知的財産戦略本部
インターネット上の著作権侵害コンテンツ対策に関する WG
第四回 (2010 年 3 月 15 日)


この文章は、一傍聴者が傍聴の際に録音していたデータからテキストに起こしたもので、公式の議事録ではありません。録音データは [WMA / MP3] があります。雑音等も多く、聞き取りにくいところも多々ありますが御容赦ください。また会議の際に配布された資料は知財戦略本部のページ [URI] にて公開されています。


土肥座長:#

それでは、予定されておられる委員の皆さまもお揃いでございますので、ただ今からインターネット上の著作権侵害コンテンツ対策に関するワーキンググループの 第 4 回会合を開催させて頂きます。

本日はご多忙のところ御参集頂きまして誠にありがとうございます。

まずは、本ワーキンググループの親会である「コンテンツ強化専門調査会」に中山委員から御報告を頂いておるところでございますけれども、事務局から御報告ございましたらお願いします。

奈良参事官:#

それでは資料 1 を御覧頂きたいと思います。このワーキンググループの親会でございます「コンテンツ強化専門調査会」におきましては、コンテンツ産業の振興全体の観点から、特にネットビジネス、あるいはデジタル化に伴ったビジネスの振興について議論している訳ですけれども、その一環として侵害コンテンツ対策に付きましても相互に御意見を頂いているところでございます。

前回、先週火曜日でございますけれども、第 4 回の専門調査会がありまして、その場におきまして中山委員から現在の検討状況に付きまして、資料が出ておりますけれども、参考 1 とございます資料をとりまして第 1 回の報告をおこなった所でございます。

その時に出た意見、あるいはその前に出た意見も含めまして、どんな意見が出ているかということを簡単に御紹介したいと思います。

資料 1 でございますけれども、まずコンテンツ産業の強化を図るという観点から侵害対策の強化と、それから正規版流通の両輪を進めて行くということが必要であるという意見。

それから、ニコニコ動画に付いては、自主的にコンテンツを削除する取り組みをしているけれども、今は正直者が馬鹿を見るといった所があるということと、一律の規制を義務で課さないと意味がないのではという意見。

それから、今後起こることの、規制にあたっては今後起こることの可能性を潰さないように配慮して欲しいという意見。

それから、紹介目的の、例えばこの範囲の利用は可能というルール作りも必要であるという意見。

それから、違法配信のダウンロードについて、今は罰則がないということでありますけれども、駐車違反の罰則のような意味での罰が必要ではないかという意見。

それから、海賊版によりまして、日本のコンテンツが海外に広く普及したと言う背景もあるということで、それをマネタイズするという議論もありましたけれども、なかなか出版社さんにおいては難しいという意見。

それから、コミックマーケット等、著作権侵害が行われているけれども、それは大目に見るべきではないかというような意見と、何か子供に対する配慮が必要ではないかという意見が出たところでございます。

以上です。

土肥座長:#

ありがとうございました。それでは、中山委員なにか補足がございますか?

中山委員:#

いや、ございません。

土肥座長:#

それでは続きまして、インターネットユーザ協会から意見書が提出されておりますので、事務局からお願いします。

奈良参事官:#

資料 2 を御覧頂きたいと思います。これまでユーザの意見をというようなお話もありましたので、インターネットユーザ協会に意見書をお願いしたものでございます。

また、事務局の方で一つ、お話を伺ったところでございます。

内容は、資料 2 の通りでございますけれども、まず全体の話として、ACTA の草案、条文案を一刻も早く公開すべきであるという点。

それから、侵害コンテンツによる被害は過大評価なのではないかと。即ちダウンロード数×コンテンツの平均単価ということで計算しているけれども、それは過大評価なのではないかという点。

二枚目に参りまして、3 点目と致しまして、本 WG へのユーザの代表参加など、ユーザからの意見聴取の機会を設けて欲しいとの意見がありました。

それからプロバイダの関係では、1 つ目としてノーティス & テイクダウンというような、権利者から通知を受けたら削除するという方法ではなくて、権利者から通知を受けたら、それを発信者に通知するという方法を基本として欲しいという意見。

それから、2 ページ目に参りまして、いわゆるスリーストライクの制度の導入には反対であるという意見。

それから、最後でございますけれども、アクセスコントロール回避規制につきましては、アクセスコントロールについてはユーザの利便性を大幅に損なう可能性があるということと、アクセスコントロール・コピーコントロールではなくて、ネットワークアップロードの所でコントロールするということを重視するべきであるという意見が出ている所でございます。

以上です。

土肥座長:#

ありがとうございます。それでは、これまでの議論の経緯について入っていきたいと思います。まず事務局から説明をお願いいたします。

奈良参事官:#

それでは資料 3 を御覧頂きたいと思います。これまでの議論を踏まえまして、事務局の方で整理したものでございます。議論の方向性が判るように、結論的な部分につきまして四角あるいは下線部分で引いてございますので、その部分を中心に御説明させて頂きたいと思います。

まず一つ目のアクセスコントロール回避規制の在り方についてでございます。一つは回避機器でございますけれども、現状の被害実態等を踏まえまして、機器の規制につきましては対象行為をいわゆる「製造」「回避サービスの提供」というところに拡大する。また対象機器を拡大する。これは「のみ」要件の緩和でありますとか、あるいは主観的要件とか逆算的要件の組み合わせによる規制などによりまして、対象機器を拡大するということが必要ではないかというふうに考えております。

また、対象回避機器の頒布等に刑事罰を設ける、また回避機器の水際規制を設けるのも必要ではないかと思っているところでございます。

1 ページ目の所にございますけれども、まず (2) の対象行為の拡大についてという所でございます。

2 ページ目を御覧頂きたいと思いますけれども、問題点と致しましては、製造に関しまして回避プログラムは国内で開発される、あるいは回避機器を国内で組み立てるケースがあるということでありますとか、あるいは回避サービスにつきましては、ユーザに対して機器を改良し、回避できるようにするサービスが行われているというような問題があるということで、(4) の所で必要な対策としては、製造、それから回避サービスの提供を回避規制対象とすることが必要ではないかと考えております。

留意事項と致しまして、製造につきましては、メーカにおける機器の製造や保守等を考慮するということで具体的な規制範囲につきましては、制度設計をさらに検討することが必要ではないかと考えております。

また同様に回避サービスについても、現在コピーコントロールに付きまして、限定的に規制していること、それから単なる情報の提供と言う所は表現行為そのものでありますので、こうしたものは規制対象とするべきではないと考えますので、その辺も含めて今後制度化にあたっての検討事項としてはどうかというふうに考えている所でございます。

2ページ目の (3) でございますけれども、対象機器の拡大ということについてでございますけれども、3 ページ目に参りまして、問題点としては、機器の販売につきまして、規制を逃れようとするような悪質なケースが多数見られているところでありまして、具体的には「のみ」要件の対象とならないように他の機能を付し、あるいは後ほどファームウェアをダウンロードしてというようなケースがある訳でございます。

また「のみ」要件につきましては、権利者側で存在の立証が難しいということがございます。

それから、所謂無反応機器の問題でございますけれども、これはコピーコントロールあるいはアクセスコントロール共通の課題でありますけれども、現在の所は規制対象となっていないというのがある訳でございます。

事務局と致しましても、無反応機器全般を規制するということになりますと、これは特定の全てのアクセスコントロールに反応することを義務づけるということになる訳でございまして、これは適当ではないというふうに考えておりますけれども、実態として回避するのと同じ効果が得られることを目的に、積極的に宣伝しているような場合がある訳でして、こういった特殊な物については規制対象にするべきではないかというふうに考えております。

それから 4 ページに参りまして、必要な対策と言う所でございますけれども、このために現在の「のみ」よりも広い範囲の機器を規制することが必要であると考えております。

その方法でございますけれども、色々意見を頂いているところでございまして「のみ」よりも「主たる目的として」あるいは「回避するために特別に設計された」とする、又は特許法のみなし侵害規定を参考に客観的あるいは主観的、あるいは両方の組み合わせというような方法が考えられる訳でございます。

さらにその無反応機器の問題につきましては、特殊なケースにつきまして限定的に規制することについてさらに検討するということが必要ではないかと考えているところでございます。

尚、その際もメーカ等での製造行為を阻害する恐れがあることのないようにする事が必要ではないかと考えている所でございます。

むしろこの辺り、具体的な方法論につきましては、今後の検討課題と考えているところでございます。

5 ページ目に参りまして、刑事罰につきましては、現在その把握等について、民事上個別の差し止め請求、あるいは民事請求では対応できていない、また個別の解決の問題に留まっており、根本的な問題解決に至っていないというような状況が有る訳でございまして。

従いまして、必要な対策として回避機器の頒布等について刑事罰を設けることが必要ではないかと考えている所でございます。

留意事項と致しましては、機器の範囲との問題とも関係しますので、明確性の原則に照らし、さらに必要な範囲というものを検討することが必要であるというふうに考えているところでございます。

それから、6 ページに参りまして、(5) の水際規制でございますけれども、これは現在、差し止めの対象となっていないということで、海外から輸入されているという現状がございます。

この為に、水際規制を設けることが必要ではないかというふうに考えております。

それから (6) 番目、共通の問題と致しまして、適用除外規定ということで、規制を拡大するにあたりましてはメーカにおける製造開発、修理・保守サービス等に支障を与えないように設けることが必要であると考えておりますけれども、また具体的な規定につきましては今後の制度設計の際にさらに検討するべき問題ではないかというふうに考えております。

それから大きな 2 番目として、回避行為規制の問題でございますけれども、正当な目的で行う回避行為は適用除外ということにした上で、一定の行為については行為を規制する事が必要であるというふうに考えておる所でございますが、ただ、個人の行為について刑事罰を設けることについては慎重であるべきだというふうに考えております。

7 ページに参りまして、問題点と致しまして、今後の問題と致しましてはコピーコントロールではなくてアクセスコントロールが中心になってくるという問題でありますとか、あるいはマジコン、それから DVD の CSS の回避のような行為が行われているということ。それから回避行為自体が規制対象となっていないことで、それを助長するような行為が行われていることが問題点としてあるわけでございます。

8 ページに参りまして、繰り返しになりますけれども、一定の範囲につきまして、回避行為を規制することが必要と、しかし刑事罰を設けることには慎重に検討するべきということでございます。

それから 8 ページの (2) で適用除外規定でございますけれども、正当な著作物の利用を阻害しないように、適用除外規定を設けることが必要であると考えますけれども、具体的な規定については諸外国の例、あるいは他の法律による規定の例等を参照しつつ、具体的に検討していく必要があると考えております。

また 9 ページでございますけれども、個別の適用除外規定ということを設けることに加えまして、正当な目的で行う回避行為を適法とする一般規定を設けることについてもさらに検討することが必要だと考えております。

それからさらには、アクセスコントロールをかけることが適切かどうかと言う点、不当な目的によってアクセスコントロールが用いられることを防ぐ為の法律についてもさらに検討する必要があるというふうに考えております。

最後、3 点目の保護法律ですけれども、不正競争防止法、それから著作権法のいずれにおいても対応することは可能ではないかというふうに考えられますけれども、それぞれの法で規制した場合の違いに留意しながら、法改正を行うことが必要ではないかと考えております。

仮に著作権法で対応する場合は、回避する支分権を創設する方法、あるいは、みなし侵害として規制する方法が考えられますけれども、これらについても法整備することにあたって今後検討すべき課題ではないかというふうに捉えております。

それから、10 ページに参りまして、プロバイダの関係でございます。一つ目が侵害対策措置の実施を促す仕組みということでございます。著作権侵害コンテンツの流通が膨大になっておりまして、個別の削除ということだけでは現実的になかなか対応が難しい状況になっております。

