセンス・マルチライセンスと。

特に、先ほど自分がコンテンツをクラウドに置いて使うというところのシングルライセンスで言うと、杉本委員のご主旨としては今後の話としてはユーザーが例えば音楽を買うときにそういったシングルライセンスを含んだ形で売ることもありうるでしょうと。

ただし今現状の CD をクラウドに上げて使う場合は後処理になるので、その後処理を多分、ユーザに持っていらっしゃるということではないのだろうなと理解をしているのですが、つまり後処理についてはサービスをやる事業者と権利者の間で後処理ができるようになるべきだと。

そういうご主旨かと理解をしましたけれども、そういうことでよろしいでしょうか。

杉本 誠司 委員 (ニワンゴ):#

はい。その部分に関しては権利者と事業者の間で多分解決できると思っておりますが、実際の利用者そのものが例えば従来から自分の所有してるコンテンツそのものを最終的にどのように使いたいかに関わると思っているのですね。

それが相変わらず当初購入目的としては、その私的利用を目的として様々なコンテンツを購入していると思われますので、そういう経緯が多分関係者で判断されると思います。

なのでそれがそのままなのであれば当初の購入状況通りに私的利用ということを前提にライセンスを振り直しますというようなことを定型的にやればよいのではないかと思うのですね。

そのタイミングで、例えば機能として提供されていればの話なのですけれども、仮に第三者と共有したいというそういう意思をお持ちだった場合、なおかつそういった機能がサービスとして提供されているのであれば、そこはプラスアルファのマルチライセンスという形のエントリーを、もしかしたらその場合にはお金を払うという必要性は普通にあると思うのですが、それは有償なのか無償なのか現段階では判らないですけれども、それがマルチライセンス化したいニーズがあるのであればその処理をするということをサービスの中に入れていくということすれば済むのでないかというふうに思っています。

なので基本的にはそのまま継承するのであれば、シングルライセンスのまま使えるという考え方で、そこに関してはさほど意識的に色々なことをやっていく必要はないのではないかと思っています。

華頂 尚隆 委員 (映画製作者連盟):#

済みません。先ほどの榊原委員のご意見ですけれども。確か去年も同じような質問をしたと思うのですが、テレビ放送はダビング 10 で運用しているのですけれども、あれを決めたときに、仮に我々が EPN を選択したとしてもネットには出ないというような約束事が ARIB であったような気がします。

それも去年、私がご質問をしたら「紳士協定だから別に罰則もないし」みたいな話だったのですけれども、紳士協定だからこそ反故にしてはいけないのじゃないかなとは思います。

逆にですね、我々が映画をオンエアするときに、HDD には収納されても外には出ないという信号をコンテンツに仕込んでオンエアしたとしても、ダビング 10 ができなくなるのですけれども、それはそれで紳士協定だから良いのですよね。

土肥 一史 主査 (日本大学):#

ええと、今のご質問……に対して、はい。ではお願いします。

榊原 美紀 委員 (JEITA / Panasonic):#

これは個人的な意見ですけれども、HDD にだけ収納されて外には持ち出せないという機能はどうかというご主旨ですか。リムーバブルメディアとかには出せないとかタブレットには出せないとか。

それは非常に不便なのではないでしょうか。

華頂 尚隆 委員 (映画製作者連盟):#

いやだって紳士協定だから。

榊原 美紀 委員 (JEITA / Panasonic):#

紳士協定は今、「守るべきである」と仰られていたと思うのですが。

華頂 尚隆 委員 (映画製作者連盟):#

じゃあネットに出さないでくださいよ。

土肥 一史 主査 (日本大学):#

(少し沈黙があった後で)その前に実は津田さんが手を挙げられたのですけれども、お二人同時に挙げられておられたので、津田さんから先に。

津田 大介 委員 (MiAU):#

意見と質問があって、榊原委員のお話とも関わるのですけれども、コンテンツの配信ビジネスを考えた時の、当然海賊版対策の問題があると。ただ海賊版の対策をどうすればよいのかというのは摘発の強化とともに、当然やはり合法的なコンテンツをユーザに利用しやすい形で提供するという両輪でやる。その両輪がなければワーク (機能) しないということは、これはブロードバンド時代になったこのグローバルに見てもこの 10 年強のコンテンツ業界の常識だと思うのですよね。

