日々の戯言
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11月7日(金) ソフト CAS の可能性 [この記事]
先月のデジタル・コンテンツの流通の促進等に関する検討委員会 (第45回) では、B-CAS の見直しとして、カード・チップ・ソフトの三方式で、現在の B-CAS に対して出されている批判の、どれが解決できて、どれが解決できずに残り、また、新たに発生する問題は何かということを比較していくという (当面の) 方針が示された訳ですが……正直な感想を言うと、ソフト方式が選択肢として出てくるとは思っていませんでした。
実は、ソフト CAS は既に技術仕様自体はある程度固まっていて、ARIB STD-B25 5.0版 [ARIB が公開している PDF への直接リンク] の第3部として、昨年から公開もされていました。
ですが、この方式は既存の B-CAS カードとは ECM のフォーマットに互換性がありません。もしもこれを採用するのだとすると、次のいずれかを選ぶことになります。
- これまでに販売してきた地上デジタル受信機を見捨てて消費者に買いなおさせる
- これまでに販売してきた地上デジタル受信機すべてで、ソフト CAS に対応するためのファームアップデートを行い、一斉に切り替える
- 放送事業者が送出設備を二重に持ち、既存受信機向けの放送と、ソフト CAS 対応受信機向けの放送を、物理チャネルを分けて並行して行う
最初の選択肢は、2011 年のアナログ放送廃止というスケジュールから見ると、ここで受信機の普及率を 0 にリセットすることになりますから、まず現実的ではありません。
二つ目の選択肢にしても、ソフトウェア改修のコストはどうするのとか、そもそもそんなことが可能なのかとか、物理的に対応できない受信機があればそれは見捨てるのかとか、アップデートに失敗したらどうするのだとか、地デジ受信機から撤退してるメーカはどうするのだとか、問題点が山積みで現実的な案には思えません。
最後の選択肢は……UHF 帯は空きが多いので物理的には可能かもしれませんが……そもそも当初の目的だった電波の有効利用とやらはどこへ……とか、送出設備を二重に抱えるぐらいなら B-CAS システムのコスト負担の方が軽いんじゃないかとかでこちらも現実的ではありません。
こういった事情があったためか、昨年末の時点で、ソフト CAS は導入が断念 [参考 URI] されています。
一応私はこの辺の内容を記憶していたので、現時点で可能な技術的見直しはチップ組み込み方式ぐらいだろうと予想して、10 月 7 日の内容 [URI] を書いた訳です。
ARIB STD-B25 5.0版 第3部を無視あるいは手直しをして、既存 B-CAS と ECM に互換性を取れる形としてであればソフト CAS の導入の可能性がない訳ではないのですが……その場合、本当に、ソフト CAS がセキュリティ的にゆるゆるの柔らかい CAS になりかねないので、現実的には採用されることはないだろうと予想しています。
◆◇◆
一応予告しておきます。今月 13 日のデジタル・コンテンツの流通の促進等に関する検討委員会 (第46回) も、傍聴希望メールは送信済みなので、聞いてくる予定でいます。傍聴レポートをあげるのは週末になってしまうでしょうけど。
11月10日(月) ARIB STD-B25 仕様確認テストプログラム [この記事]
バグ修正での更新です。ダウンロードは [URI] からどうぞ。変更内容は次の 2 点のみです。
- 修正ユリウス日 (MJD) から年月日に変換する処理にミスがあったので修正
- TS のパケットサイズ特定方法を変更 (tsselect 0.1.5 相当に)
最初の修正が影響するのは、B-CAS カードに書き込まれている通電制御情報を表示する場合のみです。通常の利用には影響しないので、特に困っていない場合は更新する必要はありません。
ARIB STD-B10 第2部 付録C の記述をコードに落とす際に一部ミスしていたのが原因でした。EIT を眺めて遊ぶ際に、MJD の展開処理から浮動小数点を除去してみて、旧コードの結果と比較している時に問題に気がつきました。
今回のコードでは、手抜きをして 2000 年 3 月 1 日以降についてしか、正しい日付は保証しない形になっています。また、月日を求めている箇所はそこそこ邪悪な処理になっているので、参照する場合は注意してください。
11月21日(金) デジタル・コンテンツの流通の促進等に関する検討委員会 (第46回) [この記事]
週末に作業が間に合わなかったデジコン委員会 第46回 の分の傍聴レポートです。結局開催から一週間以上経ってしまいました。今回の内容はワーキンググループからの検討状況報告では無く、第五次中間答申へのパブリックコメントでネット権・ネット法側から「偏った検討に基づくもの」「様々な立場のものから広く意見を聴取して」等の批判を受けての、ネット法および知財本部関係者からのヒアリングと意見交換 (……というかアウェーでの吊るしあげというか……) が主な内容でした。
議事自体は、次の流れで進みました。
- 村井主査からの開会の挨拶
- 小笠原コンテンツ振興課長からの配布資料確認
- 岩倉オブザーバ (デジタルコンテンツ法有識者フォーラム 事務局長 / デジタルコンテンツ利用促進協議会 事務局長) からの、ネット権・ネット法に関する説明
- 三尾オブザーバ (知財戦略本部 コンテンツ・日本ブランド専門調査会 委員) からの現状認識および問題意識についての説明
- 関本オブザーバ (NHK) からの、NHK オンデマンドに向けての、権利処理の実態説明
- 佐藤委員 (フジテレビ) からの、フジテレビでの見逃し視聴サービスの現状報告
- 椎名委員 (CPRA) からの、ネット権・ネット法に対する反対意見発表
- 堀委員 (ホリプロ) からの、エンターティメント産業に関する現状認識発表
- 以上の発表を受けての意見交換
- 岸上委員からの、AMD アワード受賞作品 内覧会の告知
- 村井主査からの、今後の検討方針に関する意見
- 小笠原コンテンツ振興課長からの今後の検討に関しての協力要請
- 村井主査からの閉会の挨拶
まず、最初の村井主査からの開会の挨拶ですが、今回からこの検討委員会に委員が追加されたということで、KDDI から 雨宮 俊武 委員 (コンシューマ事業統括本部 コンテンツメディア本部長)、パナソニックから 今井 浄 委員 (AVC ネットワークス社 副社長)、ソニーから 久保田 幸雄 委員 (業務執行役員 技術渉外担当) の紹介がありました。
雨宮委員は以前から、オブザーバとして参加していた方で、今回も出席していたのですが、パナソニック・ソニーからの両委員は今回は欠席とのことで、村井主査からの名前の紹介だけでした。
残りの挨拶部分と、資料の確認は飛ばして、岩倉オブザーバの発表から、議事を追っていくことにします。発表の内容は、次のようなものでした。
- 手元に配布しているパワーポイントの資料をベースに話をさせてもらう
- 私は、この秋に設立された、デジタルコンテンツ利用促進協議会、東京大学の中山 信弘 先生を会長とする会の事務局長を務めると同時に、昨年 1 月に発足したデジタルコンテンツ法有識者フォーラムという団体の事務局長も務めている
- 今日は両方の肩書で出ているので、両方の団体の動きを紹介しながら、デジタルコンテンツの流通の促進について、私共が考えたことをお伝えして、委員の先生方の検討に供させていただく
- まず第一の、デジタルコンテンツの流通利用促進法制の立法化の背景というところ
- これは私共の考えるところとして、デジタルコンテンツを法的にどう位置づけるかということと、現状がどういうところにあるのかというところを簡単にまとめたものになる
- 釈迦に説法ではあると思うが、デジタルコンテンツは著作権・著作隣接権・人格権・パブリシティ権等々、数多くの権利が重畳的に存在している
- 著作権法上、映画の著作物のように権利集中が進んでいるものもあるが、デジタルコンテンツに関しては、現行日本の法制上、権利集中はされていない
- 実務的にも、皆さまの努力はあるが、必ずしもすべてが進んでいるという状況にはない
- その結果、法律的には、全ての権利者から利用したいという同意を得られる法的保証がなく、また、これが仮に得られたとしても、権利処理にかかる手間は簡単ではない
- そのため「やっても仕方がない、面倒くさい」と考える方も多い
- デジタルネット時代における問題点として、これをどのように解決するかということが、10 年来の課題であった
- 次の言葉は、私どもの言葉ではなく、平成 19 年度の政府の有識者議員の提出資料にある言葉の引用となるが
- 「デジタルコンテンツの多くが」結果として、誰が悪いとかどうだとかいうことではなく、結果的に「利用されないで、死蔵されている」という指摘がなされている
- 結果的に、誰の目にも触れず、結果権利者にとって、利用されないことから、還元もされないという状況が厳然たる事実として、存在している
- このような現実の元で、そうしたコンテンツに関わる権利者の方々の実質的保護を、どうやってはかるのかが重要な事実であろうと認識している
- 他方、いわゆる海賊版、不正使用という問題も非常に大きい
- 一つには、ユーザにコンテンツを見たいというニーズがあるにも関わらず、適法に、適正な価格でこれが入手できないという現実の状況が存在する
- もしもこれが適法に、かつ適正な値段で利用できるということであれば、日本のユーザはきちんとお金を払って利用するのではないか
- ところがそうした利用ができないが故に、インターネットで勝手に流れているものを見てしまう、使ってしまうという現実があるのではないかと認識している
- 権利者を保護するという観点からすると、当然ながら不正使用・不正流通は取り締まらなければいけない
- これは私共まったく否定しない
- 不正使用を許してはいけないというのは大前提
- 他方、それを利用しているユーザのニーズを正しい形で満たすことが、実務的な行為として大事なのではないか
