日々の戯言


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12月2日(木) とりとめのない話 [この記事]

また間が空いてしまった。一応秋口から文化庁の法制問題小委員会 [URI] と経産省の「技術的制限手段に係る規制の在り方に関する小委員会」[URI] の傍聴をしているので書くべきネタ自体はあるのだけれど、傍聴レポートを書くだけの気力を起こすことができず、twitter [URI] で当日中にメモを残しただけで放置してしまっている。

この二つの傍聴をしているのはいわゆる「マジコン規制」と呼ばれるアクセスコントロール回避規制の具体的な法制化を検討している審議会・委員会なため。春に傍聴してた知財本部での知財推進計画 2010 でまとめられた方針を具体化するために「著作権法」「不正競争防止法」のそれぞれをどう変えるべきかという検討をしている会議にあたる。

私の立ち位置と傍聴のモチベーションは過去 [URI] に書いた通り。マジコンによる違法複製ゲームの利用は問題だと認めるけれども、そのために「ハック」ができなくなるのは勘弁してくれという立場。ここでいうハックというのは仕様が公開されていないハードウェア/フォーマット等を解析して好きなように使う行為を意味している。

今年の DMCA 見直しで除外行為に追加された iPhone のジェイルブレイクや、Linux 上で DVD を再生する為の CSS 復号ソフト作成とかが私の言う「ハック」の代表例。マジコン対策を口実に事業者側要望をそのままに飲んだ法改定が行われると日本ではこれらの行為ができなくなり、ひいてはソース公開 UNIX の利用そのものもできなくなりかねないという懸念から休みの取りやすい仕事なのをいいことに傍聴を続けている。私は Linux や FreeBSD といったソース公開ソフトの世界で育ててもらったと考えているので、日本に技術者を残す為にも、若い人たちからそうした世界を奪うべきでないと考えている。

◆◇◆

前置きが長くなりすぎた。今回は先週金曜にあった経産省の技術的制限手段小委員会のことが書きたかったのだ。

◆◇◆

私は前置きに書いたような考えでいるのだけど、そうした考えの人は少数派らしく経産省の小委員会は不人気で、委員随行の人以外で傍聴している人は 1 桁しかいないんじゃなかろーかというぐらい人が少なかったりする。快適に傍聴できるのでそれはそれで嬉しいのだけど。

んで、傍聴申し込みのページにも傍聴許可の回答メールにも録音・撮影に関して何も書かれていなかったので、10/19 の二回目傍聴の際の IC レコーダでの録音データを置いて、twitter からリンク [URI] していた。

それが原因だという確信がある訳ではないけれど、先週金曜の第三回から会場での傍聴受付時に事務局の方から名刺の提出要請と同時に「録音の遠慮」のお願いがあった上、土肥委員長から改めて「録音の遠慮」のお願いがあった [URI] のがなんだかなーという感じ。一応録音を「遠慮」して第三回の録音データは公開してない。

◆◇◆

同じく傍聴してた hideharu さんが「聞いてる限りそんな困るような発言は誰もしていないと思うけどねぇ」[URI] と書いていた訳なのだけど、まあ「ぶっちゃけ、マジコン使っちゃ駄目と言いたいが現在の法ではそれができない」[URI] という事実がゲーム会社の法務担当 (長谷川委員は CESA と スクウェア・エニックス に所属) も認めることだと思われると困る人もいるのかも知れない。

ただ、事実を否定しても始まらないような気がするので、他に問題がありそうな発言は……と思い返すに、個人的には第二回での宮川委員の東京地裁でのマジコン裁判についての意見 [URI] の方がよっぽど問題に思えたのを思い出した。

法律を解釈する場合は法文自体を厳密に解釈するのではなく法制定の過程での意見を最大限に汲むべきで、そうした東京地裁の判決は称賛に値するという意見だと理解している。しかし、昭和28年に公開された映画の保護期間が争われた裁判(前年12月31日で保護期間が満了する著作物の著作権が1月1日施行の法の施行日からと書かれた延長対象著作物に含まれるかどうか)での知財高裁判決 [URI] の 20 ページ辺りを読む限りでは、立法過程でどのような意思があったとしても法文にそう書かれていなければ駄目というのが知財高裁および最高裁の意見だと思っていたのだが……。