それを踏まえた上で僕が思うのは、榊原委員の話とも関わるのですが、現実ベースとしてすべて今契約ベースでできているかと言ったらできていないわけですよね。

音楽は先ほど松田委員の話もありましたけれども、原盤権の問題があるので、原盤権というのはレコード協会もしくはレコード会社が全部握っている訳ではないので、もうこれはバラバラ、ダウンロードに関してはバラバラにあるのです。

例えば今、普通の CD ショップに行けば必ずサザンオールスターズの CD が置いていますけれども、ただ iTunes Store に行ったらそれは買えない。それは「出さない」という判断をアミューズが、サザンオールスターズの事務所がやっているからでもあるし。

あとは 2012 年の、2 年前まで業界最大手の SONY Music の曲が iTunes で買えないということもあって、これはやっぱりユーザーにとっても、そしてミュージシャン、SONY 所属のアーティストというのは配信してくれよと思っていても配信できないという状況があった訳ですから、やはりそれが契約ベースで解決できるかというと、ボトルネックになっている訳ですよね。

華頂委員の話でマルチウィンドウ化して行きますよという話もあった訳ですけれども、それで全部でカバーできているかというと、やっぱり出来ていなかったりするというところで、じゃあ日本の、結局日本の契約ベースのコンテンツ配信の現実というのはそういうことがまずあると。

アメリカに比べるとそれは明らかに遅れていて、結果的にそれがユーザーにとって利便性の高い合法的なコンテンツが流通していないという環境があると。大事なのはここからで、じゃあそれがむしろ知財ビジネスの振興、クールジャパンという意味ではボトルネックになっているのじゃないかと。それが自民党の知財戦略調査会の、榊原さんから先ほどご紹介いただいたその提言にも繋がっているということだと思うのですね。

そういうものを、日本において力技で超えられた、契約ベースで全てというのを超えられた唯一の例が杉本さんのやはりニコニコ動画、ニワンゴだと思うのですね。

実際にニコニコ動画の存在がユーザーにとってもクリエイターにとっても利益やメリットをもたらしている状況がある中で、今日の杉本さんの発表の中で、「許諾範囲の想定を超えた場合はオプトアウトで処理する」というのはこれはかなり大胆な提案だと思うのですが、僕が伺いたいのは、権利者の方に伺うのはここにいらっしゃるので、この杉本さんの提案の「許諾範囲の想定を超えた場合の対応はオプトアウトにする」ということが、これはどう思っているのか伺いたい。

一部検討してもいいのか、もし前向きに話してもいいよということだったら、この委員会というのはそういうことを議案にしても良いと思うのですけれども、如何でしょうか。

権利者団体の方々に杉本さんの提案をどう思うのかということをそれぞれ簡単に伺いたいなと。

椎名 和夫 委員 (芸団協):#

オプトアウトというのをどのような意味で使われているのかよく判らないのでここで直接反論することができないのですけれど、例えばヨーロッパ等でのオプトアウトというと、自由に使っていいですよというホワイトリストというものが事前にあって、そこに入れたくないものをオプトアウトすると、こういう意味であれば全然あり得る話だと思います。

ここで、さっき松田先生がレコ協と話をすれば終わるじゃないかという話を仰ったのですが、そのオプトアウトのこととか様々に考えていくと、やはり権利者団体全体での何らかの集中的な管理の仕方みたいなことを権利者団体としても考えていくべきなのかなとというところで、現状出来ていないことを緩和していくような取り組みは権利者団体側でもなにか必要なのだというふうに思って聞いておりました。

それにプラス、この杉本さんのご説明の肝心なところは、事業者がサービスを展開するうえで、事業者もリスクを取りますという表明なのですね。全部タダで自由にやらせてくださいということではなくて、事業者もその中に入って、複製主体になるのかならないのかという議論は勿論まだあると思いますけれども、一定のリスクを取って、お互いに WIN-WIN になるようにしていきましょうという表明だと思うので、この杉本さんの提案というのは非常に歓迎できるものではないかと思います。

同じような考え方で、やっぱりコンテンツの訴求力から果実を享受する人は一定の負担をしていく、そういうやり方をもってすればですね、色々と不便なことも便利になっていくのではないかというふうに思って聞いていました。

