日々の戯言
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10月6日(月) デジタル・コンテンツの流通の促進等に関する検討委員会 (第44回) [この記事]
開催 (9/26) から結局一週間以上過ぎてしまいましたが、恒例のレポートを上げておきます。土日に片付けることができないとずるずると時間が過ぎていってしまうので駄目ですね。
今回は、技術検討・取引市場、両ワーキンググループからの検討状況報告という内容で、分量的には技術検討 3 に対して取引市場 7 というような割合でした。配布資料は取引市場ワーキンググループでの議論が発端となったマルチユーストライアルの進捗状況に関するものだけでした。
議事自体は、村井主査からの技術検討ワーキンググループでの検討状況報告、その内容に対する意見交換、小笠原コンテンツ振興課長からの配布資料の内容説明と、中村ワーキンググループ主査からの取引市場ワーキンググループでの検討状況報告、それを受けての意見交換という形で進みました。
まず、村井主査からの報告は、次のような内容のものでした。
- 前回 (8/29) の委員会で、エンフォースメントの今後の進め方ということで様々な意見を頂いた
- その意見を踏まえて、先週技術検討ワーキンググループを開催し、今後の進め方について意見交換したので、その検討結果を報告させていただく
- 五次答申のポイントとして二つあり、1 点目は、消費者や権利者の立場から現在の B-CAS 方式について、様々な指摘が行われているという点
- 2 点目は、こうした指摘を踏まえて、視聴者の利便性を向上させるために、現在の方式の改善を検討していくという方針が提言されているという点
- この五次答申のポイントに従って、ワーキンググループで検討・意見交換を行った
- その中で、これまでに得られた指摘の中にある内容の明確化や様々な要因の掘り下げが必要なものもあるので、検討の前提として、こうした整理・掘り下げが必要ではないかという意見があった
- これは、技術的な要因や現状の課題を色々と指摘頂いたているが、それが非常に多岐に渡っているというということもある
- それから、一つの技術的事象が複数の要因・影響を持っているということもある
- そうしたことを、それぞれ論理的に整理するということと、その掘り下げが必要ということ
- また、消費者の方々からの指摘として現在の方式についての課題ということで沢山の指摘があったかと思う
- その中で、色々な、例えば B-CAS カードそのものがストレスであると、こういう表現があったと思うが、存在そのものがストレスということは、どこの部分がストレスで、どういう形で改善すべきなのか
- 例えば、そうした方たちにとってどういうストレスになるのかということを含んでいる
- そういった意味で、分析とかそういったことを進める必要がある
- いずれにせよ、親委員会でそういうことが発表された以上、技術ワーキングとしてそのことがどういう位置づけにあって、どういう状況なのかということの具体的な対応策やお答えをしていくということが必要との意見があった
- 従って、分析的なことが必要なこともあれば、統計的な調査が必要なこともあるかとは思うが、そういったことも含めて、きちんと答えていくということ
- そういう訳で、そういった検討が進んでいる中、私からワーキングのメンバーの方々に様々な作業を依頼・お願いしている
- 一点目は、現在の B-CAS 方式に対する様々な指摘に対応するため、技術と契約の観点から、考えられる対応策について、具体的な提案を行ってくださいということ
- それから二点目は、その際、指摘の内容、分析、掘り下げが必要と考えるものがあれば、具体的な、その分析や掘り下げの具体的な内容を示してくださいということ
- つまり、指摘に対しては、判りやすく、きちんと説明できるように答えてくださいとお願いしたということ
- そういった訳で、技術検討ワーキンググループの中では、大体の基本的コンセンサスを得られたと認識している
- ワーキンググループの方でその流れに従って、具体的な提案を検討し、議論を整理して適時、本委員会にご報告して、意見を頂いていく
- 技術検討ワーキンググループでの検討状況というのは、いささか抽象的だが、以上になる
以上の発表の後で、何か意見はないかとの問い合わせが行われ、これに対して河村委員が次の内容の質問をしました。
- つまり B-CAS を見直すということなのだろうか?
これに対する村井主査の回答は次の内容のものでした。
- はい
- まずは今の B-CAS、今の現行のシステムに関して検討されていることに対する分析と
- それから、説明ということをきちんとした上で
- これから B-CAS に関する技術と契約の観点から考えられる対応策を考えていこうということ
この回答を受けて、河村委員は次の内容の発言をしました。
- 当然その検討を進めるべきと思う
- 前回、最後の方で意見を申し上げたら、マスコミの方が私の意見を、私の非常に意図していない方向で書いた記事を見て大変がっかりした
- B-CAS カードが入っている機械 1 台あたりいくらのコストがあって、その値段がいくら高くなっているのか、確かにそういう面もあるが、それが無いからといっていくら安くなるといっているのだという記事を読んで、大変がっかりした
- もう一回、消費者として考えていることを申し上げる
- 村井主査のやっておられるもうひとつの委員会の場でも、経済的弱者への地上デジタルのテレビの支援が話し合われている
- 2011 年に、国民全員の基本的な情報インフラであるテレビが地デジ化されて、全員が買い換えるか、チューナを買い足さなければいけない
- ある人は、アンテナの為に数万円、室内のアンテナ線を張り替えるためにもしかしたら 10 万円近くかかるかもしれない
- 現在、年収 200 万以下の人は東京におよそ 1000 万人いると見たことがあり、その人たちが、基本的に生活に必要なものを買うためにお金を使う
- アナログテレビの時のように、沢山の企業、沢山のテレビメーカから、ピンからキリまでの仕様の、ピンからキリまでのサイズの、安っぽいものがあったかもしれないが、それなりにとても安い、そうしたテレビが並ばないのは何故だろうか
- そういう風にこの前申し上げたのは、B-CAS の不透明さ、不透明であるがゆえに、細かいところまでは判らないが、それが参入の障壁になっているのではないか
- どう考えても、アナログテレビの時のようなバラエティが地デジになったとたんにまったく無くなった
- 今少しずつ安くなってきているとはいえ、何故何年も三波共用しかなかったのか
- それが B-CAS の仕様に書かれていたというのは、前回、関さんも認めたこと
- そういうところ、我々が明示的に参入を妨害しているつもりはないと言われるかもしれないが、B-CAS が求めている分厚い規格や仕様があまりにも細かすぎるのではないか
- 例えば、地上波のテレビを作るだけだとしたら、今ならダビング10を守るということが目的と思う
- そのためのエンフォースメントとして、例えばスクランブルが掛けられていて、それを解くためのものとして、本当にそれだけのシンプルな機能に限ればもっと違うものでよいのではないか
- そういうことが検討されるべきだし、もっと安くできる方法があれば、もっと安くできる方法と競争して消費者がそれを選ぶことができてもよいはず
- あまりにもブラックボックスであること、不透明であることによってテレビの価格が安くならず、価格破壊が起こらない
- たとえ意図的・明示的にそうしていないとしても、大いにありうることで、そういう可能性があるのだとしたら、それを解明して欲しい
- 例えばこの間、田胡さんでしたか、お年寄りの方を含めて、消費者は B-CAS が困るとか、B-CAS が邪魔だとか、こんなものはいらないとか誰も言っていないじゃないかと
- それはあまりにも情報が伝わっていない、どこが不都合なのかすらまったく理解することが困難だから
- 消費者には知らされる権利というのがあるはずだが、まったく知らされていない
- そこで既に権利侵害が起きているし、どういう不都合や不利益が生じているかも知らされていない
- 選択肢が与えられることも消費者の権利と思う
- 選択肢がおそらく狭められているだろうと思うので、その辺をきちんと解明していくべき
- 何度も言うが、著作権保護技術が必要なのであれば、それを守るためだけに絞った、確かに守るためだけに絞ったどういうルールが必要なのか
- 技術でやるのであれば技術が必要なのか、なるべくシンプルでなるべく安上がりで、透明で、たくさんの人が参入できる技術というものが他にあるのではないかと思う
- だから検討は進めるべきと思う
以上の発言の後で、関委員が発言を求め、その内容は次のようなものでした。
- 河村さんがおっしゃったとおり、まったく同じ考えを持っている
- やはりコストの問題、放送事業者として今おっしゃったような観点で、ワーキンググループの方で検討を進めている
- 先生から指示があったので、具体的な提案をしていきたいと思う
次に発言を求めたのは高橋委員で、その内容は次のようなものでした。
- 前回欠席したので、一点確認と、要望がある
- パブコメを読ませて頂き、席上発言を仄聞しているに、時計の針を元に戻すような発言があったらしい
- 答申の考え方に沿って、技術ワーキングの方も議論を進めるのかということを確認したいと思う
- 要望として、さきほど、調査検討をされるということで、もちろん調査検討に基づいて言った頂くことは望ましいと思うが、その調査機関に関して、パブコメでは信頼性ある機関でとの指摘がある
- 消費者にとって、信頼性のある機関はどこかということをきちんと見極めて、調査なり、アンケートなりをしてほしいと思う
- いま河村さんがおっしゃった通り、消費者の権利が侵害されているということが判っているので、例えば公平性があり、信頼性が高い期間としては、全国消費者団体連合会、全国消団連という団体があるので、そういうところを考慮してほしいのが、お願いの 1 点目
- 2 点目のお願いは、検討が進むということだけど、ゴールは何時なのかと、そのあたりも明らかにして検討を進め、こちらに戻して頂きたい
- 2011 年の地デジ移行までの期間、しかも 2010 年の内に諸々のスタンバイができていなければという状況、後 2 年しかない中で時間切れになり、地デジへの移行がずれるというのは、この委員会でのこれまでの議論が非常に無駄になってしまう
- そこのスケジュール感を見た上で、今、どのような検討の時間的な軸を持っているのだろうか
この発言のうち、最初の確認と、最後の質問について、村井主査から回答が行われ、その内容は次のようなものでした。
- まず、第五次答申にそった検討を行うのかについて、第五次答申に沿ってワーキンググループでの検討を進めていこうと確認している
- また、先ほど河村さんが指摘されたことも含めて、この委員会で発言されたことに対して、色々な意味で、きちんと説明して答えられるということも含めて、第五次答申に示されたことが検討されていくと確認されている
- 多分そのとおりだと思う
- それから、ゴールと大局について、これはデッドラインが決まっていて、それに対するプロセス
- 要するにゴールは決まっていて、そこに向かって予測を立てて、ずれた場合は速やかに修正していかなければいけない
- いわばゲームのルールがそうなっているので、とにかくタイミング感をそこに基づいてやるということ
- そういう意味で「いつまでに何」「どのタイミングでどういう風になるか」という検討が必要だが、いずれにしてもチェックポイントが非常にきめ細かくあることが重要と思う
- タイムリーにこの委員会でチェックしていただくという進め方をしたい
次に発言を求めたのは椎名委員で、その内容は次のようなものでした。
- 時計の針を戻すという風な話について
- 仄聞するところだが、色々な対応の方法が答申で上がった中で、現在の技術と契約によるエンフォースメントの改善すら難色を示すような意見もあると聞いた
- それこそ時計の針を戻すような話ではないかと思う
- 権利者からすると、重大なのはコンテンツの確実な保護が担保されるという観点
- そういう観点から、現在の技術と契約による仕組みの具体的な改善策を早期に検討していだきたい
以上で、技術検討ワーキンググループからの発表についての意見交換は終了し、取引市場ワーキンググループでの検討状況の報告に移りました。
こちらは、社団法人デジタルメディア協会 (AMD) が主催して行われた AMD アワードでのマルチユーストライアルについて、これがどういった企画で、受賞作品が現在どうなっているかということの発表が中心になりました。
まず最初に、検討委員会事務局の小笠原コンテンツ振興課長から配布資料の説明が行われ、その内容は次のようなものでした。
- 資料 1, 2, 3 と番号を振られたものと、参考資料としたものを使って、トライアルのスキームの復習と、トライアルがどのように進んでいるかについて、簡単に説明をする
- まず、参考資料、1 ページの下線を引いた部分を見て頂きたい
- 放送コンテンツの取引市場ということを本委員会のひとつの検討テーマとしているが、その透明性、公平性、あるいは制作者の多様化は、放送事業者・番組制作者・権利者、そういった関係者の現在の努力の継続で、民間主導により、確実に進捗していくという基本認識で第五次中間答申に書かれている
- 2 ページ目にページをめくって頂くと、同じく下線が引かれたところがある
- 放送コンテンツの制作過程のプロセスの透明化、あらたな制作主体の参入促進という観点から、民間主導で実証実験を行い、進捗を確認してはどうかと提唱した
- そのトライアルについては、適時、当審議会として十分なフォローアップを実施していくと、第五次答申で提言している
- 資料 1 には、マルチユーストライアルのスキームが書かれている
- 地上放送は前提として、他に IP・モバイル・衛星・ケーブルテレビ・あるいは海外展開、そういったマルチユースを促進するためのトライアルとして、意欲ある制作主体を AMD という公益法人に公募して頂こうというもの
- 公募していただいて、作品として優れたものや、マルチユースの計画がある程度見えているもの、それらを選んで頂いた
- 選んで頂いたものに関しては、左に書いてあるように、それぞれ協力を検討していただくということになっている
- 下から順に見ていくと、放送事業者さんには、編成権の範囲内ではあるが、選ばれた作品の放送を検討していただく
- 一般の企業の方々からは、スポンサーとして、あるいは、製作費の出資ということを検討していただく
- あるいは、広告代理店の方々にはそうしたスポンサーの方々との仲介を御助力いただく
- そうした協力関係の元に、AMD に選んで頂いた作品、マルチユースあるいは作品内容、双方で一定水準をクリアしている作品について、いま申し上げた放送事業者・代理店・一般企業・スポンサーの方々からご協力をいただき、マルチユースに意欲のある制作者の方々に制作機会を提供し、また提供されるということが検証されることで、民主導による制作主体の多様化が進んでいくと検証されるのではないか
- その結果、資料 1 の 2 ページにあるように、今年の 3 月、AMD アワードという形で、マルチユースという観点と作品としての効果という観点から、19 作品、ドラマ・ドキュメンタリー・アニメの各分野から選定された
- この 19 作品について今申し上げた協力者の方々から、スポンサーあるいはスポンサーとの仲介、あるいは放送番組としての採択等、検討頂いていたところ、どのような進捗状況なのかということで、資料 2 を見ていただきたい
- 具体的に進捗中、あるいは進捗した結果放送が確定したものを並べているが、資料にあるとおり 5 件という形になっている
- そのうち、放送が決定しているものは、冒頭に書いたドラマ「トンスラ」で、1 件は放送決定です
- こういった進捗状況については、後ほど中村主査から説明がある
- 資料 3 を参考までに見ていただきたい
- これには、事務局が進捗状況を伺ったあとに、今回のトライアルにご協力いただいた方から、それぞれ現在の進捗状況に照らして、こうしたトライアル、実証実験についての課題、あるいはうまくいった場合、あるいはなかなか苦労している場合、そういった成功の要因や苦労の要因といったことで伺ったことをそのまま転載している
- 番組制作者の方々、放送事業者・代理店・スポンサー、あるいは今回のトライアルの事務局となっていただいた AMD の方、そういった方々からヒアリングした結果を添えさせていただいている
以上の説明の次に、中村ワーキンググループ主査が説明に立ち、取引市場ワーキンググループでの検討状況について報告を行い、その内容は次のようなものでした。
- 取引市場での取り組みというのは、マルチユースのトライアル、データベースの整備、売買権の確認という三つのアプローチをしている
- 先日、第 13 回のワーキングを開催して、今説明のあったマルチユーストライアルについて、現在の進捗状況を提示したことに加えて、実際に参加・協力を頂いている皆の意見を伺い、今後の進め方について方向性を議論して頂いた
- マルチユーストライアルの取り組みの背景は、本日、事務局からも資料を配布していただいている