- つまり、ユーザが見たいと望んでいるのであれば、適法に、適正な価格でそれが利用できるような環境整備を行うことで、真面目な大半のユーザはそちらに乗り、海賊版、不正使用を行っている側にあえて向かうことはなくなるのではないかと私共は考えている
- きちんとした法制度を整備して
- 権利者にはきちんと還元して
- それがまた巡って新しいコンテンツを作るという再創造に繋がって
- 今は無名で、金のない、やる気のある次世代の情熱あるクリエイター達が、それならば私もまたコンテンツを作っていこうというインセンティブを持つように
- そういう風にモチベートしてあげて、我が国のコンテンツ産業をさらに発展させることができるのではないかと、こういう風に考えている
- では、これまでの取り組みはというと、役所においても、政府においても、実務を担当される民間においても、様々な取り組みがされてきている
- 特にこのデジタルコンテンツの流通利用に関する契約ルールの作成等で、様々な方々が本当に御尽力されている
- これは私共も非常に可としていて、決してこれらの努力を無にするべきではないと思っている
- ただし、それぞれの試みにおいて、それぞれの権利者の二次利用への考え方は、当然ながらひとつに決まっているわけではない
- 色々な見方、契約のされ方が存在する
- 契約ルールで合意ができている例もまったく無いわけではない
- 今日は関本さんがいらしているので、これから見逃しテレビの話をされると思う
- そうした意味では契約ルールで成立している例もある
- ただし、そうした合意や契約というのは、当事者間にしか拘束力がなく、我が国において、利用者・権利者・仲介役を担う業者、その人々に普遍的な強制力があるわけではない
- あくまでも、合意・契約をした当事者のみにしか効力は及ばず、合意・合意によって取り扱いは変わるし、合意を成立させるための努力もまた重複しておこなわなければいけない
- 先ほど指摘した権利処理の負担という問題は、この民間の部分的ルールでは解消されない
- あまねく、デジタルコンテンツの流通利用を促進していこうという観点を前提とすると、必ずしも一部の方々だけの話し合い、合意の形成努力では不十分なのではないかと私共は考える
- もしも、著作権法が抜本的に改正されて、このようなデジタルコンテンツの流通促進ができるような方向になれば、これは理想的である
- しかし、著作権法を抜本改正することは簡単ではないし、デジタルコンテンツの流通利用の促進についても、様々な視点が存在する
- だからこそ、このような会が開かれている訳で、これが簡単に実現できると考えるのは、現実的ではないと思う
- そういう認識は、ただ日本だけという訳ではなく、皆さんも御存じのとおり、アメリカやヨーロッパ、オーストラリアでも、これは議論されている
- 韓国でも、東アジア諸国でも意識している国がある
- 中国ですら、法制度や国家権力制度が全く違うところではあるが、こうしたものに対する意識はあると知られている
- そういう各国が、今後のデジタルコンテンツの流通利用を促進しようとしのぎを削っている中で、日本だけが取り残される状況になった場合は、それは大変な禍根を残すのではないか
- ということで、私共は、何らかの法制度を整備するべきではないかと考える
- 著作権法の抜本改正が出来ないのであれば、このルールに限って、デジタルコンテンツのインターネット上の流通利用に関する部分について、何らかの法制度を整備するべきではないか
- ある部分は、著作権法の現行制度を修正・改正・あるいは加えるものになるかもしれないが、その部分に限っての特別立法を考えるという方向の方が効率的ではないかと考えた
- 私の肩書のひとつである、制作大学院大学の学長である、八田先生を代表とした、デジタルコンテンツ法有識者フォーラムというものが、今年の三月に提言をした
- この部分、十分な説明ができずに、多々誤解を受け、あるいは不十分な理解にとどまっているところを非常に反省している
- 私どもが意図している目的は大きくあげると三つになる
- 一つは、権利者の方々には必ず正当な対価を払うべきであるということ
- 二番目は、ユーザの方々には、適法にコンテンツを利用できる環境を整備してあげるべきだということ
- 三番目は、ビジネス界で、コンテンツビジネスを適法に行う為、権利処理コストを省き、ビジネス上の萎縮効果を与えないような仕組みを法制度として整備すること
- 以上 3 つを目的としている
- 言葉が一人歩きをして、私共の説明が不十分だった点もあり、非常に批判を受けているのは認識している
- ネット権・ネット許諾権というものには、ネット許諾義務があると、私共当初から説明をしてきたつもりではあるが、どうもネット権という言葉だけが流通してしまい、非常に誤解を招いてしまい反省している
- また、ネット権を持つ十分な資格を持った方々として、テレビ放送会社・レコード会社・映画会社等々と書いたが、これは決してこれらの方々に限るものではない
- それなりのコンテンツビジネスをはかっていて、私どもが考えている義務を果たせる団体・会社であれば、それをさらに広げてよいと、当初から私共は申し上げている
- それらのネット権者は、ネット権と同時に、法律上要件を満たしたオファーを受けた場合には、必ずそれを許諾しなければいけないという義務を負う
- また、コンテンツが利用された場合に、関連する元の権利者に対して、適切な対価を支払う義務も負う
- そういったネット上でのコンテンツ利用を許諾する権利を持った者を、決めるべきと考えている
- ネット権者の例として、テレビ局・レコード会社・映画製作者をあげているのに対して、オールドメディアの方々にそのような権利を重畳的に与えても、抜本的な解決にはならないという批判や、権利者を侵害・制約するのではないかという批判があった
- 私どもの意図としては、先ほど申し上げた通り、オールドメディアに限ろうということはない
- 実際には権利者というよりも、インターネット上にデジタルコンテンツを流通させるために、十分な資格と義務を負っている方々と考えている
- それが、他の方々でもできるということであれば、その方々を通す形でも良い
- 色々な方々がデジタルコンテンツの利用ができるように、一種の仲介を行う方々をポイントとして決めたほうが、なんの話をするにしても便利だろうと考えたもの
- あくまでもこれは、権利者の権利を実質的に守る、つまり、利用されたならば必ず適正な対価が払われるということを担保するために、このポイントを決めたもの
- この部分は私共の説明が不十分だったと非常に反省している
- 実際、例えば実演家の方、アーティストの方と話すと「お前たちの提案は自分たちの権利を侵害するものだと思っていたが、聞いたところ、必ずそれを守ってくれるのはいいじゃないか」と理解してくれる方も増えてきている
- また、このネット権を認めてしまうと、権利者の様々な権利を制約してしまう、特に、勝手に使われるだけではなくて、色々な改版をされるのではないかという批判・懸念があげられている
- これについては、つい最近、条約上は問題ないということを学者の先生方に検証して頂いて、論文に出したのだが、本日は細かいところは話さない
- またいつか、それについて説明するなり、話をする機会を与えていただければと思う
- 著作権に関して、条約上認められている権利は、尊重していこうと考えているので、ネット権を創設する際にも、権利者の方々の名誉・評判を害するようなことを許さないという前提でこのネット権を構成・設計している
- 二番目に、先ほど申し上げた義務の部分について、利用した部分は必ずトレースができるというインターネットの特質を利用して、利用されたならば、それについての対価を払わせるということを保証するための責務・義務をネット権者に負わせるというのが私共の提案になる
- もちろん、一回あたりの利用料を合理的に対価を設定することが必要で、これをどのように設定するのか、その仕組みが決まっていないではないかという批判も受けている
- これは、既に JASRAC さんが扱っているような、従来の取り扱いを参照しながら、これは十分にできる、具体化できるというシステムを念頭に置いている
- コンテンツの利用に応じて、一回利用されたら必ず対価が入るということを保証する
- 実演家を含めた権利者の方々に、純利益からの配分ではなく、ビジネスから利益が出なければ配分しないという形ではなく、必ず対価を払うというグロスの形での補償を認めるということで、権利者の実質的保護を図る
- そんな夢物語が本当にできるのかという指摘について、それはもちろんやってみないと判らないことではある
- しかし、権利者の実質的な保護がはかれて、適法に、ユーザが容易に利用できる環境が整うとすれば、権利者の方々への創作のインセンティブとなるだろう
- 若手・無名のクリエイターの方々にとってのインセンティブになるだろうし、また、ネットビジネスが爆発的に伸びれば、それだけ権利者に対する対価がより多く支払われる形で、相乗効果となるだろう
- 誰にとっても、WIN-WIN-WIN の形でいくのではないかと考えている
- 三番目に、私どもが提言しているフェアユースの規定があって、これは、今年の知的財産推進計画、政府の 2008 年の計画に、フェアユースの方向性が掲げられていて、現在文化庁および内閣府の知財本部でこれをどうするのかという大変な議論になっている
- 指摘申し上げるまでもなく、インターネットあるいはデジタルコンテンツというのは技術進歩が非常に速い
- これに対して、法律を改正して、一つ一つ進歩した仕組みを適法化していくことは非常に煩雑である
- 典型的には、来年の著作権法ということで議論されているが、検索エンジンの問題がある
- 検索エンジンは、アメリカでも日本でも、1994 年からその萌芽があったが、結局日本では、未だに検索エンジンを完全に適法化する法制はできていない
- アメリカでも検索について、違法だと主張する方がいらっしゃったが、デジタル・ミレニアム・コピーライト・アクトが 1998 にできて、これは基本的に有用なものだということで社会に認められている
- このように、法律を改正していくというのは大変な手間と努力と時間がかかるので、権利制限条項を第30条以降で限定列挙する形で、これを逐一やっていくのでは、技術の急速な進歩に対応することができない