土肥 一史 主査 (日本大学):#

はい。次は華頂委員。

華頂 尚隆 委員 (映画製作者連盟):#

津田委員のご質問なのですけれども、許諾の範囲の想定を超えた場合の対応なのですけれども、許諾の範囲を超えた想定のビジネスに対して許諾契約をするということで、ただそれを呆然と見ているということはあり得ない。

全て、先ほども冒頭でご説明した通り、映画製作者はマザーデータを主体的にコピーコントロールしていかないとビジネスが成り立たないので──商業用映画でですよ──成り立たないので、こういうことはやっぱり有り得ないですね。

それともう一つは、津田委員はちょっと誤解していると思うのですけれども、マルチユースが全ての映画で出来ていないと今仰ったような気がするのですけれども、アナ雪の事例は全て今オール OK の視聴で提供していますよという本当に特異な事例なのですけれども、どんな映画でもその作品、それから事業者の体力、これはある訳ですけれども、その体力なりにマルチユースは必ず行います。

同時にすることは中々、このようなアナ雪のようなことはできないのですけれども、必ずマルチユースをします。それはマルチユースをしないと次の映画の製作に繋げていくことができないからですね。

土肥 一史 主査 (日本大学):#

あの……はい、じゃあ岸委員どうぞ。

岸 博幸 委員 (慶応大学 / avex):#

済みません。全体的な意見というかコメントになるのですが。何人かの委員から、契約関係全体が良くない、自民党も言っている、だから何らかの特別措置をするべきだというような意見ととれる主張があったのですけれども、私は個人的にそういう意見に違和感があります。

つまり、知財取引も基本的には経済取引なのですね。経済取引の原則という観点から考えればやはり契約関係で処理代替できるものは基本的にそうすべき。例えば実体経済の部分では皆契約関係で経済取引をやっているから、例えばあるコンビニに行けば全部の商品がある訳ではないです。その中でユーザーもそこに無ければ別の所に行くわけです。

じゃあ実体経済ではそのように当たり前に行われていて、何の問題も起きていない。で、ネット上であるところであるメーカーの楽曲が買えない。しかし別にメーカーのサイトに行けば買える。

そういう中で、ユーザーに対しては選択肢があることが大事な訳であって、それを実体経済と違えて、知財だネット上だ、だから契約関係で全部救えないことがあるのだからそれは特別な対応をしろというのは、経済取引の常識から考えればそれで本当に良いのかという違和感を非常に感じています。

土肥 一史 主査 (日本大学):#

ありがとうございました。じゃあこの点まだまだ議論は尽きないと思うのですけれども、河村委員を最後に意見をいただければと思います。

河村 真紀子 委員 (主婦連):#

済みません。先ほどの華頂委員と榊原委員の所で一言申し上げたかったのですけれども、華頂委員が仰った「ネットに出る」という言葉なのですが、私が先ほどからこの委員会で実現したら良いなと言っている、タイプ 2 のロッカー型のクラウド、クラウドを使うからと言ってネットに出るというのとは全然違う意味だと思いますので、そこは本当に言葉通りの意味で「ネットに出る」ということであれば色々な話し合いなり対償が必要だと思いますけれども、私の言っている、自分の持っている自分の所有物であるものを便利に使いましょうということについて「ネットに出る」という言葉を使うと全然違う意味合いになってしまうと思っております。

それからもう一言、今、岸委員が仰っていたことなのですが「コンビニに行って何でも売っている訳ではない」と、買いに行くということよりも、繰り返しになりますけれども、自分が今まで生きてきた中で取得したコンテンツに関して、折角技術があるのだから、もっと楽しく色々なバリエーションを持って楽しみたいということですから、これは自分が持っているものですから、その話とは少し違うのではないかなと。買いに行く訳ではございませんので、自分の持っているものの使い方を便利にしたいということなのではないかなと私は思っております。

土肥 一史 主査 (日本大学):#

はいありがとうございました。時間に限りがございますし、今日のこの点についての議論は非常に内容のあることは十分に承知いたしております。問題としては権利者と利用者間・事業者間における契約がスムーズに行くのかどうか、杉本委員の仰る窓口の重要性という問題。

それから事業者が一般ユーザーに対して提供するサービスの内容がどういうものなのか、それがユーザの満足できるものなのかどうか、公平性がかならずあるものなのか、そういうような所がまだまだ議論があるのだろうなと承知しております。

