日々の戯言
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4月7日(火) デジタル・コンテンツの流通の促進等に関する検討委員会 (第50回) [この記事]
結局会議開催 [3/31 (火)] から1 週間遅れてしまいましたが、恒例の傍聴レポートを置いておきます。今回は取引市場ワーキンググループ関連で、取引市場データベースに関する検証実験の報告と来年度のマルチユーストライアルについての報告と、それに関連しての意見交換でした。
議事自体は次の流れで進みました。
- 村井主査から開会の挨拶 & 今回の議題連絡
- 小笠原課長からの配布資料確認
- 吉川オブザーバ / 中村オブザーバ (三井物産) からの取引市場 DB の調査・検討結果報告
- 菊池オブザーバ (社団法人 デジタルメディア協会 : AMD) からの、来年度のマルチユーストライアルに関しての報告
- 上記を受けての意見交換
- 以上の意見交換を受けての、村井主査からの今後の検討に向けての方向性の説明と、協力の要請
- 小笠原課長からの、次回以降のスケジュールについての説明
- 村井主査からの閉会の挨拶
ほぼ定型文の開会の挨拶と、資料確認は飛ばして、吉川 / 中村 両オブザーバからの取引市場 DB に関しての報告から議事を追っていきます。最初に報告を担当したのは吉川オブザーバで、その内容は次のようなものでした。
- 昨年の 12 月から、つい最近まで、放送コンテンツ取引市場構築の為、データベース環境整備に向けた調査・研究を行わせて頂いた
- その内容と結果について、後ほど、担当した中村の方から、詳細を説明する
- それに先立って、この調査・研究、また簡単な検証実験を行ったことについて、この場に出席の方々に、極めて前向きにかつ積極的に協力頂いたことに関して感謝したい
- どうもありがとう
以上の内容の発言に引き続いて、中村オブザーバからの詳細報告が行われました。使われた資料は、既に検討委員会のページ [URI] で資料1として公開されているもので、このページを追いながら説明が行われていきました。説明の内容は、次のようなものでした。
- まず、資料の 2 ページ目を見て欲しい
- 我々が調査・研究をやった目的は、取引機会の拡大に資する放送コンテンツのデータ整備・連携、それと、権利処理業務に要する時間とコストを短縮していこうということで、大きく二つのことを行った
- ひとつが、まず、現状分析と仮説を立てようということでの調査と研究、これは実態を把握するためにヒアリングとアンケートを行った
- そしてふたつ目、その仮説を検証したいということでの検証実験、これはプロトタイプを構築しての実験と、そこからの考察ということでまとめている
- 我々三井物産でやっているが、内容が一人よがりにならないように協議会を開催させてもらって、こちらのオレンジの枠の中にある様々な皆さんに協力を仰いで、全四回の協議に参加して頂いたことに本当に感謝している
- それでは 3 ページ目を見て欲しい
- まず現状分析ということで、ヒアリングを今こちらにもおられる番組制作事業者の関係の方々や、権利者団体の方々・放送事業者の方々・通信事業者・投資家等、様々な方々に各ステークホルダーならではの視点で、どういったことがコンテンツ取引に必要なのか確認させてもらった
- 同時に、このアンケートというものを制作事業者、二時利用の事業者に 12 ページ 46 設問とかなり分厚いアンケートを送って、これに快く回答を頂けたことにお礼を申し上げる
- このアンケートに関しては、先ほどの協議会の中で皆から、こういった意見を集約するには、より多くの意見を集約するべきだとのことで、当初 100 社程度を予定していたものから、500 社程度に送らせてもらい、意見を集約させて頂いた
- 様々なデータが出たが、下の、現状分析・ヒアリング結果というところでまとめさせて頂いている
- まずデータベースということにあたって、番組制作の各事業者でのデータ管理状況だが、データベースのようなもので管理しているというのは全体の中でも 20% 弱で、表計算ソフトで管理しているというものを含めても、約 40% 程度しか、電子データとしての管理ができていないということが実態として浮かび上がってきた
- そして 19% の中でも管理されているデータの項目を、二次利用事業者に確認して頂いたところ、このデータだけではコンテンツ購入には至らない、残念ながら、データに欠落しているところがあるという意見だった