そこで権利者とプロバイダの間で適切な役割分担を図ることによりまして、侵害コンテンツ流通量自体を減らしていくことが必要不可欠となっているというふうに考えております。具体的には、警告メールの送付でありますとか、あるいは侵害行為を反復するものに対するサービスの利用停止。それから自主的なパトロール。それから侵害コンテンツの停止を効率的に行うといった対応を図るということで可能であると考えておりまして、実際にこうした取り組みは一部のプロバイダで行われている所でございます。

こうしたことから、民法の過失責任主義を前提とした上で、プロバイダ責任制限法におきまして、一般的な監視義務を負わないとし、適切な侵害対策措置を講じていなければ損害賠償責任を負い得ると明確にした上で、その内容につきましては権利者とプロバイダによるガイドラインによって具体化し、プロバイダと権利者による協議を促す仕組みというものを作ってはどうかと考えております。

またプロバイダ責任制限法以外の法として、このようなプロバイダと権利者による共働を促す仕組みとしてどのような法制度が考えられるかということにつきましてはまたさらに御意見を頂ければと思っております。

内容につきましては、大体この四角の中に集約されてございますが、13 ページを御覧頂きたいと思います。

5 番目の必要な対策についてというところでございまして、基本的にはプロバイダと権利者による協働を促す仕組みというということで、プロバイダ責任制限法でそういったことを明確化し得るかという観点でございますけれども、事務局といたしましては仮に個別の侵害状況について了知しなくても、防止措置を取ることが可能であって、それら措置が合理的なものであって、結果を回避する蓋然性が高いと認められる場合には結果回避義務が生じ、不法行為責任が生じ得るというふうに考えておりまして、こうした観点からプロ責法に確認に規定を設けるという事は可能ではないかと考えておる所でございます。

それから 14 ページに参りまして、それから萎縮行為、法律にもとづくことの萎縮行為ということがございましたけれども、二つ目の○の所で、ガイドラインに明確化を図っていくということであれば重大な萎縮効果の心配はないのではというふうに考えております。

また現状に、3 つ目の○の所の現状認識と致しましては、法律の遵守意識が高い大手・中堅事業者にこうした取り組みを促進していくことは効果的というふうに考えられますし、またこうした事業者につきましては、プロバイダ責任制限法上のガイドラインにもとづき判断することが多いということがございますので、侵害対策措置についてもこれまでと同様のアプローチが取れないかと考えております。

また最後の○の所で、プロバイダ責任制限法以外では義務を課す、あるいは間接侵害の対応という御意見もございましたけれども、いずれも難しい面がある訳でございますし、また、民間の自主的、自主性のみに委ねるということでは必ずしも促進を図ることが難しいのではないかという認識を持っているところでございます。

それから 15 ページに参りまして、(6) の留意事項の所でございますけれども、接続プロバイダにつきましては民事責任を問われる蓋然性が低いという事がございますので、そこの所はまた別に考える必要があるのではないかというふうに考えている所でございます。

それから大きな 2 点目ですが、迅速な削除手続きといった所でございます。これにつきましては、大手プロバイダと大手権利者との間では概ね迅速な削除が行われているのではないかというふうに思われますが、他方、国際的に透明性を高めるという観点、あるいはその国際的動向を踏まえまして、法律上明確化する等の対応につきましては今後の検討の課題としてはどうかと考えております。

また、少なくとも国際的な調和の観点を考えるとガイドラインの英語訳を公開するといったような事で透明性を高めることが必要ではないかと考えているところでございます。

内容については大体概ね網羅されていると思いますが、18 ページを御覧頂きたいと思います。この点に関する留意事項でございますけれども、いわゆるセーフハーバー条項の導入につきましては慎重に、民法の過失責任の原則ということがありますので慎重に検討することが必要という意見もございましたけれど、一方で、プロバイダの判断を要さないということで合理的であり、折衷案、折衷的な制度設計ということを提案される御意見がありました。

それからもう一つ、現在では 7 日間経過して同意しない旨の回答がない場合は削除しても責任を負わないわけでございますけれども、この 7 日間の期間というところは現状を踏まえますともう少し短縮するべきではないかというような意見もあったところでございます。

それから19ページでございますけれども、最後、3 番と致しまして、迅速な発信者情報の開示でございますけれども。これは裁判外における発信者情報の開示でございますけれども、現在は実際は裁判外で開示されるということがほとんど無い訳でございまして、例えば IP アドレスあるいは……等につきまして開示基準を明確化するといったことで開示を促すことが必要ではないかと考えております。

また、警告につきましてはメールアドレスを開示しなくても対応が可能であるという事もございますので、その前進を促すような仕組みを設けていくことも必要ではないかと思っております。

21ページを御覧頂きたいと思います。若干この点に付属することでございますけれども、特に警告メールの関係でございますけれども、二つ目の○の所ですけれども、現在、プロバイダが警告メールを転送する行為ということについては通信の秘密の侵害にあたると考えられている訳でございまして、正当業務行為として違法性が阻却される場合であれば転送メール、転送することも可能だと展開されておりますけれども、この場合、どういう場合であれば良いのかということが必ずしも明確になっていないという点があるのではないかと認識しております。

それから 22 ページをご覧いただきたいと思いますけれども、必要な対策につきましてのところでございますけれども、上から 3 つめの当たりですけれども、特に裁判を受ける権利を確保するということで色々な提案があった訳でございますけれども、この点について司法制度の在り方全体に関わる問題でもございますので、その他の問題と併せて今後慎重に検討していくことが必要ではないかというふうに考えております。

それから、プロ責法当時も議論された訳でございますけれども、第三者機関が発信者情報開示を判断することにして、プロバイダの判断リスクを解除してはという意見もあったところでございます。

以上でございますけれども、それからちょっと一点補足を致しますけれども、国領委員でございますが、今回も欠席で中々出席が適わないということで、事務局の方で御意見を伺って参ったところでございますけれども、大きく 2 点ございまして、一つはプロバイダの侵害対策措置に関連してのことでございますけれども、アカウントあるいはサービスの停止ということについては誰が違法と判断するのかというところが非常に問題であって、プロバイダに判断させるべきではないのではないかという意見があったところでございます。

これに対しまして、事務局としては削除について権利者の要請にもとづきまして削除するというような運営がなされておるので、それを発展させることができるのではないかというふうに考えている所でございます。

それから二点目として、大学がプロバイダである場合、学生のサービスを停止してしまうと、実質、学生を大学から締め出すことになるということで、実際サービス停止は大学ではできないという意見でございましたけれども、例えば国領さんのお勤めの大学の場合では P2P ファイルの使用自体を禁止しているというようなこともやっているというようなこともございましたけれども、プロバイダの特殊性を考慮できるような、そういうような制度設計が必要だというふうに考えておりますし、まさにその点につきましてはガイドラインの中で適正化を図って行く事ができるのではないかと考えております。

以上です。

土肥座長:#

本日御欠席の委員も資料についてもご紹介頂けますか。

奈良参事官:#

資料4を御覧頂きたいと思いますけれども、本日北川委員が御欠席ということで、資料 4 のような資料を提出しているところでございます。

まあ、短く申しますと、ソフト・ロー的な仕組みが巧く行く為の条件ということでどう言う事があるのかと言う事で、2 枚組の後ろの方に幾つか書いているところだと思いますけれども、CCIF というファイル共有ソフトを悪用した侵害対策協議会で、こういうふうに巧く行っている例がある、しかしながら巧く行く為にこのような条件がありますと御説明されているのではないかと理解しております。

以上です。

土肥座長:#

ありがとうございました。それでは意見交換に入りたいと思います。

大谷委員と山本委員から資料を提出して頂いております所、アクセスコントロールの部分に関してまず両委員から、御意見あるいはコメントございますでしょうか。

中で御一緒にされても構いませんけれども、今、ございますでしょうか。冒頭に。

大谷委員:#

資料の説明は追ってまたお時間を頂けると考えて宜しゅうございますか。

土肥座長:#

できれば今、講義して頂ければと思います。

大谷委員:#

はい。アクセスコントロールに関してということですね。ありがとうございます。

資料を事務局に御用意頂きまして、事前に配布して頂くことがこちらの準備不足で出来なかったものですから、急に御覧頂くことになりまして申し訳ございません。

資料は、今まで十分な議論ができていなかったものと思われる無反応機について、事実関係を整理させて頂きたいと考えまして、調べましたところ、無反応機器についてはこの夏に、7月に総務省の情報通信審議会の中間答申で出されました、デジタルコンテンツの流通の促進に関する中間答申の議論の過程でも、相当議論なされているということを WEB 上で発見致しまして、その事務局の資料に非常に判りやすいものがありましたので、それをベースとして現在、アクセスコントロール回避機器の問題として取り上げられている無反応機器の扱いについて、良く見ると実は、コピーコントロールの信号に反応しないという意味での無反応機器であって、どちらかと言えばアクセスコントロール回避機器の規制を導入したりする根拠、あるいは現在の「のみ」要件を広く解釈していくことの根拠としてはなかなか使いづらいのではないかと考えまして、このようなペーパーを用意させて頂いたということでございます。

ですので、資料は御覧の通りの 1 枚ものですけれども、御覧頂きますと、例えば海外製の機器を使ったりする訳ですが、B-CAS カードそのものはですね、いわゆる浮遊カードとして流通してしまっているようなものをそのまま使い、その結果として USB 接続しているパソコン上で、スクランブル暗号が解除されている状態の物をコピーしてしまうということで、議論された当時はコピーワンスということで、現在のダビング10とはまたちょっと違う仕組みではありましたけれども、いずれにしてもコピー制御信号に反応しないことによって視聴可能にするものだということで、現在の著作権法に於いて規定されているコピーコントロール、それに対する無反応機器の問題として改めて再認識した上で、この議論を進めていくことが必要なのではないかという意味で用意させて頂きました。

また昨今の状況ですと、浮遊カードというものに頼らず、スクランブル暗号を復号化することが可能なものが流通しているように伺いますけれども、それにつきましてはやはり、現在検討中のアクセスコントロール回避機器として取り上げることができますので、無反応機器と呼ばれているものについての事実関係、それ以外にも、事務局で御用意して頂いている幾つかの事実的な御説明について、私共が十分に・正確に把握した上でこれからの議論を進めていくことが目標だと言うことで、ここに御用意させて頂きました。

全体に論点整理の中では、この資料 3 の中で、コピーコントロールとアクセスコントロールを組み合わせたものという言い方で、今までの資料とは違った書き方を指摘頂いて、事務局でも反映して頂いているというか、私共が正確に理解する為の、細やかな助けをして頂いているという事で感謝申し上げたいのですけれども、技術的措置を講じさえすれば実質的にアクセス権を認めるような制度になっていくその関係上、規制の導入のその目的について、これまでも議論を尽くして来たとはなかなか言えないと思いますので、この規制を導入するにあたっての目的についても、最終的な報告では明らかにしていくことを希望したいと思います。ありがとうございました。

土肥座長:#

はい。山本委員ございますか。

山本委員:#

それでは資料 6 の 2 ページ目の所で。アクセスコントロールについて書かせて頂いていますので、それに従って説明させて頂きたいと思います。

このペーパーを持って来ましたのは、この場では時間がないということで、専ら ACTA を焦点、照準を合わせた議論がなされていて必ずしも十分な議論をする時間がない。しかし、問題の本質はもっともっと深いところにあって、ここでの議論だけでは、ACTA 対策だけでは済まされない。もっともっと時間を検討をしていくべき事柄があるのじゃないかという問題意識を持っておりまして、その事柄についてはなかなか十分な議論を展開するような機会がありませんでしたので、ここでペーパーで出させて頂くという趣旨です。