まあ個々の弁護士が知財高裁の判例を無視した地裁判決に重きを置くのは自由だし、それを省庁主催の公開の委員会で主張するのも自由なわけなんだけど、法治国家の法律屋としてその「法文と立法趣旨が矛盾したら趣旨を優先すべき」という姿勢はどうなのかなと個人的に思う。

日本は法治国家ではなく、未開の人治国家なのだという例も(尖閣の船長とか)多々見られる訳なので言っても仕方のないことなのかもしれないけれど、児島惟謙が聞いたら軽蔑されるような話にも思える。戦前よりも退化してるのかもと疑いつつ暮らすのは悲しいなぁ。

◆◇◆

補足。ここで話題に上げてる東京地裁のマジコン裁判では「のみ」要件が争点になったのだけれども地裁の判断では「別のものが入ってても "のみ" 要件を満たす」で販売差し止めを認めるという日本語解釈の新天地を開くものとなっている。判決文 [URI] もあるので興味のある方は一読を推奨。


12月3日(金) 文化庁・文化審議会・著作権分科会・法制問題小委員会 第11回 配布資料&当日感想 [この記事]

という訳で標題の会議を傍聴してきた。当日配られた資料は座席表を除いて文化庁のサイト [URI] に上がっているので、このサーバに置いたデータへのリンクは外しておく。(12/7 文章変更)

twitter の方 [URI] に傍聴中に感想とかを書いていたけれど、とりあえずここをチェックしている人が興味を持つだろう B-CAS 周りに関しての記述は、「資料 1-2 記述的保護手段ワーキングチーム 報告書」[URI] の 12 ページ脚注部分。この B-CAS 方式についての説明と 23 ページの「おわりに」に書かれている内容を読むと、Friio に代表される無料広告デジタル放送のコピー制御に関して反応しない無反応機も含むことができるように「技術的制限手段」の定義を書きなおそうという趣旨に思える。

当該部分をピックアップ。まず、B-CAS 方式の (法制問題小委員会ワーキングチームの考える) 説明部分から。

 B-CAS方式 : 有料放送(BS/110度CS) で契約した人だけが放送を受信できるようにする限定受信方式として開発され、現在では地上デジタル放送にもコンテンツ保護の強化のために用いられている。
 放送波には暗号化(スクランブル)が施され、当該スクランブルを解除するためには B-CAS カードが必要となるところ、当該 B-CAS カードの支給契約に係るライセンス契約に基づき、機器メーカーに対して複製制御等を義務づけ、また、シュリンクラップ契約形式の使用許諾契約により、エンドユーザーに対して著作権保護技術対応機器以外での B-CAS カードの使用を禁止している。

次に「おわりに」の問題個所。

 CSS 等の「暗号型」技術やゲーム機・ゲームソフト用の保護技術について、「技術」面にのみ着目するのではなく、契約等の社会的実態も含め、保護技術が社会的にどのような機能を果たしているかとの観点から評価し、複製等の支分権の対象となる行為を技術的に制限する「機能」を有していると評価される保護技術については技術的保護手段の対象とすることが適当であること

私は 2 年前に Friio に代表される無反応機を規制するには「存在しない技術的保護手段を回避された」と主張する面の皮の厚さが必要 [URI] と書いたが、どうやらワーキングチームの方々の面の皮は私が考えていた以上に厚かったようだ。

「"技術" 面にのみ着目するのではなく」ということは純粋に "技術" として見た場合、目的を達するための機能を有してなくとも著作権法での規制対象としたいということなのだろう。