- 5 年後、10 年後には、当然のように新しいビジネスが誕生しているだろうけれども、もしかしたら 2 年後や 3 年後にも、現在は認識されていない新しいビジネスが生まれているかもしれない
- それをまた法律を改正して、適法かさせるということは手間がかかり、煩瑣ではないか
- それならば、フェアユース的な規定を置いて、フェアだと、合理的だと認められるものはその規定で救えるような規定を置くのが、ことデジタルコンテンツのインターネット上の流通利用に関しては必要なのではないか
- ネット権云々とは離れて、この分野に関してはフェアユース的な考え方を導入することが必要ではないかと考える
- ネット法に関しては、ある意味ありがたいことに、私共民間の人間が集まって提言したことだけれど、マスコミを含めて、大変な反響を頂いた
- 当然ながら賛成して頂く方もいれば、非常に多くの反対論も提起された
- そのうちの大きなものは、後ほど椎名委員からお話があると思うが、許諾権というのは実演家にとって最大のインセンティブであって、ネット権者が勝手に利用を許諾するという法制はけしからんという反対論がある
- また、ネット権者の範囲がオールドメディアに限られているじゃないかということについて反対される意見も多くみられる
- それらの意見の一部を資料につけておいた
- 後者については、先ほど申し上げたとおり、ネット法の立法趣旨、ネット権者が負うべき義務を十分に果たせて、制度によるデジタルコンテンツの流通利用が促進されるよう整備をする、その資格能力のある方であれば、ネット権者の範囲を拡大しても構わないと考えている
- また、許諾権が実演家にとって最大のインセンティブであるという意見について、これはある意味、私共もその通りだと思っている
- イエス・ノーと言える権利があるかどうかは、権利者・許諾者が持つ、交渉上の最大の力だと思う
- そこはどう考えるかの問題で、私共は、それはもちろん尊重しながらも、我が国にとって、デジタルコンテンツがインターネット上で、より利用、より流通されるように促進する為には、この部分を権利者の方々に理解して頂いて、その代り、必ず適正な対価が支払われるという実質的な保護がされるということで、その部分を理解頂きたい
- 現行法制がどうこうということではなく、あるべき法制度の立法論の問題なので、それについての価値観をどう見るかということにかかるのではないかと思う
- それについては、当然反対論もあるだろう
- また、ここで引用しているように、文化庁の山下著作権課長の懸念する意見もある
- 色々な考え方はあると思うが、その中で何が良いかということを考えていけばよいのではないかと思う
- もうひとつの批判は、具体性がないという部分になるが、これはこの資料にはあえて書かなかった
- ネット法を今日宣伝するつもりはまったく無くて、最終的によい結果になればよいと思っている
- 私共のフォーラムから、新しくデジタルコンテンツ利用促進協議会というのを、東京大学の中山信弘教授を会長に発足させた
- これは、ネット法の考え方も取り入れながら、反対論も十分にあると、この半年間でよく判ったので、現実にそれをどう進めていくか、まとめていこうという目的で設立したもの
- こちらの説明の中で、その具体化した考え方を説明したいと思う
- 時間が残り少ないので、急いで説明する
- デジタルコンテンツの流通促進法制に関する現在の状況はどのようなものかということで、まず、政府あるいは知財戦略本部での流れをまとめておいた
- 昨年の知財推進計画 2007 で、「最先端のデジタル・コンテンツの流通を促進する法制度を 2 年以内に成立する」と明文が置かれている
- それを受けて、今年の 2008 でも「最先端のデジタル・コンテンツの流通を促進する法制度を 1 年以内に成立する」と、2008 年度中にこういうものに対応した知財制度の在り方に結論を出すと明言された
- 知財本部では、三尾先生からの報告があると思うが「デジタル・ネット時代に関する知財制度専門調査会」の中で、近年のデジタル技術の発展や、ネットワーク化の浸透に関連した、知財制度の課題と対応の在り方に関する調査・研究を行うべく、合計 9 回もの会合が開かれている
- またその方向感が、パブリックコメントに掛けられている状況にある
- 政治の方では、自由民主党において、知財戦略調査会において、デジタルネット時代の著作権に関する小委員会が開かれている
- 私共もヒアリングの対象となり、椎名委員もヒアリングの対象となり、合計 10 回、この春夏に会合が行われた
- 椎名委員から、椎名委員の立場での説明があると思うので、こちらでは、そういう、デジタルコンテンツの流通促進法制をしていくべきということでなされた、ヒアリングを受けた有識者の方の発言を取り上げてみる
- 著作権者の側の立場である、「翼をください」を作曲された村井 邦彦 さんは「コンテンツのビジネスの世界では革命が起きている」のだと「この変革に対応しうるアクションを起こすことが大事で、これを導入することをやったらいいじゃないか」と
- また GDH というアニメを配給されている会社さんの、GONZO というブランドをお聞きになったことがあるかもしれないが、この石川社長は「我が国では 2 年間で民間の交渉をまとめるのは無理だ」と、そのため「ネット法を導入しないと日本はコンテンツの最後進国になってしまう」と、こういう発言がある
- それからサイオステクノロジの、喜多社長、この方はオープンソースの面で有名な方で、インターネット上でデジタルコンテンツの流通を技術的にトレースできるのかということを証言されて「正規流通するコンテンツの流通経路を全て把握・確認することは容易」だと、要するに適正な仕組みの中でこれをトレースすることは容易だと、また「違法に流通するコンテンツについても、技術的には全て把握することができる」と
- ただし、これについては、違法流通するコンテンツについて、全て摘発することは技術的には可能だけれども、その仕組みを作るのにコストがかかると発言されているので、正規流通と違法流通がまったく同じでないことは私共も認識している
- 私は文系なので全く判らないが、理系の方から、インターネット上でデジタルコンテンツが利用されれば、それをトレースすることは容易だという発言があったということ
- 次にドワンゴの川上会長、これはニコニコ動画を運営されている会社なので当然かもしれないが「既存のコンテンツを利用する前に、いちいち許諾を得る必要があるという制度ではなく、まず利用できるという制度があった方が良いのではないか」と
- また、タワーレコードの前社長で、日本でネット配信を導入されようとした、伏谷前社長は、ビジネスモデルができていないじゃないかということについて、「十分にできる」と、また、既に考えている人がいても、ビジネスモデルを公表するはずがないと
- 公表すればビジネスのネタを取られてしまうので、公表する訳がないので、発表されていないからビジネスモデルができないというのはあり得ないと
- むしろ、アメリカがデジタル・ミレニアム・コピーライト・アクトを 1998 年に成立させて、99 年から施行しているのに、もう 10 年経っているのに日本は何をやっているのかという発言をされている
- それらの意見を受けて、自民党のこの小委員会では、夏に中間論点整理案を出して「デジタルコンテンツの流通促進について、本小委員会としては、昨今のスピードの速い国際競争の元で、我が国のコンテンツ産業を早急に拡大していく為には、契約による対応を待つだけでは、時期を失することになりかねないことから、何らかの法的枠組みの構築が必要と考える」という中間論点整理案を出されている
- 最後に、本当に時間をとって申し訳ないが、私が事務局長を務めているデジタルコンテンツ利用促進協議会、これが今年の 9 月に設立された
- これは東京大学の中山 信弘教授を会長として、参議院議員の世耕議員、それから経団連の著作権部会長の和田社長と、角川ホールディングスの角川会長が副会長を務めている
- 特別顧問には資料に記載の方々がつかれて、この目的は、先ほどネット法を提言したデジタルコンテンツ法有識者フォーラムとは異なり
- それなりの提言を出したことによって、色々な問題が明らかになり、議論が促進したということで意味があったと自負しているが
- 賛成・反対が分かれているので、ネット法を押していこうというのではなく、現実に権利者の方々、権利者団体の方々、ビジネスをされる方々が乗れる、妥協できて現実化できる法制度を作ろうという趣旨からこの会が成立している
- 中山先生は、当然ながらネット法の論者ではない
- 現実に権利者の方々、権利者団体の方々、あるいは事業者の方々が乗れて実現できるもの法制度としてどうやったら良いのかということを追及しようということで作った協議会
- 先ほどのネット法での具体性が足りないという批判に対して、まだ、全員の了解を得て発表できるような段階ではないが、一つの案として
- 先日 JASRAC の加藤会長とお会いして、現実に皆が乗れるようなものであれば、自分たちがやっているシステムを利用してもらって良いと言って頂いている
- JASRAC は御案内の通り、Google YouTube とも合意が成立して、新しいスタートが開かれていると思っている
- 技術的にできるかという部分についても、電通さんが進めている、許諾コードを現実化させて、決してこれを強制するという意味ではなく、十分な編制ができるような協議を行って、適正な対価も決めて、それに乗せて
- 今簡単には利用できないのではないかということで、自粛されてしまっている部分を、皆が納得できるように回せる形を、こういうシステムを何らかの法制度の支えを得て進めていくことができればと、こう考えている
- ちょっと長くなって恐縮だが、駆け足で、私共が考えていること、それから今後目指しているところを説明した
以上で岩倉オブザーバの発表は終了しました。次に発表を行ったのは三尾オブザーバで、その内容は次のような形のものでした。
- ペーパーに沿って簡単に説明したいと思う
- このペーパーは二日ほど前に急遽、出してもらえないかという依頼を受けて作成した個人的見解で、雑駁なままなので、委員限りという趣旨で配布して頂いている