簡単に説明させて頂きますと、2 ページですが、アクセスコントロールの回避行為の規制については、問題は、デジタル化・ネットワーク化の社会に於いては、著作物の利用と、それにもとづいて対価を著作権者が回収するという手段としては、コピーコントロ−ルでは不十分であって、アクセスコントロールが必要になる。つまり、その保護が法的に必要になるということだと思います。

その場合に保護される、アクセスコントロールを法的に保護することによって、どういう権利を対象に、ターゲットにすれば良いのかと言うときにですね、DVD における CSS のように、複製の為の補助的手段として使われているアクセスコントロール、これを保護すれば良いのだと言うアプローチも在り得るかと思うのですが、それでは私は不十分であって、本来的にはデジタル化・ネットワーク化された社会で一番使われるのは、コピーが配信されて、その先で暗号が解除されるというサービスだと信じて、だと思いますのでそうするとですね、もっともっと広い支分権としては複製権だけでなしに、公衆送信権も必要ですしそれ以外の利用の仕方というものも考えられますので、支分権を、なんらかの支分権に限定するという形ではなく著作権全体を対象にしてアクセスコントロールの保護を考えないといけない。こういうふうに思います。

次にじゃあこれを不正競争防止法で保護しようという考え方もありますけれど、そもそも不正競争防止法で、保護するアクセスコントロールをですね、不正競争防止法で保護する必要があるのか。

というのは、著作物でないものまで不正競争防止法で保護することになりますが、そこで、なんでそういうものを保護する必要があるのかという理論的根拠が薄いのと、保護の必要性は極めて低い。

ですから仮に不正競争防止法でアクセスコントロールの保護を定めたとしても、極めて低い保護の問題でしかなくて、著作権の本質的な所にアクセスコントロールの保護というのは結びついているのだという所からすると、不正競争防止法による保護は不十分で、仮に不正競争防止法による保護をやった場合も、著作権法による保護はそれプラスで必要になると。

どうせ不正競争防止法で保護をやっていても、保護の程度は低いものにならざるを得ませんから、そのうちに海外から要求されて、もっと強い保護をやれと、というような事を言われてからまたやるような事というのはあまり望ましくないのではないかと思います。

次に、回避装置の製造等の規制だけではなしに、回避行為の規制が必要だと考えます。

アクセスコントロールの問題点の 1 番は、著作物の観賞する為に必要な行為だと、その観賞に直接直結する行為だという所にあります。それによって、著作物の利用価値を奪う。そこに違法性が、可罰的では無いにしても在るからこそですね、それを幇助するような回避装置の製造であるとか提供であるとかが違法になる訳で、だから根本は、回避行為自身の違法性を堂々と認めるべきだと。そこから議論と言うのが始まると。

で、後は幇助するような装置としてどこまで規制の網を被せるのかということは色々なバリエーションがあるとは思いますが、回避行為の違法性は真正面から認めるべきだと。

ただ、その時に個人の回避行為の違反に対して刑事罰まで課す必要があるかというと、それは無いという考え方も十分に在り得ると思います。侵害が零細であるというような所からですね。

但し法律的には、その著作物を観賞した対価相当額は奪うことになりますから、損害賠償を認めたって構わない、たとえ個人の行為であっても構わないというふうに思います。

次は回避機器の範囲の話で「のみ」に限定するかどうか、これを拡大するかという議論があります。

これは 4 ページ目ですが、問題の出発点は回避行為の違法性にあって、回避装置はそれを幇助するという点にあるとしますと、アクセスコントロールの回避のみを目的とした機器だけが回避行為を幇助するものではありません。

そうすると「のみ」に限定するのは極めておかしいと。じゃあ、どこまで広げるかというと、4 番目の真ん中ごろに①、②、③と書きましたが、1 つはアクセスコントロールの回避「のみ」を機能とする装置です。2 番目はさらに広げて、アクセスコントロール回避の為に特に設計された機能を有する装置です。こうすればアクセスコントロールの回避機能がたとえ機器全体の中で 10% であったとしても、つまり 90% は適法行為に利用できるものであってもですね、その 10% が侵害行為の為に使われるものであればこれは規制するということができると、すべきだという言う議論になります。

3 番目のその、例え汎用のものであっても、侵害の為に使うということが判っている人間にそれを提供する場合には、これは主観的にですけれども、幇助行為になると思います。

機器の規制という観点から言うと、最初の「のみ」と「特に設計された装置」ということになります。で、特許法 101 条の 2 号・5 号のみなし侵害からアプローチする、それと似たような規制にするという考え方もありますが、私は特許法の 101 条の所は「発明の課題」というのが要件に入っておりますが、著作権の場合にはこうした要件がないのですね。そこからのアプローチというのはあまり適当じゃないのではないかと。

それから、特許法 101 条 2 号・5 号についての裁判例を見ておりましても、かなり裁判例、実際的にはそれをどういうふうに解釈するのか苦労しているように思います。結局のところ「汎用品を排除する」という機能しか実績がないのですね。であれば明確にこの①、②と書きましたような、そういう装置について規制を加えるのが直截で良いのじゃないかと思います。

以上です。

土肥座長:#

はい、ありがとうございました。大谷委員、山本委員の意見というのはアクセスコントロールの回避規制の、中に 3 つあったのですけれども、その中の対象物と回避行為規制、そちらの方に多く時間を配して御意見を述べて頂いたところであります。

この、本日事務局に作成頂きました論点整理について、資料 3 でございますが、まず対象行為の拡大についてという所から始まっておりまして、それから対象機器、回避行為、この三つに大きく分かれているところでございます。

既に大谷委員、山本委員から後半部分について御意見がございましたので、広く、アクセスコントロール回避規制全般について御意見を頂ければと思います。どうぞ、御意見頂ければ。

ええと、順番で言うと、製造および回避サービスの提供という問題について、事務局から説明ございましたけれども、こういう考え方、こういう方向性でいいのかどうかですね。

2 ページの真ん中あたりに必要な対策の所で説明ございますけれども、回避機器の製造行為、それから回避サービスの提供、この回避サービスの提供に関しては従来から委員に御意見がございましたけれども、修理とかそういったサービス行為についての影響があってはいけないので、この点については適用除外規定等をきちんと整備するということでこれまで説明あったことかと思いますけれども、1 はこれで宜しゅうございますか。この方向性で。

はい、それでは、2の……

宮川委員:#

済みません

森田委員:#

1というのはどこの範囲?

土肥座長:#

1というのはですね、まず現在やっておる、アクセスコントロールの回避規制をやっておりまして、1 ページの下から 7 行目ぐらいのところに、対象行為の拡大というのがありますね。そこの下の行、一番下の行のあたりのところに「回避機器等の製造および回避サービスの提供は現在規制されていないけれども」2ページ目のローマ数字ですか、IV の所で、必要な対策の所でこういう行為について新たに規制対象とすることが必要なのではないかという方向性が示されている訳でありますけれども、そういう方向性を我々ワーキンググループとしても了承してよろしいかどうか、こういうことでございます。

森田委員:#

対象行為という欄に、次の (3) で対象機器の拡大についてという場合には主観的要件で、売り方によって違法になったりならなかったりするという話ですけど、その前の所で、例えば製造という場合には、専ら、その対象となる機器というのは後で言う関係対象機器よりももう少し限定的な概念でないとですね、例えば色々な機能があるものを製造してしまって、それが対象となるかというとそれはおかしいのだと思うので、全体的な繋がりですね、ええと (3) の議論で拡大する部分と連動する訳ではないという理解でよろしいですね。

土肥座長:#

基本的に、現行法上不正競争防止法でこの部分の規制がないところでございますので、議論の方向性としてはアクセスコントロールの行為についての、その、そういうもの回避する装置を製造する行為それ自体についても規制の対象とすべきかどうか、それからそういうことを可能にするサービス行為も規制の対象とすべきかどうか、という点でございまして。委員も仰る通り「のみ」要件を拡大していくという文脈の中で広がってくる訳ですけれども、その広がりの所は委員の中に色々細かい御意見がある訳ですけれども、基本的にはそこも踏まえて、今後どういうふうに「のみ」要件を詰めていくか、その検討していくべきか。つまり、少なくとも現行法のその「のみ」というところからもう少し広がりをもった規制の仕方をする、場合によっては主観的要件も加える。そういう方向の中で検討していくという方向性の話でございます。

まあですから、最終的に法制化の段階においてはですね、仮にそういう方向性に行ったとしても、その、委員が仰るように両方からきちんとそこは詰めていくということが最終的な段階としては求められるということですが、宜しゅうございますか。

宮川委員:#

済みません。ちょっと私読み方が判らないのですけれども、まず対象行為の拡大と対象機器の拡大とそれから刑事罰の問題というか、回避機器規制の 1 の四角に全部まとまって入っているというふうに理解しております。

で、私がこれまで色々議論を聞いていたのは、この、まずアクセスコントロールの規制、コピーコントロールだけでなくアクセスコントロール回避規制を置くべきだという方向性を受けて、対象機器の拡大については「のみ」要件というのは非常に限定的ではないかという議論で進んでいたかと思うのですが、その対象行為の拡大について製造をですね、製造を規制するというところが、知の保護を、とかく違法著作物の対策として必要になるという所がちょっと、どのような議論だったか御説明頂きたい、趣旨がはっきりしないのですけれども、事務局の方御説明頂けますか。

土肥座長:#

はい、どうぞ。

奈良参事官:#

製造につきましては例えば回避プログラムについてですね、国内で開発されているという事例もございますし、それから前回ヒアリング等の中でもございましたけれども、回避機器そのものではないにしても部品単位で海外から輸入して国内で組み立てるというようなケースもあるということで、やはり機器の元を断つという意味でも製造を対象とするということが必要ではないかという議論だったと承知しております。

土肥座長:#

確かその宮川委員、確かこの所説明は 1 回目の所でわりあい詳し目に説明があったのですから、お休み、御欠席だった関係があるかもしれません。

あ、前田委員どうぞ。

前田委員:#

今の件なのですが、確かに対象機器の拡大の方に主観的要件の問題が入っていて、その主観的要件を問題にすると各行為に着目したような規制になっていくので、(2) のこの対象行為の拡大の問題と対象機器の拡大についての問題が何かちょっとオーバーラップしているような印象があるのかなと思います。

で、そのことを前提として、対象機器の拡大について主観的要件を入れると、特許法に類する、特許法を反射したような規定を仮に置くとしたら、それはそのような主観的要件をもって行う製造も規制対象になってよいのかなと思いますが、特許法の現行の 101 条を見ますと、一定の主観的要件を持って生産することも間接侵害の中に含まれておりますので、それにならうと考えるとすると、一定の主観的要件を持って製造することもまあ、規制対象にして良いと思います。

土肥座長:#

はいどうぞ。

森田委員:#

今適切にまとめて頂いたと思うのですけれども。

宮川委員:#

そうですね。

森田委員:#

機器と行為というマトリックスを作って、その組み合わせで行くとものすごく、なんと言いますか希少なものまで入っていきそうな例になっていますけれども、今、前田さんが仰ったように、機器と言いながら行為の話についても出ているので、それぞれについて要件の絞り込みを考えていくということを前提としているのであって、単純にそれぞれのマックスの和を組み合わせていって考えていくという訳ではないと言うふうに、この文章を、四角の中がそれで理解できるかというのはまたこの、表現の適切さの問題がありますので、できれば何か改善をして頂くのが適当だと思いますけれども、そういう趣旨であってという了解を区分しておく必要があると思います。