12月6日(月) これからの展開 [この記事]

asahi.com の「DVDコピー、家庭内も禁止へ 暗号で保護のソフト対象」という記事 [URI] で紹介されている文化庁の小委員会というのが、金曜に傍聴してきた法制問題小委員会。

asahi.com の記事の内容はだいたい正しいのだけど、私が見ている範囲では内容が正しく伝わっていないような反応が見受けられるので、DeCSS はこれまで著作権法ではどのような扱いだったか、そして今回の小委員会報告の趣旨を入れた著作権法改定が行われるとどうなるかを説明してみる。

まず、現在の著作権法で技術的保護手段の回避というものがどのように規制されているか。

技術的保護手段を回避しての私的複製 違法 (30 条)
だけど刑事罰なし (119 条)
技術的保護手段を回避しての視聴 合法
そもそも視聴しても良いかを選別する権利が(著作権法に)ない
回避機器 又は 回避プログラムの
販売 又は 譲渡 又は 公衆送信
3 年以下の懲役 若しくは 300 万以下の罰金 [併科可能] (120 条の 2)
非親告罪 (123 条)

簡単にまとめてみると上の表になる。DeCSS 登場当初は CSS が著作権法で定義されている「技術的保護手段」にあたるのではないかという誤解があったため、DVD の CSS を復号して複製を行う DeCSS の配布および譲渡は著作権法 120 条の 2 に触れる違法行為なのではないかという論争があった。

しかし暗号化といったアクセスコントロール機能は、アクセスコントロールによって可能になる「アクセス」の制御は著作権法で保護される著作者の権利ではないため、DVD の CSS のような暗号化手段は現行著作権法の「技術的保護手段」からは除外された定義となっている。

このため、現行著作権法では DeCSS は 120条の対象とならない。配布・譲渡ともに現行法では合法な行為だ。また、DeCSS を利用した市販 DVD の私的複製 (個人でコピーして家族・友人に渡す行為) も合法である。

◆◇◆

これまでの文化審議会・著作権分科会の検討では、そもそも「アクセス」の制御 ── 誰が、何時、どんな手段で 作品を鑑賞するか選別するということ ── は著作者に認められた権利ではないという観点から、アクセスコントロールを著作権法の技術的保護手段に含めることに消極的だった。

しかし今春の知財推進計画 2010 での「アクセスコントロール回避の規制立法を検討しろ」というまとめに従い、今年の 9 月 7 日の法制問題小委員会で急遽設置された技術的保護手段ワーキングチーム [URI] により、僅か 2 カ月の検討でまとめられた今回の報告書では、次のような方便を使ってマジコンや DeCSS を規制しようとしている。

当該保護技術が社会的にどのように「機能」しているかという観点から着目すれば、複製等の抑止を目的とした保護技術と評価することが可能であり、技術的保護手段の対象とすることが適当と考える。

つまり、マジコンが回避している「独自&秘密インタフェース」や DeCSS が回避している「暗号化」は「アクセス」の制御を目的としたものではなく「複製」という著作権法で認められた著作者の権利を保護しているのであって、著作権法の規制対象である技術的保護手段に含めても良いというまとめかたになっている。

◆◇◆

この報告書でのまとめに関しての論評は後でやることにして、この趣旨通りの著作権法改定が行われた場合に DeCSS / libdvdcss [URI] がどうなるか、また Friio / PT2 / ARIB STD-B25 仕様確認テストプログラムソースコード / b25decoder.dll がどうなるか考えてみる。

◆◇◆

まず DeCSS のプログラムバイナリはこの報告書で名指し指定されているプログラムであり、CSS を復号しつつ複製データを作成するプログラムなので 120条の2 の対象となるだろう。なので DeCSS バイナリを配布する場合は逮捕・起訴・裁判・懲役を覚悟すべきだ。(法の不遡及原則から、改定後の著作権法が施行されるまでの配布に関しては合法で刑事罰の対象にならないので心配しないように)

ただし、DeCSS のプログラムソースについて考えてみると、私には現行著作権法 120 条の 2 の規定はプログラムソースを含んでいないように読める。また DeCSS ソースの配布はアメリカですら DMCA 違反と言論の自由が争われた裁判で合法と認められた例がある以上、日本で違法となる可能性は低いのではないかと考える。