まだ次回も議論できますので、この点については以上というふうにさせていただければと思います。

続きまして、二つ目の議事であります「私的録音録画に関する実態調査について」に移りたいと思います。本検調査について前回音楽分野についてご報告をいただいたところでございますけれども、今回は映像分野についてご報告をいただきたいと考えております。

それでは株式会社野村総研、小林様、八浪様、どうぞよろしくお願いします。

八浪 暁 参考人(野村総研):#

野村総研、八浪と申します。よろしくお願いします。お時間も押していますのでかいつまみながら私的録画についてご説明差し上げたいなと思います。

まずめくっていただきまして、1 ページに概要を書いております。こちらの方は録音の方とほぼ鏡になっておりまして、一次調査と二次調査ですね、二つの調査を WEB と郵送でやっておりますというところ。それから一次調査でデジタル録画をできる機器を持っている方を抽出して、その方々に対して二次調査で具体的な使い方はどうですかという話を聞いているという内容となっております。

それからすべての「図表」に WEB というのが付いてますけれども、基本的には郵送も行っておりますけれども、WEB 調査の結果を補完する役割として──サンプルも少ないですし──考えておりまして、基本的に織り込む結果はすべて WEB 調査の結果ですということをご承知ください。

まず基本的な、広い範囲の話から具体的な部分に流れるという説明になるかと思うのですけれども、まず最初にそもそもテレビ番組を録画しているかどうかというところを聞いておりまして、2ページの部分ですね。地上デジタル放送──色々な放送波について聞いているのですけれども、過去一年間の録画分と見ますと──地上デジタル放送ですね、一番上の部分は全体の 7 割ぐらいの方が録画を、ダビングをですね、したことがありますというふうに答えられるということです。それが 2 万人の方に聞いた一次調査の結果というところになります。

それから実際にデジタル録画をやっていますというような方に対して、実際の時間を聞いております。これを見ていただくとですね、全体的に平日と休日で分けてですね録画の時間を聞いておるのですけれども、平日で平均1時間44分、それから休みの日で2時間19分というような結果となっています。右側の部分が「平均視聴時間」となっていますけれども、こちらは録画時間の間違いですのでご訂正いただければと思います。

だいたい平日と休日あわせて2時間ぐらいの録画がなされている訳なのですけれども、こちらに関してどういった目的でやっていますかと聞いておりまして、それが4ページの結果でございます。基本的には外出したりとか手が離せない場合に後で見るためというような形あるいは複数チャンネルで重なった場合ですね、といったような場合で実際の放送時間よりもずらす場合が中心となっています。

すみません駆け足になってしまって恐縮なのですが、5ページですね。5ページに関しましてはこちらはですね、録画に関して一体誰のためにやりましたかというところを聞いておりまして、こちらに関しては色々な対象に対して何パーセントぐらいやっていますかという選択肢に従って 0% から数% という形で聞いているところなのですけれども、こちらを見ていただくとですね、基本的に自分か自分の家族というのがメインになっていまして、それ以外は非常に少ないというような結果となっております。

それから実際に録画をしている方に対してジャンルも聞いておりまして、それが 6 ページの結果でございます。こちらは時間の関係で割愛させていただきますので後で見ていただければなと思います。

それからですね、実際に録画したものを見るかどうかというような話も含めまして、テレビの視聴自体がどういう状況になっているかというところを抑えるべきかなというところで、7 ページにそちらの調査結果を載せておるのですけれども、こちらもですね、平日と休日で分けまして、リアルタイムで見るものと録画やコピーしたものを見る時間ですね、それぞれ 4 つ分かれて聞いております。

こちらを見ていただくと、リアルタイムで見ている番組が1時間57分、それから録画やコピーで見る番組が1時間14分。それから休日の場合で行くと、2時間22分と1時間37分というような形でこちらを見ていただくとですね、視聴全体の時間に占める録画番組の割合は大体4割ぐらいですというところが見てとれるかなと思います。

それからこれまで、過去 3 年間の変化というのを聞いておりまして、それが 8 ページにあるのですけれども、上段がですね、リアルタイムで見る時間が 3 年前と比べるとどう変化しましたかというところを聞いておりまして、ここに関しては右側の減ったという方が増えていると。他方、下の録画して見る時間ですね、こちらの方に関しては左側の増えたという方が多いというような結果となっています。ですので方向感としては録画で見る方がどんどん増えてきているというところとなっておるかと思います。