土肥座長:#

はい。その辺は記載させて頂きます。他に如何でしょうか。最後の回避行為規制についてどなたか。はい。平野委員どうぞ。

平野委員:#

9 ページ目の最後の 3 ポツ、失礼。保護法律についての最後の○のパラグラフ、今山本委員からも御説明がありました支分権という方法か「みなし」かということで、ここの表現は二つが考えられるのではないかとなっていますけれども、もうそろそろまとめの報告書を睨むとですね、私は前回も申し上げた通り、支分権というのは慎重であるべきだと。

いや、全員がそうだとは言いませんよ。山本委員はおそらく賛成派だと思いますけれども、私は反対なので、そこははっきり、報告書にするときにはたとえば両論があっただとか慎重論があったとかそういった書きぶりにして頂きたいと。理由は前回述べた通りであります。

土肥座長:#

ありがとうございました。はい。森田委員。

森田委員:#

私もこれまで申し上げてきましたように、アクセス権を付与するということは著作権の範囲を広げる訳でありまして、それをするには慎重な検討が必要ですけれども、前回のヒアリングで明らかなように、そこまで求める声がそもそも無いので、現時点でそこまで踏み込む必要はないのではないかと考えます。

その上で、みなし侵害というのはある意味では法技術の話なのですけれども、アクセス権を与えないけれどもみなし侵害にしてしまったら、アクセス権を与えたのと同じ事になるとすると、これは問題が全然解決されていない訳でありまして、みなし侵害とする場合、そのみなすというのはどの範囲でなにをどうみなすかということを詰めていく中で、過剰な規制にならないことが必要だいうふうに考えておりますので、アクセス権を付与するかみなし侵害かという二者択一のどちらかで集約するという問題ではないと思っています。

このまとめなんですけれども、今平野委員からあったように、そもそもそういう、対象についてはもう少し絞り込むことを慎重に検討するべきだという意見があったということは、変えさせて頂きたいと思います。

土肥座長:#

はい。ありがとうございました。他に。はい、森田委員、付け加えて頂いても。

森田委員:#

別の点なのですけれども、今まであまり DVD の話が出てきておりませんでしたけれども、後ろの方で正当な目的で行う回避行為は適用除外だということで、DVD の CSS 回避は駄目だと言う話の関係で、正当な目的であればこれも良いという組み合わせがあるというのがペーパーの前提だろうと思うのですけれども、ただこの、これだけを見ますと、必要な対策については、これは個人の行為の所であっても DVD は対象にすると、これが結論的な方向であるかのように読めてしまうので、少なくとも必要な対策についての対象行為の所にこの例を上げるのは適切ではないのじゃないかと。

それが必要ではないかというよりはですね、まあそうした意見があることをどこかで触れて頂くのは結構ですけれども、それを対象として良いかどうかということ自体が検討課題だと思います。

さらに申し上げますと、この今、アクセスコントロールの回避行為の問題をしているのですけれども、例えば DMCA で行きますと、コピーコントロールの方は私的使用がむしろできるように、コピーの回避行為は対象としないけれども、アクセスコントロールは対象とするというように、個人の正当な利用を確保するために、どの範囲でどれを及ぼすかということの組み合わせで出来上がっている訳でありして。

現在は、アクセスコントロールは対象外だけれども、コピーコントロールは私的使用の例外になっているという訳ですけれども、そのあたりの組み合わせもですね、アクセスコントロールを入れることによって全体的にバランスを取るべき、どこでバランスを取るべきかということを今後検討して行く中で、どういう行為が許容され、どういう行為が許容されないとすべきかということを詰めていく必要があるのだと思います。

この組み合わせで作って行きますと、諸外国、どの国よりも規制が厳しい国になってしまう恐れがありますので、少なくとも、必要な対策についての所でこれを入れるのは避けて頂くのが適切ではないかと思います。

土肥座長:#

あの、これは 7 ページの所で、(2) の回避行為の規制範囲についてということがあって、今、森田委員から御意見を頂いたところが (2) とあるのですけれども、出来上がりではこれは (3) になるのですかね。

要するにアクセスコントロールの問題、その回避行為の問題というのは、その如何に情報へのアクセスをバランスよく確保していくかという問題に繋がってくるので、適用除外規定をきちんとするというここは非常に重要な問題になると思うのですが……これは (3) …… これは (2) で良いのですか?

奈良参事官:#

間違いで (3) です。

土肥座長:#

これは (3) になるのですね。だから、事務局としては非常に大きな問題として森田委員の仰っている所を捉えているというふうに認識してございますけれども。

森田委員:#

今、修正後の (3) に行く前の必要な対策の最初の○の所でですね「正当な目的で行う回避行為を適応除外とした上で」と付けて、ここに既に条件付きですと書いてある訳ですから、そこの適応除外に何が入るかによって、その後の例示も変わってくるのがこのペーパーの作りなので、その以下の部分はどう考えてもそれが入るというものが適当な例として挙げるべきであって、検討の結果どこまで入るかということをもう一度検討する必要があるものは、ここに入れておかない方が良いのではと思います。

土肥座長:#

はい。ありがとうございます。他に如何でしょうか。

ここも非常に悩ましい問題かもしれませんけれども、回避行為それ自体の問題ですね。刑事罰まで場合よっては課すべきであるとそういう御意見もあった訳ですけれども、いや、親会の方ではですね、そうした御意見もあったようですけれども、ここでは駐車違反程度ということの部分ですけれども、ここではそういう御意見はないということで……。

大谷委員:#

(何か発言していたけれど、声が小さく聞き取れず)

土肥座長:#

問題はその、民事上のそういう行為を違法とすべきかどうかという点について何か御意見があればということと、それから大谷委員が仰って頂いた無反応機器の問題ですね、あれと、機器の拡大との関係でどのように考えるべきかというその二点について伺ったうえで、次のテーマに入りたいと思いますけれども。

山本委員は回避行為それ自体についても民事上違法であるということをはっきりさせるべきであると、そういうことですね。

山本委員:#

はい。そうです。で、刑事罰が必要ないとまでは申し上げておりませんで、刑事罰まで科さないという、刑事罰を科さないという選択肢も十分にあるなと。それは今の段階では私はどちらにした方が良いのかまで判らないのですが、要は、刑事罰についてはどちらもあり得るという立場です。否定はあえてしておりません。

土肥座長:#

他に。はい大谷委員。

大谷委員:#

回避行為の規制についての具体的なイメージの前にですね、著作権、著作物の著作者という権利者は利用者が、何時、何処で、例えば、何回とか、誰ととか、どの機械で著作物を再生し観賞するのかという事を全てコントロール下に置いて良いのかと。

コピーコントロールである程度コントロールをするということは、それは権利者としての権利を守る為に已むを得ないものとして認められてきておりますけれど、アクセスコントロールの回避行為というものを全般に規制対象とすることによって、それが全て権利者のコントロール下に置かれて良いものなのかという基本的な議論をやはりきっちりしておかなければいけないだろうなと思っております。

それが著作権における支分権の位置づけになるのか、それとも、支分権については否定的な御意見が多いところですし、私自身も支分権という扱いは望ましくないと思っているのですが、そもそも著作権者にどこまで観賞、ユーザの観賞機会というものにコントロールする所を認めていいのかと。

そのコントロールするという方法は、ビジネスをやる方、それから権利者の方が次の創作意欲を掻き立てる為の十分な報酬を得るために必要なものだというコンセンサスは出来上がりつつあると思いますが、それがどこまで行っていいのか。

適用除外等で適切なものに押さえつつ、規制を導入していくのだと思いますが、どこら辺が適正値なのかという根本のところでの議論は多分ここでするべきだと思うのですけれども、皆さんそれについて十分に話あって来なかったのではないかという思いを強くしておりまして。

山本委員の方から出たペーパーというのが、奇しくも著作権者にとってのコントロールの自由というのを最大限に主張しておられるペーパーで、こういう構成はもちろんあると思うのですね。それはただ、著作権が現状の著作権である以上は私は賛同しかねるものなのですけれども、例えば報酬請求権としての権利であった場合は、場合によってはこうした形もあるのではないかという思考実験として非常に興味深く拝読というか、御意見を承ったわけなのですけれども。

どこが適正値なのかどうか、ユーザと権利者というのはどこかでぶつかる場面があって、権利者というのはどこまでならコントロール可能としていいのかという根本的なところを、十分に議論したいなと思って。

まあ、時間がないところではありますが、皆さんのご意見を聞ければなと思っております。

土肥座長:#

はい、山本委員どうぞ。

山本委員:#

ええとあの、私はその、媒体が来れば、媒体が目の前にあればそれをどのように利用しようと構わないというアプローチはあり得た話しといいますか、それは媒体に依存して、例えば本のような形で、その本の使い方をコントロールできないような、そういう時代にあっては、仰るようにインターフェースとしての本、これをどのように利用しようと自由な問題だと。

何回読もうとですね、そこに権利者のコントロールを及ぼすと言うのは、もしやったとしても契約上の御幣しかありませんので、それに対して著作権法の保護を与えるとかいうのはあまり現実的ではないと思います。

しかし、デジタル化・ネットワーク化の中ではですね、媒体を渡しながら、これは何日間視聴できますよ、何回視聴できますよというコントロールの仕方が出来る訳です。

その場合にはですね、そうした仕組みをですね保護する方が、著作物の有効利用に資するのではないかと思います。

というのは、媒体で渡してしまえば、何回でも何日でも利用できると。そうしますとそれだけですね、やはり単価は高くならざるを得ない。しかし回数が少なくて、安い単価で提供するというビジネスモデルも、そういうアクセスコントロールに対して保護をするという形になればですね、著作権者のそのビジネスのやり方、これは回収手段が広がりますので、かえってその、著作物に対する需要と供給とバランスを取るというのが本来的な著作権法の目的だと思うのですが、それにより資する手段になると思います。

そういう意味でですね、アクセスコントロールの保護と言うのは従来は想定されて居りませんでした。

しかしだからと言って、今後も無いのだという話ではなくて。それに見合った、状況に見合った著作権制度を作っていくという使い方が十分にあると思います。

土肥座長:#

はい。ありがとうございます。はい。平野委員どうぞ。

平野委員:#

ええと、私も大谷委員の御意見に賛成でございます。

で、理由はアメリカではサイバースペース法学というのが、インターネット上での法律を扱う分野というのが出てきておりまして、そこでの主な議論というのは著作権が一つの大きな論点で、どこまでが著作権利者の範囲で、どこからが公有、パブリックドメインという言い方をしますが、情報と言うのは皆のものであるという部分もございます。

その切り分けと言うのは、やはり今までの現実世界とは変わってきているのだから、新たな考え方、公有というものを維持する考え方も必要だろうと。こういう議論になっているのですね。

何故ならば、デジタルの世界では 0 と 1 で全てを規格し「はい」とクリックしなければ先へ進めないという、こういうことが可能ですから、そうすると本来、現実世界では公有情報だったものが、サイバースペースではアクセスコントロール等々で公有ではなくなると、こういうパラダイムシフトというのが生じると。

そこで何が良いのかということを議論しなければならない。こういうのは実は昔からサイバースペース法学では議論されてきたのですね。その議論をまさにここで我々は考えなければいけない。

アクセスコントロールというのも当然権利化しても良いのじゃないか、山本先生が仰るように、そういう意見も当然ございます。

ここでまあ、傍聴者の皆さんには耳が痛いかもしれませんが、著作権利者というのは団体として力を持っていますが、公有情報を使う個々人というのは団体としての力を持っていませんから、声も発せないのですね。そういう人たちの利益も公平に考えながら、権利をどこまで認めるべきかというのを議論しなければいけない。それは私は必要だと思うのですね。