◆◇◆

次に libdvdcss について。これは単独では CSS の復号を行うライブラリで、復号データの保存機能がある訳ではない。ここから考えると libdvdcss の配布は改定後の著作権法でも合法と見なされるのではないかと考える。

また単純な暗号の復号機能だけを持ったプログラムの部品の配布を違法とすることは、正規の DVD プレイヤーの製造すらも不可能としかねない。そうした意味でも libdvdcss の配布は違法とされるべきではないと考える。

◆◇◆

さて、DVD の CSS から離れて B-CAS に関わる装置・プログラムについて考えてみる。まずは Friio から。これは復号後のデータを保存する機能を持っている装置なので、120 条の 2 に触れるものと解される可能性がある。ただし、純粋な放送データのリアルタイム表示機能も持っているので適法な利用も含まれている。

こうした場合に 120条の2 での「専ら」規定がどのように解釈されるのか、判例の蓄積がないのでどうにも判断できない。不正競争防止法の「のみ」規定ですら「別のものを含んでいても良い」と判断した東京地裁であれば余裕で 120 条の 2 に触れて違法だと判定しそうに思える。が、知財高裁を経て最高裁まで戦う覚悟を決めているのであれば合法と判断される可能性もあると考えている。

◆◇◆

次に PT2 に関して。これは MULTI2 暗号の復号機能を持ちあわせていないただの ISDB-T/S 受信部品なのでどう判断しても合法で違法となることはないだろう。

◆◇◆

そして ARIB STD-B25 仕様確認プログラムソースコード について。これは MULTI2 の復号データを別ファイルに書き出す (複製する) 機能しか持っていないのでバイナリ配布であれば DeCSS 同様に違法と判断される可能性が高いと考えている。

ただし私はこれをソースコードの形でしか配布していない。ソースコードの配布だけで違法となることはないと判断しているので、当面配布を継続するつもりではあるものの、場合によっては日和る可能性もあるのでそのつもりでいて欲しい。

◆◇◆

最後に b25decoder.dll に関して。こちらはソースコードだけではなくバイナリも含めた形で配布されているものの、libdvdcss 同様に単体では復号データの保存機能を持たない MULTI2 の復号機能機能だけを持ったただのプログラムの部品である。

常識的に考えればこれが違法となることはないだろうし、正規受信機の製造すら不可能とするような、復号機能を持った部品単体の配布・譲渡・公衆送信の違法化はされるべきではないと考えている。


12月7日(火) 現行著作権法での技術的保護手段 [この記事]

昨日の記述では特に裏付けを示すことなく「現行著作権法ではこうなっている」と書いていたので、今日はその辺りをもう少し補足しておく。実は著作権法の関連条文に関しては法制問題小委員会で当日配布された参考資料 [URI] にまとめられているので、そのまま使わせてもらうことにする。

まず著作権法での「技術的保護手段」の定義に関して。これが該当するのは 第二条 1 項 二十号。

技術的保護手段  電子的方法、磁気的方法その他の人の知覚によつて認識することができない方法(次号において「電磁的方法」という。)により、第十七条第一項に規定する著作者人格権若しくは著作権又は第八十九条第一項に規定する実演家人格権若しくは同条第六項に規定する著作隣接権(以下この号において「著作権等」という。)を侵害する行為の防止又は抑止(著作権等を侵害する行為の結果に著しい障害を生じさせることによる当該行為の抑止をいう。第三十条第一項第二号において同じ。)をする手段(著作権等を有する者の意思に基づくことなく用いられているものを除く。)であつて、著作物、実演、レコード、放送又は有線放送(次号において「著作物等」という。)の利用(著作者又は実演家の同意を得ないで行つたとしたならば著作者人格権又は実演家人格権の侵害となるべき行為を含む。)に際しこれに用いられる機器が特定の反応をする信号を著作物、実演、レコード又は放送若しくは有線放送に係る音若しくは影像とともに記録媒体に記録し、又は送信する方式によるものをいう。

