MV-300 の基本的な機能は次(下表1)の通りです。
入力 | ビデオ端子 1, S ビデオ端子 1 |
出力 | ビデオ端子 1, S ビデオ端子 1 |
形式 | MJPEG, YUV16, RGB15, RGB24 |
サイズ |
704x480, 352x240, 176x120 640x480, 320x240, 160x120 704x240(*), 704x120(*) 640x240(*), 640x120(*) 352x480(*), 352x120(*) 320x480(*), 320x120(*) 160x480(*), 160x240(*) (*) は MJPEG でのみ可能 |
キャプチャ | Video for Windows 経由のみ |
添付ソフト |
Ulead MediaStadio Pro 5.2 VE Video for Windows ドライバ Software Development Kit |
実売価格 | 30000 〜 40000 円前後 |
表1 MV-300 の機能 |
画質などについては こちら を読んでもらう事にして、それ以外の点について以下のような利点があります。
それぞれの利点について詳しく書くと次のようになります。
1. の Y = 480 クラスの動画に関して、無圧縮のビデオキャプチャカードの場合 RGB24/29.97fps では 約 30M/sec のデータ転送速度が必要になりますが、単体でこれだけの転送速度を達成できるハードディスドライブは現在一般に市販されていません。この問題を解決するため RAID-0 などの特殊な環境を構築する必要が発生します。その点 MV-300 ではハードウェアで Motion JPEG 圧縮を行うので、最低圧縮率の 1/4 圧縮でも約 5M/sec のデータ転送速度を確保するだけで済みます。これは UDMA33 をサポートしている一般的な IDE HDD であれば十分に実現可能な性能です。
2. の長時間キャプチャに関して、Windows の AVI ファイルには最大で 2G までのファイルしか扱えないという制限があります。これを回避する方法としては参照 AVI や 分割 AVI による連続キャプチャなどの方法があります。このうち、分割 AVI による連続キャプチャを行うソフトとして 岩本一樹 さん作成 GPL2 による配布の VideoShot というソフトがあり、これを使用する事で 2G の制限を回避し長時間の連続キャプチャを行う事が出来ます。
1. & 2. に関しては一般的な Motion JPEG キャプチャカード(PowerCaptuer Pro/PCI, Buz, Rainbow Runner, MJ-600 等)全てに当てはまる特徴ですが、3. の SDK が標準添付されているという条件はおそらく MV-300 だけに当てはまる特徴だと思います。この SDK の内容は Video for Windows のドライバを利用したキャプチャアプリケーションの VC によるサンプルソースです。ビデオキャプチャを直接制御するソフトウェアを開発する必要がある人にとっては非常に優位な点だと考えます。
4. のチップの仕様公開については一般の人にとってはあまり意味のあることでは無いかもしれません。ただ、Linux などの Free UNIX を利用している人にとっては、ひょっとしたら何時か Windows 以外の環境でも使えるようになるかもという期待が持てる点で利点になると考えます。
5. の低圧縮率キャプチャは、INI ファイルの直接編集によって可能になる裏設定ですが、高画質を求める方にとっては十分に魅力的な点だと思います。Windows フォルダに存在する mv300.ini の CoderCompRatio に 1.000 を入れる事で実質圧縮率 1/2.5 かつドロップフレームの発生しない安定したキャプチャが可能になります。ただ、これを実現するためには 9M/sec 程度の転送速度をハードディスクに要求するので、多少古いハードディスクを使用している方にとっては厳しいかもしれません。
MV-300 には 上記 の利点があるのですが、次のような欠点もあります。
以下、それぞれについて詳しく書きます。
1. の安定性についてですが、MV-300 はかなり不安定です。キャプチャ時はそれほどでもないのですが、再生時やフォーマットの変換時に PC を良くフリーズさせてくれます。この時青画面に行ってくれるようならまだ救いがあるのですが、それすらなく Ctrl+Alt+Del も効かないので発症した場合はハードウェア的に電源を切るしか解決策がなくなります。
MV-300 を差す PCI スロットを変更する事やメインボードを変更する事、BIOS で PCI Latency Timer 大きめ(32 〜 64)に設定し直す事でフリーズの発症を抑える事が出来るのですが、根絶することは難しいです。
2. のドロップフレームですが、MJPEG 形式でのキャプチャを行う場合、シーンチェンジやフラッシュ・ホワイトアウト・ブラックアウト等の際にドロップフレームが 1, 2 個発生してしまいます。また取りこむ素材と圧縮率の設定によっては大量のドロップフレームを発生させる事があります。
これについては 趣味のMPEG作成 のページにドロップフレームの発生を低減させる方法が記述されており、私の環境でも確かに同様の効果を確認できています。また、INI ファイルを直接編集して 1.000 などの極端な低圧縮率(高画質)設定を行う事でもドロップフレームは減らせます。
3. ですが、ODD First を指定した場合、480 本の有効走査線全てをキャプチャすることは不可能です。デフォルトでは 8 本の VBI(垂直帰線消去期間)領域を含んでしまい、キャプチャ領域を下にずらしてこれを消そうとすると、今度はキャプチャが一切出来なくなってしまいます。
これは、JPEG 圧縮チップのレジスタに書きこむ値を間違っているドライバのバグの為です。EVEN First を指定した場合は正しい値が書きこまれるので 480 本の有効走査線を全てキャプチャできますが、キャプチャできた AVI ファイルは 30fps でつくられた CG などのばあい全てのフレームでフィールドがずれてしまいます。(このバグの原因については こちら を参照ください)
4. ですが、704x480 でキャプチャした場合、キャプチャできる画像が 4 ピクセル程度左にずれています。これは MV-300 が利用しているビデオデコーダ(NTSC → デジタルコンバーター)チップのデフォルトのアクティブビデオ領域の設定が左にずれているためです。(詳細は こちら を参照)
5. ですが NT 用のドライバは現在存在しません。AverMedia で作成中らしいのですが、MV-300 発売後既に 1 年経とうとしているのに未だに完成していません。これも今後一般的な OS 環境が Windows 2000 に移行していくと思われる現在の状況では MV-300 の購入を躊躇う原因となるでしょう。
個人的な意見を言うならば、現在 MV-300 を買う事はお奨めしません。既に DV 機器を持っている場合は IO-DATA か Canopus の DV キャプチャカード(DV では 30 分で 5G 程度になってしまうので参照 AVI が必須となる)を、DV 機器が無い場合はもうすぐ ATI からリリースされる VideoWonder(720x480 ハードウェア MPEG2 キャプチャカード)の発売を待ち、Web に人柱レポートが上がるのを待つ事をお奨めします。編集をメインで考えているので MPEG2 は不安だという方も、少なくとも Windows 2000 が正式にリリースされ MV-300 の価格が暴落するまでは待った方が良いと考えます。
MV-300 も少なくとも再生時の障害については Morgan Multimedia や Pegasasu Imaging Corporation, Main Concept が作成・配布しているソフトウェア MJPEG コーデックを利用することで回避できるのですが、キャプチャ時の問題については対処できないので、これが解決されるまでは購入を見合わせたほうが良いと考えます。
それでも次のような方ならば買ってみても良いかもしれません。
上3つ全てか最後の1つに当てはまる方は、どうぞ一歩を踏み出してみてください。