例えば今回、意見書としてインターネットユーザ協会さんですか、意見、ユーザの意見具申の機会を設けて欲しいと。

まさにこういうことも取り組んで、それで支分権を認めるかとか認めないかとか、そういうことをきちっと詰める必要がある、私はそれぐらい大きな問題だと、ここはそう思います。

土肥座長:#

はい、あり……山本委員どうぞ。

山本委員:#

まず、どうしてもはっきりさせておきますが、私はどこかの権利者団体と繋がりもありませんし、私自身が権利者と呼ぶほどのものも持っておりませんので、別に利害関係とかですね利追行為とかは別にありません。

そういう意味で、中立的な立場であくまでも意見を申し上げております。その観点からはさっき仰いましたように、パブリックドメインと保護されるべきものの区別は大事で、それはさっき申し上げた媒体が紙の時であっても同じ問題がありまして、そのことは、パブリックドメインまで囲い込みを行うことが許されるとは全く思っておりません。

しかし、それはアクセスコントロールで利用機会・観賞機会を何日間に絞るとか何回に絞るとかという問題とは全く無関係の、別次元の話だと思います。

というのは観賞の時にですね、パブリックドメインの情報があれば、それを例えばですねカメラで撮るなりですね、ファブライティングで複写するなり色々な方法があってですね、何らかのアクセスコントロールがあるが故にパブリックドメインが利用できないというようなことは無いと思います。

もしあるのだとしたら、今仰ったように、パブリックドメインの保護の為にですね、アクセスコントロールを制限するというのはありだと思います。しかし原理的には二つの、パブリックドメインの利用を自由にするということとアクセスコントロールは矛盾する話ではないと思います。

土肥座長:#

はい。他に。森田委員どうぞ。

森田委員:#

二点申し上げたいと思いますけれども、まず大前提として、下記の回避行為を対象とする必要が現にあるかどうかということについては前回「立法事実」という話もありましたし、また権利者団体に具体的にそれを入れたことによってどういう実効的な措置があるかという質問を致しましたけれども「電車の中で使っているのを差し止めするのだと」これはどういう請求を裁判所に立てるかよく判らないのですが、とりあえず意図として何を本当に狙っているかという所が実はまだはっきりしていないので、まずはその点ですねはっきりさせる必要がある。

これは違法ダウンロードの話と違うのは、ここは今まで適法だったのを違法にしようという話なので、違法ダウンロードの時は、これは複製権というものがあることを前提に、理屈で行くと一定の範囲は違法とするのが筋は通っているという面が、点があったと思いますが、こちらはそもそも今まで適法だった行為を今後違法にしてしまおうという訳でありますから、その辺の根拠はより強いものが必要であるということがまず大前提であるという事を、1 点目として申し上げた上で。

二点目で、先ほどからアクセスコントロールを個人にも及ぼすのが適当なのか、適当でないのかという話に入った時に、これは all or nothing の話ではなくて、合理的なものであれば、もしそれが合理的に必要なものであれば対象とすることが考えられるけれども、しかしそれはあまりに強くなってしまってはいけないので、そのカウンターパートとして個人の自由な情報の利用を確保する手段も併せて入れないと、権利者が強くなりすぎてしまう。

入れるのであれば、そういう別のカウンターパートとしての法制度を作りこむことが条件であるというのが私の当初から申し上げている意見でありまして、そうでなくてどちらかというと、コピーコントロールとなにかパラレルにアクセスコントロールも同じ並びで入れていくという発想で行きますと、これは問題の所在を見誤ることになるのではないかと。

適用除外の話もそういうことでありまして、これは複製権とおなじ横並びで良いかというと、それとは違って今後新たに拡げる訳でありますから、カウンターパートの法はより事実や、様々なビジネスモデルの展開に対応できるような仕組みを入れる必要があるだろう。

それから、ユーザの意見というのもパブコメで意見を聴くとか審議する場に参加して頂くとか、そうしたレベルに留まらずですね、もし、法的な手段として与えることができないかと。例えば消費者団体に、最近の枠組みの所で団体訴権というものを入れておりますけれども、権利者の側があまりに不合理なアクセスコントロールを入れてきた場合にはそうした形でコントロールしてはならないという差し止め請求権を与えて、それを裁判所で審査をすると。

そういう形で合理的な範囲で使われることを担保していくような法的な仕組みは色々と考えられる訳で、そうしたものを併せもって入れるのであれば個人の行為まで一定の範囲で対象に取り込むことはあり得るのではないかと。

まあ第 1 点目で、まず必要かどうかという立法事実が確認されて、であれば第 2 点目としてそういう、今度は制度の作りこみを検討していくべきではないかと考える訳でありまして、まあそのコピーコントロールと横並びでみなし侵害で入れればよいという簡単な話ではない。むしろそういう考え方に対しては慎重であるべきだということをずっと申し上げていくつもりであります。

土肥座長:#

はい。前田委員どうぞ。

前田委員:#

資料 3 を眺めますと、この 8 ページに書いて頂いている必要な対策についてと言う所が今、議論の焦点になっているかと思いますが、最初の○の所の、先ほど森田先生から御指摘ありましたけれども、正当な目的で行う回避行為は適用除外とした上でという原則を付けていると。

おそらくこれ、二つ目の○も当然その前提の下でのものであって、この正当な目的で行う回避行為を適用除外とした上でというのは当然次の○にもかかっていることなのかなというふうに思います。

そうして、今度は一つ目の○なのですが、ここもアクセスコントロールの回避行為を全て規制するということではなくて、一定のアクセスコントロールの回避行為は規制することが必要ではないかという議案となっていて、おそらくその続きとして次の○があるのだろうと思うのですけれども。

先ほど、どこまでをアクセスコントロールの回避行為の規制対象なのか、パブリックドメインとすべき所もあるのではないかという御指摘があったところですけれども、このペーパー自体も必ずしも、まあ一定のアクセスコントロールについては規制対象にする必要があるのではないかと言う事で例を挙げているので、その限度においては、確かにこの二つ目の○に書かれていることをどうやって立法するのかという法律的な問題は生じると思うのですけれども、この限度に於いては、つまり二つ目の○に書かれている限度に於いては、私としてはこれは規制対象にするので良いのではないかと、私は思います。

土肥座長:#

はいどうぞ。

森田委員:#

純粋な文章の問題であれば、今の御趣旨で行けば「例えば」といって検討することが必要でないかという文章にすれば仰る通りだと思うのですね。

だからその、仰る御趣旨は判りました。で、それが表れる文章に、正確に書くべきではないかと思います。

土肥座長:#

はい。ありがとうございました。

皆さまほぼ御意見を頂戴したと思いますけれども、このアクセスコントロール回避規制につきましてはですね、いわゆる、ここで言う製造行為・回避サービスこの行為については原則として検討の対象としていくということでございますけれども、それから対象機器については現在の「のみ」要件というもの「専ら」要件、そういうようなものについてみなして行く方向で考える、第三の回避行為それ自体についてはですね、もちろん何を持って原則にするかという問題がある訳でございますけれども、委員の中に極めてアクセスコントロール回避行為それ自体を規制することに対する、情報アクセスに対する慎重な御意見等々もございますので、これを導入する方向で検討する際には十分この行為を規制する場合の様々な影響とか、情報アクセスの自由とか、そうしたことを検討した上でこの方向に入って行くべきではないかと。そういう方向で取りまとめていければと思います。

それでは、第二の問題に入りますけれども、プロバイダの責任の在り方について、御意見を承りたいと思います。これについては、順番と致しますと、侵害対策措置と、それから二番目の迅速な削除手続き、それから第三の発信者情報の開示、この三つの柱がある訳でございますけれども、これについてまず、本日意見書を提出された委員におかれましてはですね、この、プロバイダの責任の在り方についての御意見がもし最初にございましたら、承りたいと思います。

じゃあ大谷委員お願いします。

大谷委員:#

ありがとうございます。資料の 5 の 2 ページ目になりまして、意見というよりはちょっと事実確認ということを中心にしてペーパーを用意させて頂いております。

書いているのですが、前回私、発言の機会を頂戴した時に、我が国の著作権侵害の影響というのは、海外と比べていささかマシなのではないかとコメントをさせて頂いたのですが、違うもの同士を比べていたということもありまして、改めてちょっと正確に御説明をさせて頂きたいと思います。

ええとですね。2 月に日本レコード協会様の方からプレゼンテーションを頂いた時に、ファイル交換ソフトでの違法複製ファイルの推定ダウンロード数、それから正規のダウンロード数をファイル数で御説明を頂いたのですが、それを最初に計算すると、92% が違法、そして 8% が正規のものとなります。それに対して報道の模様を見ていきますと、外国、海外ですけれども、IFPI のデジタルミュージックレポートという白書のようなものがまとめられていまして、この 1 月に新聞報道があって、合法的なものは 5% 程度にとどまっていると。

ということで、比べるのでしたらこれ同士を比べるべきだったのですが、このような状況に至るにあたって、我が国ではその CCIF の設立、二月にはそのガイドラインが公表されており、また 3 月からメール転送による警告活動が開始されるということで、この、我が国の侵害対策のフレームワークといったものがファイル交換ソフトの利用等の技術革新に応じて機動力を発揮してきたということを事実確認として表しておきたいと思います。

そして、この協働関係をできるだけ維持し、また実行性のあるものにしていく必要があると思いますが、この権利者とプロバイダの協働関係というのはどちらも協議会という形で進められていますですとか、より実効性を高めるため、特に現在協議会のなかなかメンバーとはなっていない新たな問題については、例えば侵害情報を誰が提供し、それに対してプロバイダがどういう措置を行うのかと、いったことを合意するような新たな参加者を呼び込むような覚書の作成も視野に入れるということがあっても良いのではないかと思っています。

昨年の 7 月に、イギリスでは政府が主導的な役割を果たして ISP 大手 6 社との MOU などの策定をしたということなのですが、それと同等のものというよりも、現在の協議会のスキームをさらに持続可能な形で運営し、しかも裾野を広げていく為の取り組みとして覚書のようなことを、スキームを作るということも考えられるのではないかということで、これは提案させて頂きます。

また最終的に結論を出さなければいけない本ワーキングとはまた別にですね、ネットワーク上の紛争解決という点では知的財産権の侵害に限らず様々な紛争がこれからも頻発されるものと思いますので、その時は匿名者に対する法的救済が可能となるような紛争解決制度が引き続き検討されるべきだということを、やはり、最終的な検討の中では謳っていければと思っている次第です。プロバイダに関する課題についてはいくつかありますが、その一部について御意見を述べさせていただきました。

ありがとうございます。

土肥座長:#

どうぞ、山本委員。

山本委員:#

資料 6 の 1 ページ目から説明させて頂きます。まず大前提として、プロバイダの責任の問題は、私は過失責任の原則には沿っておりますが、色々な制度を導入する機会はあるのじゃないかと。

というのは過失責任を変更するとかいう意味あいではなしにですね、例えば車を運転する時に過失責任の原則はあるのですが、そこに交通ルールを付ける、あるいはどういうふうにですね、左側通行にする、右側通行にするというようなルールだけじゃなしに、横断歩道を付けるとか、止マレの信号、ストップサインを付けるとかですね。あるいは危険であれば歩道橋を付けるとかですね、色々な工夫の余地はあると思います。