- 二番目に、下側のデータ管理でどのようなことを管理しているかというところについて、作品名やエピソード名等、様々なものがあるが、管理されている項目、管理されていない項目に色をつけてみた
- 例えば、フォーマットに関する項目として、二次利用をしたい、コンテンツを買いたいという人にとって、単発か連続か、例えば、トータルストーリーでの何話目かという情報は、購入するには必ず必要だという話があった
- しかし、実際にそのデータを整備している事業者は半分以下であった
- 逆に、制作事業者で管理されているのは、映像フォーマットの種類や、制作年月日や、制作に関するところが多くて、二次利用事業者さんが欲しいものと、管理されているものには乖離があるということが浮かび上がってきた
- さらに、二次利用する際にはどうしても必要になる、例えば楽曲の二次利用の権利処理をするのに必須な使用している楽曲名や、二次利用の窓口の有無といった情報も、整備が少ないという状況もあった
- 課題として出たものを、右の青いところにまとめている
- まず、データの整備面として、そもそもデジタルデータが整備されていなかったり、二次利用事業者が必要としている情報に乖離がある
- それから、データの整備を一度は行ったけれど、メンテナンス負荷が大きくて、データベース管理を止めてしまったという事業者も多かった
- そして、データ項目面として、番組制作事業者の管理、二次利用事業者の管理が違うというだけでなく、番組制作事業者の方から、管理して公開するということが行われたとしても全てのデータを全ての人に見せられる訳ではないという、運用に関する課題があることも浮かび上がってきた
- また、二次利用の面では二次利用事業者として用途毎の可否が不明だと、例えばレンタル DVD 事業を行うとして、そのコンテンツを買えるのか、買えないのか、あるいは、IP 配信ができるのか、できないのか、そうしたことについての窓口が不明だという状況も浮かび上がってきた
- すこし特殊なこととして、権利処理業務で時間を要するというのは、例えば、音楽・楽曲として何が使われているのか、実演家として誰が出ているのか、そうした情報収集に一番時間がかかっているという状況が浮かび上がってきた
- それでは次のページをお願いする
- 以上の現状分析を踏まえて、我々の方で仮説として考えたことがある
- まず、情報が分散していて各事業者単位で二次利用者の必要な情報をすべて満たすことができないという話をしたが、色々な事業者のデータを混ぜて、すべてを一度に閲覧することができれば、そのデータが二次利用事業者を満足できることが判った
- 今までの取り組みでは、巨大なデータベースを作って、そこに全てのデータを集約し、皆がそこにアクセスすればよいということがあったが、これは、データメンテナンスというという点で、一度データを入れた後、次に誰が管理をするのだという問題があり、また、アクセス制限についても難しいところがあった
- そこで、下に書いてあるようにゲートウェイという構想を考え、各データベースを集約するのではなく、各事業主体がそれぞれのデータベースをそれぞれの目的で管理・メンテナンスする
- そして、その最新の情報をアクセスしに行き、必要な人が、例えばレンタル DVD の事業をやりたいのであれば、それをベースに必要な情報を取りに行く
- 二次利用事業者の何がやりたいというオファーをトリガーにデータのやり取りが行われる
- そういったことができれば、データの流通・情報流通がより効果的になるのではないかと仮説を立てた
- この仮説で目指すゴールは、次のページのビジョンというところになる
- 現状では利用者の方から、そもそもコンタクト先が不明だとか、権利の状態が不明で、その後のコンテンツホルダーと権利管理団体とのやり取りも相当複雑で、情報収集で複雑になっているところを、一つのゲートウェイを介して情報流通の連携をやりとりすることで、より効率化を図り、権利処理業務の時間とコストを削減して、それによる収益向上ということを考えている
- ここで、ひとつ前提条件がある
- この権利処理ゲートウェイというのは、権利処理業務のすべてを担うものではない
- 情報の流通・連携をきちんとしておくもので、その後の権利処理の業務には、やはり個別の交渉が、金額はいくらだとか、支払い条件はどうだという話が必ず出てくる
- これはこれで進めるが、あくまでもこれは情報交換の効率化ということを目的としていて、売上拡大はまた別に検討する必要があるということで、あくあまでも範囲を絞って調査を進めている