- 前回の答申では、制作主体の多様化や公正・透明な取引は民間ベースで既に実現しているということを前提にしている
- ただし、審議の過程で議論があったことを踏まえて、答申では、まず民間ベースのトライアルで検証を行い、その過程や結果を見たうえで、改めてルールや制度についての検討しようという流れで、これを出発点にしている
- トライアルのスキームについては、資料 1 で概略・概要を示しているとおりだが、今回のトライアルの現時点での現状把握、頂いた意見には様々なものがあった
- 資料 2 の進捗状況にあるように、トライアルの現状は今年の 3 月に採択された 19 作品のうち、実際に実現可能なものや、話の進んでいるものは 5 件程度ということが把握できている
- この結果については、委員の中からも、これは盛り上がっていないのではという指摘がある一方で、この実験で批判をするのは時期尚早であるとの意見がある
- 資料 3 は関係者の皆様のコメントを事務局にまとめて頂いたのだが、これらの意見を聞いた私自身も、検証をもう少し深めたほうが良いと思った
- ひとつはトライアルやアワードの仕組み、枠組みそのものに見直すべきところ、課題や問題点があるのではという指摘があった
- 例えば、番組の企画・制作やメディアの編成、それから配給全体の収支を責任もって監督・進行するグランドプロデューサのような、そうした方の育成に向けた仕組みも考えられるのではないかとの指摘もあった
- このように、トライアルのスキームについての改善点があるのではないかということだった
- また、それと同時に、個々の企画の内容そのものにも問題があるのではという指摘が寄せられている
- これらの意見について、それぞれのケースを分析すると、まず一つは制作会社側で製作資金の調達や協力者を募るのは困難であるということ
- この原因としては両方考えられて、まず一つはトライアルの趣旨からいうと、地上波の枠の確保とは別にコンテンツの二次利用以降にのみ着目して出資を募っても、出資者がいないのではないかという考え方、つまり、ブロードバンドなどへの二次利用自体のリスクを負担する人がいないという状況がマルチユースが進まない原因ではないかということ
- もう一つの考え方としては、やはり、まず地上波の枠の確保が先決であって、その確約がなければ二次利用以降の話が成立しない、スポンサーが資金を出しづらいという現状があるのではないかという考え方
- こうしたことを踏まえて、今後の進め方は、現在進行中の案件もあるのでトライアルについて注視するということを継続して、また、課題がある場合その対応策について取引市場ワーキングで検討し、議論を重ねていくことになる
以上の説明の後で、今回オブザーバとして参加されているトライアルに参加・協力した方々が、順次指名されて発言していきました。
最初に指名されたのは AMD の菊地オブザーバで、その発言内容は次のようなものでした。
- AMD での対応を勤めさせていただいて、その立場としての報告となる
- 関係者の皆様のコメントとして書かれたものがあるが、AMD の事務局として、確かに多様な関係者の意見はあったが、非常に前向きな試みであるし、多くの期待が寄せられているところなので、引き続き継続してこのトライアルを実施して、効果検証を続けていく段階ではないか
- まだ 5 つしか結びついていないという結果ではあるけれど、放送事業者の皆様、特に窓口をやっている担当の方には真剣に、真摯に検討をいただいているで、事務局としては非常にありがたく思っている
- 番組制作会社の何社か、皆様から様々な指摘があったが、その点は指摘も踏まえて、次回以降漏れのない体制にしたいと思う
次に指名されたのはクリエイターズプラスの柏井オブザーバで、その発言内容は次のようなものでした。
- まず、クリエイターズプラスというのは、独立系の番組制作会社、ポスプロ、映画配給会社 26 社が集まって、新しいメディアの出口をどう探っていくか、どう開発していくかというテーマで設立した会社
- 今回、私どもクリエイターズプラスは、イマジン・エクスプレスと組んで、探偵神宮寺三郎というドラマの企画を出している
- ご存知の方もあると思うが、これは任天堂 DS のベースが 250 万本売ったソフトで、その原作権を取ったということで、何か色々良い展開ができないかということで考えた企画
- それ以外でも、私どもクリエイターズプラスに参加している 3 社、3 企画が通って、都合 4 企画が通っているが、現実的にはあまりうまく進んでいないのが現状
- 私が今回参加して特に感じたことは、非常に準備不足だったということ
- 正直、昨年 12 月 27 日、暮れの押し迫った時期に ATP から私どもに緊急招集があり、AMD さんからのプレゼンテーションがあった
- 実際、企画の締め切りが 2 月 15 日ということなので、約 1 月半の中で色々な、原作権の問題、資金の問題、解決しければならない問題が多々あったと思う
- ただ、おそらく参加した各社にとってはこうした権利が残せる機会、リスクをとっても権利が残せる機会だったということで 54 本の参加があったという風に思う
- 私どもも、一応、企画上はテレビ、映画、DVD、ネット含めて 1 億 2000 万の設定で半分までは準備し、後は制作委員会方式でできないかということで提案した
- ただし、実際受賞の知らせがあった以降、正直なにも変わっていないというのが印象
- 何故この企画が選ばれて、誰が、どういう目線で選ばれたのかということ含めて、何も私どもには入ってきていない
- おそらく他の各社にも入っていないと思うが、具体的な説明が無いので、攻め方が判り難いなというところがある
- と同時に、おそらく各社は、当然これは通った後で、事務局サイドでの色々なコーディネーションがあるだろうと、局・代理店・出資者を含めたコーディネーションがあるだろうという風に思っていた
- 答申の中では「民々」とあるが、本当に全てが「民々」でいくとは思っていなかった
- 本来であれば、アワードを通ったということなのだから何らかのアドバンテージがそこにあるような形になっていないと次の段階には進みにくいのではないか
- 実際、我々がこれをどうするかというと、制作会社が放送局あるいは代理店・出資者をまわって歩いてプレゼンをしていくことになる
- しかし、それならば通常の、我々が普段行っている作業となんら変わらない
- やはり、アワードがあることによって、何らかのアドバンテージをつけてもらう形が絶対に必要ではないかと思う
- 当然その、放送枠の設定や、資金的な枠があるということもあると思う
- 特に、第一ウィンドウが 3 つ書かれていて、地上波・BS/CS・IPTV とあるが、BS/CS とインターネット TV では少しずつだけど、制作事業者側でも進んでいる状況がある
- やはり、こういう機会なので、なるだけ地上波で放送できる枠みたいなことをしっかり作っていただきたい
- それと、一般企業というこの中の協力者、一般企業のところに企画を持っていった時に、当然これは第一ウィンドウとしての放送局はきまっていますよねと、そこから始まってしまう
- そうなった時に、日本テレビに持っていって駄目だったものを TBS さんという訳にはいかない
- 資料に選定委員会と書いてあるが、我々が応募したものが選定される場には、この左側の協力者と言われる、一般企業・広告会社・放送事業者などがここに入って頂かないことには、多分前には進まないとそういう風に率直に思う
- それから、やはり今回 19 本選ばれたのはあまりにも多すぎると思っている
- 持ち回りで一局、地上波で一局ごとに一つとか、あるいは地上波で一局、BS で一局、あるいは IPTV ひとつとか部門を作るとか、あるいはドラマ部門・ドキュメンタリー部門を作るとか、そういったアワードの価値をもう少し持たせないといけないのではないかと思った
- 制作会社の人間としては、四次答申や五次答申のことは知らずに参加しているけれども、正味はデジタルコンテンツの流通活性化にあると思う
- いまこれだけテレビ業界の危機が叫ばれていたり、あるいは逆にテレビ局と制作会社の密な関係がある中での制作になっている
- 何とかもう一方の目線として、こういう時期だからこそ、制作会社を育成するという目線を、是非、一般企業・広告会社・放送事業者に持っていただきたいと思う
- おそらくそれが、今の我々を取り巻く環境を良くすることであるし、当然テレビ業界に恩返しをしていくことになるので、今回のアワードに関しては続けていただきたい
- 今いったような目線を残しながらやっていただければ、まだまだ良い企画は出ると思うし、いい意味での発展があると思う
次に指名されたのは、澤田オブザーバで、その発言内容は次のようなものでした。
- 私ども映像事業者協同組合では、この企画を最初から知らずに、今年になってはじめて参加させていただき、ただ聞いているだけで「ああこれだけのことをやっているのだな」と思っていたけれど、ただ、準備不足というよりも、もう根本的に企画に欠陥があるように思う
- 最初から考えられていることが前提で言わせてもらうが、テレビ局は全部、それぞれオープンに企画を求めている
- それと差別化していかないと成り立たないのではないか
- どの局にしても、自分の所に出している企画と違うところから来るというのは、それを受け入れるという気持ちは誰にもないのではないかと思う
- モノを作る人間には誰にもない、そういうものだと思う、モノを作るというのは映画であろうと、なんであろうと、自分が気に入った、自分たちが組織として選んだものだったら、枠はあるのだから、話は簡単になる
- でも、ヨソから来たモノに枠を出すというのは、例えば国家権力でやるとか、まったく別の方向でないと絶対に無理だと思う
- それをこんな機関で、資金も何もつけずに、枠に入れてくれといって地上波でやったら、そんな甘い展開だと思っていたまったくおかしな話で、準備不足もなにもない、企画の根本的な欠陥だ
- それを国家権力でやる気があるのか、ないしは、各、ここに名前が書いてあるテレビ局が最初から AMD の事務局に時間を出しましょうと言ってスタートしたのだったら簡単にできるはず
- 我々が一つの枠をもらうためにどれだけ血みどろの戦いをしているか、一生懸命いっぱい考えて、それでも色々な目にあって、皆苦労しながら作っている、長い経験の中で、別にそれが普通と思わずにやっている
- そういう意味で言うと、枠さえもらえれば、スポンサーも付くし、なんでも付く
- この枠をやってくれと言われれば、皆がうわーっと来るし、どんなタレントだって出る
- 枠のないところでいくら仕事をしても、何の役にも立たないというのが、50 年ビデオをやっている仕事の常識だと思う
- 別の常識が何かあって、こういうものができたとしか思わざるを得ないので、準備不足というよりもむしろ根本的な欠陥があるから、こんなものさっさと止めていただくしかないのではないか
- 何の意味もない
- テレビ局はここにいらっしゃるけれど、出す気があったのなら出せたのではないか
- これだけ役所がやって、これだけのメンバーが集まって、馬鹿にされているというか、無視されているというか、それに怒るべきだと思う
- これは、デジタル化のためのソフト云々ということにリンクしているとしても、別の動きが強すぎて、画像がデジタル化で良くなり、ソフトも良くなると言っても、ソフトなんて全然良くなりようがない
- 今のシステムのまま行くと、制作費はどんどん下がっていくし、我々プロダクションに入ってくるやつはだれもいない
- 作り手の中で、一生懸命作ろうという気持ちがない人間は誰もいないような状態で作っている
- 一生懸命努力して、育てて、作ろうというこの気持ちがどこまで持つか
- 今プロダクションをやっている経営者は大体 60 代に差し掛かっているし、もう超えている人もいる
- もう止めようかと言っている人も多い、テレビ局に勤めていても 60 歳で定年だし、少なくとも 65 には会社に誰もいない
- そうなったら誰も、モチベーションは下がる一方だから、育てる気持ちは無くなってしまう
- これは昔、不毛の荒野とよばれたけれど、もっとひどい状況、泥沼のようになっているのではと思う
- 最近色々なテレビ局から聞こえてくる状況、予算の削減、例えば取材のカメラを止めるとか、編集を止めるとか、中継車も全て止めてしまうような番組の作り方で、番組の質が上がるとは思えない
- 長いことクオリティを上げるためにテレビ局で教わり、テレビ局から出ても一生懸命テレビ局のレベルについていこうと努力し、ある時期イコールパートナーとして認めてもらうところまで行って、そこで止まって、こんどはずっと下がってきているということなので、モチベーションを保っていくかということが非常に難しい
- この企画、このトライアルは、これに対してものすごい希望をもった方が沢山いた
- ひょっとしたら別のルートで番組が作れるのではと、皆に夢を与えた
- 非常に罪は重い、この結果は罪が重い
- 最初から 6 億も持っている、スポンサーも代理店もついていて、やりましょうという企画を出している出来レースにしか思えない
- 例えば柏井さんが出したやつは、まるっきりテレビ局には出さずに、自分たちが温めていたものを出してみようと、トライアルに出したけれど、スポンサーは付かない、枠は取れない、だからダメという
- これじゃ最初からトライアルをやる意味はないのではというのが、最初に言った「根本的に欠陥があったのでは」ということ
- 続ける意義はないと思う
次に指名されたのは道井オブザーバで、その発言内容は次のようなものでした。
- 協力者ということで、一般企業として本トライアルに参加して、本日発言の機会を得た
- 私どもも AMD アワードを受けて、3 月 4 月ぐらいから、複数の企画・提案を検討してきた
- それぞれの企画については、前向きな意味で意欲的で、チャレンジングな内容だったと思う
- このような企画が存在することは、今回進められているデジタルコンテンツの流通の促進に有意義
- ただし、事務局から説明があったとおり、出資者として参加することには現時点では至っていない
- 今日、この場では、今後さらなるトライアルが進められるにあたって、協力会社の一つとして参考にして頂きたいという観点から、前向きな対応ということについて、検討結果を踏まえて話したい
- 今回はマルチユースということを前提に考えられた提案ということではあったけれど、実際に提案された多くについては、当社一社に出資が求められていた
- マルチユース展開が容易に図れるような、複数の事業者の参加を望んでいたが、一社となると、通常の発注者と外注、制作会社としての関係以外になにも生まれないのではないか
- 検討当時、地上波での一次利用と、ネット・ケーブル・海外を二次利用という前提で、頂いた提案を検討していたが、必ずしも、多くの提案はそういったスキームになっていなかった
- 特に、番組の訴求力、受賞作品の訴求力をビジネスとして厳密に考えると、伝播力・訴求力の高い地上波での放送について、十分に検討されていたとは言いがたい提案であった
- さらに、冒頭に申し上げたように、チャレンジングな提案ではあったが、必ずしも過去の経験が生かされているとは言いがたい提案があり、日本の視聴者の皆さんから、十分な評価を得るような番組に仕上がっただろうかという点について、確信がもてなかった
- 検討を行ったのは 7 月の前だったが、今日ここで話をするにあたって振り返るに、映像伝送手段が極めて多様化している中では、地上波での一次利用を必ずしもそれを中心に考える必要はなかったのかもしれないと思う
- それでも、多様化するメディアの中で、なお地上波の訴求力は圧倒的なものがある
- マルチユースの中の一つとして、地上波放送が存在されるかどうかということが、引き続き、投資判断を検討する中での重要な項目となる
- 最終的に出資には至らなかったという立場ではあるが、総じて申し上げると、新たな投資スキーム、ビジネスモデルの設計ということに関して、いくつかの点で難があり、当社のこれまでの映像コンテンツに対する投資経験からすると、残念ながら投資する価値を見出せなかった
次に指名されたのは吉川オブザーバ (三井物産) で、その発言内容は次のようなものでした。
- 今回のアワードに関しては、私も担当部署と一緒に私自ら受賞作をまわしていただいて、色々と話も伺わせていただいた
- 率直に申し上げて、隣では言いづらいところもあるけれど、告知等、トライアルに関して準備が不足しているのではないかということは感じた
- 受賞者の方々にヒアリングさせて頂いても、認識がバラバラであったり、思い込みがちょっと違っているということもがあった
- 私どもとしても、こちらの委員会の方で、民々でうまく機能しない場合は、制度エンフォースメントも已む無しという話もあったので、民々でできるように、やれない理由を作るのではなく、どうすればやれるのか、問題点を解決するという形で我々は協力させて頂いた
- 生き残っているうちの二つは、我々が協力させていただいている部分
- 同じく、私どもが一緒に話をさせて頂いている放送局の担当者の方も、この件に関しては、やるための問題解決ということで、前向きに、精力的に、好意的に、しかしながら厳しく条件を審査していただいて、どうにかこれを実現するようにという形で皆さんに動いて頂いている