それから 9 ページは、テレビ視聴が減った理由ですけれども、こちらはお時間が少ないので割愛させていただきます。

それから 10 ページの、こちらは録画視聴を増やした理由を聞いておるのですけれども、こちらは真ん中ぐらいの選択肢の「CMを飛ばして効率よく見たいから」というようなところが最も多くてですね、続いて「機器・メディアの大容量化・高機能化」というところが

多かったという結果でございます。

それから 11 ページですね。こちらは録画されている方に対して「どのような機器でやっていますか」ということを聞いていまして、一番上のデジタル録画専用機で録画した経験があるという方が 9 割ぐらい、それから録画機能つきテレビで録画したという方が 8 割ぐらい。それからその半分ぐらいの率でパソコン・スマフォ・タブレットというようなところが出てくるというような結果となっております。

12 ページはお時間の関係で割愛させていただきます。

それからですね、13 ページの方にディスクですね、Blu-RayやDVDのメディアに録画した方の目的というところを聞いているのですけれども、基本的には 9 割がたが「自分で保存しておくため」とお答えになっていまして、他人に渡すというところは全体からするとわりと少ないという結果となっております。

それから 14 ページですね、実際に録画機器を持たれる方に対して容量を聞いております。ここは一番上の HDD レコーダの所を見ていただきますと、平均して内蔵で 700G、外付けでも 1000G を超えるような平均容量というところで、比較的皆さん、実際に市場に売れているものを見ますと意外な数字ではないかもしれませんけれども、実際大きな数字の容量のものをお持ちというようなところとなっています。

それから 15 ページに、その大容量のものを実際にどれぐらいの割合で使っているのかというところを載せております。こちらは結果を見ていただければと思います。16 ページも飛ばします。

19 ページをご覧いただきまして、こちらがクラウドサービスをテレビ番組保存用に利用していますかというようなことを聞いておりまして、少なくともテレビ番組を保存するという意味合いに関して言うと、無料使用・有料使用含めてあまり多くの方が使っていると──少なくとも割合として見るとですね──あまり多くの方が使っているという状況ではないかなというところでございます。

それから 20 ページの部分もそうなのですけれども、そういうクラウドサービス等でテレビ番組を共有したことがありますかというような質問に対しては、この利用率を見れば出てくるところではありますけれども、殆どの方が共有したことがないというお答えになっているという状況でございます。

それから 21 ページに、クラウドサービスの容量を聞いておるのですけれども、こちらは後ほど見ていただければなとこういうふうに思います。

主要なところは前半部分で、これまでご説明したところで抑えられているかなと思いますので、ちょっと早口になってしまって判り辛かった部分もあったかとは思いますが、私からの説明は以上でございます。

土肥 一史 主査 (日本大学):#

小林様からはよろしいですか。

小林 孝嗣 参考人 (野村総研):#

そうですね、特に割愛した 18 ページなんかはまさに機器の新サービスか何かでどう視聴スタイルが変わったというところで聞いた質問でして、やはり「好きなジャンルとかタレントとかを見たい時に見られるようになった」という方が多いですけれども「リアルタイムで見るか、録画で見るかを気にしなくなった」という意識的な変化もやはり高い視聴者が出て来ていることですとか、「今まで見ることがなかったジャンルの番組を視聴するようになった」という方も出てきていますので、今後の課題を考える上でこういう機器の提供するサービスがユーザの視聴意識を変えていくということもありますと付け加えさせていただきます。

土肥 一史 主査 (日本大学):#

ありがとうございました。それではただ今の八浪様・小林様のご発表・ご説明についてご質問・ご意見がございましたらお願いいたします。はい、榊原委員どうぞ。

榊原 美紀 委員 (JEITA / Panasonic):#

一点質問をさせていただきたいと思います。19 ページでクラウドを使ったテレビ番組の保存・共有について使用しているユーザーが少ないので録画行為への影響は限定的と書いてあるのですが、これは使っているユーザーが少ないからニーズが少ないという趣旨なのかなと思いましたけれども、そもそも出来ないから使っている人が少なくて、使っている人は何か、非常にその何というのでしょうかちょっと、ヲタクというか、何かをして、私ができないようなことをやられて、録画・保存をされているということであって、メカに弱い人にはこういうニーズ自体は大きいのではないかと思ったのですけれども、理解が正しいかどうか教えてください。