- まだまだ判らないことは多いが、私なりの考えとして、今思っているところをまとめてみた
- まず、目的として、デジタルコンテンツの誕生を、全体として活性化していく、業界や関係者団体、一致協力して早急にやらなければならないという問題意識は、皆共通ではないかと思う
- このあたり、異論はないだろうと考える
- それに対して現状はどうなのかというと、デジタルコンテンツは岩倉先生から説明のあったように、権利関係が複雑で、それぞれの権利者が、それぞれの立場での主張をしていて、なかなか権利処理が難しいということが、間違いなくあるであろうと考えている
- この後、椎名さんが発表されるように、それだけではないという点もあるのだろう
- しかしながら、そういった問題があったとしても、デジタルコンテンツが流通していないという現状は非常に由々しい事態である
- これ自体に反論される方は居ないのではないかと考える
- デジタルコンテンツ、デジタルの世界というのは、我が国が技術の分野で先端を走っている分野ではないかと考えている
- ブロードバンドも発達している日本が、これから世界に向けて優位に立つべき分野だと思う
- しかしながら、この分野で十分にコンテンツが流通しないということは、それ自体が、我が国の技術力を十分に活用できていないということなので、非常に支障となっていると考える
- なので、デジタルコンテンツを、現在流通していないが、これを流通させることが絶対に必要だと考える
- おそらくここまでは皆さんだれも御異存ないのではないかと思う
- それで、現状からさらに一歩進める形でデジタルコンテンツの十分な流通を、権利者の方々の納得いく形で進めることができるか、ここが一番難しいところ
- 従前の契約方式か、もしくは新制度の創設かと、ちょっと稚拙な表現で書いたけれども、今までの相対での契約処理のままで、このまま進んでいくとしたら
- それは長い期間をかけて、デジタルコンテンツの流通が非常に有用であると権利者の方々に判って頂けて、じゃあやってみようということになった時、既に時期が遅くなっているということがあるかと思う
- もちろん契約方式での努力は十分理解しているし、それは有効であるという風に思う
- しかしそれでは時期を逸してしまう可能性が十分にあるのではという風に私は危惧している
- なので、契約方式によるか、新制度創設によるのかというのはあまりに二者択一的、ドラスティックすぎるかとも思うが、今までどおりではいけないという認識は理解して頂きたい
- 仮に契約方式でいくということであったとしても、今までと違った形での、国が法制度を作るという形でなくても、民間で行うことになってもかまわないので、今までよりも一歩進んだ形で、時期を逸しないということを十分に想定して、取り組んで頂きたいと思う
- そのための手段として、報酬請求権化という文言をこのペーパーであげている
- これは一つの言葉であって、報酬請求権化してしまえば、その取り組みは早いだろうという素人的発想から書いたもの
- 必ずしも、こうしなければいけないということではない
- 十分にそのあたりを、権利者の方々や事業者の方々に認識して頂いて、取り組みを進めて頂きたいと強く思う
- 岩倉先生がいるのでアレだけれども
- 個人的には、ネット権を創設して、放送事業者にネット権を与えるということに、賛成してはいない
- 理由は色々とあるが、時間が無いので、今日はそこを省略する
- あくまでも、創作者である著作権者の方々が、権利を保有して
- 報酬請求権化できれば一番流通が早いかなとも思うが、差し止めが入っても、許諾権が入ってもかまわないと、限られた範囲でいいと思うが、とりあえず流通させる方向に向けると、皆がそれに向けて努力するという方向性を明確にして頂きたいと思う
- そういったことを意図して、この文章になっている
- 私の真意はそういうところにある
- コンテンツ産業の活性化、コンテンツの流通が発達することによって、既存の放送コンテンツを始めとした商品性が高いコンテンツと、これから新規にコンテンツを作ろうという製作者に対してモチベーションを与えることができ、コンテンツ全体として高度化するということになろう
- そういったことを含めて、デジタルコンテンツは流通させなければいけない、その方向で皆で考えよう
- その方策を、そういった方向性をとって欲しい
- 細部は色々あると思うが、やはり放送コンテンツはコンテンツ産業の中でも圧倒的中心で、皆が欲しいコンテンツ
- そういうコンテンツを持つ、放送コンテンツ業者の方々が中心となって頂ければ、コンテンツ産業が活性化するだろう
- 新しいコンテンツ、名の知れない者の作ったコンテンツは、あまり見たがる人がいない
- 場合によっては、タダでも見たくないかもしれない
- そういう人がいくら頑張っても、コンテンツの流通市場は活性化しない
- やはり、皆が欲しいコンテンツを持つ方々を中心として、全体としてのコンテンツ産業を活性化して、とにかくコンテンツ取引市場を形成して頂きたい
- これはどういった形になってもかまわない
- データベースを作り、権利を集約して、JASRAC のような形で取引市場を作るのが、私には一番理解しやすいが、それには限らないので、コンテンツを取引できる市場を作っていただきたい
- 具体的な料金や対価は、その方向性さえ決まれば、あとは皆の協議の中で、ある程度形が上がってくるのではないかと思う
- 方向性として、今の時期を逸することなく、デジタルコンテンツが、我が国のデジタルコンテンツを、取引市場において豊富化して欲しい
以上で三尾オブザーバからの発表は終了しました。次に発表したのは関本オブザーバで、その発表内容は次のような形のものでした。
- 三尾先生や、高橋先生とは「コンテンツ・日本ブランド専門調査会」で議論させて頂いている
- 今日は、12 月から始まる NHK オンデマンドでの権利処理について、具体的にどんな問題があるのか、どんな進行状況かということに絞って話をする
- いつも私には言葉が飛ぶ癖があって、誤解をまねくような表現が時々ある
- なので、ちょっと整理をして話をしたいと思う
- NHK のオンデマンドサービスは、大きく分けると二つ
- 見逃し視聴サービスという、放送した次の日から、1 週間程度流すもの
- 過去のアーカイブから流す、特選ライブラリサービスと呼んでいるもの
- これは基本的にヨーロッパ型の BBC モデルと言われている、BBC が考えたやり方を放送局として導入する
- 見逃しと過去で違いがあるのと、見逃しの中でも、実演家の方が出ておられるドラマや音楽番組と、ドキュメンタリーやノンフィクション系では若干違いがある
- いつもこれを一緒に話して混同を来しているので、ちょっと分けて説明させてもらう
- まず、見逃し番組として、12 月から始めようとしているけれど、大河ドラマが 1 月から始まるというのもあり、12 月中は 122 番組、1 月からは 125 番組ぐらいを見逃しサービスとして行う
- 見逃し番組としては、800 本から 100 本ぐらいが、常にネット上に流れているという形を考えている
- そのために今現場では、取材や権利許諾を取っているところなので、現時点では全部完璧とか、全部ノーだとか判らない状態にある
- これは 2 月や 3 月にならないと、本当の問題点は出てこないので、現時点で私共が考えていることだと理解してほしい
- 125 の番組を選んで権利処理をしていると、実演家の方々が出られるドラマや音楽番組、バラエティ等で、「ノー」だよと言われることもある
- しかし、これは「ノー」だと予め判っている方については、最初から出演交渉をしなければ良いので、コスト的にはなんの問題もない
- 見逃しに関してはこれから作るわけだから
- 最初から「ノー」だと判っている方に関しては見逃し番組の対象にしない
- あるいは大河ドラマを見逃しにするのだとしたら、そこには出演交渉をしないと決めればコスト的に労力はかからない
- 今、音事協さんや CPRA さんとか、色々な実演家の団体と話をして、団体間で協議は付いたので、その番組の中から 125 を選んでいるので、これに関してはそんなに苦労はしていないというのが現状
- 一方ノンフィクションに関して、これはやってみないと判らない
- ノンフィクション番組として、ドキュメンタリーや情報番組があるが、こちらは常にテレビに出てこられる方が出ているわけではない
- そのドキュメンタリーに向けて、ネタを探して、ふさわしい人が初めて出てくるというケースがあるので、これは正直やってみないと判らない
- 例えば、電話で担当者から「今度オンデマンドを始めるので、ネットについてもよろしく」と掛けさせているが、取材からのタイムラグがある
- このタイムラグの間に「ネットというのは色々なところで、変なことが起こるらしいよ」とその人が聞いたりして、ノーだと言ったと
- その場合どうするかというと、現場には、放送が優先なので、とりあえず放送だけ OK を取ってこいと
- ただし、ネットに関して、判りましたノーにしますとは言うなと、後で専門の人間が話しますからと言えと現場に指導している
- そういう意味では、ノンフィクション系がちょっと大変だと思っている
- いずれにしても、見逃し番組としては 125 番組、800 本ぐらいの番組が出ていくだろうという想定の元に作業をしている
- それから、過去の番組について
- こちらは見逃し番組とは違い「ノー」だと言っている方が既に映っているドラマがある
- そういうものについて、その方が「ノー」と言っている間は出せないという問題が確かにある
- それから、これはヨーロッパでも問題になっているが、権利者が不明の場合にどうするか
- これは著作権審議会でも是非議論をしてほしい
- EBU (欧州放送連合) でも著作権不明の場合に関しては、相当放送局から、簡素化して欲しいという要望が出ていて、この問題も確かにある
- 過去番組について、実演家さんが出ている番組でも、ちょっと難航しているところがある
- あるのだけれど、僕らの方では、今の時点で 1400 作品ぐらいの番組を選んで、そのうちの 1200 作品ぐらいはできそうかなと踏んでいる