- 次のページをお願いする
- この仮説が正しいかどうかということの検証実験を行い、これがつい先月の、ちょうど一か月前になる
- この中でまず、真ん中にある、権利情報ゲートウェイというところを介して、左側にある番組制作事業者、つまりコンテンツのデータを持っている方々と、右側の権利管理団体、JASRAC さんや CPRA さんといった権利を管理されている団体、下側の二次利用の事業者さんと、それぞれ三つのステークホルダーが権利情報ゲートウェイにアクセスするという形を取った
- 残念ながら、時間等の問題で全てをオンラインで接続というところまではいかなかった
- 少なくとも、二次利用事業者がコンテンツを検索する等に関しては、全てオンラインデータでやり取りし、権利情報ゲートウェイの機能を検証した
- クリエイターズプラス様と全国地域映像団体協議会には、もともとなかったデータや、若しくは既にあったけれど、こんな情報が欲しいというデータをすべて整備・構築して頂いて、1855 のコンテンツを、権利情報ゲートウェイの検証実験に提供頂いた
- そして、この二次利用の事業者からこのコンテンツを購入するか、しないかということを、この権利情報ゲートウェイの中で検討頂いた
- ポイントになるのは、権利情報を色々な所とやりとりするにあたって、ID の管理だった
- 各データベースを接続するにあたって、皆、ID はバラバラにつながっていたが、この ID の連携をとるのが権利情報ゲートウェイの最重要の役割で、情報流通をきちんと行うために ID の翻訳をするのがポイントだったと思う
- 次のページの、購入側希望コンテンツで、例えばインターネット配信事業者様は、邦画・テレビドラマを購入したいと、DVD の事業者では、昔のバラエティ番組、俳優さんが昔出ていたものを使いたい、海外の販売事業者様は、科学実験等の教育番組を使いたいと、かなりバラバラな意見だったのだが、それに応じて、この 1855 本のコンテンツを集めて頂いた
- ここで、二次利用をどうやって行っていくのかということでの検証実験を行った
- このプロトタイプを、皆に一回お見せする
- この画面に映っているものが、実際に検証実験を行ったもので、番組検索ということを、この 1855 コンテンツの中から行った
- 例えば、キーワードとして「夏」に行われるような教養番組を、DVD 事業者がビデオグラム化権が二次利用可能なものを選択して検索すると、それにあわせたものが、1855 件の中から一気に 5 件に絞られて、どういったものが対象になるかを見ることができる
- このように、二次利用事業者が、自分の使いたいコンテンツを利用形態に応じて探すことができる
- ここに書いてあるとおり、二次利用として、公衆送信が可能なもの、ビデオグラム化が可能なもの、何が二次利用可で二次利用不可かということが、検索して出てくる
- 次に、検索条件が変わった場合にどう出てくるかということですが、今度はインターネット通信事業者の立場に立って、公衆送信で権利情報の検索をしてみる
- ネットの繋がりが遅いようで……まだ画面が飛ばないけれど……ここには旅の森社の物が色々と出ているが、先ほど「夏」と指定しているので、この「夏」というキーワードに捕まったものが出てきている
- このように、二次利用事業者が夏に関して何らかの資料が欲しいということであれば、それを検索することができる
- 資料の 12 ページを見て欲しい
- これは、権利情報の明確化ということを目的に行ったものだが、一番上のデータのように、二次利用不可のもの、二次利用可のもの、利用したい形態ごとに権利情報を把握できるということを行った
- 次に 13 ページをお願いする
- これは権利窓口を検索した後で、その窓口で利用のオファーを容易にできるように窓口を設けている
- このオファーの中から、例えばサンプル動画を送ってほしい等のオファーが出せて、このオファーをトリガーにして実際の取引が始まっていくということになる
- このように、取引までの流れを如何にスムーズにするかということを考えている
- 次に 14 ページをお願いする
- ここで注目してほしいのは、先ほど、権利情報のデータとして、番組制作者が管理しているものでは不十分ということを話した
- 実際、ここで例として挙げている「月曜ミステリー」でもそうだった
- 番組の内容や、連続なのか、単発なのかという情報が出てこなかった
- ここで JASRAC 様に協力頂いて、JASRAC 様で管理している映像コンテンツデータというもので、どういう項目があるかという情報を頂いた