- 私どもが関わっているものについては動いて頂いている方向であると理解している
- 先ほど澤田さんから出来レースではという発言があったが、少なくとも、私どもが担当している 2 件については、まっさらなところからの話である
- 私どもの方も企画をいかに実現するかということを、番組を如何に実現するかということに関して、我々なりに色々な人員を投入して評価させていただいたが、やはりそのままの企画では中々難しい状態であったことは否めない
- しかしながら、それをちゃんとマルチユース化できるようなシステムであるとか、ちゃんとファーストウィンドウを地上波に乗せるため、手直しやそういうところをきちんとフォローしてやれば実現できるような話になってくると思う
- 私どもは、選択の尺として、やはり海外に持っていけるものを、日本国内でメディア間で金を奪っても仕方がないので、海外に持っていけるものという形で選考させて頂いた
- 今回の一連の流れを見ていて非常に感じたことだが、製作者の方々は、失礼な言い方になるが、中小の企業の方が多いので、資金的に、時間がかかるとコストも体力も続かないのでもう少し早く結論が出るように、正しい形で回していきたいと思う
次に指名されたのは伊能オブザーバ (AMD) で、その発言内容は次のようなものでした。
- 今回は初めての試みということで、なかなか勝手が判らないまま進めさせて頂いた
- 私どもとしては、もちろん地上波ということも考えたが、どのように話をスタートしてよいか判らなかったもので、通信事業者として、これから課題になっていくだろうコンテンツという、IPTV 他のコンテンツは如何にあるべきかという視点で番組作りをやってくれるところということで、今回選ばせて頂いた
- 今回に関しては私どもも始めての経験だったので、何をどこから、どのような基準で目利きをして、どういう風にお願いをしていけばよいかと、後は IPTV をはじめとする新しい番組作りは如何にあるべきかということを考えるところからスタートしたので、枠組み云々ということではなく、私ども内部でも時間をとったけれど、まだまだ経験不足ということで、今後、もう少し色々な形で展開できるように経験値を上げていきたいと思っている
- そういう意味では、こういう機会を与えていただいたことに関して感謝している
- 今後の更なる拡大を私どもは望んでいるし、もう少し、資金調達先や、配信・放送先も枠組みとして、パッケージとして、こういうパック、ああいうパックというということで、決まったところに対してアワードを出していくというような、そういった準備を時間をかけてやりながら、皆さんと共同歩調でやらせて頂ければありがたいと思っている
次に指名されたのは椎名委員で、その発言内容は次のようなものでした。
- 澤田さんからこんなものは止めたほうが良いという話もあった
- こういう企画が単独でぽつんとあったのなら、そういう原理が働いて、そういう結果になることもあるだろうとは思う
- これはやっぱり、そもそも論に戻る必要があると思っている
- 吉川さんもおっしゃったことだが、取引市場ワーキンググループで何を話したかというと「やはり番組制作主体の多様化だよね」と
- それに関して、様々な制度による対応や公的な施策を講じるよりも、民々の取り組みでいけるのだと結論を出して、それについてトライアルをしようということになったわけ
- そこのところで、そういう番組調達規制とか、そういう話も出たけれど、そうではなく、民々できるのだということでこのトライアルがあったということを考えると、トライアルを成功に導くことによって利益が産まれる人は誰なのかと見た時、やはり地上波放送はファーストウィンドウとして重要だということもあり、そういう中で、放送事業者がどういう風に関わるのかということを関心を持って見させていただいた
- このコメントを拝見すると「地上波だけに頼るのは本トライアルの趣旨にそっていないのではないか」とか「映像のパイロット版が必要である」とか、ちょっと、これを成功させる気はあるのだろうかと、緊張感的にどうなのだろうと、正直に言って、映像のパイロット版とかちょっとイジワルっぽいなという印象を持った
- 民々でできるのだということを実証することがまさに必要なのは放送事業者さんなのではないかということで、もっと積極的にこのトライアルに関与された方が良いのではないか
- ワーキンググループで、植井さんから「まだ終わってはいない、これからである」という話も頂いたので、もう少しターボをかけて、やる気でやっていただけないかという風に思っている
- それからちょっと別なアレで、毎回こういうことを言って嫌われるのかもしれないが
- 数日前の新聞で、NHK の番組配信の単価が高すぎるという民放連、民放関係者のコメントとして新聞に載っていて、あたかも実演家の対価が高いからコンテンツが流れないのだという取り方ができる記事が載っていた
- これは NHK の設定した使用料に対する正式な見解なのかということを民放の方に伺いたい
この質問への回答に立ったのは福田委員で、その内容は次のようなものでした。
- 代表するものではないが、民放事業者の一つとして申し上げると、一致した見解ではない
- クレジットは判らないが、おそらく関係者ということでその通り取っていただければと思う
この回答を受けて、椎名委員から次の内容のような追加発言がありました。
- 実演家側も、そういうある種のトライアル、トライアルではないが、協力する体制でやっている
- またそういう逆のバイアスが働いてしまうと、非常に無駄なエネルギーが消費される
- こういうことは非常に遺憾だと思うので、一言申し上げた
次に指名されたのは佐藤委員で、その発言内容は次のようなものでした。
- 今回のスキームではマルチトライアルをある意味スタティックに見て考えていた
- 出資者というプレイヤー、広告主というプレイヤー、制作会社というプレイヤー、放送枠というプレイヤー、それぞれいる中で、それを誰がどういうモチベーションで民々の成功に導くのかと
- 誰が横串の役を果たすのかという観点が足りなくて、成功を担保するもの、金の匂いを担保するもの、それが存在しない形で全体的に動いていた
- 実験という名前ではあるけれど、民が金を出す限り、そこに PL が成立するということが重要
- 一企画に対して、一出資者に出してくださいというと、受発注関係と同じになってしまうと道井さんがおっしゃった
- まさにそのとおりで、特定の出資者に PL を頼るのであれば、特定の出資者に全面的に奉仕する企画以外には成立しない
- 企画・制作・出資・配給・・収益配分というこのバランスをどういう形で、誰が担保するかという観点でスキームを見直しながら、民のトライアルを成功させるような形で、金銭的な PL が成り立つ方向で継続していくことは意味があるのではと思う
- 今年度のトライアルについて、制作会社も全然引いたつもりはない
- アワードという関係があるので、企画が次から次へと出てくるかという部分について、これもシステム上の問題
- ローリングベースに企画が生まれ、流れ、製造されという形が本当はあると望ましいのでは
- 19 本の企画、50 本の企画から選ぶのがどうか、それぞれ民放の中の考えではあるが、そういう意味では 19 個選ばれたとしても、それで足りるかどうか疑問
- もう少しローリングベースな考え方のスキームが実現できると本当に楽しいのではないかと思う
次に指名されたのは石井委員で、その発言内容は次のようなものでした。
- NHK は資料 1 にあるように、協力者・放送事業者としての立場で企画を検討させて頂いて、資料 2 の二番目にあるように「蒼穹の昴」を今のところ初回 BS ということで放送の予定をしている
- この「蒼穹の昴」は資金調達欄にあるように、中国の制作会社との共同制作の形をとっている
- なかなか中国との共同制作は難しいものがあるけれど、将来的な世界への展開というものも目標
- 予約購入というのは、普通の購入ではできたものを見て買うのに対して、企画段階からまずコレを買いましょうということである程度枠を確保していくことになる
- NHK では放送段階まで、その先の展開は、この図でコンテンツセンターというところがマルチユース展開のところに書かれているように、国内外へ展開するということ
- こういうことが成功すれば、これはトライアルの大きな成果となるのではと考えている
次に指名されたのは高橋委員で、その発言内容は次のようなものでした。
- 放送の、地上波の問題を何とかしなければいけないという大きな問題が解決していないと思った
- トライアルが始まる前に、放送事業者の方がどのように発言していたかということを確認していたが、まだ見つけられていない
- これは民々でやるという合意で始まったことなので、皆、協力的にやるのだろうと考えていたが、色々な話を聞いて、そういう状況ではなかったということが残念ながら確認できた
- 一方、民々ベースで制作主体の多様化が実現するかということについて、あくまでも実証的に行うということで、これほど長い時間を置くことは想定していなかったと記憶している
- 半年か一年で結論は出るということだったので、やはりこのまま続けるのではなく、問題点に対して何か対処が必要なのだとすれば、事務管理処理の問題だけでなく、まだ結論がでないという形でまとめるのではなく、結論にまとめることができなかったのが問題であると申し上げる
次に指名されたのは寺島オブザーバで、その発言内容は次のようなものでした。
- 今回のマルチトライアルに対して、私、制作事業者は先ほど椎名さんがおっしゃった「そもそも論」がないままに参加してきた
- 当然そういう意味でいうと、澤田大先輩がおっしゃったように、こんなものは止めてしまったほうが早いという結論になる
- 先日来のワーキンググループにも出席して、段々私の認識がちょっと変わってきて、このトライアルはコンテンツの流通促進というよりは、現状のテレビの新しいあり方に対する調整であるという形に、もう一度だけ捕らえたいと思う
- ご存知のように、放送局の放送収入がどんどん落ちてくると、民放連さんもだいぶ悲観的な予測を出している
- そのあおりで、先週朝日新聞さんで「制作費削減が私どもを直撃している」と、まったくそのとおり
- 一方その局さんは放送外収入というところに軸足を向けていくという、そういう流れの中、この委員会で何度も、澤田さんも私も申し上げているが、放送界に新しい人材がこない
- 本当に、5 年 10 年後のテレビは誰が作っているのだろうと、そういう状況を訴えてきた
- 私たちは制作事業者単独で ATP をやっているが、その中で青春ぽいが、映像ルネッサンスというのを掲げている
- これはもう一回、テレビの熱かった時代、もう一回実現することと、我々制作事業者としてですね、従来の受発注ということだけではない、ある種新しいスキームを実現していきたい
- それをどうやって模索していくかということで映像ルネッサンスを掲げていきたい
- そういう状況で見ると、今回のトライアルはまさにその、従来の民放のある新しいあり方が問われるのではないか
- 前提としては、枠を出して欲しい
- この枠を出すことで、従来のスポンサー型の、広告主ありきの放送のあり方ではなくて、新しいコンテンツを開発していく
- その鍵は、何度か澤田さんがおっしゃっているように、地上波さんが一番やっぱり影響力が大きいし、訴求力もある
- だから、新しいありようを求める意味合いで、地上波さんが枠を出す前提を是非作ってほしい
- そういう意味で言うと、多様なコンテンツの制作機会ができるし、視聴者にとっては、多様なコンテンツの視聴機会が増える
- 我々にとっては、こうした新しいコンテンツを作るクリエイター、あるいは作られたコンテンツからゼネラルプロデューサー的な人材も教育・育成できるだろう
- 私たち ATP でも、ATP 賞というものを持っていて、これはある程度、放送文化の向上に帰するということで、視聴率的に見るわけではなく、ある種番組の質的内容で審査をしている
- この新しいアワードは質的と同時に、商品価値を見ることもできると思う
- これは今まで我々なかった目線になる
- だから、これを本当に、放送界が一体となって、そのような、ある賞を維持していき、新しいコンテンツを育成していくという大きな機会が現れている
- だから、このトライアルを一回で終わるというのではなくて、本当に放送局さんの熱い協力を頂いて、枠を出して頂きたい
- 編成とか今後の議論に、是非放送局さんが編成権を握っている方が担当として、是非ご一緒にお話したい
- 我々の今後のテレビを考えると、放送局、我々、通信事業者、それから広告代理店、それから実演家の権利者団体の方、運命共同体だと思う
- その絆の中で、何とかこのトライアルを有意義な形で成功させていきたい
- 是非考えて頂ければと思う
以上で村井主査からの指名は一巡し、以降は発言を希望する人が順次発言を行っていきました。最初に発言を希望したのは澤田オブザーバで、その内容は次のようなものでした。
- 先ほど制作プロダクションには体力がないという発言があった
- そもそもテレビが始まったその時から、製作部門には何も体力はない
- だから、時間があって、その為に作るということでやってきた
- 制作プロダクションが 300〜400 あっても体力のある会社はどこにもない、吉本興行と堀プロ以外には
- 資本金だって大してない、ただアイデアと情熱だけでこれまで 30 年やってきた
- この企画の、トライアルのスポンサーである方々から、それに初めて気づいたようなことを言われたら、私たちはどうしたらよいのだろう
- そんなことは当たり前だと思っていたので愕然とした
- すべては枠しだいで、枠が金なのだ
- 代理店も入っていることだし、枠にスポンサーをつけるのがそちらの仕事なのだろう
- まず枠を持っているということが金なのだから、枠を取るということ
- この企画で、最初から枠が足りていて、民々で枠を出しましょうといって、この枠に対して企画を出してくれというのであれば、皆一生懸命出すし、成立もする
- 寺島さんが言ったように、編成が決めているのだから、編成の方が出てこないと意味がないというのもあるし、スポンサーや予算についても決定権が無いことには
- ただそれは、枠さえあれば何とかなる
- だから、枠をまず確保するために、結局テレビ局が要るのか、やりたいのか
- やりたいのだったら、テレビ局は民放が全部、この枠を出しましょうということならば、その枠にふさわしいものが出てくるだろう
- ところがそれはテレビ局が独自にやっていることでもある
- 例えば NHK さんでも、この枠に対して企画はありませんかということをしている
- 例えば演芸番組は何かないかとか、ドキュメンタリーとか
- そこに対して出している訳で、すでにそれはある
- 全然別なとらえで、そこに何でも良いからと言ったら、編成権はいらなくなってしまう
- テレビ局は流れがあって決めている、裏番組等があって、それで決めているのだから、そうしてみると意味がないのではと思って極論を言っている
- 現実にはこれができたらば夢のような素晴らしいことだけど、現実をあげると難しいのではないか
- とにかく、体力と言われるとこれはちょっと黙っていられない
- そんなものあるわけが無くて、情熱とテクニックと企画力のあるところだけが残っているのだから
以上で澤田オブザーバの発言は終了したのですが、吉川オブザーバが発言を求めて、次のような内容の補足説明を行いました。
- ちょっと発言に誤解があったようだが
- 体力が続かないので、早めに決めてあげなければならないということを表現したつもり
- もっと早く動けるような体制を作らなくてはならない
- 皆が同じ体力で動いている訳ではないので、これを早くしなければいけないという発言をした次第
次に発言を希望したのは堀委員で、その発言内容は次のようなものでした。
- そもそも論にまたなるけれど、流通をすると、制作者も視聴者もテレビ局も皆ハッピーになるという話が元々ある
- ネット権・ネット法の話などはその典型になると思うが、そもそも流通の阻害要因があって、それが著作者であり、隣接権者であるということがよく言われていたと思う
- まさに 19 作品を見ていただければ、著作者の了解を得ている作品が多数、マルチユースに上がってきている
- 流通の阻害要因が権利者ではないということがくっきりしたと思う
- いわゆる企画ありきで決まっていることだとは思うが、我々タレント側として言わせてもらうと、いつどこでやるのかわからないところに、スケジュールは割けない
- ましてや、資金が調達できているかどうか判らないところにタレントを出すということは、ギャラの取っぱぐれになりかねない
- 映画の制作などであることだが、配給が決まっていないのに作るだけ作り、結局公開されないで一次利用も二次利用も効かず、会社は潰れてしまってまったく取っぱぐれになる
- こういう、資金はこれから制作会社が自分で調達するなどという、もっとも危ない例を見せつけられている
- だから、実演家としてはここに参入することはなかなか難しい
- それと、流通すれば皆ハッピーという図式で言えば、本当に流通したいと考えている人が積極的に参加していないのはちょっとおかしいのじゃないか