- 12 月からできるかどうかは、大量に権利処理をしなければいけない為、CPRA さんや 音事協さんに大変お世話になって、ものすごい労力を使って頂いて、間に合うか間に合わないかという問題はあるけれど、1200 番組以上、多分 OK が出るだろう
- これは BBC が 5 年かけて権利処理した数よりも、われわれが 2 か月でやる方が大きな数字になる
- BBC も、過去番組では苦労をしている
- そういう意味で、全体状況としては、少なくともヨーロッパ並みのサービスができるだろうと、現時点では踏んでいる
- ただし、これが本当にそうなるかどうかは、2 月 3 月にならないと判らない
- 現時点ではっきりと申し上げるが、判らない
- 特にノンフィクションについては判らないので、2 月か 3 月にこういう会がもし行われれば、その時には、こんな問題があってという話ができるかと思う
- それからノンフィクションの時で、今ネット法の話がでているが、こういう時にどうするのだろうと話していたことがある
- 「ワーキングプア」という NHK スペシャルをやっていて、あの時、もちろん御本人は了解して出ていた
- で、評判になったので再放送をしようという時に、御本人は了解だったのだけど、御親戚の方を含めて、恥さらしなことをするなと言われて、御本人の方から、再放送を含めて止めてほしいと
- つまり、人権・プライバシーにかかわる問題が、ノンフィクション系では相当に出てくる
- こういうものはネット法だとどう扱うのだろうと僕らは話していた
- ノンフィクション系では、必ずそういう問題は出てくる
- 単にネットで出せるかどうかではなく、再放送できるかどうかという問題
- 今の法律では、例えば放送には同意しているのだから、再放送をしても問題ないと解釈できるけれど、御本人が止めてくださいとおっしゃっているのに、無視して出すということはなかなかできない
- 現実にはそういう問題がある
- そういった意味で、ノンフィクション系についてはちょっと微妙なところがあるが
- 現時点では、私共 NHK は、12 月から、ヨーロッパ並みの BBC がやっているようなサービスができるだろう
- ただし、フランスの ENA のようなあれは国立なので、BBC や NBC とは違う制度の国なので、ENA のようなことができるかと言われると、それはできないかもしれない
- しかし、世界の公共放送の中で、決して引けを取らないサービスができるだろうという風に、今のところは考えている
以上で関本オブザーバからの発表は終了しました。次に発表したのは佐藤委員で、その発表内容は次のような形のものでした。
- 新聞等で 10 月の終りに報道され、現実に 11 月 1 日から、放送中のドラマ 1 番組、それからバラエティ 1 番組を、見逃しサービスということでストリーミングでやっている
- PC 向けならびに、携帯向け含めて配信させて頂いている
- 始まったばかりなので、私どもと関本さんとでは、沢山出すというレベルがちょっと違い、苦労の度合いも違う
- 我々の体制も、NHK さんのような全面的な体制にはまだ至っていない
- 基本的には、見逃し対応ということで、インターネット親和性の高いユーザに向いたドラマを選んでやってみている
- どれぐらいの数字が出るのか、私共も、音事協さんも、CPRA さんも含めて、様子を見ようという前提で配信をしている
- もちろん見逃しということで、番組の中で見逃しがあると告知をしているのだけど
- 告知をしても、それは番組を見ている人なので、見逃しを買うかというと、なかなかそうはいかない
- 過去 11 月 1 日から始めたということもあり、ドラマは 10 月からの過去 4 回分をパックにして見て頂くという形での売り方と、シーズンパックという 1 クール分全部見てくださいという売り方をしてみている
- しかし、過去 2005 年からやってきているフジテレビオンデマンドの経緯から見て、見逃し対応をやることで、とんでもない結果が出るという期待が持てるかというと、そんなにすぐ結果が出るようなものではない
- まだ数字を正式に申し上げるような段階ではないが、キャッチアップサービスも有料ということになると、そんなに簡単なビジネスではなさそう
- ヘンな話、音事協さん、CPRA さんにまだ正式な形で説明をしていないので、こんなところでそんなことを言ってどうするのだと、言われてしまうとアレだが
- 権利クリアで苦労しているというよりも、流通をどうやって仕掛けるかというところで一番苦労している
- 流通が大きくならなければ、私共製作者の立場としてもそうだが、権利者さんにきちんとしたリターンが返せるレベルには至らないのではないか
- もう少し様子を見たところで報告したいが、フジテレビオンデマンドの、いつでもテレビ、どこでもテレビサービスについては、報告としてはそういうこと
以上の発表に引き続いて、岩倉オブザーバに対して 4 つほど質問をしたいとのことだったのですが、村井主査から、他の方の発表が完了してから意見交換の際にとのことで、とりあえず次の発表に進むことになりました。
次の発表者は椎名委員で、その内容は次のような形のものでした。
- 岩倉先生のプレゼンテーションは人の名前が非常に多いけれども、その中でも椎名、椎名と度々引用して頂いて、こんなに名誉なことはないと思っている、礼を言いたい
- ネットワークにコンテンツが潤沢に供給され、関連する産業が隆盛を極めるという状態を想定して、その状態を実現する為に、どのような方法があるのだろうかと考えるとき、なぜ、既存のビジネスモデルによって制作されたコンテンツばかりを対象にする必要があるのだろうか
- まずはネットを十分に熟知したものが、ネットの特性に合わせて作成したコンテンツを制作して、それがブレークすることによってこそその状態が実現されると考えるのが順当であろうと思う
- にも関わらず、このネット権に類する、権利の簡略化や切り下げの方法論によってそれを実現しようという議論が再三繰り返されている
- しかし、例えばネットに知見のあるはずの通信事業者の方々にコンテンツを自ら作成しようとしいう意欲が全く感じられなかったのは事実であって、これはこの検討委員会で再三指摘させて頂いている
- 今日ここで岩倉さんの話を伺って、そういう観点から言うと、やはり既存のコンテンツが大事だとか、急がなければ日本が沈んでしまうという話に終始していて、権利者からみると、あくまでも安価に効率よくコンテンツを調達したいというムシの良い話にしか聞こえない
- 岩倉さんの資料の 6 ページに山下著作権課長の発言として引いておられる「特別扱いを要求しているにすぎないのではないか」という部分は、そのあたりの事情を承知した人間としては極めて順当な発言であって、我々もまた、それに近い印象を持っている
- ネット法に関する主張に対して、実演家の考え方ということで本日配っている資料の 3 というものがあるが、これは 6 月 29 日の知財制度調査会におけるヒアリングの際に使わせて頂いた資料
- これを簡単に説明する時間が……ないので簡単に申し上げる
- まず、実演家にとって許諾権が必須のものであるということを説明している
- ここには書いていないが、露出のコントロールということを含めて、実演家のビジネスの中で、許諾権は非常にコアの部分になっているということを説明している
- 次に、既存メディアのコンテンツホルダーに権利を集中することで、ネットが進展するのかという点
- この点については、何か違ったことを伺った気がするので、あとで質問させて頂きたい
- それから、ネット流通の阻害要因は別にあるのではないかと、そこのページ以降、ネットの収益性の悪さが問題であって、そこを解決するのが先ではないですかという点について指摘をさせて頂いていている
- そうした点については本日の話では無かったと思うし、許諾権についても、よく判るけれど我慢してくれという話で、それでは議論にならない
- どうも話がすれ違っていると強く感じた
- 民間の努力では足りない足りないと繰り返し述べられている傍らで、今の関口さん佐藤さんのお話にあったように、NHK オンデマンドを契機として、実演家と放送事業者の間で既に様々な取り組みと努力が行われ始めている
- とりわけ、実演家団体サイドとしては、先ほどすこし触れられた、不明権利者の探索も含めて、権利処理の集中化や円滑化ということについて、色々と努力を重ねている
- そうしたことについて、法律家の方が実感できないのは致し方ないが、いやしくも公の場で「不十分である」と断定されることについては、それなりに大きな責任が伴うと考えている
- NHK もフジテレビも、粛々と進んでいるという中で、実務的に進んでいない、あるいは十分と言えないとされている根拠について、岩倉さんに伺いたいと思う
- 今は質問してはいけないということなので、覚えておいてほしい
- 実演家の許諾権について、私たちの資料では、キラーコンテンツなどという事も引いて、許諾権が実演家のビジネスに必須であることを説明しているが、それに対して、岩倉さんの資料の 4 ページでは、許諾権が奪われても、権利者には正当な対価が必ず入る、あるいは権利者の権利を実質的に守るという抽象的な表現しかされてなく、きちんと説明がされていない
- 例えば、六本木アーク森ビルの第事務所で、法律家を沢山抱えるような事務所であればいざ知らず、アーティストが許諾権を失って、報酬請求権しか持たないような状況で、一体どのように権利者の権利が実質的に守られて、正当な対価が保証されるのか、これも岩倉さんに伺いたい
- また、ネット権者について、これまで、また未だにホームページではそういう風に書いてあると思うが、映画製作者・放送事業者・レコード製作者をあげておられたという風に思う
- 本日は、必ずしも狭く限定する必要はないという風に書いてある
- これまでに、ネット権者として挙げられている三つのそれぞれの方々に直接伺うと、ネット権者となることをむしろ望まないという話が聞こえてくる現状がある
- ここで新たに、狭く限定する必要がないという立場に立たれているということは、例えば映画製作者のネット権は、必ずしも映画製作者に与えなくても良いという理解で良いのだろうか
- 映画については、既に著作権法で様々な権利を得ているが、その権利を、ネット権が映画製作者に来ないことによって、映画製作者はそういう権利を失っても良いということだろうか?