これを読んだだけで内容を理解できる人がいたらそれだけで尊敬に値すると思える。条文を読んだだけではどういう定義になっているか判りづらいので、法制問題小委員会 第9回 [URI] で壹貫田課長補佐 (文化庁 著作権課) が逐条解説してくれていた内容を持ってくることにする。

 まず,第 2 条 1 項 20 号に規定する技術的保護手段の定義についてでございます。
 同項では,技術的保護手段につきまして,大きく 3 つの要件を満たすものとして規定されてございます。1 つ目の要件といたしましては,電磁的方法により,著作権等侵害する行為の防止,または抑止する手段であることでございます。電磁的方法につきましては,現行法上規制の対象とされています SCMS を例にとれば,信号に機器が反応する方法が電子的方法,DAT 等の場合が磁気的方法,それから,CD 等の場合の音楽的方法がその他の人の知覚によって認識することができない方法をさすとされております。
 技術的保護手段につきましては,著作権等の対象となる行為に係る手段として定義されており,現行法の対象とされております SCMS,CGMS,擬似シンクパルス方式がいずれも複製にかかる手段であると整備されているところでございます。
 一方で,一般的な暗号化システム,例えば衛星放送で用いられているスクランブルが該当するわけですけれども,それらにつきましては専用のデコーダや正規の機器を用いないと著作物等の視聴を行えないようにするものでございまして,こうした視聴を制限する手段は現行著作権法におきまして,著作物等を単に視聴する行為を著作権等の対象としていないことから,技術的保護手段には該当しないと整理されております。
 また,ゲームソフトの分野では,先ほどもご説明がございましたけれども,正規品の一定の特殊箇所に一定の信号を記録しておき,使用時にゲーム機がその信号をチェックすることによって信号が記録されていない海賊版の使用を不可能にするという手段が用いられております。こうした手段につきましても,海賊版を個人的に使用する行為そのものは著作権等の対象となっていないことから,技術的保護手段に該当しないと整理されているところでございます。
 続きまして,技術的保護手段は著作権等侵害する行為の防止,または抑止をする手段であると定められております。この点,防止とは著作権等を侵害する行為それ自体を止めることを言い,録音,録画動作を停止させる SCMS や CGMS が該当すると理解されております。
 また,抑止につきましては,著作権等を侵害する行為の結果に著しい障害を生じさせることによる当該行為の抑止とされており,アナログ録画時におきまして,録画動作は止めないものの観賞に堪えない,乱れた映像を録画させる擬似シンクパルス方式がこの抑止に該当すると理解されております。
 続きまして,3 つの要件のうちの 2 つ目の要件でございますが,著作権法は著作権等を有する者の意識に基づくことなく用いられている手段を技術的保護手段に含めておりません。これは,少なくとも理論上は,著作権者等でない単なる流通業者が自己の利益を図るために著作権者等の意思に関わりなく独自に複製等を防ぐ手段を用いる場合も考えられますが,このような手段は著作権等の実効性の確保という観点からは手段として馴染まないことが理由となっております。
 最後に,要件の 3 つ目ですが,著作権法は著作物等の利用に際し,これに用いられる機器が特定の反応をする信号を著作物とともに記録し,または送信する方式によるものであることと規定してございます。これは CGMS,擬似シンクパルス方式に共通して用いられている方式でございまして,今後も用いられていくことが予想される方式が記述されているということになっております。
 また,信号を著作物等と共に記録媒体に記録し,または送信するとございますが,これは信号の記録または送信と著作物等の記録または送信が一体的なものであることを指すと理解されてございます。

特に重要と判断した個所を太字に変えておいた。このように文化庁 著作権課の公式見解として暗号化やマジコンは現行著作権法での技術的保護手段の定義の中に含まれていない。また、壹貫田課長補佐の解説の中には含まれていないものの、当該条文で「機器が特定の反応をする信号を著作物に係る音若しくは影像とともに記録または送信」とあるようにあくまでも映像や音声に付加的に信号を加える方式のみを指定しており、暗号化のように映像や音声自体を電磁的に撹拌する方式が含まれていないことも意識しておくべきだと考えている。