- ブロードバンドとか、IP とか、ここに沢山流通すれば、権利者も放送局も日本の国民も皆ハッピーになりますと言っている当の本人が積極的に制作には参加できない
- 何故なら「企画が判りませんから」と、それはちょっとなぁと
- 今度はテレビ局サイドに申し上げると、最近の地上波の番組は良質な番組が少ない、もっと良質な番組を作るべきという話もこの近辺でいくつか出たと思う
- 良質な番組を作ろうとすると、ドキュメンタリーなりの作品なり出てくる結果、ここにはスポンサーが付かない、なので仕事にならない、企画をやっても仕事にならない
- これは今まで、この審議会で映像の流通ということに関して、掛けられた結論、一つの結論が全て出ている
- 権利者は流通を阻害していない、実際に流通したいと思っている人はビジネスに関してあまり持っていない、テレビ局サイドでスポンサーが付かないということにはいくらいい企画を出しても制作はできない
- これを是非、皆さんにもう一度考えてもらって、一部でささやかれている流通すれば皆ハッピーということを、国内でやっても意味がないということをもう一度真剣に考えて頂ければと思う
次に発言を希望したのは高橋委員で、その発言内容は次のようなものでした。
- 先ほどの続きで、自分自身の 19 年の暮れごろの発言が見つかった
- そこで申し上げたことは、このトライアルに関して「春ごろには目鼻が付いているかなと楽しみにしている」と申し上げた
- このぐらいのスケジュール感であったということで、オープンに状況を教えていただきたい
- とりわけ気にしているのは、放送番組のどこの枠でそういうトライアルをやってくれるのか、それを是非、前向きに検討してほしいとお願いしていた
- やはり、地上波の枠の中できちんと、先ほど何人の方がおっしゃっていたように、その辺放送できる枠の確保がないと、このトライアルを含めて、今回のような結果になってしまうのか
- この懸念は既に、19 年の暮れに出していたことなので、早急に検討しましょうと、あえて今回申し上げて頂く
次に発言を希望したのは中村委員で、その発言内容は次のようなものでした。
- 今の話を聞いていて、民々の努力でコンテンツの流通が進むということが困難という結論になると、制度やルールの問題を見ていくという話になることも考えられる
- そのような状況を分析しつつ、検証や評価にあたることが大切なので、指摘があったような枠組みの改善ということも考えていく必要があると思う
- しかしながら、トライアル進行中の案件もあるので、検証や評価をテキパキと進めつつ、ワーキンググループとしてもこの委員会に密に報告していきたい
次に発言を希望したのは井川委員で、その発言内容は次のようなものでした。
- 高橋委員が先ほどから何度か、早急な結論をとおっしゃるのは良いが、例えば放送番組であっても、例え我々が企画したものであったとしても
- まず放送があり、それから半年後にビデオがあり、で仮にドラマがもう一度、一年後に続編を作り、映画を作るのはその一年後、映画の DVD はそれから半年後
- 一般に、二次利用とかマルチユースは以上のような流れになるので、19 年の末に話があって、簡単に結論が出ないから駄目だというのは、結論を求めるのが尚早だと思う
- だから、もう少し長い目で見ていただきたい
- マルチユースというのはそういうものだから
- これを見て、絶対失敗だというのは語弊があると思う
以上の発言を受けて、高橋委員が追加発言を希望しました。発言内容は次のようなものでした。
- 失敗だと申し上げたつもりはないし、春に結論を出してくれと申し上げた訳でもない
- 春にはある程度の目処がつくという前提だったと思う
- それが 19 件中、実現が 1 件という状況を見ると、かなりスピードが遅い
- 一次利用の段階でそうなのであれば、マルチユースでは当然もっと時間がかかる
- そこを含めて、時間的なことも検討しないと所期の目的は達成できないのではないか
この発言を受けて、井川委員が追加発言を希望しました。発言内容は次のようなものでした。
- 例が整わないのは、マルチユースの政策が非常に不明確であったり、例えば収支について言うと、放送番組に過大な負荷がかかったり、それら欠点があるので、それらをもう少しきちんと詰めていただきたい
- それが今回のトライアルの趣旨だったはずということで、だんだんそういったことも想定して、だんだん、色々な前提でお話をやっていただいても、やっぱりそれはそれなりの資格があるということをご理解いただきたいと思う
この発言を受けて、高橋委員がさらに追加発言を希望しました。発言内容は次のようなものでした。
- 以下、まとめるだけになるが
- 少なくとも昨年の暮れはそういう状態で、それに対して問題はでなかったので、ある程度納得された目安だったと思う
- 私はちょっと不本意であると口にさせて頂いて、我々がある程度一致団結して出てきて、それで進められる状況だと理解していた
- それが整わないのであれば、関係者の方々がもっと努力するべきだったということはあえて申し上げたいと思う
この井川委員と高橋委員の、微妙に井川委員だけが無駄に燃え上がって空回りしていたやり取りを最後に発言希望者は尽きました。
最後に村井主査から次の内容のまとめがありました。
- それでは時間になったので、本日の意見交換はここまでにさせて頂く
- 順番は逆になるが、マルチユーストライアルということで今聞いて頂いたように、沢山のご意見を頂いてありがとう
- 先ほど中村主査からあったように、この議論をしっかりと受け止めて、色々なトライアルに関する検討を重ねて頂いて、その進捗状況を本委員会に逐次報告して頂きたいと思う
- 技術検討ワーキングでのコンテンツ保護ルールの担保手段のありかたに関しても、先ほど報告したとおり、この方向で議論を行い、そちらの進捗状況も本委員会に逐次報告していきたいと思う
- いずれの場合も、どちらのワーキンググループでも、本委員会でこうやって皆から頂いた意見をきちんと受け止めて、それぞれのワーキンググループでの検討ということを進めさせていただきたいと思う
- そういう意味で、この委員会で頂くご意見は貴重だし、検討の礎なので、皆様、気づいた点や、色々、今日言い足りなかったこと等を事務局に伝えていただいて、それをまたワーキンググループでも報告して頂いて、進めてさせて頂きたい
- 私の方から皆にお願いをすると同時に、事務局の方にもご協力をお願いしたい
このまとめの後、事務局の小笠原コンテンツ振興課長から、ワーキンググループの日程調整と意見とりまとめに協力したいという旨と、次回の委員会は 10 月で日程調整中で、決まり次第伝えたい旨の発言があって今回の会合は終了しました。
◆◇◆
えー、技術検討ワーキンググループ関連での意見に関して、とりあえず河村委員&高橋委員の発言への感想とか。
河村委員の世界観に沿った B-CAS カードの実態報告が欲しいなら、河村委員が主体的に B-CAS カードの実態を調べるしかないんじゃないかなーと。
家電メーカや放送局の人間で構成されている技術検討ワーキンググループに報告や説明を求めても、出てくる情報は家電メーカや放送局の世界観に沿ったものでしかない。
で、河村委員が独自に調査しようと決心さえすれば、それが効率的な調査になるかどうかは別として、調査をとめることができる人間はいない。
例えば「B-CAS カードが参入障壁になっているに違いない」という確信を持っているのであれば、アナログテレビ時代に安価なテレビを提供していたけれど、未だにデジタルテレビを提供できていないメーカに取材して、何故参入しない・できないのか、どのような条件が整えば参入できるのか尋ねることはできるはず。
高橋委員の発言の中で、アンケート等の調査には全国消費者団体連合会という信頼性の高い機関の存在の考慮をという内容があったけれど、別にこの委員会やワーキンググループからの依頼がなくても、独自にアンケートをとることはできるし、その結果を委員会の席上で報告することもできるはず。
彼女たちは委員会で恒常的に発言権が与えられている委員で、パブリックコメント以外では発言権のない一般人でも、呼ばれたときにしか発言できないオブザーバでもないのだから。
委員会からの正式な依頼があって、予算の裏づけがなければ動けないとか言うのであれば、それは消費者代表というよりも、市民活動屋さん代表という評価のほうが適切なのではと考えてしまう。
ちょーっとピントはずれな批判かもしれないけど、なんつーか「甘えすぎ」というか、統計やアンケートなんぞ、それぞれの立場にとって都合の良い方へ意見を誘導するための道具だと思っている人間としては彼女たちの発言を歯がゆく感じてしまうのだよな。
まーそもそも、コピー制御の存在というアナログ放送時代からすれば圧倒的なまでの視聴者の利便性の低下と、権利の切り下げを当然のものとして受け入れている態度が許しがたかったりもするのだが。
◆◇◆
で、椎名委員の AMD アワード関連の発言に関しての感想とか。あそこまで言っていいのかなーとワクテカしながら聞いていた。
まるで、取引市場ワーキンググループでの議論は、はじめから結論ありきで進んでいて、許諾権制限や番組調達規制論を封殺するためだけにワーキンググループが存在してたと告白しているかのようにも受け取れる内容だったので。
前回の第 43 回では「われわれのワーキンググループでの議論の過程から、こうした法的な権利制限によって問題の解決をしようという主張は、流通の拡大に最善とはいえないことがすでに解明されている」っつー趣旨の発言をされているのだが……ホントに説得力ある意見だね。
放送局と権利者団体しか委員としては参加してないワーキンググループで、最初から結論ありきの議論の結果「解明され」ていて「噴飯もの」で「ヒアリングするまでもない意見」という発言がでてきたのかー。
いや、椎名委員は権利者団体の利益のためであれば、親の敵でも活用するタフで面の皮が厚い合理主義者だと評価していたので、こーゆー脇が甘い意見が出てくるとは正直意外だった。
◆◇◆
寺島オブザーバの要望について。正当な望みだし、これすら受け入れられないようであれば先はないのだろうなと考えるけれど、あらかじめ外部向けの枠を用意しておいて、アワードという形でその中身を選定するというのであれば、それは放送事業者が取引市場ワーキンググループで封殺しようとした「外部調達規制」とどー違うのだろうと考えてしまう。
外部調達規制を受け入れたくないからトライアルで時間稼ぎをして、受賞作品になんだかんだとケチをつけてなるべく先に進まないように努力しているわけで、その状態で放送局が枠を出すかどうか。井川委員の発言を見る限りだと、抵抗は強そうだよなぁと滅入ってくるものを感じてしまう。
◆◇◆
堀委員の AMD アワード関連の発言に関して。「権利者は流通の阻害要因になっていない」と言い切った、そのすぐ後に「制作事業者が自己で資金を調達して作る番組にはタレントを出したくない」だからなぁ。もーちょっと自分の発言に説得力が出るような、終始一貫した話し方とかできないものなのかしら。
10月7日(火) 池田 信夫 教授の記事に関して [この記事]
ASCII.jp の【「第5権力」としてのウェブ】[URI] で B-CAS 廃止が確定したかのような記事が出ていますが、問題の委員会を傍聴している立場としては、そんな流れはこれっぽっちも伺えませんでした。
私の理解力不足という可能性もあるのですが、「B-CAS 見直し」を「B-CAS 廃止」と短絡したとしか思えない記事だなぁというのが正直な感想です。
河村委員の「B-CAS を見直すということか?」という質問に対しての、村井主査の「B-CAS に関する技術と契約の観点から、対応策を考えていこうということ」という回答を見れば判ると思うのですが「B-CAS 見直し」であって「B-CAS 廃止」ではありません。
聞いていた立場としてはむしろ、これまであった「制度エンフォースメント」という文言が (一時的かもしれませんが) 消えて「技術と契約」(現在のスクランブル方式) の変更のみに検討内容が絞られたという印象を受けました。
周辺状況のこれまでの報道を見る限りでは、B-CAS カードを (IC カード形式を止めて) 受信機へ組み込み、取り外しができない形に変えて、(見かけ上) B-CAS カードが消えましたと、椎名委員等が懸念していた遊離カードの問題も解消ですねという形でお茶を濁そうとしている可能性が高いのではと考えています。
いずれにせよ、外野で騒いでいても仕方が無いので、私としては今月 14 日の委員会で技術検討ワーキンググループでの検討結果が聞けるのだろうから、その日を待とうかというつもりでいます。
10月8日(水) デジコン委員会傍聴レポートとか [この記事]
なにやらやじうまうぉっちにまで取り上げられてしまった [URI] ようで。えー permlink を準備していない使いづらいページ構成で申し訳ない。一応このサイト内にある関連情報のリンクを張っておくので、興味のある人は眺めていってください。
- デジコン委員会 (第30回) [2007, 12/27] 傍聴レポート
- デジコン委員会 (第31回) [2008, 01/29] 傍聴レポート (関連しての 感想)
- デジコン委員会 (第32回) [2008, 02/19] 傍聴レポート
- デジコン委員会 (第33回) [2008, 02/26] 傍聴レポート
- デジコン委員会 (第34回) [2008, 03/25] 傍聴レポート
- デジコン委員会 (第35回) [2008, 04/11] 非公開化されたことへの愚痴
- デジコン委員会 (第36回) [2008, 04/25] 傍聴レポート
- デジコン委員会 (第37回) [2008, 05/13] 傍聴レポート
- デジコン委員会 (第38回) [2008, 05/29] 傍聴レポート
- デジコン委員会 (第39回) [2008, 06/13] 傍聴レポート
- デジコン委員会 (第40回) [2008, 06/19] 傍聴レポート
- デジコン委員会 (第41回) [2008, 06/24] 傍聴レポート
- デジコン委員会 (第42回) [2008, 06/27] 傍聴レポート
- デジコン委員会 (第43回) [2008, 08/29] 傍聴レポート
- デジコン委員会 (第44回) [2008, 09/26] 傍聴レポート
以上、とりあえず聞き始めてから、前回までの傍聴レポート。何でこんなことをはじめたかというと、「ARIB STD-B25 仕様確認テストプログラム」[最初の公開] [最新版] というものを公開した人間として、その後どーなっていくかをなるべく早く知りたかったため。委員会の公式議事録の公開がもっと早ければ毎回有給とって聞きにいかなくてすむのになーと思いながら、来週 14 日の午後半休も申請済みなので、第45回も聞きにいく予定。
今回リンク張ってて、そろそろデジタル放送系で独立ページ用意した方がいいかもと思い始めた……。google で「まるも B25」とかで検索して飛んできたあとで、あの中を探すのは大変そうだし。
10月9日(木) 知財戦略本部での動向 [1] [この記事]
今週あたりから時間を見て知的財産戦略本部 [URI] での、デジタル・ネット時代における知財制度専門調査会 [URI] の過去の議事録とかを読んでいます。丁度タイムリーに、9/18 の第 7 回の議事録が公開されたようで、今日そこまで追いつきました。
で、眺めていて面白いなと思ったのが、第 4 回です。これは 6 月 25 日に開催されたもので、主にネット上でのコンテンツの流通の促進ということをテーマに、デジコン委員会でお馴染みの CPRA の椎名さんと、ネット権・ネット法の提唱者である岩倉弁護士が直接この調査会の場でそれぞれの意見を参考人として述べたという回になります。
ここで思い出して欲しいのが、8 月 29 日のデジコン委員会 (第43回) での椎名委員の発言です。「知財本部の調査会や会議には、権利者が全く参加させて頂けない状況にある」という発言があったのですが……当の本人が、参考人とはいえ参加してるじゃないですか。何でスグばれる嘘を吐くのでしょう? ちょっと椎名さんを買いかぶっていたのかもとか考え直す必要を感じました。取引市場ワーキンググループ主査の中村委員も同じ席にいるのにどーして突っ込み入れないのかなーと疑問を感じます。
で議事録を読み進めて、大谷委員の質問と椎名さんの回答のあたりを読んだところで、「そーか、だから、椎名委員はあんなにデジコン委員会に知財本部とかの人を呼ぶのを嫌がってたのか」とある意味納得しました。とりあえず大谷委員の質問の要点はこんな感じです。
- 許諾権が奪われた場合、コンテンツの平準化が産まれて、キラーコンテンツが発生しにくくなるというが、成果報酬型 (売れたぶんだけ出演者にリターンがある) のようなビジネスモデルを実演家側から提案すれば良いので、コンテンツの平準化はおきないのでは?
- ネットでの採算性が悪いのは、違法コンテンツが最大の要因とあるが、因果関係等、具体的なデータがあれば教えて欲しい (最大の要因とまで書いているのだから具体的なデータあんだろーなゴラァ)
- 資料の中で「通信事業者が」と一番に通信事業者を念頭においているが、「通信事業者が儲けられない現在ビジネスになっている」という説明があった、その中でリスクを取れ、コストを取れというのは厳しいのでは、実演家側から何か提案はないのだろうか?