- これが三つ目の質問になる
- 法律というのはあくまでも、業界や社会全体に与える影響に最大限配慮して、一定のバランスの中で決められていくことが原則にある
- 特定の産業や事業者を優位に立たせるため、立法が行われることがあってはならないと考えている
- そういう意味で、権利者も主張は真摯に受け止めたうえで、これまで反論してきているが、どうもそれにピンと応えて頂いていないという気がする
- 取引市場ワーキンググループでも申し上げたことだが、当検討委員会では、流通の阻害要因について、これまで言われてきた権利処理の煩雑さという、表面的な見方を越えて、放送コンテンツやネットを中心としたビジネス自体が抱えている様々な問題点について、検証して順次明らかにしてきている
- その成果物が第五次中間答申であると考えていて、この点について検討委員会のメンバーとして大いに誇りを持っている
- 実演家を始めとする権利者は、本日のネット権やそれに類する立法の話、つまり権利を切り下げたり、制限することによって流通を促進しようとする議論に対して、これからも反対をしていきたい
- 資料を拝見するに、議論の中身というよりも、政治家の方々の名前、有力者の名前等が並べられていて、主張を真摯に行おうという資料としては、いささか如何なものかと思う
- たとえどのような、強引なやり方をされようとも、権利者は理不尽な議論には今後とも反論をしていこうと考えている
以上で椎名委員からの発表は終了しました。ここで事前に発表を予定されていた方からの発表は終わったようなのですが、村井主査から、堀委員からも意見を頂きたいとの指名があり、堀委員から次の内容の意見が出されました。
- ちょっと反論ということに結果なってしまうと……
- 権利者という言葉は、僕はあまり好きではない
- 実際に現場で働いている人間からすると、非常に悲しいし夢がない
- これからマーケットが沈んで行こうとしているのに、まだ日本だけの話をしている
- 三尾さんの意見は、非常に観念的で、何を言っているのかよく判らなかった
- 一つだけ言わせてもらうと、素人的発想とか、個人的な考えということで、簡単に報酬請求権ということを言わないで欲しい
- 我々には、報酬請求権となったばかりに、平成 16 年度と平成 15 年度の対価が決まらなくて、まだ延々と交渉しているものがある
- ケーブルテレビさんも報酬請求権が発生したことで、払わなければいけない対価が増えるという、結果的にありがた迷惑になっているということが実際にある
- 報酬請求権になれば権利者がバラ色のようなことを、個人的・素人的発想で言わないで頂きたい
- それから、流通が良くなれば皆がバラ色というのは、これは高度経済成長期の話であって、安く大量に売ればよいという発想で日本のエンターティメントのビジネスを見てほしくない
- これははっきり言わせてもらう
- 岩倉さんの資料を見ても、どこかの国の国会の答弁のように、適正・適正と何度も出てくる
- 大体あいまいな話をするときに一番適正な言葉が適正ということになっている
- 適正な対価というのは果たして、幾らだと思っていらっしゃるのか
- 今「8 時だよ全員集合」の DVD ボックスが 1 万 6 千円で売っていて、これは何 10 万セットも売っている
- これは適正価格なのだろうか、不適正な価格なのだろうか
- ユーザさんから見た場合に適正か、不適正かということを誰が考えればよいのだろうか
- どうも聞いていると安く使いたいという人が束になってかかってきて、権利処理が複雑だといって、テレビ局や映画会社に煩雑な処理をかぶせて、なるべく安くカルテルを作って、それがユーザの為だと言っているようにしか聞こえない
- こういう耳触りのよい言葉でごまかされ、結果産業の一つが破壊されるということに、どうか消費者の皆さんは協力しないで頂きたい
- このおとぎ話を、難しく、先生という方たちが文章にするとノンフィクションに見えてくるかもしれない
- しかし内容は明らかにおとぎ話であって、こんなバラ色のようなことはない
- これからの日本のエンターティメントのマーケットは縮小してきている
- 先ほど検索エンジンの話もあったが、Google と日本の検索エンジンを一緒に論じること自体も間違っている
- 何度もここで申し上げているが、日本語というデメリットのある言語で世界に出れないと嘆いていて、それを日本のネットで流通させたからといって、ゼロサムでは変わらない
- 海外に出ていく以外に、日本のマーケットが広がるということはまずあり得ないと申し上げておく
- 他の産業で考えても、適正な価格というのは、ユーザとメーカが考えたりとかで、高くても売れるものや、安くないと売れないものがある
- コンピュータ 1 台を作るのに、組み立てに手間がかかるのでやりませんという会社は多分ない
- ビジネスになれば必ずやっているはずなのに、まだ誰もやらないということは、ビジネスにならないからだ
- それを外野の人が大騒ぎをして、何か難しい法律を出してきたり、良いところだけをアメリカと比較して論じられることは非常に不愉快
- アメリカでは二次利用の実演家に対する対価は非常に厳しく決まっている
- スタントマン、エキストラに至る一人まで、二次利用をする場合は幾ら払うという日建ての拘束時間によって全部決まっている
- 隣接権がないというのは嘘であって、それは契約でカバーされているので、法律にする必要がないだけ
- それをフェアユースという訳の判らない言葉と、このネット権をごっちゃにして、あたかもバラ色のようにユーザに思わせ、なんでも使ってしまおうと
- うるさいのは権利者で処理が煩雑だと、そんなフィクションに騙されないようにして頂きたい
- 新しいデジタルの時代で、ビジネスだけ日本は取り残されるということがあったが、これも虚像
- 未だに、世界のマーケットで、エンターティメントのソフトは 2 位を保っている
- ただ、これが縮小してきていて、他の新興国は伸びてきている
- アメリカは英語圏なので、ワールドワイドでビジネスができるということで、単価を下げてもワールドワイドで儲けることができる
- このモデルと、日本のゼロサムを一緒に論じることはナンセンス
- 権利者がネット法で、対価を受け取れて賛成といっているのは、無名の人や有象無象であって、スターはそんなことは望んでいない
- 金さえ払ってくれれば、なんでもやるという風にタレントが皆考えていると誤解されるような発言は、ビジネスをやっているものとしては甚だ迷惑だと思う
- 一行一行、全てに反論したいが時間がない
- ネット法の許諾権が実演家に最大のインセンティブという「どう考えるか」ということだが、どう考えるかといえば皆勝手なことを考える
- そのために少数派を切り捨てるということかと私は理解する
- ここに並んでいる国会議員の先生とも、何度か話をさせてもらったが、残念ながら、先生方に、エンターティメントを日々喜んで見ているという人はいらっしゃらなかった
- あえて国会議員の名前を言わせて頂くと、林さん、林 芳正 議員が、私共のチェロの演奏家のコンサートに、娘さんと来てくれたぐらいで、後は、何をお願いしても、来ていただいたことはない
以上で堀委員からの意見は終了しました。ここから、意見交換および質疑応答ということで、さきほど後回しにされた佐藤委員の質問からスタートしました。
佐藤委員からは、4 つほど質問を予定していたけれど、時間が無くなってきたので、3 つだけお願いしたいと前置きがあり、以降、一問一答の手順で進んで行きました。最初の質問は次のような内容でした。
- 大前提になっていることとして、権利者および制作者に収入が増えるということだろう
- この収入が増えるということを、定量的に実証できるものなのだろうか
- 今、デジタルコンテンツの流通促進といっているが、これは言葉がおかしい
- コンテンツのデジタルフォーマットでの、インターネット流通の促進だろう
- それ以外のデジタルフォーマットでの流通は、パッケージ・レンタル含め、既に色々ある
- その中で、インターネットを伸ばすことによって、その他、全てのコンテンツでの利用にかかわる収入と比べて
- グロスがアップするという例えば先進国、アメリカあたりでの実証はあるのだろうか?