つまり過失責任を原則としながらもですね、そういうものとしてどういうものが在り得て効率的なのかと、そういう観点からアプローチしなければいけないのではと考えております。

まずはプロバイダによる侵害対策措置の導入についてですが、ここでの問題意識というのは、これは最初の方にも申し上げましたけれども、前提として権利者が侵害のあったらそれを見つけてプロバイダに通知して削除を求めるとかいうのは、それは正しいのですが、それを実行できる為には権利者がインターネット中を監視して、自分の著作物が無断で掲載されていないか監視しないといけないという前提がある訳です。

しかしそれはですね、著作権侵害が本日のように容易になったこの状況ではそれを求めることは実際には極めて困難であってですね、実際の所は JASRAC さんのような大手のインフラを持っているようなところが効率的にできるだけで、殆どの権利者はそうしたことがないということを考えるとですね、結局はインターネット上での侵害は殆どの部分が放棄されていて、著作権制度の実効性が損なわれるという問題があるのではないかと思っています。

それを回避する一つの工夫としてですね、例えば著作物にフィンガープリントを付しておいて、オリジナル作品だと権利者の側がフィンガープリントを付けたものをプロバイダの方に通知してある場合には、そのフィンガープリントが付された作品がアップロードされた場合には自動的にですね、削除するというような仕組みがあるだろうと思います。

で、その場合にはじゃあ今度は最初にですね「これは私の著作物です」とプロバイダに権利者が通知する時にそれが本当の権利者なのか、それ自身ですね偽者かも判らないという可能性を考えますと、かなり複雑な制度設計も必要になってくると思います。ただしこれによって、事前に権利者としてフィンガープリントを付けたものを、どこかの何らかの形で登録をすれば、自動的にですね、インターネット上にアップロードされることを防ぐというようなことも可能になる訳で、そういう可能性についてもどんどん追い求めていくべきではないかというふうに考えます。

次に、迅速な削除の点ですが、これが今問題になっているのは、国内の前提が自動的に削除ではなしに、権利者から通知して、通知した時に速やかに削除されるかという点ですが、これがされないのは権利者からわざわざ通知があってもそれが速やかな削除に至らないと言うのは、プロバイダの側が真の権利者による通知であって、かつ、本当に権利の侵害があるのかどうかということを判断しないといけない。前回指摘させて頂きました判断リスクがプロバイダの側にあるから。

それを解決する為の手段としては、これも前回紹介させて頂いたみたいに、DMCA のようにもう削除、通知が来たら自動的に削除するという削除義務を課すか、通知があろうとなかろうと残しておくのだと決めてしまうか、あるいは匿名と非匿名で分けて折衷的にするかといういずれかの制度を取ると共に、権利者と発信者が直接対決できるような制度的保障を作るというような方法が在り得ると思います。

次は発信者情報の開示ですが、これの問題の所在は、これも以前に指摘させて頂きましたけれども、著作権者、一方で著作権者の著作権というものと、他方で発信者の通信の秘密乃至はプライバシーというものの天秤の問題ではなく、権利者の側が侵害されようとしているのは裁判を受ける権利だと、そういうふうに考えますと、現行法のプロ責法で 4 条 1 項 1 号で侵害の明白性の要件が入っていますが、これはそもそも必要ないだろうと。2 番目の 2 号の方で入っております、その解除を求める正当な理由があるのかどうか、それだけで十分ではないか。それをその裁判で審議するとしたら、前回森田委員の方から御指摘ありましたように、発信者情報を求める場合でも諸外国は実体審理をしているというような御指摘がありましたが、それは DMCA を除いてそうだろうと。

しかしその場合であっても、ここで問題になるのは侵害の明白性が審議されなければならないのではなしに、裁判を受けるために解除を求める正当な理由があるのかどうか、それに限られるべき話だろうというふうに思います。ですから、制度の設計としてもそういうふうにしなければいけないだろうというのが私の問題意識です。

以上です。

土肥座長:#

ありがとうございました。それではプロバイダの責任の在り方について御意見を伺います。これも三つの点について大谷委員、山本委員にまたがって御意見頂きましたので、侵害対策措置・それから迅速な削除・発信者情報、この三つどれについても自由に御意見を伺えればと思います。どうぞ。

森田委員どうぞ。

森田委員:#

議論に入る前に 2 点、前提の確認なのですけれども、まずこの 10 ページの囲みの中で、前回申し上げた、プロ責法というのは一般的な監視義務を負わないということを定めた法律だということで、そのことは書いてあるのですが、一般的な監視義務というのは、例えばフィンガープリントというのは一般的な監視義務の問題として位置づけられるのですが、一般的なというのは要するに不特定の情報について、まあ特定の情報についてどういう義務を課すというのは一般的な監視義務の問題ではないと思いますけれども、流通する不特定の情報について一定の措置を講ずるというのはこれは一般的な監視義務の問題でありますから、例えばそのフィンガープリントを義務として課すことができるかというと、一般的な監視義務を負わせるということと抵触するので、そこまでは負わないという前提で考えているという理解で良いかということですね。

これが違うと言う事になりますと、一般的な監視義務というのは一体何を仰っているのですかという点が次に問題となってきます。

2 点目はプロバイダの範囲なのですが、接続プロバイダ、P2P との関係でどうするかという問題がありますけれども、留意事項についてという 15 ページの所で一つ目の○で一定の記述がある訳でありますけれども、そこで書いてあることは以前前田委員が御指摘になった点が関係すると思うのですけれども、その前提は前田委員も、現行のプロ責法 3 条が接続プロバイダが含まれているということではなくて、そこは現行法としては接続プロバイダが対象に入っていないという御理解の下でですね、法改正をしてそこに含めることは可能ではないかと御指摘だと私は理解しておりまして。

現行法の解釈として接続プロバイダが入らないというのは、観念的にはなり得るけれども、実証適応除外となっている訳ではないというふうに、文言の解釈としてですね、思いますので、ここはそうではないと思うのですけれども、そういう前提で考えますと、現行法のプロ責法の枠で考えるという事から行くと、接続プロバイダは対象とはなっていないというのが出発点だということでよろしいかと。

この 2 点は事実に関係することでありますので、この点は趣旨について御説明頂きたいと思います。

土肥座長:#

じゃあお願いします。よろしいですか、この 2 点。

奈良参事官:#

まず一点目ですけれども、仰る通り、フィンガープリントのような技術的保護手段について、義務を課すという所まではこの場では求めていかないというのが事務局としての考えでございますけれども、その内容につきましては具体的に権利者とプロバイダの間で適切な措置を定めるというものだと理解をしております。

それから二点目の方につきましては、これは事実関係につきましては法務省さんの方に御確認を頂ければというふうに思うのですけれども、私共の理解としては、基本的にプロバイダという定義の中に含まれるのではないかというふうに考えている所です。

土肥座長:#

恐縮ですけれども、今の事務局の回答でよろしいのかどうか、総務省から御意見があれば。接続プロバイダ。

二宮課長(総務省 情報通信基盤局 消費者行政課):#

今の論点でございますけれども、事務局の御指摘の定義の上から入るかどうかは、入り得るということだと思いますけれども、実際のところ、技術的に削除することが可能かというと現実的には難しいということだろうと思われますので、いわゆる、土管プロバイダと申しますか、通信を繋ぐだけのプロバイダという意味では難しいという意味だろうと考えております。

土肥座長:#

確認ですけれども、え、森田さんから仰いますか。

森田委員:#

あの、3 条 1 項で言う所の「当該特定電気通信の用に供される特定電気通信設備を用いる特定電気通信役務提供者」これを「関係役務提供者」と呼んでいるのですけれども、これは接続プロバイダは入るのでしょうか?

土肥座長:#

しかし森田委員、入らないということはないのですよね?

森田委員:#

はい?

土肥座長:#

接続プロバイダが入らないということはないんじゃないですか。

もしそうだとすれば、入らないということになれば、私共の基本的な認識が変わってくるのですけれども。

二宮課長:#

あの、3 条の記述の中で御指摘の関係役務提供者がございますけれども、この関係役務提供者といいますのは「当該特定電気通信の用に供される特定電気電気通信設備を用いる特定電気通信役務提供者」ということになっております。その上で、後ろの文がございますけれども「これによって生じた損害については、権利を侵害した情報の不特定の者に対する送信を防止する措置を講ずることが技術的に可能な場合であって、次の各号のいずれかに該当するときでなければ」云々とありますが、この技術的に可能な場合かどうかという点が、個別の場合に応じて判断されるということだと思います。

で、通常を申し上げると、本当に接続だけを行っているプロバイダについては、この点について「技術的に可能な場合」がそれほど多くないだろうという実体を御説明したものでございます。

土肥座長:#

技術的に可能であるかどうかという問題は勿論仰る通りだと思うのですけれども、その規定のいわゆる指定の中に接続プロバイダも当然入るけれども、技術的に可能な手段でしたっけ、なんでしたっけ規定では……ああ「措置を講ずることが技術的に可能でなければ」ISP、プロバイダの責任は制限されない……なければね。はい、責めに任じない、そういう建て付けになっているかと思いますけれども、ですから基本的には 3 条のこの特定電気通信役務提供者というものの中に接続プロバイダも入るという、そういう認識を持っているのですけれども、それは間違いでしょうか。

森田委員:#

文言の適用の問題は御説明で判ります。そうすると、違う所の要件で排除されると。技術的に……

土肥座長:#

その接続プロバイダがその措置を講ずることが技術的に可能かどうかという事によって責任が制限されるかどうかという事が決まってくるけれども、そもそもその中に、関係役務提供者の中に接続プロバイダも当然入るという認識を持っているのですけれども。

二宮課長:#

正しいと思います。

土肥座長:#

じゃあそういう前提で議論を以下させて頂きたいと思うのですけれども。

奈良参事官:#

済みません、一点追加で。先ほどフィンガープリントのお話がございましたけれども、言い忘れましたけれども、フィンガープリントを用いて検出する場合は通常は動画共有サイトのようなものが一般にアップされている場合に、それをフィンガープリントと照合して削除するというようなことを想定しておりますので、そもそも一般的な監視義務にあたらないのではないかと理解しております。

一同:#

[微妙な沈黙と少し後に笑いまじりのざわつき]

森田委員:#

さっきの説明と違うので。「一般的」にというのは不特定のつまり「特定」の「この情報」についてというのでは無くて、不特定の流通する情報を対象とするというのが「一般的な」なのですよね。

つまり、フィンガープリントというのは特定の情報では無くて、全ての情報についてそれでチェックをかけるという「一般的な監視」の話ではないかと理解していたのですが、そうではないのでしょうか?