で、椎名さんの回答を拾うとこんな感じです。
- 有名ではない人が、放送番組に出たとして、その番組がブレークしたとしても、ネットに流す段階になってネット権は放送局にありますからと言われてしまうと成功報酬の価格交渉ができなくなるという意味でインセンティブを奪うといった
- 採算性が悪い実例を示せということだが、ネット上で番組を流そうという試みを幾社もやっているが、それがことごとく潰えているという事実がある
- 通信事業者が採算性が悪いところでリスクを取れというのは無理なのではという指摘だが、ここで言う通信事業者とは、NTT のような自社でインフラを持つ企業、インフラを活用すれば他社がそのインフラを使うよりも有利な立場にあるはず
えー最初のでは、成果報酬型で利用と収益を一対一化 (1 ユース 1 ペイメント) すればブレークしただけ儲かるのだし、それじゃ駄目なの? という質問だったのに、ガン無視。次のものでも因果関係を示さずに質問を曲解。最後のは……すこし説得力はあるような気もするけど、ネット権が想定している利用者 (許諾を求める人) である、ネットワークインフラの上でサービスを提供しようとしているベンチャー企業とかのことを考えるとやっぱりズレてますね。
そりゃまあ、出かけていって、演説をぶって、データを出すとか提案とかしてよと言われて、こんな回答しかできなかったのじゃスグばれる嘘を吐いてでも呼びたくなくなりますね。非常に納得しました。
◆◇◆
実際のところ、CPRA がネット権に反対する理由がイマイチ理解できなかったりします。この調査会の第 3 回議事録を見る限りだと、CPRA に関しては既に許諾権については一任型 (個々の権利者は許諾権の行使まで含めて、CPRA に権利を委託する) になっていて、ある意味 CPRA はネット権者の立場にあります。
で、ネット権・ネット法はある意味、CPRA のその立場に法的な裏づけを与えてくれるように、第 4 回議事録での岩倉弁護士の説明内容を読みながら感じたのですけれど、それを何故嫌がるのでしょう。判りません。
現在 CPRA では、現行著作権法を厳密に解釈すれば適法とは言いがたい、アウトサイダーに対する権利処理 (委託されていない実演家の許諾権も、後で報酬を支払うという前提のもとに勝手に許諾する) までやっていて、ネット権・ネット法はそれの適法化も含んでいるように思えたのですが、何故それを拒むのでしょう。
CPRA がネット権・ネット法の行使者であれば正しいが、他者がネット権・ネット法の行使者となることは悪だと主張しているような印象を受けて、どうにもすっきりしません。
これが音事協の方 (例えば堀委員) の意見であれば、音事協は非一任型らしいのでネット権・ネット法反対を主張しても違和感はそれほどないのですが……なぜデジコン委員会ではこの辺につっこみ入れる人がいないのでしょう。
10月10日(金) 知財戦略本部での動向 [2] [この記事]
昨日の記述で取り上げた「デジタル・ネット時代における知財制度専門調査会」[URI] は、フェアユース規定やソフトウェアのリバースエンジニアリング合法化、検索エンジンでの複製の合法化などを著作権法に追加しようと頑張っているところなのですが、第 7 回 (9 月 18 日) の会合では「ネット上に流通する違法コンテンツへの対策強化」というテーマで検討が行われていたようです。
一応アクセスコントロールの問題等が話し合われていたようなのですが、アクセスコントロールの回避規制に関しては「ビジネス上必要なのは認めるけど、著作権法に加えるのは違うよね、不正競争防止法を変えていくしかないのでは」というのが共通な認識の様子。
今年 3 月の時点で「無理が通って道理が引っ込む可能性がないとは言い切れない」[URI] と書いたことがあるのですが、どうやらこの様子だとそれはあまり心配しないでも良さそうです。
他に議題に上がっていたこととしては、いわゆるカラオケ法理の拡大に対する懸念が印象に残りました。特に、国内放送のネット経由での遠隔視聴 (まねき TV 類似サービス) は、被害をこうむる権利者がいない以上、違法とするのは不適切なのではとか、「MYUTA裁判」を取り上げて、これは一般個人からすると違和感が強いのではとの指摘が気になりました。
これらの意見を見る限りだと、最高裁までガチで殴り合ってれば MYUTA 側は勝てた (カラオケ法理の解釈拡大を止めることができた) のではと思ったりするのですが、残念なことに上告はしてないのですよね。日本に EFF が無かったり、裁判を長々と続けることによるイメージダウンの問題があったりと事情はあるのでしょうが残念な話です。
◆◇◆
この調査会のすばらしいところは、公式議事録の公開が早いことだと思います。わずか 3 週間程度で公式議事録を公開と、傍聴をしなくても話を追いかけていくためのコストが低いところがありがたいです。それだけ参加者が自分の発言に自信を持っているということなのでしょう。
それに比べてデジコン委員会は、そろそろ 10 ヶ月が経過しようとしてる昨年 12 月の議事録すら公開せず、議論の内容を知る手段も与えないままにパブコメを募集して、出てきた意見について「議論の経過を無視してる」だの「気にする必要はない」だとか「委員会の議論に自信を持とう」とか発言しているわけで、なにか違うんじゃないかなーと思うのですよ。
それでも完全非公開な、経済産業省の「コンテンツ取引と法制度のあり方に関する研究会」[URI] に比べればマシなんですけどね。
10月19日(日) デジタル・コンテンツの流通の促進等に関する検討委員会 (第45回) [この記事]
恒例のレポートです。これでも結構急いだのですが、かなり開催から時間が過ぎてしまいました。申し訳ないです。
今回の会合の話題は、技術検討ワーキンググループからの検討状況報告と取引市場ワーキンググループからの検討状況報告で、分量比は 技術検討 2 に取引市場 8 という感覚でした。
議事自体は次の流れで進みました。
- 村井主査からの恒例の挨拶
- 小笠原課長からの配布資料の確認
- 村井主査からの技術検討ワーキンググループでの検討状況報告 (エンフォースメントについて)
- 技術 WG からの報告に関する意見交換
- 小笠原課長からの、配布資料説明 (コンテンツ DB について)
- 中村委員からの取引市場ワーキンググループでの検討状況報告 (コンテンツ DB について)
- 岩浪委員からの海外でのネット配信動向について報告
- コンテンツ DB および岩浪委員の報告について意見交換
- 小笠原課長からの、配布資料説明 (海外での振興政策について)
- 中村委員からの取引市場ワーキンググループでの検討状況報告 (海外での振興政策について)
- 海外での振興制作について意見交換
ほぼ定型文となっている最初の挨拶と配布資料の確認は飛ばすことにして、技術検討ワーキンググループの報告から追っていくことにします。
技術検討ワーキンググループからの検討状況報告の発表者は村井主査で、その内容は以下のようなものでした。
- 技術検討グループは、いま開催されていたので、資料はないけれど、一応検討している概要について話をする
- 技術エンフォースメントと制度エンフォースメントということについて
- 契約と技術に関する解決ということで、委員会であがった課題について議論を尽くし、必要に応じて、制度や、どのような形で解決に役立つかという順で議論をしていくと第五次中間答申に書かれている
- それに従って議論しているというのが基本的な考え方
- そのため、コンテンツ保護方式というものを、現行の方式も含めて、本委員会で課題としてあげられたことについて検討を進めている
- 課題は大きく分けると以下の三点となる
- 一つは、ハードに対する声、色々な形で指摘を頂いている
- それから、コストと効果、ブツ/モノのコストおよび運用コストについて、あり方も含めた指摘を頂いている
- それから三つ目はスクランブルということ、スクランブルの必要性や、それにかかる技術の関係ということで指摘を頂いている
- なので、それにもとづく技術的な検討は、大きく分けて次の二点となる
- 一つは、B-CAS カードという、そういった課題や要求に対して、実態としてどうなっているかということを説明できる必要があるということ
- それから、技術的な役割としての B-CAS カードという在り方で、どこまで改善できるかということ
- 例えば、ポータブルデバイスに対して、B-CAS カードは物理的に大きすぎて、そのスペースをポータブルデバイスは持てないということがある
- カード形式のストレスとして、挿してどうとか、シュリンクラップが判り難いとかの指摘もあった
- これから申し上げる三つのハードウェア方式に対して、そうした契約がどのように係わるかということも含めて考えていく
- 技術的には、カード方式、チップ方式、ソフトウェア方式、以上の三つの方式がありうる
- それぞれ、責任分解点はどこにあるのか、シュリンクラップの有無を含めた契約関係の問題、セキュリティの方式としての指摘について考えていく
- 先ほどあげた、三つの課題、ストレス・コスト効果・スクランブルという三点と、技術的な方式三通り、カード・チップ・ソフトという三点で、3 × 3 の、契約関係等も含めた考え方を検討していくということ
- カード・チップ・ソフトという、考えられる技術を提案して頂いて、それぞれ指摘されている課題にそって、議論を開始している
- この検討内容や課題を、随時、この本委員会に具体的に報告できる体制で議論が開始されている
- 資料がないので、少し判り難い説明になったかもしれないが、今、それぞれの選択肢に対しての提案が行われて、放送事業者と受信メーカの方々の間で内容の確認を進めて頂いている
- これが現状であって、今後は提案の中で、現在のスキーム、すなわち責任分解点や費用・コストの点で変更を伴うものが提案に含まれているので、それをさらに具体化して検討していくということを進めている
- また、先ほどの本委員会での三つの指摘に対して、それぞれの方式がどのように対応して、どのような課題を解決し、どのような課題が残るのかという議論をしていく
- こういう方針で進めるということで、技術ワーキングでは認識の相違が (放送局と受信機メーカの間では) なくなったので、この方針で議論をしていく
- 改善策の検討を進めるにあたって、視聴者のストレスとして指摘されていることに対して、具体化するために調査が必要であるという指摘もあったが、調査の仕方としては、色々あるが、まあ出来ることをやる
- ただ、指摘された項目は大体、全部リストアップされて俎上に乗っているので、その具体化等、うまく説明できれば、そういったことが解決できるのかとかも含めて、検討を、今の技術提案を議論していく中で並行して検討していく
- そういう訳で、委員の皆様には、それぞれのタイミングで相談しながら進めていく
報告内容は以上で、これに対して何かコメントがあれば、との要請に対して、河村委員が発言を求めました。発言内容は次のような形でした。
- 何回か同じようなことを申し上げているので、重複する、繰り返し申し上げる部分があるかもしれない
- まずカードのストレスについて、私がほかの事を沢山申し上げた関係もあり、カードのストレスが「無い」と申し上げた形になっているかもしれない
- 私の発言の意図は、カードのストレスはもちろん存在するが、それは大変大きな問題のごく一部でしかないだろうということ
- ストレスはあるが、それが原因で「B-CAS カードを止めるべきである」と消費者が言っているとは言えない
- 大きな問題の一部であるし、そういうものしか存在していない訳で、よく判らない地デジのテレビや録画機の中でそういうものだと言われれば、調査をしても、消費者が「問題である」とは言わないかもしれない
- しかし、問題は存在しているし、複合的な問題の一部であると言い換えさせていただきたい
- 以下、何回か申し上げた繰り返しになるかもしれない
- エンフォースメントというのは地デジ、地上デジタルのコピー制御、今ならばダビング10をエンフォースする為、その為だけに存在するのであれば、誰にでも透明性のある運用にして、たくさんのメーカが参入し、消費者から見た選択肢が増えてほしい
- カード一枚のコストが幾らであるとか、そういうことだけではなく、パブコメにもあったことだが、地上デジタルの著作権保護を守るため以上の、はるかに高い何かを守ってるかのようなものになっているのではと思う
- それがカード方式で、カードを入れるという部分がブラックボックスであるとするならば、それは解消しないのではないか
- 一番シンプルにすると、私から見て一番シンプルにするには、スクランブルしなければ解除もしなくて良いのだから、テレビを作るということをシンプルにするには、それが一番シンプルになると考えている
- 制度というものが良いかどうか、まだ深く議論が始まっていない段階でも、必ずそれを回答していただきたい
- 消費者から見た場合、権利者の利益を守るために、安いシンプルなテレビが出なくなってしまうのは納得がいかない
- スクランブルが無ければ、この部分はいたってシンプルに、全ての問題が解消するといっても良いのではないかと考えている
以上で河村意見からの発言は終了し、この発言に対しては村井主査から次の内容のコメントが行われました。
- 一応、技術検討ワーキンググループでは、今河村委員の指摘になったことはきちんと話されていると思う
- その、趣旨も含めて、そこに誤解はないと思っている
- 特に、地デジと三波共用の問題
- シンプルとおっしゃった点
- 参入障壁としての点
- スクランブルがある意味あるなしの問題
- それからコストの問題、というのはカードのコストではなく、社会コストであるとか、運用コストであったりという点
- それから「見えない」というか、何か組織上や運用上の課題をこういう技術を採用することで生み出しているのではないかという指摘
- すべて明示的に検討の中に入っていて、その上で先ほどの議論がされている
- そういう意味では、それぞれのやり方がどうであるかという途中経過を踏まえて、方式の議論をさせて頂けるのではないかと、検討グループの中ではそのように話していると思う
次に発言を求めたのは長田委員で、発言内容は次のようなかたちのものでした。
- 今の河村委員の発言に加えて、ひとつお願いがある
- カード・チップ・ソフト、その三つの方式についての検討の議論が開始したのだと思っている
- その場合、審議会の三つの課題のうちの、視聴者、我々にとって
- それぞれの方式が採用された場合にどのような影響があるのか
- どういう仕組みになるのかということをよく説明して
- それから、制度によるエンフォースメントの場合はどうなるのか
- よく判るように説明していただいた上で、皆で議論させてほしい
- 次なのか、その次なのか判らないが、是非そのようにお願いしたい
以上で長田委員からの発言は終了し、この発言に対しても、村井主査から次の内容のコメントが行われました。
- 指摘のとおりだと思うので、そのように進めたい
- ただ、まだ議論の途中、提案の素材が出たところで、色々な意味で、そういった検証をしている
- コストも、技術を議論していく中で、このコストが本当にどうなのかと、そういう視点もある
- まず最初の出発点は、今とどう変わるのかという点
- それから、長田委員が指摘されたように、利用者の視点からどのような変化があるかという点
- どう判りやすいか、判り難いかという点
- そういった点を含めた検討を進めることになっている
- 指摘の方向で議論を進められると思う
次に発言を求めたのは椎名委員で、発言内容は次のようなかたちのものでした。
- 大体まとまった話を伺ったけれど、メーカさんと放送局で話している中で「B-CAS を改めなければいけないということはない」という発言をされたメーカがあると聞いた
- 「改める必要がない」という発言からは、技術者としてのプライドも何も感じられないと思う
- これだけ穴が開いているシステム、言うなれば、セキュリティモジュールという鍵が誰でも活用できるようになっている点について解決しなければならない
- カードかチップかということもありながら、最大の点はそういうところなのではないかと思う
- 今回 3 つの選択肢が出てきた
- いずれを取るにせよ、これから生産される製品について、どういう風に現在のシステムを改善していくのかということだと思う
- そこはしっかりやって頂きたい
- 一方、現状配布されている B-CAS カードは巷にどうしても残ることになる
- そういう B-CAS のシステムと、何らかの内蔵されたものになるのか判らないが、そういうものの混用、混在運用になる以上、Friio の問題は解決しない
- やっぱりああいうものについては制度も含めたオプションを引き続き検討してほしい
以上で椎名委員からの発言は終了し、この発言に対しても、村井主査から次の内容のコメントが行われました。
- 議論の内容としては、今のカードとの違いがきちんと浮きぼられることが、利用者の視点からも大事と思う
- また、今指摘された意味のことも重要だと思う
- そういったことを含めて検討している
- 最初に申し上げたように、その中でも、出来ること、出来ないことはある
- もっと、緊急性のあることもあると思う
- その辺り、もっと大きな制度との関係という流れの中で検討していると思う
以上で発言を求める人はいなくなり、取引市場ワーキンググループでの検討状況報告に移りました。
最初は小笠原課長からの配布資料の説明からで、その内容は次のようなものでした。
- 資料 1 にもとづいて、簡単に取引市場データベースに関する報告をする
- 資料 1 に書いてあるのは、第五次中間答申にもとづいて、こんな方向での予算執行も考えているという簡単な紹介
- まず、資料 1 の丸箱で囲った部分、いくつか前提がある
- 一つ目は、今回のデータベースは番組制作者の人が制作著作を持ったコンテンツを対象とするということ
- 二番目は、権利情報のデータベースは既に幾つかの団体で持っていて、運用も開始されているので、そういった現在動いているデータベースの連携を前提とする
- 三点目は、番組制作者の方が制作著作を持つということなので、制作者の著作権帰属の取り扱いが公正なルールで行われること
- 以上、3 つを前提として取引市場データベースに関する実証実験を、まずはやってみるという提言を頂いているので、それにもとづいた予算執行を進めている
- 資料では繰り返しになるので明記はしていないが、何のためにこんなデータベースを作るかということについて
- 第五次中間答申で再三触れているように、ネット利用・海外販売・DVD販売というような、二次利用が円滑に進むように、コンテンツの流通に不可欠な著作権情報を一元化しようというところから出発している
- こういったことをやることで、ネット配信のような二次利用、あるいは海外販売のような二次利用が加速・推進されると、そういうことを目的として行われている
- データベースのイメージというところに書いてあることから明らかだと思うが、新たに 1 から情報のデータベースを構築するという考え方はとらない
- 先ほど申し上げたように、制作者のデータベース、権利者のデータベース、そういったところとの連携をする
- そういったところから、基本的な情報を頂いて必要な情報をカタログ化する
- インデックスデータベースという名前をつけているが、基本的には、既存のデータベースから情報を頂いて、そのインデックスデータベースを構築する
- 一から新たな情報を入力したり、一から新たなデータベースを構築するとか、そうした考え方は取らない