この質問に対する岩倉オブザーバの回答は次のような内容のものでした。
- 私共が提唱しているのは、インターネット上の流通利用なので、そこをどうやって増やすかというところにフォーカスしているのはその通り
- 今手元に、資料も何もなく、また統計学者でも経済学者でもないので
- つい最近、私が聞いたデータでいえば、まず日本の中で、インターネットの利用者に関しては、年々非常に増えている
- 今年も昨年から比較すると、何 100 万人と増えてきているという数字が出ている
- ただし、全体の人口が 1 億 2 千万で、それで 5000 万、6000 万だったのが、5800 万、7000 万と増えているので、それほど激増というほどではないかもしれない
- あらゆる年代を含めて、インターネットが生活の本流になりつつあると言えるのではないか
- アメリカでの例もまったく手元になくて、以前読んだ記憶にしか過ぎないけれど、ずっと赤字だった YouTUbe で、その赤字幅が非常に減ってきた
- 本当に増えているのか、利用されているのか、アメリカではどうなのだということは、個別の企業の収支まで見ていない
- ただし、JASRAC と YouTube が合意したように、アメリカ国内でも、MGM と YouTube が契約をしたりというのがどんどん発表されているので、それは非常に安価に利用されているというのが多分あるのだろう
- その結果、今まではプロフィッタブルでは無かった YouTube においても、その赤字幅が大変狭くなってきていて、将来的には黒字化できる可能性が出てきているという報道を見た記憶がある
- 数値を言えと言われるとちょっと手元にないのでアレだが、そういう現象は出てきているのではないか
- これは単に YouTube という動画共有サイトの話かもしれないが、当然ながら、インターネット上のデジタルコンテンツの流通利用ということの代表的現象としてそういう例がある
以上の回答を受けての、佐藤委員からの二つ目の質問は、次のような内容のものでした。
- コンテンツの利用で、クリエイター・制作者ならびに権利者のトータルのグロスアップできるのかというのが最大の問題点
- インターネットを利用することがグロスアップにつながるのかという問いを常に発していかないと、ネットでどんどん流れるけれど、トータルの利益はどんどん減っていってしまう
- そして、産業は疲弊するという議論がアメリカで散々行われていることは多分御存知だと思う
- 例えばアメリカの音楽産業は、2000 年の段階では、145 億ドルの売り上げがあったのに対して、2006 年には 70 億ドルまで縮小している
- それをインターネットが補っているかというと、もちろんそんなことはない
- 音楽産業的に考えた時、無料ファイル交換ソフトが出ていない頃は年間 10〜16% の成長産業だった
- ところが今や、2007 年の段階では年間 10〜16% の衰退産業と言って、米国の音楽産業のトップたちはとてもそれを悲しんでいる
- 音楽を購入するという行動が無くなったことが多分最大の理由だと思う
- 映像については、ファイルが大きいので、そう簡単にファイル交換ソフトでやり取りできるということにはならず、映画とテレビ産業はすこし時間を貰った形になっている
- それがまさに、Viacom が YouTube を 10 億ドルの損害賠償請求をして訴えている裁判が続行している最中ということに表れていると思う
- このあたりを踏まえて見ても、ネットに流すことイコールコンテンツの取り分が増えること、収入が増えることになったく結びついていないのが、世界の最先端の実情と思う
- そういう意味で、世界の最先端のコンテンツ大国を目指すと言われているのだろうか
- 世界の最先端のコンテンツ大国というのは、定義としては一体何なのだろうということを次に伺いたい
岩倉オブザーバが、この質問に答える前に、村井主査から、次の内容の議事進行に対する要望が出ました。
- ちょっと短くお願いしたい
- 実は、お預かりしている時間が、あと 7 分しかない
- 本当に申し訳ないけれど、もう一度来ていただけないかという気がする
- 色々と、以下次号にしていこうと思うが、今日のうちに話したい方から伺っていきたい
- 佐藤さんの今のお答えも合わせて、最後にまとめて頂いて
- まず椎名さんのさっきの質問も「覚えておいてね」というやつが、四つあったように思えたので
- それを合わせて、一回簡潔に答えを頂けないだろうか
以上の要望を受けての、岩倉オブザーバからの回答は次のような内容のものでした。
- 佐藤さんの質問から先に応えると、私どもが提言してる法制をやれば、全体のトータルの収入が上がるのか、それは正直判らない
- 上がるのかどうか判らない
- しかし、無ければ維持されるのか、それも右肩下がりではないか、それも判らない
- 例えば音楽で、今、皆若者は着うたフルからネット配信で音楽を買っていて、だから音楽産業、レコード産業は衰退した、実演家は貧乏になったという議論があるのかもしれない
- それは別の見方でいうと、色々な、社会生活の多角化からして、こういう生活で、手に入りやすくなり、高いお金を払わなくても良くなった
- 先ほど堀社長が、DVDBOX 何万何千円と、それは価値のあるものだろうと、私は本当に思う
- 私もドリフターズをずっと見ていたので、本当にすばらしいものだと思うけれど、買えない人もいる
- 買える人でも、できれば安価な価格でネットで見たいという人から、パッケージとして、特典やブックレットが付いているものを何万円はらっても買いたいという人もいる
- この前、エイデンの方がいらして、私共とネット法の話をしたけれど、映画は日本の場合、全くネットで見れない
- 私は、松田栄作の映画がすごく大好きなのだけれど、ツタヤなどへいくと、一本の遊戯シリーズで何万何千円とする
- これが例えばネットで見られるとすれば、それはすごく便利なことで、だからといって、パッケージが売れなくなるか、トータルになったら減るか、これは正直に言って私には判らない
- しかし、それで皆が喜んで使えるようになるというのが、一つの豊かな社会なのではないかと思う
- それから椎名さんの質問について、今日のレジュメがけしからんという部分は大変おっしゃるとおり
- 本当に薄弱なものではあるが、そのために、コピーで配布資料をつけている
- 例えば資料の 9,10,11,12 がネット法に関して私共がオンライン上で HP に出しているものになる
- ネット権者をこの三者に限らないというのは、7 月の段階で、資料 11 の、8/9 ページのところに書いている
- また、公正な対価についての考え方も、同じ資料の 9 ページで触れているので参照いただければと思う
- 同じことを書いても仕方がないと思ったもので、今日のパワポでは、そうでない部分を書いている
- ちょっと政治家の名前など書いて、偉そうにしているではないかというのは大変反省している
- そういう趣旨ではまったくないということで、御理解頂ければと思う
- あとは次回ということで、よろしくお願いする
以上で岩倉オブザーバの回答は終了しました。次に、寺島オブザーバと高橋委員が発言を用意しているとのことで、村井主査から寺島オブザーバが指名されたのですが「もう時間で、私もいずれにせよ反対意見だが、大体主要な反対意見は披歴されているので、もし次回また呼んで頂けるのであれば、制作事業者として反対表明をしたいと思う」と発言されて、詳細な発言は辞退されました。
ここで、華頂委員が発言を求めて、次の内容の発言を行いました。
- 質問では無く、一言だけ
- 遊戯シリーズの話が出たので
- コンテンツビジネスの基本は、市場価値を維持しつつ、収益の最大化をはかっていくものだと考えている
- そうしないと、株主さんに怒られる
- 安く見たいと思う方がいても、迅速に応えることはなかなかできない
- よろしくお願いする
以上で、華頂委員からの発言は終了しました。次に、高橋委員が村井主査から指名され、次のような内容の発言を行いました。
- 感想があれば言ってくださいと事務局から頼まれていたが、発言の用意は頼まれていないのでしていない
- この委員のこの立場でなぜここに座っているのかということをつらつらと考える
- 今までの経緯で言えば、こうした権利、諸々の関係、民々でやればできる、やりたいということでトライアルが行われている
- しかしこれが巧くいっているかというと、この委員会への報告を見る限りでは、とても巧く行っているとは思えないという感想を持っている
- 先ほど、三尾委員が時期を逸するのではないかということを強調されていた
- 私も、こういう席に座っている立場として
- それから、日本ブランド・コンテンツ専門調査会のメンバーとして
- こういうやり方目標を達成できるのだろうかと、様々な疑問を持っている
- トライアルをやっていくということに関しては、これをやっていると時間がかかるという風に、ここの場で御報告を頂いている
- 一体いつになればできるのか、ある程度期限を知りたい
- 時期を逸するのではないかという疑問から、そういう質問がある
- トライアルを粛々とやっていって、それで出来たとして、一体何を見れば私たちは判るのだろうか
- 会議の報告だけではまったく判らないので、そこをお聞きしたいと思っている
- それから、トライアルも良いが、制度の話も一緒にやることになっている
- 制度を作ると、何が困るのかということを聞いてみたいと、今日の話を聞いていて思った
- 誰が、どのように困るのか、困る人にとって、どこがどのように困るのかという判りやすい説明をして頂きたいと思う
- ネット権というひとつの案に対して、反対であるとするなら、対案を出すのか
- それとも法律は全て厭だと言っているのか、その辺が判らないので、是非、関係者の方に応えて頂きたいと思う