奈良参事官:#

あの、それは事前に権利者側から一定の情報を抽出し、それについて検出しているものでありますので、不特定多数を対象として広く監視しているということではないというふうに考えております。

土肥座長:#

[苦笑まじりに] 総務省にお伺いしても……なにかございますか。

二宮課長:#

今の点に付きましては、私共としては一般的な監視義務に入るだろうと考えております。

土肥座長:#

はい、じゃああの、その点どちらか決める必要があるのですけれども、その前に平野委員どうぞ。

平野委員:#

まさにその点で、そこは事実をもう少し詰める必要があると思うのですけれども、いわゆるフィルタリング・スクリーニングは普通サイバースペース法学では一般監視義務と。

例えば中国において google の内容を中国政府が、この言葉に引っかかるのは全部駄目よというのは、これは一般監視義務と言うか、一般監視で、そういうことはやっちゃいけないよというのがアメリカ、自由諸国の立場であると、こういう世界となってくる気がするのですね。

ですから、フィンガープリントという技術が、まさに今のようにフィルタリング・スクリーニングにあたるのかどうか、そこは私はちょっと事実が判らないのでそこを明確にする必要があると思います。

土肥座長:#

フィンガープリントが今問題になっているのですけれども、これは総務省も……その一般監視義務の内容に属するかどうかというのは、これも事務局としてもそれはプロバイダに全てそういう義務を課すことはできないとお考えなのではないですか。

奈良参事官:#

事務局としては特定の義務を課すということは考えておりません。

一同:#

[微妙な空気]

土肥座長:#

あの、何かありますか。

小川参事官:#

あの、補足致しますと、ここで書いてありますのは、一般的な事前監視義務と言う前提で書いてありまして、動画共有サイトでクローリングということは公開されている情報に対するクローリングということで、一般的な事前監視義務にあたらないと、こういうふうに考えております。

土肥座長:#

[苦笑まじりに] じゃあどうぞ、平野委員どうぞ。

平野委員:#

私は憲法専門じゃないのですが、それは検閲に当たらないという意味じゃないですか。

検閲というのは要するに、発表される前に官憲が黒く墨を塗ってしまって公衆が見えないようにすると、これは検閲を禁止すると憲法に書いてあるのですけれども、公衆、今は公衆送信の話になると、既に公開されているものをスクリーニングするのは検閲に当たらないと、こういう議論じゃないですかね。

土肥座長:#

はい、森田委員お願いします。

森田委員:#

混乱させてしまって、あの、争う、事務局の理解と違いがあるということが良く判りましたけれども。いずれにせよ、囲みの中の記述、前回申し上げましたけれども、一般的な監視義務は負わないけれども、それこそ制度的な範囲でというのは問題となりうるという前提とした上で、どこまでが一般的な監視義務かという点を詰める必要があるかと思いますが。

さらに言いますと、これはプロ責法というのは責任を負わせる法律ではなくて、あくまでも損害賠償請求をする場合これは民法 709 条にもとづく責任と言うことになって、この点は争いの無い所で、プロ責法にもとづく請求権というのは存在しないのでありますから。なので、民法の要件を満たす場合にはそういう責任を負うというのが大前提なのですけれども、この四角の中の文章はですね「適切な侵害対策措置を講じていなければ損害賠償責任を負い得る」という文章は、負わせることができるというふうに読んでしまうと。何か侵害対策措置を何か取っていないとすると責任を負うかのような文章に読めてしまいますので、これは誤解を招きやすいといいますか、かなり問題だろうと前回申し上げました。

これをより正確にするとすれば、適切な侵害対策措置を講じていないことが、民法その他の法律にもとづいて、あるいは損害賠償責任を基礎づける要件を満たすときは、あるいは過失にあたる場合には、賠償義務を負うことが在り得るという文章にするのが適切で。これはなにか、当然に負い得る、負わせることができるということを前提にした上で、その内容をガイドラインで明確にしましょうという文章に読めてしまいますので。となると、文章を読んだ人に誤解を与えることになって、そういう見解というのはおそらく無いのだろうと思いますので、ここは明確にして頂きたいと思います。

その上で、そう致しますとこのペーパーの作りというのは「こうした観点から」の上の部分で、様々な侵害対策措置と称するものの説明があって、その次にプロ責法で責任を負い得ることを明確にして、それでガイドラインを作って具体化するという組み立てを考えておいでで、法的責任がある事を前提に、それをガイドラインで具体化するという方向を考えておいでだと思います。

しかし法的な責任を負うというのは、一般的には負わない訳で、ある特定の要件を満たすような場合ですね、例えば違法なダウンロードから直接的な利益を得ているとか、あるいは違法な行為を助長・誘発するようなことになっていると、そういうような場合については一定の作為義務として侵害対策措置を負わせることが、これは法的責任の話でありますけれども。そのような法的な責任が無い場合であっても、一定の場合にはですね、権利者と協力して侵害対策措置を進めていくこともまた必要ではないか。

この自主的な協力によって進めていく措置と、法的責任の話と言うのはレベルの違う話であって、1 対 1 で対応しない話でありますから、これを結びつけて書こうとしてしまいますと、何か広く責任が、法的責任があるという前提に立たないとうまく理屈が立たないものですから、そういう文章に流れがちな訳でありますけれども。その各問題は、ここでの議論も切り離す、北山委員のこの前の御意見をお伺いしていても、切り離して議論した方がそれを広く反映させることができるのじゃないかというふうに思いますので、その点を是非、切り離す形で問題を立てて頂きたいと思います。

土肥座長:#

はい。北山委員どうぞ。

北山委員:#

10 ページの括弧内の、今仰っている問題ですけれども、適切な侵害対策措置を講じていなければというのは、過失があれば損害賠償責任を負いますと、そういうことを言っているわけで、だからこれは当たり前のことを言っている訳で、その文言自体が適切かどうかという問題はありますが、侵害対策措置を講じていないということはそれは過失があるということで、民法 709 条をそのまま言っているということじゃないですか。

森田委員:#

そうすると、必ず侵害対策措置を何かしなければいけないということでしょうか。

北山委員:#

それは具体的な場合に応じて、過失の中身を言っている訳です、侵害対策措置をするという。

森田委員:#

あの、合理的に読もうとすればそういうふうに私も読める訳ですけれども、この文章を素直に読むとですね、そういうふうに読まない恐れもあるので、そう読まれないように明確にすべきではないかと。

侵害対策措置として上に沢山色々なものが書いてあって、こうした観点からと言う形で結びついているものですから、上にとった何かをしていないとですね、民法上過失が当然にあるという法律論を前提に読めているとすれば、それは問題ではないかと申し上げております。

土肥座長:#

はい。他に如何でございましょうか。はい、前田委員

前田委員:#

事務局としての考え方は、過失を基礎づけるその義務内容ですね、それから任意にやるべきことを決めていくということが直接無関係なものとして捉えることができるかどうかというふうに思います。私は思います。

というのは、プロバイダと権利者が話し合って、こういうことをやることが客観的に合理的だよね、客観的に合理的だよねという一定のガイドラインみたいなものが出来たとしたら、それはやはり過失の認定に影響を与えるということになるのではないかと思います。

それはガイドラインというのは直接的にはボランタリに話合った結果かもしれませんけれども、一旦それが出来た以上は、そういう合理的な措置と関係者が認めているものをやらずに、そのやらなかった事と相当因果関係の範囲内において、損害が生じたという場合があった場合には、それは過失が認定されやすくなると。

かならず認定されるかどうかはまた別問題かもしれませんけれども、そういう効果が生じてくるのではないかと思います。

土肥座長:#

はい。平野委員。

平野委員:#

前田委員の仰る通りで、私は前回から、前から申し上げていますが、萎縮効果も産むような、誤解も生じるような法改正をするべしという提案は反対でございます。

むしろガイドラインをまさに作って、それがデファクト的に過失の認定に、司法府にも影響を与える、尊重してもらえるのが望ましいと私は思うのですね。

何故ならば、法律改正をするときに、要件が曖昧ですと。幾つか論点はありますが、一つ要件が、提案している要件が曖昧な法律を作るというのはナンセンスです。

二つ目、立法事実が必要な本当にあるのかと。ここでの議論の中では、本当にこの条文改正をすることが必要であると言う fact、数値、そうしたものが出ておりません。ですから立法が必要だ、改正が必要だと言う説得力を欠いております。

三つめ、例えば 13 ページの (4) 国際動向について、ここを読みますと、ポツの2をみると「EUはこういう規制をしてない」と言ってるのですね。我々まさに今、国際協調ということを一つの主眼として議論をしている中で、EU という大きな地域では規制がない。じゃあアメリカはというと、DMCA これは森田先生前から仰っているように、建てつけがそもそも違うと。セーフハーバーの利益を得るためには前提条件こういうものがありますよと。②の標準的技術手段の導入というのは条文で入ったけれども、デファクト上、これがまったく合意がなされなくて機能していない。

だから、機能しない法律はアメリカにあります。EU には法律ありません。何故日本だけ突出して曖昧な要件の法改正をする必要があるのか。全くここは説得力に欠けると思うのですね

これはまさに本来、nonfeasance、misfeasnace と言いますけれども、misfeasance、何かやった時にミスがあった時は過失責任がありますこれは大原則、それから nonfeasance 何もしない時は、特別な関係がない限り責任はないのだというのが大原則と。

その時に、これ、今提案しようとしているのはおそらく作為義務がありますよと。本来責任はないのだけど、義務はありますよと。だけどその要件がはっきりしない。これは申し訳ないのだけど詰めが甘い。

ですから、詰めが甘い所で法改正すべきというのは申し訳ないのだけど、拙速であり、むしろガイドラインを詰めるべしと。

こういう、例えば報告書の中に提案をすれば、これは業界団体だって、例えばプロバイダ団体だって、動画サイトは全く何とかかんとか書いてありますが、動画サイト団体だって無視することはできないのじゃないかと。

もっと言えば、動画サイト団体に対してきちっと、著作権利者団体は申し入れたのですかと。ガイドラインを一緒に作りましょうよと要求したのですか、努力はしたのですかと。

それがまず先にありきではないかと、こういうふうに私は思います。

土肥座長:#

この問題ですね。13 ページの所にある事務局の提案ですけれども、侵害対策措置に関してプロ責法に何か具体的な規定を書き込むという提案ではないですね。

○の所にございますけれども、現在の民法 709 条の不法行為責任でですね、プロバイダが負うべき不法行為責任と言うものを具体化する、そういったものがプロ責法上の責任であるとすれば、そのプロバイダが過失の判断に応じて結果回避義務があるのかないのか、そこで判断されてくる。

そのことをプロ責法上明確化した上で、まあこれは必要ないという立場の委員も当然おいでになる訳ですけれども、それを受けてガイドラインで、どういうプロバイダなのか、どういうコンテンツを扱っているのか、どういう規模でやっているのか、そういう具体に応じてガイドラインの中で結果回避義務の内容を色々定めていくのはどうか。

これはプロ責法の性格を変えるものでも無いというふうに思いますけれども、そういう認識でよろしいのかと、そういうことでございます。

はい、宮川委員。

宮川委員:#

この論点は色々まだ、幾つかあるのですが、今話題になっておりますプロ責法に何か確認規定を設ける必要があるのかないのかに関しまして、平野委員からは立法事実も有るのか無いのか判らない、ならば民間でせめてガイドラインを充実させたらどうかという御発言だったのですが、立法事実も無いかどうか判らないのに、民間の話がまとまるように誘導していくというのは非常に難しいと思いますし、ましてや民間の方々はそれぞれ立場と色々のお考えがあって、国や役所がこういうガイドラインを作れと言うことでも無いと思うので、やはりこのプロ責法の中で、何らかの状況の中では一定の責任を負い得るという所を確認して、その上で、どのような状況で、どのようなプロバイダの方が、どのような対策をなさるべきかということをガイドラインに起こしていくという、そういうことも十分考えられることではないかなというのが私の考えです。

土肥座長:#

はい。山本委員どうでしょう。

山本委員:#

この、四角の枠の中に書かれている内容というのは民法の過失責任主義を前提にしておりますので、この、適切な侵害対策措置を講じていなければ損害賠償責任を負い得ることを明確化した上でというのは、これはその、過失責任の範囲を超えないということで、その方向は一つあるのですが、あの、判りやすい方から言いますと、私は平野委員が仰ったように、適切な侵害対策措置を講ずる立法事実があるのかという点についてはですね「ある」のであって、例えば過失責任を超えてであっても、例えば運転する時にはシートベルトをかけろよと、あえて作為義務を課すのと同じようにですね、これが合理的であれば、こうしたものをやるべきだという議論があっても良いと思うのですね。単純に過失責任の確認規定じゃなくて。