- そういったインデックスデータベースというというところに、コンテンツを利用したい、二次利用したいという方々がアクセスすれば、そこで一元的に情報の入手ができ、それにもとづいた権利処理が一元化できると、そういったことを念頭に進めている
- 資料 1 の 2 ページ目をめくっていただくと、平成 20 年度、21 年度、どういったステップで進めていくのかということだが、今申し上げたように、既存データベースの連携ということを前提とするので、既にお持ちのデータベースを運用している方々の間で、どういった情報であればインデックスに登録できるか、インデックスに登録する情報の項目と、フォーマットについて合意を行うことがファーストステップになる
- 平成 20 年度実証実験のところに書いてあるとおり、データベースに登録する共通の入力項目の選定が重要になる
- この選定について、ある程度のコンセンサスが権利者団体と制作者の方々の間で得られた場合、いくつかのコンテンツについて、実際に情報の登録を行っていく
- そして、そのコンテンツの情報登録を行うことで、どういう点で流通を促進されるかということを、検証する、それが平成 20 年度の実証実験ということ
- 21 年度については、もし可能であれば、そういったコンセンサスが得られたインデックスデータベースということの運用を実装に行って、実際に民間でそれが運用された暁にも、きちんと回るようなデータベースを確立するということが 21 年度ということになるかと思う
- 3 ページについては、共通の入力項目のイメージを若干書いている
- 今まではこういったインデックスということになると、真ん中へんの「A ランク基本情報」ということに書いてあるように、作品タイトルや、放送日、番組の放送時間、いわゆる番組のカタログ情報というところにとどまる例が多かった
- 今回のインデックス化では、それだけに留まらず、例えば著作権情報として、例えば DVD 化権とか、あるいは IP 送信化権とか、あるいは再放送とか、そういったところについて、どの程度まで許諾が得られているか、そこまで踏み込んでインデックス化できればと、そういう心で取り組む
- ただし、ここまで踏み込めるかどうかは、あくまで権利者団体の方々、あるいは番組制作者の方々との話し合いでやっていくことになろうかと思う
- 最後は、関連する情通審の答申の抜粋ということ
- こういったことを紹介した上で、取引市場ワーキングの方で議論を頂いている
小笠原課長からの説明は以上でした。次に行われたのは、中村委員 (取引市場ワーキンググループ主査) からの検討状況の報告で、その内容は次のようなものでした。
- 先日、第14回の取引市場ワーキングを開いて、データベースに関する課題と、対価の還元について議論した
- まず、今説明があったデータベースに関する議論から報告する
- 取引市場データベースについては、本年度の実証の方向性と、データベースの進め方に関する試案について議論を頂いた
- 詳細は、先ほどの事務局説明のとおりだが、この取引市場データベースの実証については、前回のマルチユーストライアルと同様に、第五次答申にあるとおり、制作主体の多様化や、公正・透明な取引はわが国では、民間ベースで既に実現してるということを出発点にしている
- ただし、審議の過程でこうした前提について幾つか議論があったことを踏まえて、答申では、まず民間ベースでトライアルや検証を行い、その過程や結果を見た上で、改めてルールや制度に関して取り扱いを検討するということとされている
- それを踏まえた民間ベースの取り組みのひとつとして、この取引市場データベースがある
- 取引市場のデータベースというのは、まず本年度は番組制作者が著作権情報を所有する放送コンテンツについて、取引情報データベースの構築に取り組むことを基本にしている
- 番組制作者自らが、リスクとコストを負担して、自らが著作権情報等を所有するコンテンツについて、取引情報データベースを構築していくことを、国としても一定の支援を実施していくということを提言している
- また、この実証実験については、より効果的・効率的な情報の集約、マルチユース展開を目指して権利者が独自に構築しようとしているデータベースとの連携を図るということも考えられるとされている
- このようなデータベースの構築にあたって、まず、前提として、放送コンテンツの番組制作者への著作権帰属ということが、公正なルールの下に行われるということが求められている
- そこで、議論をして、出てきた意見を簡単に紹介したいと思う
- まず第一に、データベースの有効性に関する議論について、データベースを実現するにあたっては、その有効性がどの程度あるのかと、また、どのような点を解決するのかという意見が議論された
- 例えば、懸念事項として三つぐらい示された
- 既にあるコンテンツのカタログデータベースと同じようなものになるのでは意味がないのではという指摘
- ネットや海外に展開したいような人気コンテンツが登録されないのではという懸念
- ネットサービスを行う事業者は元権処理をされたコンテンツを購入しているので、データベースで著作権情報を一元化しても、ネットへのコンテンツ流通の促進には繋がらないのではという意見
- 一方、推進しようという意見も三つばかり紹介する
- データベースで権利処理をワンストップで処理して流通させるというのは、現実的な案だ
- 高画質なコンテンツを信頼できる配信主体にゆだねたいという場合は、データベースを介して、コンテンツプロバイダと流通業者が、事業的な調整をする場として、重要な意味がある
- コンテンツクリエイターがリスペクトされ、利益が還元される環境を作るには、こうした仕組みを作るべきだ
- さらに、データベースを有効に機能させる為の意見として、制作者が著作権を持つということが重要であり、制作会社に企画の発意と責任がある番組、完パケ番組については、制作会社が著作権を保有できるように指導してほしいという意見もあった
- 今後の進め方は、こういう意見を踏まえて、データベースの実験の進め方について、引き続き議論をして頂いて、効果的な実証実験のあり方、それから進捗状況ということをワーキングで報告・議論いただいて、この委員会にも報告していきたい
中村委員からの報告は以上でした。次に行われたのは、岩浪委員からの、海外のネット配信の状況だったのですが……コレが……資料を配布しない、会議卓のディスプレイ機能を利用したプレゼンだったうえ、資料を見なければ何を言ってるのか判らない発表だったので、傍聴席からはいまいち内容がつかみきれませんでした。
最大限努力はしたのですが、おそらく岩浪委員が伝えたかった内容の 10% も伝えることができない、私の誤解も含んだ、発表内容の紹介になると思います。以上、言い訳をしておいたので、その前提で読んでください。発表内容は次のようなものでした。
- 去年の 5 月の段階では、ヨーロッパでの調査では、ユーザの 50% が「インターネットでテレビを見ている」と回答している
- これはイギリス・フランス・ドイツ・イタリア等の 5 ヶ国の調査で、一番高いフランスでは 59%、最低のドイツでも 39% という数字になっている
- このときは BBC の iPlayer はまだ始まっていないので、このテレビというのは何なのだろう
- IPTV がそれほど普及してるとは思えないので、おそらくは YouTube であり、BitTorrent であり、Apple iTunes 等ではないか
- 事業者が、どのように行動しているかというあたりを中心に紹介したいと思う
- まず、YouTube が 2005 年に登場したのが一つの大きなきっかけだったと思う
- YouTube は無料モデル・ブラウザベースでユーザの導入ハードルを低くして、新しいユーザを確保した
- 次に Apple の iTunes、前回ここに Apple さんが来られてずいぶん自慢して帰られた (3/25 第34回 のこと)
- こちらは有料のファイルベースで販売していて、前回来られた時は全米 2 位の音楽ストアということだったが、今年調べるともう 1 位になっている
- 1 位が iTunes、2 位が Wallmart、3 位が BestBuy
- iTunes は 22ヶ国で 50 億曲以上売っているらしく、映画だけでも毎日 5 万本売れている
- 今年になってからは、さらにレンタルを開始し、5 月からは DVD 発売と同時にダウンロード販売の開始というように、ドンドン進んでいる
- やはり、Apple の成功の波紋は、放送事業者や映画会社に様々な行動を取らせるきっかけとなったのではないかと思っている
- ヨーロッパでテレビを見ているという人は、違法・合法は別にして、BitTorrent が多いのでは思う
- こちらは長らく MPAA、全米映画協会と裁判沙汰をやっていたが、2005 年の末に、違法コピーの撲滅を一緒にやろうということで合意して、翌年からワーナーブラザーズが BitTorrent と提携して、映画の P2P 配信をはじめた
- BitTorrent というのは、アメリカのトラフィックの半分を占めている P2P で、違法な利用もされているが、本格的に利用されていくという話になり、それをきっかけに映画会社やテレビ局の提携も BitTorrent で始まっている
- 2007 年の 2 月に、BitTorrent Enterteiment Network として、有料のダウンロード配信をしようと 35 社が参加している
- もう一つの流れとしては、Joost という P2P のネットワークを利用したインターネット TV がある
- Joost というのは非常に秀逸なサービスで、格好のいいインタフェースを備え、まさにネットワーク上のテレビということに相応しい体裁となっている
- Joost の登場した衝撃は色々なところにあり、テレビ局さんにしろ、映画会社さんにしろ、これに乗るのか、乗らないのかということを迫られることになった
- Joost は元々 skype を作った会社の Niklas と Janus の二人が同じく作ったもので、Skype の前には、世界中で悪名をとどろかせた Kazaa という Napster よりも被害額が極大であった P2P ファイル交換仕様の考案者であった
- Joost を前にして乗るか、乗らないかで悩まれるとは思うが、Skype のメッセージは電話網などなくとも良い、Skype さえあればよいという話で、Joost ではテレビ網などいらないという、まさに世界ケーブルテレビであるという、そういう衝撃が走ったのではないか
- それに対応して、アメリカの NBC、イギリスの BBC の取り組みを紹介する
- NBC はアメリカ 4 大ネットワークの中でも、一番顕著に様々な動きをしているので、その辺りから話していく
- 元々は DirecTV と組んで、オンデマンド TV をやるという話をしていた
- しかし iTunes がテレビ番組をはじめると同時に、少し遅れて、参加をした
- 一年程で、NBC が 3〜4 割を売るというかなり高いシェアだった
- 翌 2007 年の 6 月に撤退を発表し、もう供給しないという話をして、直後に News Corporation とくんで、pull という YouTube 型の無料動画配信サービスのベータ版をリリースした
- さらに SanDisk と組んで Fanfare というサービスを開始するということを同年の 12 月に発表したり
- Pando Network という P2P ベンチャーと組んで NBC Direct を今年の冒頭から始めたり
- NBC はオリンピックを独占的にネットで配信していて、ユニークユーザで 5500 万人以上、配信映像で 7800 万以上に届いている
- また、先月には iTunes Store に復帰している
- iTunes から撤退したころの NBC と復帰した時の NBC では心の持ち方が違っているのではないか
- 今年はある意味、自信をもってマルチユースの一つとして、ネット配信を活用していこうとしているのではないかと個人的に思う
- 一方、イギリス BBC では昨年の 7 月 27 日から iPlayer という、Kontiki という会社の P2P 技術を使って、ダウンロードサービスを始め、今ではストリーミングサービスも始めている
- BBC がこれを出す前にはイギリスの iTunes Store がアメリカのテレビ番組の配信を開始していて、その 2ヶ月後に iPlayer が出た
- 今年になって BBC は iTunes Store にテレビ番組提供を始めている
- また BBC と ITV と channel4 の三つの放送局が共同で、Project Kangaroo というものを始めようとしている
- これは早い話が、全員 iPlayer に乗って、見逃し視聴サービスから、コンテンツのセールスまでやろうという話になっている
- さらに red bee media という、iPOC という言い方があるが、internet playout center という、日本で言えば J-STREAM さんの化け物みたいなものも始まっている
- Apple が成功したのは、なんだかんだ言って、放送局にとっては売上げが上がるし、翌日配信してみたら、本番のサービスにもどちらかというと良い効果があったという話
- BBC の iPlayer も見逃しサービス用のもので、一年やってみて成功したという話ではないかと思う
- これは確定した話ではないのだが、キャッチアップサービスライツというものが成立しているようだ
- キャッチアップサービスライツというのは、見逃し視聴サービスを放送局が行ってもよいということで、これが認められているらしい
- もちろん収益の配分はあるのだろうが、そうしたものが認められている
- channel4 は 100% 番組を外部調達している局なので、制作会社や元権利者がこれを OK しているということ
- これを受けて、Joost が BBC, ITV, channel4 を訴えた (参考 URI) という話がある
- IT の構図は今まで、Microsoft にせよ Apple、Google、YouTube、Joost、BitTorrent でも IT 系が従来の伝統的な事業者を追い込んでいくという構図だった
- この構図は反対で、Joost という極めてエクセレントなサービスを行っている所から泣きが入っているということ
- 実際 Joost は、先月から今月とサービス内容を見直し、方向を転換中で、これは私見だが、pull や iPlayer に押されて、採用技術を含めて転換を迫られているということではないか
- いずれにせよ、アメリカ・イギリス共に、伝統的な事業者の方々と IT 系の方々が完全に同じリングに上がって、大バトルを繰り広げている状況だと思う
- どこがどのように儲かっているかということはまだ判っていないと思うが、この後、こういう市場が存在するということを確信して、投資も含めて、全員本気モードという状況に来ているのではないか
- そんなこともあり、欧米ではデジタル系・インターネット系のみならず、本来の主役たる放送局・映画会社含めて、本番という状況ではなくやっている
- もうひとつ感じたこととして、iPlayer のサービスを他のニ局も使って、制作会社・出演者もいるのに、キャッチアップサービスライツということが成立している
- これらを見ると、イギリスの国策なのではないかと感じる
- イギリスのコンテンツ産業なり、放送産業なりが、Apple や Amazon、Google、YouTube にやられてしまうので、皆でちゃんとやろうと
- EU では P2P NEXT ということで、今年度結構な予算をつけたと聞いている
- 以下は完全な私見だが、ガタガタ言っていないで、早く皆でやらないとアメリカに、アメリカの IT 系に飲み込まれるだけだという危機感から、知恵を出してこういうことをやっているのではないかと思う
- 本プロジェクトは、日本のコンテンツ流通を考えることだと思うので、課題は解決しなければいけないが、何もやらずに放っておくと、やはり本気でやっているプレイヤーに飲み込まれてしまう
- 失礼な言い方かもしれないが、音楽産業はほぼ Apple の支配下に入ってしまったような状態になった訳で、同じように放送や映画がなってしまってはいかんということでこういうことをしているのではないか
- こんな動向で、ユーザを巻き込んで、本番をしてるということだと思う
- 従って、実証実験も大切だとは思うが、実ビジネスを色濃く念頭に置いてやっていただければいいと思う
岩浪委員からの発表は以上で、ここから取引市場データベース関連の意見交換が始まりました。
最初に村井主査から指名されたのは寺島オブザーバで、その発言内容は、次のようなものでした。
- データベースは、デジタルコンテンツの流通に必要不可欠であるデータベースを、民間の意思ある、リスクとコストを負担するものが立ち上げて、それに対する支援を頂くということ
- 前提となるのは、著作権が制作事業者にあるものだが、これは、度々ここで話しているように、非常に少ない
- 例えば NHK さんとは、ここ 6 年ぐらいの間に様々な形で話し合いを進めていて、最新の契約、制作委託に関する契約でいうと、我々プロダクションと NHK で制作資金を出し合い、お互いに、コンテンツ流通・二次展開まで含めてのスキームを持った共同制作というのが立ち上がっている
- 我々 ATP は、かつてアクションプログラムという、テレビ局と向かい合い、適正な契約と、放送産業・放送文化を促進していくための提言をした、アクションプログラムというものがあったが、それ以来なかなか民放さんとは相向かい合う契約はなかなか前進できずにいた
- 今後、我々の意思にもとづいてコンテンツの展開をしていく可能性が非常に少なかったという状況がある
- ただし、フジテレビさんでは、昨年以来、制作協力の番組であっても、二次展開権を局からプロダクションが譲り受けるということで話が進んでいる
- これは完パケ納品であっても、様々な理由で制作協力という契約になっていて、著作権がプロダクションで持てず、窓口権という形で局さんが 100% 二次展開権を持っていた
- 完パケ納品では制作情報と権利情報は全てプロダクションが持っているから、プロダクションが動かさない限り動きようがない
- リスクを取ってそれを動かし、収益を上げて還元したいという思いがあるところには、制作協力番組であっても、二次展開権を局からプロダクションが譲り受けるということで話が進んでいる
- さらに、今年の 6 月になって、フジテレビさんで、完パケ番組でなおかつ制作協力番組となっていたものを、著作権法を尊重して、発意と責任を持った制作者に、映画制作者に著作権を渡していくという話を、編成から ATP が承った
- これは私どもにとって 10 年来のありがたい話で、今の状況では非常に画期的な動きと思う
- ATP 全体として、この 10 月末に ATP の総意思で、それに対して細かい契約のあり方を含めて、対案を出していく
- 産業の不況などで、制作費削減が叫ばれており、制作・著作をプロダクションが持つということに関して理解のある局と、そうでない局がある
- 先進的なコンテンツ流通に不可欠な著作権の問題に対して、是非、一緒に取り組んでいただきたいと思う
- 基本的には、コンテンツを流通させるには、権利情報を誰が保存し、持っているかということになると思う
- 制作会社についてはこういった状況なので、著作権法に則り、我々も云々ということをしていくが、運用の問題として、コンテンツの流通の主体はどこになるべきかということを含めて、弾力的な運用ができればと思う
以上で寺島オブザーバの発言は終了しました。次に指名されたのは柏井オブザーバで、その発言内容は次のようなものでした。