12月9日(木) 現行著作権法での技術的保護手段「回避」および回避プログラム [この記事]

まず本題と無関係なネタから。総務省デジコン委 第 58 回 が 12 月 14 日 (火) に開催 [URI] される。ページプロパティをみると、登録日時は 12 月 8 日 (17:10) に傍聴受付締め切りは 12 月 10 日 (18:15) ということで、受付期間はなんとたっぷり 49 時間も確保されている。きっと多くの人に傍聴して欲しいと思っての配慮だろう。

いや、正直もう「新エンフォースメント」とやらは諦めたものと思っていたので今回の開催案内を見て驚いた。今回進捗報告をしてくれるということなので傍聴を申し込んだのだが……来週は 13 日 (月) が著作権分科会で 14 日 (火) がこのデジコン委、17日 (金) が経産省の技術的保護手段小委員会なので正直まともな勤め人にはきつい。誰に頼まれた訳でもなく、好きでやっていることなので恨み事を言うつもりはまったくないのだけど。

◆◇◆

本題。一昨日の記述の続き。今回は、現行著作権法での技術的保護手段の「回避」と「回避プログラム」に関して。まず技術的保護手段の「回避」に触れている条文は 第三十条 1 項 二号 でその内容は次の通り。

三十条
<途中略>
二  技術的保護手段の回避(技術的保護手段に用いられている信号の除去又は改変(記録又は送信の方式の変換に伴う技術的な制約による除去又は改変を除く。)を行うことにより、当該技術的保護手段によつて防止される行為を可能とし、又は当該技術的保護手段によつて抑止される行為の結果に障害を生じないようにすることをいう。第百二十条の二第一号及び第二号において同じ。)
<以降略>

これを見る限りでは……回避とは付加信号の除去又は改変を差し、除去又は改変をした上での複製とはされていない。改定後の条文がどうなるかまだ未確定だけれども、もしもこの条文が変更されないとすると、暗号化が「技術的保護手段」に追加された後は復号だけでも「回避」と見なされそうな気がしてきて不安になってくる。

そーすると正規 DVD プレイヤー等も回避装置になっちゃうのかなー不安だな―。それとも記録又は送信の方式の変換に伴う技術的な制約による除去又は改変で救われるのだろうか。

◆◇◆

次に「回避プログラム」に関して。こちらに関してはそのままズバリの記述はないのだけど……「プログラム」であれば 第二条 1 項 十の二号で定義されている。内容は以下の通り。

二条
<途中略>
十の二  プログラム  電子計算機を機能させて一の結果を得ることができるようにこれに対する指令を組み合わせたものとして表現したものをいう。
<以降略>

…… 6 日にはソースコードは回避プログラムとは見なされないのではと書いたけれども、この記述を読む限りでは「プログラム」を特にバイナリに限定しているようには見えない。というか、ここの定義によってプログラムの著作物が規定されているのでこれにソースコードが含まれないとすると、ソースコードがプログラムの著作物として著作権法で保護されなくなってしまうので、それは流石にありえない解釈だと思える。

◆◇◆

実際には著作権法の改定条文案が公開されて、国会で成立して施行日が決まってから判断するけれども、上場企業の従業員としては法令順守の姿勢が重要だろうというわけで、何とかして ARIB STD-B25 仕様確認テストプログラムソースコードの配布継続方法を考えなきゃなという気分になっている。

  1. デフォルトパラメータとして 4 を設定している "-r round" オプションを必須オプションにしてユーザが数値を入力しなければ動かなくする
  2. STD-B25 形式 TS を受け取って平文 TS を出力する DirectShow フィルタにする
  3. ソースコードをテキストファイルではなく PDF の形式で配布する

今の所思いついてるのはこれぐらい。それぞれどの程度抗弁として成立するのか改定後条文が無い状態では判断できないので、焦ってすぐにどれかに決めるつもりはない。


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