八浪 暁 参考人(野村総研):#

そういった意味で言うとですね。ここの質問に関しては保存する行為の部分だけにまず焦点があたっているというところを考えていただいて、例えば量的に録画の量が総量としてどうなのかとか、少量のユーザーが大量に録画していないとは限らないとか、そういった意味で言うと量的な側面はというのは中々見ずらい部分もありますけれども、あくまでもこの設問に関しては頭数の割合だけ捉えた聞き方になっておりますので、その部分で、なんと言いますか、まあ、理解としては正しいかなというふうに思います。

土肥 一史 主査 (日本大学):#

他にどうでしょうか。津田委員どうぞ。

津田 大介 委員 (MiAU):#

11 ページの図表 1-11 で、実際に何のデバイスで録画したことがありますかという所は、上のデジタル録画専用機器や録画機能付きテレビであるという数字に関しては全然違和感がない所なのですが、このデスクトップパソコンとノートパソコン、もしくはスマートフォンでテレビ録画したことがあるというのはちょっとこれは高すぎないかというのが僕の実感としてあるのですよね。

今パソコンの量販店に行っても、テレビチューナー付きのパソコンって実はほとんど多分今は売れていないですし、例えばスマートフォンと言っても Android と iPhone という 2大端末がある中で、テレビ番組を録画すると言ったら、1seg が入っているもの、例えば SD カードに録画するという機能であっても、大体シェアで言うと半々ぐらいでしかないとすると、その時点で iPhone のユーザー、iPad のユーザーというのはそもそも視聴ができないという状況がある中で、これだと Android ユーザーのほぼ 8 割 9 割が 1seg 機能を使って録画しているみたいなことになってしまう。

実際の 1seg の利用率とかの調査を見てもこれは有意に高すぎるということになってしまうのではないかと思うのですが、設問としてはどういう設問になっているのかお聞かせいただけませんか。

八浪 暁 参考人(野村総研):#

まず設問としてどうかというところなのですが、設問の内容自体は「図表」とある後に続いている文章がそのまま設問の内容というかですね、この聞き方で聞いていますという形です。

津田 大介 委員 (MiAU):#

これは例えば、パソコンとかスマートフォンで、YouTube とかでテレビ番組を見たというのが誤解してそこであるとなっている可能性はあるのですか。それだったらまあなんとなく判るのですけれども。

小林 孝嗣 参考人 (野村総研):#

この質問は冒頭で説明した二次調査の質問なので、何らかの録画したという方に対してこの録画の状態を深堀している設問です。なので、普通の Android ユーザーという訳ではなくて録画した経験のある方の中で Android という方でやっている状況です。

というのと、おっしゃる通りこの文章なのでこの文章通りに見ていただいて、ユーザーさんが答える方が「テレビ番組を録画した」と聞かれた時に、仰る通り YouTube で見たやつを録画したということで可能性は否定できません。

土肥 一史 主査 (日本大学):#

他に如何でしょうか。よろしゅうございますか。(30 秒程度発言希望者出ず) 大体予定の時間も来ておるのですけれども、もし特段ご質問・ご意見等無いようであれば本日はこれぐらいにしたいと思いますけれども、よろしゅうございますか。

それでは最後に、事務局から連絡事項があればと思うのですけれども、私冒頭でご紹介するのを忘れておったのですけれども、第一回目はご欠席だったのですけれども、今回から長谷川委員にお出でいただいておりますので、ご紹介だけさせていただければと思います。

長谷川 浩二 委員 (東京地裁判事):#

東京地裁の長谷川です。よろしくお願いします。(マイク外だったのでここの発言聞き取り自信なし)

土肥 一史 主査 (日本大学):#

よろしくお願いします。それでは事務局から連絡事項があればお願いいたします。

秋山 卓也 課長補佐 (文化庁 著作権課):#

本日はありがとうございました。次回の小委員会につきましては改めて日程の調整をさせていただき、確定次第ご連絡いたします。

土肥 一史 主査 (日本大学):#

よろしくお願いいたします。それではこれで著作物等の適切な保護と利用・流通に関する小委員会 第二回目を終わらせていただきます。本日は熱心なご議論ありがとうございました。