- 私どものコンテンツマーケットデータベースは、EIZO創庫という名前にして、データベースを実験している
- 明日、10 月 15 日から運用を開始することになっている
- これはクリエイターズプラスのホームページから見えるので、時間のある方には目を通して頂きたい
- まず私どもの、私の会社イマジンと、こちらの寺島さんのテレコムスタッフ、それから、本日はいらしていないが、映像事業者共同組合の澤田さんが立ち上げられた東阪企画、この三社のデータ、番組、それから素材を入れている
- 後 2 社が実験に参加する
- 今後は ATP と映像事業者共同組合にはかって、そこの制作会社のデータベース化を実用化していこうと思う
- 今、寺島さんがおっしゃっていたように、我々が著作権を持っている番組は少ない状態にある
- これは「放送コンテンツの取引の適正化」という総務省のもう一つの検討委員会で、いつも言っていることだが、制作の発意と責任がある完パケ番組について、制作者に著作権があるという話が進められていると聞いているので、それをガイドラインにしっかり載せていって頂きたい
- そういうこともあり、我々はまず、自社に権利のあるものから載せていっているが、次は、我々の判断の中で、責任と発意があるものは、第二段階として、このデータベースに入れていくつもりでいる
- 基本的に、このゲートウェイを通して流通していくという形で語られているところはあるが、制作者が集まった会社のコンテンツのデータベースなので、制作会社らしい発想で、番組だけではなく素材も入れているので、横断的に、各社の持っている素材を、色々なアングルから再編成・再構成したコンテンツを作り、売っていくという実験も、合わせてやっていこうと考えている
- 私は、一番最初にこの委員会で話をしたとき、何故我々がデータベースを作るのかという原点に戻ったとき、なんとか、制作会社は自立をしていきたいのだと言った
- 先ほどまで、あるテレビ局の編成局長と一緒に居たが、今はこういう御時世なので、年末商戦として 100% 売れていなければいけないスポットもかなりまだ残っている
- 年が明けてどうなるか、本当にお先真っ暗だと言いながら、合わせて、制作費の問題ではご迷惑をかけると思うとおっしゃっていた
- 我々制作会社は、耐えることを学んでいる
- 逆にテレビ局の方々にお願いしたいのは、やはり、共に耐えなければいけない仲だから、テレビ局はやはり制作会社を育てることを是非忘れないでいただきたい
- 制作会社が育てば、テレビ業界がつぶれることはない、必ず評価されていくはずなので、そこだけはよろしくお願いしたい
以上で柏井オブザーバの発言は終了しました。次に指名されたのは佐藤委員で、その発言内容は次のようなものでした。
- フジテレビだけ誉めていただいてありがたい、ありがとう
- 制作に関する発意と責任がどこにあるか、企画に関わる発意と責任がどこにあるか、それが番組の命だろうと思う
- それは出来上がりの命でもあるし、その後の利用に関わる命でもあろうと理解している
- 取引の公正に関わる指導を公から受ける前に、フェアな契約体系に入っていって、お互いに助け合う関係を局と制作会社さんの間で作ることができれば
- より豊かな番組制作と消費者方に言っていただけるのではないかと思う
以上で佐藤委員の発言は終了しました。次に指名されたのは元橋オブザーバで、その発言内容は次のようなものでした。
- 岩浪さんから大変刺激的な説明をいただいた
- 日本もグズグズしていられない、アメリカが頑張っていて、それに負けじとイギリスも頑張っているという話だったと思う
- 先ほどの資料の中に、NHK オンデマンドと、まだサービスを開始していないにも関わらず、他社民放さんのサービスの仲間に加えて頂いた
- 若干 PR めいた話になって恐縮だが、12 月 1 日からスタートできることになった
- 放送法改正や、産業界・視聴者の皆様からの色々な期待を頂いてのスタート
- 当然民放各社さんも同様のサービスをやっているが、我々は後発ということで、むしろ新しい市場を積極的に開拓していこうとしている
- 先ほどから話題になっているように、キャッチアップ、見逃しということを、放送の翌日から一週間程度提供していこうということをやる
- 過去に放送した人気番組も、初年度 1300 本程度ラインアップして、スタートすると予定している
- 料金体系等はまだ公表できる段階ではない
- オープンな、PC ネットワークを対象としたサービスだけではなく、アクトビラさんやNTTさんのひかりTVとか、JCOM オンデマンドとか、高画質のプラットフォームを使い、ハイビジョンクオリティでもオンデマンドで提供していくということを当初から想定している
- やはり日本という非常にネットワーク環境が進んだ中で、ユーザの皆さんが非常に優れたネットワーク環境をお持ちで、しかも端末も 40 インチ、50 インチという、高画質の大画面テレビが普及している中、オンデマンドサービスをやる以上、放送と同等のクオリティのコンテンツ・番組にニーズがあるだろう
- コスト・その他、非常に課題は多いが、やはり PC だけでなく、ハイビジョンクオリティのオンデマンドサービス、テレビ端末を中心としたサービスも当初からサービスしていくべきだろう
- 先ほど、海外はこれほど進んでいるという話があったが、日本も負けずに積極的にやっていきたいと思っている
- P2P はどうなのか、番組を限定せずにもっと放送でやっているものを全てやったらどうなのだと、私どもも今回インターネットサービスを拡充するにあたって、視聴者の方、あるいは有識者の方から意見を頂戴するということを先月やった
- その中でも、新しい技術を積極的に使っていくべきだとか、無料にして受信料の中でやるべきだとか、あるいは日本国内だけを対象にするべきではなくて、もっと広げていくべきだとか、色々なご意見があった
- そういうのはひとつひとつ、ある意味ではごもっともだし、ある意味では、今の制度とかコスト構造、ビジネス構造の中では御無体なという部分もある
- 色々な技術の進歩とか、ビジネス上の色々な課題は、色々な事業者の方々と一緒に解決をしていきながら、できるだけ、デジタルの恩恵を視聴者の方に還元していくのが放送事業者の務めだろうと思っている
- 始めるということだけで満足せず、積極的にこれからもやっていきたいと思っている
- 大前提として、私どもだけでできるわけではなく、放送番組制作には権利者の方々の理解・協力がないとできない
- キャッチアップサービスとか、膨大な番組数のオンデマンド展開に至る途中経過として、長い間、真摯に交渉に向き合って頂いた
- 必ずしも全ての権利者の方に満足いただける妥結内容となったかは判らないが、共に、新しい試みに乗り出していこうということで、協力していただいて、信頼して頂いている
- その信頼関係を崩すということは、オンデマンドサービスができないだけでなく、肝心要の放送番組も作れなくなってしまうことを、権利者と放送事業者だけでやるわけでないということを、視聴者・利用者の皆様、あるいはネットワークの様々な流通に関わる皆さんも是非、了解、理解を頂きたいと思う
以上で元橋オブザーバの発言は終了しました。次に指名されたのは椎名委員で、その発言内容は次のようなものでした。
- 流通円滑化方策として、権利者団体はまず一義的に、集中管理の推進ということがある
- 結局その集中管理で何をやるかというと、名簿を作り、その管理をしていく
- そしてコンテンツに関するメタデータで上がってきた名前と名簿をぶつけて、使用料を計算していく
- 基本的には音楽で培った部分のノウハウがあるので、最大限データベースに協力していきたい
- この前提として、番組制作者が著作権を持つということが前提として置かれている
- これは前回のトライアルの際にも申し上げたが、放送事業者さん一生懸命協力してくださいねと申し上げておきたい
- 岩浪さんのプレゼンでちょっと思ったのだが、インターネットに流れていくのは、ヨーロッパではまだ SD で、ハイビジョンということは無いのだと確認したい
この質問に対して、岩浪オブザーバから次のような回答が行われました。
- そこはマチマチ
- インターネット上の HD と放送のはサイズも何も桁違いだが
- ダウンロード型の販売モデルでは高画質
- ストリーミングは低画質で無料モデル
- 明確に分かれてきていると思う
以上の回答を受けて、椎名委員から引き続き次のような内容の発言が行われました。
- ヨーロッパでは、HD の放送が始まったのはイギリスや一部だけであって、これから HD 放送が始まったとき、技術的保護手段がこれから起きてくるという話をちょっと聞いた
- ヨーロッパで日本より進んでいるところもあるが、日本と同じ議論がまた起きてくるのかなと興味深く拝見させていただいた
以上で椎名委員からの発言は終了しました。ここで、村井主査から、取引市場ワーキンググループからの報告内容が「対価の還元」のテーマでまだひとつ残っているが、残りの時間が少なくなってきているので、データベース関連の話は終わりにしたいとの発言がありました。
これに対して、どうしても話しておきたいことがあると希望する人はいなかったので、「対価の還元」のテーマに話題が移りました。最初に行われたのは小笠原課長からの配布資料の説明で、その内容は次のようなものでした。
- ごく簡単に、資料 2 の表題は「諸外国におけるコンテンツ振興政策」となっている
- 課題になっている対価の還元対象は一般のクリエイターとなっている
- そこで、放送コンテンツを含めた、コンテンツ全体のクリエイターに対して、何らかの政府系の振興策・支援策というものがあるだろうと調べて、今の段階でまとめたのが資料 2 となる
- ワーキングの段階では、これにオーストラリアがあるとご指摘を頂いたが、今回は間に合っていない、申し訳ない
- 名称はそれぞれ書いているとおりで、アメリカだけが他の国と違い、コンテンツ一般に対する支援策は国としては見出せなかった
- あくまでも教育という特殊な分野について、教育省がやっているということで、本質的にはフランス以下の諸国と異なる
- フランス・イギリス・EU・韓国等について、支援概要のところでマチマチな書き方をしているが、支援対象はコンテンツの制作者とされている
- この制作者が個人・法人を問わずなのか、ちょっと調べきれていないが、あくまでもコンテンツの制作者となっている
- コンテンツの対象はフランスや韓国のように映画と放送番組、双方の場合と、EU のように映画だけの場合がある
- 何を財源としてやっているかということだと、フランスでは特定の事業分野の方々に負担を求めて、そこから制作者に還元するという仕組みになっている
- イギリスは案と書いてあるように、制作者に対する、放送コンテンツ制作者に対して支援を考えるべきではないかということで、議論されはじめているということになる
- EU の場合は、映画と銘打ってあり、財源は EU の一般会計予算ということになっている
- 韓国は放送番組支援ということで、これもフランス同様に、特定の事業分野の方々から負担金という形で求めたものを配分しているということらしい
- 共通点としては、あくまでも番組制作者、映画制作者に対する支援として国として支援措置を設けている例がいくつか見られた
- この資金は税金の場合もあれば、特定の方々の資金負担となっている場合がある
- 今日は非常に簡単なところだが、詳細が判明し次第、逐次報告をしていきたいと思う
以上で小笠原課長からの説明は終了しました。次に行われたのは中村委員からのワーキンググループでの検討状況の報告で、その内容はつぎのようなものでした。
- 諸外国における振興政策で、まずワーキングでは今説明があったような紹介があって、議論を行って頂いた
- そこでは、そもそもこういう政策について「コンテンツの振興政策も広義の対価の還元であるけれど、個々のクリエイターへの対価の還元に直結するものではないのか」という意見があった
- その指摘にもとづいて意見を頂いたところ
- 「様々なアプローチがあることが必要であって、コンテンツが流通しやすい仕組みが必要でないか」とか
- あるいは「制作会社、現場に対価が還元・分配されることが必要であり、それがひいては実演家への対価の還元につながる」とか、
- さらには「コンテンツ制作会社への対価の還元が重要ではあるが、私的複製の対価の還元とは切り分けて考えるべきではないか」という指摘があった
- これらの指摘を踏まえて、クリエイターに対する対価の還元を聞いたところ
- 「パブコメにおける意見でもあるとおり、関係省庁でしっかりと連絡・連携・協議をして進めていただきたい」という意見
- あるいは「こういうことは何でも、安ければよいということではなく、コンテンツ産業として伸ばしていく」という前向きな意見
- さらに「コンテンツがタダだという感覚が蔓延していて、なかなか有料のビジネスが立ち行かない、そういった考え方に対する啓発が重要だ」という意見があった
- さらに、対価還元について議論をするのであれば、ルールの立場から関係者をメンバーに加えて議論をするべきじゃないかという意見があった
- いま申し上げたような議論を踏まえて、今後の進め方は、まず、諸外国のコンテンツ振興政策、こういった政策が直ちに答申で提言している対価の還元策となるわけではないが、こうした振興政策を考えていくことも重要だという指摘も多く見られた
- 引き続き調査を行って、ワーキングで議論をしてまいりたいと思う
- 対価の還元に関する方策については、様々な立場の関係者による議論が必要だと考えているので、進め方についても議論を進めて行きたいと思う
以上で中村委員の報告は終了しました。この後、「対価の還元策」に関する意見の交換がはじまり、最初に村井主査から指名されたのは椎名委員で、その発言内容は次のようなものでした。
- 対価の還元ではありえないという話はワーキンググループでも申し上げたので、繰り返しになるが、対象としているのは団体や制作者である
- 今問題になっている部分は、文化庁での補償金制度の議論であるとか、自民党でのネット法・ネット権の問題とか、知財本部でのフェアユースの議論に至るまで
- クリエイターの私益や私権を制限しようという話が目白押しである
- 一方、第四次・第五次答申で言う、還元するべき対価というのは、私的な複製にかかる利便性という、いわば消費者やメーカの私益に対して、クリエイターの私益をどのように調整するかという話である
- あくまでも、個々のクリエイターにどのように還元されるかということが大きな前提となると思う
- やはり制作者にお金がいけば、結果的にクリエイターに通るじゃないかということは言えるかもしれないが、あくまでそういう形になっていて、私益の調整というフォーマットにはなっていない
- こういうことをやっていくこと自体は良いと思う
- 聞くところでは、EU のものだけで 7 億ユーロとか、フランスだけで 5 億ユーロとか、日本の状況を比べると腰を抜かすような数字がある
- いわゆるコンテンツ振興施策という、これはこれで別の議論としてあってしかるべきと思うが、これをもって、第四次・第五次答申に出した対価の還元にはならないということだけは申し上げたい
以上で椎名委員の発言は終了しました。次に指名されたのは寺島オブザーバで、その発言内容はつぎのようなものでした。
- 前回のワーキングを欠席したので、細かいニュアンス等は今の中村主査の発言から汲み取って、推測する
- これが議論に上ったことは、私たち制作者の連盟である ATP としては大歓迎
- もちろん、椎名委員がおっしゃるとおり、個人への還元ではないので、私的録画に関するものの制度とは切り分けるべきと思う
- ちょっと卑近な例となるが、先日週刊誌に、我々の仲間のプロダクションの社長が、経営難を苦に首を吊ってなくなったという記事が出た
- 本当に、直近の金融不安での、来る不況は置いておくとしても、ここに来て、産業構造としてテレビの産業がシュリンクしてきている
- どの、各局さんも含めて、制作費削減を我々プロダクションが求められている中で、こういう形で国がある種の施策を話してくれることは、決して反対するものではない
- 今の状況で言うと、我々のプロダクション、制作事業者は本当に苦境にさらされていて、次のああいう犠牲者が出ないとは限られない状況だと思う
- テレビ産業を支えている我々制作事業者は既に案内の通り、大体 70% ぐらいの番組、報道番組も含めて、我々制作会社の人間が参加している
- そういう意味で、テレビ番組、テレビ産業を支えている我々制作事業者がどうやって今後本当に生き延びていくかということを、国として、コンテンツ配信の潜在能力やバックグラウンドをどう考えるかということになると思う
- この間の、上期のドラマの 2H ドラマ、スペシャルドラマと呼ばれているが、これの制作率はほぼ 90% がプロダクション制作という数字が出ている
- そういう意味で言うと、この放送産業がシュリンクしていく中で、社会的にもテレビの未来は無いとか、明日は無いとか、放送局が再編されるよとか
- 片や、テレビは見るものがないよねという言い方の中で、放送局さんは段々放送事業から放送外収入に軸足を移していく
- 我々は本当に制作能力、制作力だけで食っている労働集約型のプロダクションが今後どうなるのかということは、一産業、我々零細なプロダクションの一事業部門がヘタっていくという話ではないと思う
- このままでは、テレビ産業とか、テレビ文化というのは、かつて、本当に華やかな、多くの人々から、情報の伝達、もしくは文化の発信の担い手として、担っていたテレビというものが消えていくのではないかと思わざるを得ない
- 私ども ATP は昨年度から、これは何度も言っていることになるが、テレビルネッサンスということを掲げている
- これは、広くテレビメディアの復権を求めて、その、クリエイティブ能力を維持・拡大していきたい
- このことで、いまさらテレビルネッサンスなんて時代遅れだとか、浮世離れしているとか、何をいまさらテレビにしがみついているのだと言われる筋もある
- やはり、コンテンツの制作能力を、国として、産業として、国として維持していくのかという思いだと理解頂ければと思う
- 幸い、ワーキンググループ主査の中村さんの「放送文化」の論述によれば「わが国、映像生産量の 90% はテレビが生産している」「金額ベースでの 60% 弱」「これだけの能力があるものが、もっと勇気を出して、新しい形に一歩踏み出すべきだ」とある
- これは、放送局に対する意見でもあるのだろうが、私は身びいきで、プロダクションに対する熱いエールだと思っている
- まだテレビを作る、映像コンテンツを作る力が、テレビ局周辺、プロダクションにある間になんとかしなければ、このままでは崩壊の一途たどるという思いでテレビルネッサンスという提言を掲げている
- だから本当に、「運命共同体」とこの間私は口走ったが、我々とテレビ局さん、それから広告代理店さん、様々な通信事業者さんも含めて、このテレビに関連して、一緒に新しい夢を語っている方々と相連携して、新しいテレビのありようを真摯に向かい合っていきたい
- その際に、ある程度放送番組制作ということに重きを置きながら、コンテンツ振興策を国が施策として議論していただくことは、是非進めていただきたい
以上で寺島オブザーバからの発言は終了しました。次に指名されたのは佐藤委員で、その発言内容は次のようなものでした。
- 今寺島委員のおっしゃったことはまったくその通りであえて付け加えることはまったくないぐらいと思う
- コンテンツの流通を考えるだけでは、コンテンツの制作に繋がらないというケースがママあるということは、放送側も、制作側も、実演家の皆さんも概ね了解いただけているのではないかと思う