次の、二番目の問題として、じゃあ確認規定を入れましょうと。確認規定を入れると言うのはそれはそれで意味があるのですが、そこから先の具体化はガイドラインに期待するというのはそれは方法論として間違いじゃないかなというふうに思います。

と言うのは、ガイドラインと言うのは合意ができないとガイドラインにならないのですけれども、それは、合意をやろうとしたらミニマムの所でしか合意できないですね、これが本当の適切な侵害対策措置として機能し得るようなものなのか、何の保証もなくてですね。

言い方は悪いですけれども、立法的な努力を投げ出して当事者間に任せてしちゃっているみたいな感じがしまして、無責任な気がします。

もう堂々とだから、だからあれですね、裁判所に任せて、確認規定だけ入れて、裁判所に判断は任せる、具体化は裁判所に任せるというやり方を取るのか、あるいはもっと積極的にですね、こういう侵害対策を取ることが合理的なのだということで、過失責任云々の前にですねもうそういう立法化をするか、そのどちらかなのじゃないかなと。ガイドラインという選択は無いのじゃないかなと思っています。

土肥座長:#

はい、中山委員。

中山委員:#

山本委員の仰るのは良く判るのですけれども、要するに一番難しいのはですね、以前この会議で行われました、プロバイダが色々な種類があると、種々雑多であって、統一的な基準を法律的で設けようと思っても難しい。

おそらくそれは可能ならばですね、山本委員の仰ったようなことも考えられるのですけれども、じゃあ一体どういう条文になるのかと、ということが判らないという所で、おそらく事務局が勉強してガイドラインに落としたということではないかと思います。

ガイドラインが巧く行くかどうかというと、それは巧く行くと断言できる人はあまりいないのでしょうけれども、まあ日本の事ですから、関係官庁も頑張って頂いてですね、やると言うしかないのじゃないかという気が致します。

それから先ほど平野委員が仰ったのと、事務局の案というのは、私は基本的に同じだと思っていて、ただそれを確認規定を置くかだけのことだと思うのです。

じゃあ、その確認規定というのは一体どういう条文になるのかという、もう少し文章的に出来たものがあれば、より利用しやすいと思うのですけれども、確認規定を巧く置ければそれはそれでそれなりに意味があるという気がします。

土肥座長:#

中山委員の御要望は良く判るのですけれども、なかなか事務局も具体的な一手を御覧に入れるというのはここで我々がやっております、その、審議会というのも当然ございませんから、そういう方向で今後検討する事というぐらいしか無いのだと思いますね。

もし事務局で何か具体的な例があればアレですけれども、本当に難しいと思いますので、残る二つの点が一つありまして、迅速な削除手続きと、それからもう一つの発信者情報開示、この点については如何でしょうか。はい。

中山委員:#

一つ事務局に質問です。21 ページなのですけれども、プロバイダが警告メールを転送する行為はですね、通信の秘密の侵害、憲法違反だと考えられていると書いてあるのですけれども、これは考えている人はどなたでしょうか。

総務省、あるいは法制局なのか、あるいは誰か違うのか、一体誰がこれは憲法違反だと考えているのでしょうか。

戸渡次長:#

その点については従来の解釈として、総務省さんの方ではそういうプロバイダが警告メールを転送する行為も本人の同意なしに通信履歴の利用が生ずるので通信の秘密の侵害に当たるのではないかと考えておられると私共は聞いておりますが、総務省さんの方で何かございますでしょうか。

二宮課長:#

只今御指摘頂いた通りでして、メールを、警告メールを発するにあたりましては、例えば IP アドレスでございますとか、タイムスタンプ等ユーザを特定するための作業というものが必要になろうかと思いますので、それは通信の秘密を侵害し得る行為だということでございます。

土肥座長:#

中山委員よろしいですか、これで。

中山委員:#

いや、あまり納得はしていないのですけれども、他方では例えば裁判を受ける権利とか色々な権利がありましてですね、色々なものの総合的な判断をするべきではないかというので、なんでもかんでも転送すれば全部憲法違反だという解釈には私はちょっと頷けないです。

土肥座長:#

他に如何でしょうか。北山委員どうぞ。

北山委員:#

発信者情報の開示の件ですが、この前から山本委員が、しきりに侵害の明白性の要件は必要ないのだと言う事を仰っている訳ですが、それに代えて、主張者の真摯性を要件にすれば良い、こういう御意見なのですね。

で、ですね発信者情報の開示は、その後の開示されたものを相手にして、損害賠償なり差し止めの請求の訴えを起こすことを前提にしている訳ですから、それに意味のある人でないと、全然その必要性がなくなるわけですよね。

だから法律はそういうことを考えて、予めこの侵害の明白性を要件にしている訳ですね。だからこれは非常に合理的な法律であって、これに変えて、今言ったような真摯性を要件にする必要はないというように私は思います。

要するに、発信者情報の開示というのは要するに、前訴訟というか準備訴訟ですから、将来の、本来の訴訟を準備するものですから、準備する為の訴訟は本格的な訴訟になったときに意味のある人でないといけないと、だからその発想は合理的だというように思いますよ。

土肥座長:#

はい。ありがとうございます。では、どうですか順番だと山本だと思うのですけれども。

山本委員:#

今の御発言の部分なのですけれども、この発信者情報開示制度、プロ責法 4 条の 1 項の 2 号にですね、発信者情報が、ええとごめんなさい、当該開示の請求する者の損害賠償請求の行使の為に必要である場合その他、発信者情報の開示を受けるべき正当な理由がある時という要件が入っておりますので、先生が今強調されていたのは、この要件の充足性の問題ではないかなと思います。

で 1 号の方にですね、その前に侵害されたことが明らかであることという明白性の要件が入っているのですけれども、訴えを起こす前の段階で、侵害が明白でないといけないというのはちょっとそれはやりすぎじゃないかなと。

我々だって訴えやってですね、侵害と認識されるかどうか、言ってしまうと半々ぐらいの確率しかないのにですね、100% 無いと訴えも起こせないというのはこれは裁判を受ける権利の重大な侵害といいますか、制約ではないでしょうか。

土肥座長:#

ええと大変な……通信の秘密と裁判を受ける権利の問題になっているのですが。あ、平野委員どうぞ。

平野委員:#

済みませんあの、報告書も近い近いことですし、一応言っておきたいことが、21 ページの最後から 2 番目の (4) 国際動向のポツ 1 ですね。

アメリカのこの、書記官の判断で容易に開示命令できるとありますが、前回も申し上げて、議事録に載っていますが、接続プロバイダについては書記官簡単に出しちゃ駄目よという判例が、RIAA 対 Verizon 事件判決ありまして、似たような判例があるので控訴審レベルで。

だからそういうことはちょっと、これだけでピリオドになってしまうと、アメリカは簡単にいくのだなと、それはもう単に可能とかどうたらじゃなくて、裁判所が審査してそういう判例があるので、そういう所も活かせるように書きぶりを考えて頂きたいということと。

それから次の「また」と書いてありますけれど、匿名で、これはまさに匿名訴訟、こういうものも考えるべきだという議論こうございましたけれど、匿名訴訟でいく場合は厄介だとアメリカでも思われていて、著作権利者団体というのはなるべくならこの書記官で簡単にやりたいと。

こういうことがあるというのも事実でございますので、そのへんも判るような、報告書をする時はお願いしたいと思います。

土肥座長:#

はい、山本委員どうぞ。あの、時間があまりなくなっておりますので、済みません概略部だけ一つお願いします。

山本委員:#

はい。今の 21 ページ目の下から二番目の○の所ですが、前段で、今御指摘のあったここの書記官による開示命令が拒否されたというのがありますが、それはそもそもですね、この判断、発行の要件として判断が必要だとかいう話じゃなしに、この制度を利用できるのは接続プロバイダに対してではないという、そこが要件ですので、別に書記官が判断権を持っているとかそういう話ではそもそもないと思います。

つまり、制度の対象として利用できるのは、接続プロバイダかそれ以外のものかという違いはそもそも建てつけの要件からある話でですね、書記官がどういう場合であれば判断してよいとか、どの程度判断しろとかいう問題ではないという指摘だけさせて頂きます。

土肥座長:#

あの、時間があまりもうなくなってきていますので、そろそろ本ワーキングを閉めたいと思っておるのですけれども、最後のその発信者情報の開示につきましては、この裁判を受ける権利と言う問題、非常に大きな憲法上の承認された権利でありすので、こうしたものが実際使えないということは困る訳であります。

じゃあどんどん発信者情報を開示しろと、こういうことにはならない訳で、そこのバランスをですね、どのように今後取っていくのか。

つまり、現在やっておりますこの 22 ページの最後の所にある必要な対策の○の 1 番目ですね。こういう IP アドレスやタイムスタンプの問題というものについて、発信者情報の一つとして当然上がってくるのは承知しておりますけれども、こうしたものについては省令でこの辺りは固まっている話ではないかと思いますので、この辺りは今後見直していく、見直して頂くような、そうした方向性が出せるのではないかというふうに承知しております。

それから迅速な削除はですね、これは色々山本委員始めとして御意見を頂いておる所でございますけれども、これもワーキングの非常に根本的な制度上の仕組みを伴っておりますような所でございますので、このワーキングチーム、今日それから次回移行もまだワーキングチームとしては存続するようでありますので、この点については継続的な検討というふうにさせて頂ければと思いません。

もう時間がありませんので、最後になにか御発言ございましたらお願いしますけれども。はい、どうぞ。

森田委員:#

最後に結論の所の 3 つめの○ですね、迅速に裁判できる制度を検討することが必要だというのは、これは匿名訴訟のことを言っているのでしょうか。

具体的に何を指しているのかが判らなくて、現在の発信者情報開示請求権というのは先ほどから出ている裁判を受ける権利というのが他方であり、しかし匿名者は匿名の利益、これはアメリカ法上も修正第 1 条、憲法上の権利で、この両方の憲法上の権利を調和する為にどういう要件があるかといいますと、開示請求の要件というものがあって、それは基本的には司法機関が判断して解除すると、そういう調整の結果現行法が成り立っている訳でありまして、これが用意したものですけれども、それ以外に迅速に裁判を提起できる制度というのは何を検討せよということなのかが良く判らないので、次回に向けてここを良く明確に、何を検討せよということなのかということを、それは既にあるもので足りないという趣旨であるとすると、何を検討するべきなのか明確にして頂きたいと思います。

土肥座長:#

はい。これは次回にお示しすることに致します。それで良いですね。

戸渡次長:#

はい、今御指摘頂いた部分の明確化。それから先ほどの一般的な監視義務ということについて、総務省さんと私共の考えを再度きちんと整理した考え方を、考え方は私共事務局の方でまた整理致しまして、次回、今、御指摘頂いたこと、また、この前色々御質問頂いた部分も整理をして御説明できるようにしたいと思います。

土肥座長:#

はい。じゃあ事務局におかれましてはよろしくお願いします。予定の時間が参りましたので本日の会合はここで閉会致したいと存じます。

次回の会合に付きまして、事務局から説明をお願い致します。

奈良参事官:#

次回でございますが、3 月 24 日 水曜日、13 時からから本日と同じこの会議室で開催致します。

尚、最後時間がなくて、もし言い足りない点等ございましたら、3 月 17 日、明後日の午前中ぐらいまでに事務局まで御意見を送って頂ければと思いますので、よろしくお願いします。

土肥座長:#

ありがとうございました。それではこれで閉会致します。ご多忙の所御参集頂きましてまことにありがとうございます。