- デジコンの流通促進に、みなさん努力しているということは参加していて判る
- しかし、時期を逸しないためのスピード感を意識してやっているのかということを、重ねてそれぞれの関係者の方に伺いたい
- 新聞というメディアが、再販制度に守られてきた結果、改革のスピード感が足りず、今、死に体になっていて、どこの新聞社も慌てているという状況を知っている
- 同じ資本関係にある放送事業者もそういう風に進んでいくのだろうか
- 権利者の方々、実演家の方々、有能な方はもう日本に生きていく道を求めないということが、目の前に来ている感じがする
- それぞれ既得権だけではなく、未来のことを考えるような建設的な意見が伺えるとありがたい
以上で高橋委員の発言は終了しました。次に、菅原委員が発言をしたのですが……傍聴席からは、前半部分がうまく聞き取れなかったので、断片的な紹介になります。三点指摘をしていたのですが、最初の二つはほとんど聞き取れませんでした。
- まず第一点目に、デジタルコンテンツという範囲が明確ではないまま議論されているように思う
- 結局聞いていると放送番組というところを [聞きとれなかった部分] それは色々違うのじゃないか
- [聞き取れなかった部分] デジタルコンテンツと言うか [聞き取れなかった部分] 厭なくらい流通しているという場面もある
- それからもうひとつ、[聞き取れなかった部分] の問題だと全体書かれている
- やはりコンテンツホルダーさんの必要性と展開する意欲が最初になければいけない
- その議論が無いままその後の議論をしているのは問題があるのではないか
- 最後に JASRAC の仕組みということで御紹介を度々頂いている
- 前提として、権利の制限には反対している
- 仕組みとしてこれを実現するためには、制度の問題では無くて、どう許諾をするか、どう配分するか、そういう仕組みが必要で
- それは民間でやらなければいけない話
- そういう意味では、もしそういうことを進めるのであれば、それはノウハウを持っている私共として、応援すると、そういう意味
- 誤解が無いようにお願いしたい
以上で菅原委員の発言は終了しました。次に、岸上委員から、トライアルの受賞作品の内覧会の案内が行われました。
- デジタルコンテンツの流通促進というこの作業部会からできた一つの策として、アワードの話が AMD 主催で行われていて
- その作品のひとつ、私どもが協力している一つの番組がコンテンツとして仕上がった
- まもなく、これをマルチユースということで、IPTV それから携帯、PC インターネットの方に色々な形で配信をしていこうと思っている
- まずその前に、関係者の方に見て頂きたいと思って内覧会を計画した
- 場所は慶応大学の三田キャンパスに協力してもらい、18 日の 3 時から
- コンテンツ自体は 90 分の尺のもので、南こうせつ をフィーチャーした形で、これ用に新しくコンサートも開き、収録をしている
- 本人の証言とか、色々な彼の生きざまを、一つのドラマ仕立てにしたもので、非常に、南こうせつさんからも高い評価を頂いた
- 是非、皆さん、あるいは関係者の方々にお越しいただければと思う
- 大体キャパは 100 名と聞いているので、おそらく関係者が全員来ても大丈夫だと思うが、一応先着ということにして頂きたいということもあるので、申込書を出して頂けると助かる
以上で岸上委員の発言は終了しました。次に、村井主査から、まとめのような、次回以降に向けての方針のような発言が行われました。その内容は、次のようなものでした。
- 時間の押している中で、色々と貴重な御議論をありがとう
- 特に、岩倉様、三尾様、説明ありがとう
- 放送コンテンツの取引の権利処理、民間契約か制度によるか
- 先ほど高橋さんから指摘あったように、制度のどこの部分が問題なのか
- あるいは、進め方に対しても、様々な意見をうかがうべきと思うので
- 皆さん質問や意見も色々あると良く判った
- 言い足りないところ、こういう話にしなければいけないという進め方、中身に関しても
- 是非事務局に連絡して頂いて、先ほど以下次号といったけれど、次のチャンスでまた議論が深まるようにしたい
- この場だけで議論をするのは、今日の経験からも難しいと思うので、是非、皆さんの意見を頂いておけると、少しスムーズに進むと思う
- うまく運べないのは、私の責任でもあるので、お詫びする
- というわけで、今日の方には、また来てねと先ほどいったように、また、出席をお願いすることになるかと思う
- 是非、よろしくお願いする
- 次回は、技術検討ワーキンググループでの進捗状況を報告するということで準備をしている
- こちらに関しても、委員の皆さんからの意見があれば、お伺いしたいと思う
- 技術検討ワーキンググループでも、次回の報告に向けて準備している
村井主査からの発言は以上でした。この後、事務局の小笠原課長からの挨拶と、村井主査からの閉会のあいさつがあって、今回の会議は終了しました。
◆◇◆
とりあえず岩倉オブザーバの発表内容についての感想から。
直接プレゼンを聞くと、スジの悪さが際立ちますね。一体、説得しにきたのだか、喧嘩を売りにきたのだか。聞き始めた最初のころは、一応説得するつもりで来てるのだろうと思いこんでいたので、だいぶ首をひねりながら聞く羽目になってしまいました。
例えば私がネット権を売りこまなければいけない立場に立たされたら、どんな風に話を進めるだろうかという例で考えてみます。
まず CPRA が一番嫌がっているのは CPRA 以外が、実演家のネット権者となることです。次に、CPRA が実演家のネット権者になれたとしても、応諾義務を負わなければいけないので、ネット権に反対するという立ち位置にあります。
デジコン委員会で、椎名委員は、実演家がネット配信に「ノー」というのは対価が折り合わない場合のみで、対価さえ折り合えば「OK」を出すと繰り返し発言をされています。「通信事業者はコンテンツを作らない」「通信事業者はコンテンツを安く調達したいだけ」「権利者はネット配信の障害では無い」という恒例の発言ですね。
これらの条件を見る限りでは、応諾義務のところさえ納得させることができれば、CPRA をネット権側にとりこむことができそうに思えます。例えば次のような話をするとどうでしょうか。
- CPRA はネット法成立後、著作権法に加えて、ネット権者としての法的な後ろ盾を得ることができる
- ネット権者には使用の申し出に対して応諾義務があるが、「非合理的な対価である (安すぎる) 」場合は拒否することができる
どうせネット法には「合理的な対価での使用申請に対しては応諾しなければいけない」とか条件が付くのでしょうから、この方向での説得の方が成功率が高そうな気がするのに、どうしてそれを取らないのでしょう。
もしもこれでもネット権に反対するのだとしたら、今までの椎名委員の発言は何だったのという話に、つまり、「逆の方向に非合理的な、高すぎる対価じゃなきゃ許諾しないってこと?」と「それは実演家がネット配信の障害になっているってことじゃないの?」という方向で切り込むことが可能になるのに、どうしてそれをとらないのだろうと、説得する気がまるで無いなぁと思いながら聞いてました。
◆◇◆
個人的には、ネット法は現状を実質的に追認して、補強して固定するだけの効果しかないと評価をしたので、あまり賛成しません。
なんで現状から実質的に何も変わらないのに、わざわざ権利者団体とかに新たに法的裏付けをプレゼントしてやらなければいけないのだろうと考えたりはしませんか?
◆◇◆
次に、関本オブザーバの発表内容についての感想とか。
こういう具体的な話はすっと頭に入って判りやすいのでうれしいですね。NHK オンデマンドのコスト構造 [権利コスト/サーバーコスト/回線コスト/決済コストの内訳] とか、価格設定の根拠とかも聞けるともっと嬉しいのですけれど、さすがにそこまで期待するのは贅沢かなぁとも思います。
◆◇◆
さて、堀委員の発言の感想を。
仮にも上場企業の代表としてその発言はどうなのかなぁという感想を持ちました。以下、ちょっと抜き出してみます。
- これからの日本のエンターティメントのマーケットは縮小する
- 日本語というデメリットのある言語では世界に出れない
- ネット法で対価が取れるので賛成という権利者は無名の人や有象無象
最後に抜き出したのはちょっと毛色が違いますが、えー縮小していくマーケットで細々と営業を続けていきますと、パイを広げる努力も、すそ野を広げる努力も、海外のサービスと利便性で競い合う努力もしませんと、海外のサービスが来たら白旗をあげますと。
そういう受け取り方もできる発言なんですが、それでよいのでしょかね。
11月30日(日) PT1 購入 [この記事]
それなりに潤沢に出回り始めたらしく、金曜日の昼御飯を食べた後ふら〜と見て回っていたら在庫を発見したので 2 枚購入。本当は 4 枚欲しかったのだけど、他に必要としてる人も入手できた方がいいかと考えた。
当然専用 PC に入れるつもりだったので、昨日今日と PC パーツを買い漁り、今日の時点で一通り組み上げるところまで到達。というわけで、デバイスマネージャのスクリーンショット [URI]
このスクリーンショットに載っていないパーツとして、MB は MSI の P45 Neo3 で、メモリは UMAX の 1Gx2 という選択。動けばそれでいいと割り切った。CPU ももっとケチっても良いかと思ったのだけど、一応少しだけ余裕を持たせてみた。
さて、問題はソフトの方なのだけど、こちらは全然作業できていないからなぁ。デバイスも手に入ったことだし、すこしは作業時間を確保するようにしなければ。
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