- とりわけ、クリエイターへの対価の還元という関連で、もう一度話を持たせてもらうと、商業的に制作されたコンテンツが消費者によって享受された場合、何らかの金銭的対価が制作者・権利者に還元されるのがコンテンツ制作・流通の基本
- それは、視聴についても、無料広告放送であれば、視聴者は広告を見るという行為で対価を払っているし、有料のコンテンツであれば、お金を払って見るということが当然の前提となっている
- したがって、複製物を見るので保留するということになると、今までは完パケで売っていた DVD が買われなくなってくるということがある
- もちろん私的複製の権利というのは当然あるという考え方だが、それはあくまでも私権が制限された範囲の中にあるということ
- コピーの在り方を議論するにあたっては、その反対側にある、権利者が受け取るべき、制作者が受け取るべき権利に対して、どのようなお金の流し方をしてくれるのかという議論が伴わない限り、非常にバランスの悪い話になってしまうのではないか
- こういう議論が、当然バランス論として議論できていないと、コンテンツ大国を目指すという話がいくら出てきても、なかなか信用できない議論だと考えている
以上で佐藤委員からの発言は終了しました。次に指名されたのは伊能オブザーバで、その発言内容は次のようなものでした。
- 今、コンテンツの流通を考えることは、制作を考えることだという意見があったが、まったくその通りだな思っている
- 一方、通信事業者としての私の方から考えると、出口を増やすということも、もうひとつすごく大事なこと
- 自分の生活を省みるに、家にいて、テレビを見るという時間が物理的に非常に限られてしまっている
- 特に、若い人たちはこの 6・7 年の間に外出時間が 1 時間ぐらい、1 時間以上伸びているというデータもある
- そういう意味で、コンテンツの流通と制作ということを考えた時、ウィンドウとしてのいわゆるテレビだけではなく、色々なものに、もっと出前をしていくというような、そんなことも考えなくてはいけないのではないか
- もう一つは、流通ということを考えた時、パッケージとなった、番組となったものだけではなく
- 制作段階で惜しくも捨てられてしまった、編集されてカットされてしまったものも、シーン毎にメタデータをつけたり、その中身をきちんと記述するようなことをして
- もう一度、別な形で他のメディアにも合う形で作り直せるように、権利の問題、出演者の問題、当然あるのは承知しているが、一度製品になったものだけでなく、半製品ももう一度、別の形で世に出すということも含めて考えていくべきなのではないかと思う
以上で伊能オブザーバの発言は終了しました。次に指名されたのは長田委員で、その発言内容は次のようなものでした。
- 私は放送コンテンツの制作取引の適正化の促進に関する検討会に出させていただいている
- そこが 9 回開催された中で、放送が、テレビ放送が始まって以来の放送局とプロダクションの関係や、色々な話を伺っている
- その中には、非常に厳しい条件の中での取引が現実にあった
- そして今、まだまだ適正化しなければいけない課題がいくつかあると整理されつつある
- 色々な意見があると思うが、何よりもまず、放送コンテンツが制作されたところで、きちんと、適正な対価の還元が行われ、それが実演家の皆さんにきちんと配分されているというところから始めなければいけないのではないか
- その適正化を始めて頂かなければいけないのではと強く思っている
- それは、放送局やプロダクションの皆様、色々な方々の努力で是非改善していただきたいと思う
以上で長田委員の発言は終了しました。この時点で、既に終了予定時刻を過ぎていたので、村井主査から「どうしても、これだけは言わずに終われるものかという意見のある方がいれば、どなたか」との発言があり、それを押してまで発言を求める人は居なかったので、ここで意見交換は終了しました。
最後に村井主査から、以下の内容のまとめが行われました。
- 最初の技術検討ワーキンググループに関しては、今日頂いた意見と方向で検討を進めさせて頂きたいと思う
- この中間報告や経過に関しては、取りまとめてこの委員会で報告させて頂きたいので、ワーキンググループのメンバーはお忙しいところ恐縮だが、具体的な改善策の提案をよろしくお願いする
- 取引市場ワーキンググループに関しては、本日色々な指摘と報告を頂いた
- 対価の還元に関しても、様々な角度から議論を進める必要があるということもご指摘いただき、これは色々な形での議論がありうると思う
- まずそのためにも、ワーキンググループでの議論すべき視点や進め方を整理していただく必要があるかと思う
- これは、中村主査の方でよろしく運んで頂きたいとお願いする
- 委員の方も、メンバーの方も、よろしく議論を進めていただきたい
- 今日も、課題や意見をお持ちの方がいらっしゃると思う、また議事の進め方、ワーキンググループでの検討の進め方にも色々と意見がいただけるかと思うので、そういったことを事務局の方に伝えていただければと思う
以上で村井主査からのまとめは終了しました。この後で、事務局の小笠原課長から「両ワーキングについて、今の指示に従って進めさせてもらう」「11 月の委員会は、また事務局から知らせたい」との発言があって、今回の会合は終了しました。
◆◇◆
色々と感想はありますが、とりあえずエンフォースメントに関する村井主査の報告内容についてです。
前回の高橋委員の指摘を受けてなのかどうか判らないけれど、アンケートを取りたくないかのような気配 (「調査の仕方としては色々ある」とか「指摘された項目は大体リストアップされて俎上に乗っている」とか) が伺えました。
現在、アンケートを取ったとしたら、まず間違いなく「コピー制御の存在自体」に対するストレスが一番目に来ると予想します。
この委員会で検討されている「B-CAS」の存在でも「スクランブル」の存在でもなく「コピー制御の存在と、アナログ放送と比較しての利便性低下」が最大の不満点となるだろうと考えます。
もしもそのような結果が報告されると、それはこの委員会の最大にして (とりあえず現時点では) 唯一の成果である「ダビング10」が成果でもなんでもなかったということを浮き彫りにしてしまい、委員会の存在自体が疑問視されることになるのではないだろうかと考えてしまいました。
なので、調査を行うことを自体を嫌がっているのではないかと邪推しています。
消費者団体代表委員 (河村委員/長田委員/高橋委員) が B-CAS とスクランブルだけを問題視して、コピー制御を問題視していないのもその辺が原因なのかもと邪念が止まりませんでした。
以上の話は全て妄想で、邪推なので、根拠のある話ではないことを断っておきます。
◆◇◆
で、椎名委員の「対価の還元」をテーマに意見交換が行われていた際の「私益と私益の衝突であり、権利者の私益が制限される以上、利用者の私益を犠牲とすべきである」という発言に関してです。
非常にシンプルな、出発点レベルでの誤解があるように感じました。
著作権法第一条を読めば判るとおり「文化の発展に寄与するため」著作者の権利を法的に保護して、利用者の利便性を制限して、創作にインセンティブを与えようというのが著作権法の出発点になっています。
椎名委員が著作者の私益制限の一例として取り上げた知財本部でのフェアユース論は、現在の過剰な権利保護が著作物の利用に制限を加えすぎていて、むしろ文化の発展にマイナスに寄与しているので、バランスを取るための規定が必要なのではないかという観点から検討されている話です。
著作権法が「著作権法」という名ではなく「コンテンツ流通事業者・制作者団体保護法」という名で、「コンテンツ流通事業者および権利者団体は至尊にして絶対の存在であり、これを保護し、規模を拡大させていくことは正義である」という規定があるのならば、椎名委員の発言にも説得力がありますが、そうでない以上、著作権法第一条との調和が優先されるのは仕方がないことだと考えるべきでしょう。
そういう意味で、フェアユース論に対して反対したり、フェアユース規定の導入に対して対価を要求するのは如何なものかと考えます。
私益の衝突の側面にのみ注目して「文化の発展に寄与するため」という目的を忘れるなら、それは権利者団体が自らの立つ土台を掘り崩すような行為であることに思いをめぐらすべきではないでしょうか。
私益の衝突ならば、民法のルールと、自由な契約と自由な市場で決着をつけるべき問題で、制度での保護を求めるのは筋違いだという主張も説得力を持ってしまうことに気がついていないのだとしたらそれは愚かなことだと思います。
10月20日(月) 地上デジタル放送のコピー制御強制手段に関する議論状況と対策 [この記事]
デジコン委員会の傍聴レポートを上げるという宿題が片付いたので、いちいち傍聴レポートを読んでいられないという方向けに、デジコン委員会等で公になり、私が知り得た範囲内で理解している B-CAS カード関連の議論の状況を書いておきます。
まず、大雑把に各委員の属性でまとめたスタンスを表にすると、次のような姿になります。
|
コピー制御 (ダビング10) |
B-CAS & スクランブル 技術と契約のエンフォースメント |
受信機規制の導入 制度エンフォースメント |
消費者団体代表 |
ある程度必要性を肯定する発言をしている |
コスト増加と参入障壁となっていることを最大の問題と指摘する発言をしている |
B-CAS カードとスクランブルを無くすために積極的に導入するべきと発言していたが、最近は批判を受けて少しトーンダウン |
家電メーカ代表 |
直接必要性を否定する発言はしていない |
問題視する発言はしていない |
特定のビジネスを守るために規制強化するのは如何なものかと消極的に反対する発言をしている |
放送事業者代表 |
必要性を肯定する発言をしている |
B-CAS カードおよび B-CAS システムのコスト負担が重いので、よりコストの安い方法を求める発言をしている |
B-CAS カード等のコスト負担が無くなるので、導入に賛成する発言をしている |
権利者団体代表 |
必要性を積極的に肯定する発言をしている |
ザル状態の B-CAS カードを疑問視し、より実効性のある方法を求める発言をしている |
現行 B-CAS カードよりも実効性のある手法と評価して、積極的に導入を求める発言をしている |
その他 (学識経験者等) |
ある程度必要性を肯定する発言をしている |
現行システムの実効性を疑問視し、より強度の高い方式を、破られるたびに導入していくべきと発言したことがある |
技術だけでは限界があるので、技術と制度を組み合わせて、より強固な保護を実現するべきと発言したことがある |
えーこういう状況を把握した上で、B-CAS が廃止されればバラ色の未来が待っていると思えるのだとすると、それは、その人の脳内は蝶々が飛んでるお花畑状態なのだろうと私は評価します。
コピー制御に関するスタンスを見ると判ると思うのですが、コピー制御が問題であると積極的に主張する人は、一人もいないのがデジコン委員会の現状です。国民の感覚からはかなり遊離していると思うのですが……こういう人たちがパブコメで出てきた意見に対して「議論の経緯を無視してる」「気にする必要はない」「委員会の議論に自信を持とう」と言いながら B-CAS の見直し作業をしているのに、状況を楽観視できるのはどーしてなのだろうとものすごーく疑問を感じます。
一応、この辺りの議論の流れを確認しておくと、次のような形になります。
- クリエイターがリスペクトされ、適切な対価の還元を受ける為に、無料地上デジタル放送で高付加価値な放送コンテンツを提供し続ける為に、一定のコピー制御が必要である
- コピー制御を守らせるためには、何らかの強制手段 (エンフォースメント) が必要である
- 現在、この強制手段としては、B-CAS カードシステムという、技術と契約のエンフォースメントが採用されている
- これに批判があるので、見直して、改善方法を検討しよう
これがデジコン委員会のコンセンサスであり、第五次答申であり、第六次答申に向けての議論の出発点であるわけです。
この状態で、B-CAS カードおよび B-CAS システムを批判することは B-CAS 以外の強制手段を検討しようという (「(北朝鮮のように)受信機規制しよう」とか「(批判部分を変更した)新 B-CAS を作ろう」とかの) 方向へ後押しする効果しかありません。実際、デジコン委員会での議論の流れも、その方向に向かっています。
無料広告放送のコピー制御が気に入らない人にとって最も効果的な行動は「コピー制御が必要である」という最初の前提部分を否定することです。海外事例を引く (現時点で無料広告放送にコピー制御を導入しているのは日本だけ) のも良いでしょうし、違法流通対策として全く役にたっていないことを指摘してもよいでしょうし、むしろ違法流通対策ならもっとコストパフォーマンスが高い方法があることを主張してもよいでしょうし、利便性を奪われて尊重しようという思いを持つことなどありえないという当然の事実を指摘するのもよいでしょう。
そういった声が、パブコメへの態度を見る限り彼らに届くとは思えませんが、少なくとも、黙っていて物事が良い方に転がることがない以上、声を上げていくしかないのではと考えます。
10月21日(火) こうして遵法意識が滅んでいく訳か [この記事]
ダウンロード違法化がとうとう著作権法に載りそうだという話が出ています。[URI]
こちらに関しては、池田信夫教授の時と違い、ソースが一次情報そのもの (津田大介さんは問題の委員会に委員として参加されていた方) なうえ、他にもそれを裏付ける報道 (「私的録音録画小委員会: “iPod課金”見送り ダウンロード違法化へ」[URI] が出ているので、疑いの余地はなさそうです。
あーつまりアレですね、コンビニに置いてあるコピー機 (公衆が利用可能な自動複製機器に関する私的複製の除外 : 第30条第一項第一号) と同じ。著作権法に書いてあることを守らなくても、処罰されることはありませんよと、法律を守らなくてもだれも咎めませんよという例をもうひとつ追加して、若年層から遵法意識を削いでいこうというわけですね。そういう意味では非常に効果的な、実に目的を達成するためにベストな選択肢だと称賛したいです。
しかも今回は、コピー機の場合とは違って刑事罰もなしと。まー罰則があっても処罰されない場合と、最初から罰則がなくて適用されない場合と、どちらが遵法意識にダメージを与えるか微妙ですけどね。
まー文化庁としては権利者団体からのウケが良くなれば国が滅ぼうが知ったことではないのでしょうが、まさか、こんな斜め上の結論をだしてこようとは。油断していました。
あー前回のパブコメには意見提出してなかったのですが、永田町で MiAU [URI] がデモやる時には参加することにします。こーゆー右や左の旦那方みたいなことはホントはしたくないのですが。
◆◇◆
事実誤認をしていたので訂正します。コンビニのコピー機は現時点では著作権法違反ではありませんでしたね。附則 第 5 条の 2 (経過措置としての文書および図画の複製に供するものについての例外) を見落としていました。
さらに追加訂正、公衆が利用可能な自動複製機器に関しても、利用者への刑事罰はなく、ただ違法であるという扱いでした。第119条を誤読していました。不正確な情報を書いてしまい、もうしわけありません。
10月22日(水) ダウンロード違法化で困る例 [この記事]
ダウンロード違法化でも、映画と音楽限定だし刑事罰もないし、実害は無いのではという意見があります。
さて、私は昨年の 6 月に、x264 や JM のオプション解説をしていた時期に「標準画像」[URI] という記事を書いたことがあります。
こちらの記事は、いわゆる標準画像と呼ばれる、動画 CODEC の論文などでサンプルとして共通で使われている動画ファイルを、どこから入手できるかという情報を提供しています。具体的には VQEG の FTP サイトおよび、xiph.org の VQEG ミラーを紹介していました。
ここで私が、xiph.org の中の人は、わざわざ VQEG の事前許諾とってミラーしてるわけが無いよなーと思いつつ [情を知って] 本家のサイトが偶々不調だったので、xiph.org のミラーからダウンロードした場合、どうなるでしょうか。
あるいは、x264-dev-ml を読んでいて、"kemeko-delux_02.m2t を rev.999 で subme 9 を指定してエンコードしてたら 30 フレームの 250 番目の MB で画像が崩れるんだ、ソースと結果をココに置いたから、誰か調べてみてくれないか" というメールを読んで、ファイル名から考えて、どーみてもアレの 2 話だよなぁと思いつつ、調べるために提供してもらったファイルをダウンロードしたらどうなるでしょうか。
こういったことが違法とされてしまうのは、私は困ります。実際には親告罪だし権利者も問題としない使い方だろうから、大丈夫だろうと自分にいいきかせつつ、遵法意識を削ってダウンロードするわけなのですが。
そういったケースはフェアユース規定が追加されれば、そっちで救済されるんじゃないかという意見があるかもしれませんが、いつ追加されるのか判らないフェアユース規定をあてにして、現時点でダウンロード違法化を受け入れるつもりにはなれません。
10月31日(金) 経済産業省 コンテンツ取引と法制度のあり方に関する研究会 (第2回) [この記事]
第4回の開催案内 [URI] も出ているというのに、いつになったら議事要旨の公開が始まるのだろうと思っていた、第2回の議事要旨がようやく公開 [URI] されたようです。
こちらの研究会の存在を私が知ったのは ITPro の「経産省がエンフォースメントや私的複製の議論を8月下旬に開始へ」[URI] や「経済産業省の『コンテンツ取引と法制度のあり方に関する研究会』スタート」[URI] 等の記事からでした。ダビング 10 関連のゴタゴタがあったり、総務省のデジコン委員会では家電メーカが制度エンフォースメントを避けようと四面楚歌状態だったりするので、JEITA が経済産業省に泣きついて開催されるようになったのがこの研究会なのだろうと邪推していました。
で、今回の議事要旨を読んだかぎりではどうやらその邪推は大当たりだったようです。いよいよ第2回ということで、民放連の方と JEITA の方が参考人として意見を聞かれたという回のようなのですが……ああ非公開でさえなければ傍聴したかったというところです。
とりあえず今回公開された議事要旨で気になったのは次の部分ですね。
放送事業者にとって、制度エンフォースメントのめざすところは、現行の技術・契約エンフォースメントを代替することであり、無反応機器対策が法律に明文化されること。ただし、「基幹放送」の権利保護の問題は、国民生活全体に関わるため、さらなる検討が必要。私的複製を越える複製や流通については著作権法で対処できる。
えーこの書き方から読み取る限りでは、放送事業者の意見として「違法流通は著作権法で対処できる」というものが出ていると。つまり、違法流通対策としてはコピー制御も制度エンフォースメントも必要なく、純粋に視聴者の利便性を下げる嫌がらせの為だけにコピー制御とその担保手段である制度エンフォースメントを求めているという内容が伺えるのですが……。
放送事業者自身がそういう認識なのに、どうしてコピー制御を止めることができないのか本当に疑問です。無意味なものに年間 100 億も投じて、得たものは視聴者からの憎悪と権利者からの不信。それでも続けるだけの価値が無料広告放送のコピー制御にあるのでしょうか。
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