- そちらのデータを拾うと、同じ月曜ミステリの中で、二話中の一話であり、テレビ番組がどういった内容で、何分放送されたものだという、より詳細なデータが出てくるものがある
- さらに、次の 15 ページを見て頂く
- 実は JASRAC 様と接続して頂くことで、JASRAC 様が管理されている音楽番号コードが入ってくるので、番組制作事業者が持っていなかった、楽曲情報と権利処理に活用できる情報も出てくる
- 二次利用で一番時間がかかると言われていた情報がここで手に入ることが判った
- 16 ページ / 17 ページは、各事業者様から、どのような機能があればより良いかということを書いたものなので、これは割愛させて頂く
- 以上の検証から、我々の考察として、まず共通管理項目として、データベースの項目を考えた
- これをカタログ情報 D1、権利情報 D2、制作者情報 D3 と D1 から D8 までの情報をカテゴライズして、実際の取引にどんな情報が必要になるかということを、この実証実験、検証実験に参加して頂いた皆にヒアリングをした
- その検証実験を通して、再定義した項目が 19 ページ / 20 ページの管理データになる
- もちろん、コンテンツ ID というのは必須の項目になるが、作品名・キャスト名・総話数というものが管理項目として必要になる
- ただし、これは多くなりすぎるとデータが入れられないということで、かなり少なくしぼったつもりでいる
- もちろんこれに関しても、一つの事業者ではデータが揃わないということがある
- そういった場合は、先ほどの JASRAC 様からのデータのように、他からデータの提供を受けて、最終的に二次利用したい方に渡すことが可能と判っている
- これをどのように埋めていくか、連携の方法が重要になると考えている
- では、21 ページを見てほしい
- 今回の考察として、三つのことが確認できたと考えている
- 一つは、データベースの環境整備という部分で、今のように、共通項目を定義できた
- 番組制作事業者様から、どのようなデータを実際に管理する必要があるのか判らない中で、こういった項目が出てくることは、整備に向けてありがたいという話も頂いた
- また、データメンテナンスと、二次利用の最新情報の提供スキームということで、各事業主体の方がデータベースを管理することで、専属管理人が不要になる
- 各事業者は連携方法だけを考えればよいということでのスキームが検討できたのではないかと思う
- 二つ目に、データ連携の部分で、ID の管理によるデータベースで、ID を翻訳していくことで情報の連携が可能になり、他のデータベースから情報を取ることも可能だと判った
- 三つ目に、各ステークホルダーへの情報提供として、二次利用事業者のオファーをトリガーとして、必要な対象者に必要なだけの情報を提供することができる
- また、各ステークホルダーの観点から、自分の欲しい情報を取りに行くこともできる
- これが、権利処理業務に要する時間とコストの削減につながる、そうしたことの可能性が確認できたと思う
- これを遂行していくということになった場合の課題は、先ほどデータベースの環境整備はできたという話をさせてもらったが、やはり、データベースのデータ整備の問題は重要になると考えている
- 現場の方々に聞くと、入力する時間・コストが無い、そんな人材がいない、そもそも IT 機材を使える方も少ない、そんな話を聞いた
- だから、それ故に、逆にデータがタイムリーに更新できずに、二次利用のビジネスも進んでいないという情報もあった
- そして、下側に書かせて頂いているように、データの整備がされなければビジネスの規模拡大は困難だという話もあった
- ここは、先ほどの協議会でも相当議論になったところ
- 卵が先か、鶏が先かという話ではあるし、データの整備がされたら売り上げが上がるというものではない
- しかし、データの整備がされない限り、今後のインターネット社会の中で、より情報の流通拡大というのが見込めるか、難しいのではないかという提言が行われた
- なので、今後の国際展開や国際ルールなどを考えた時には、やはり、こうしたことをやっていくべきだと考えている
- では、23 ページをお願いする
- これまでの結果をまとめて、実際、どういう風にすれば実効化できるかということを書かせて頂いた
- まず一点目、協力体制の在り方ということで、データ整備をより促進するためのインセンティブやエンフォースメントというものを考える必要があると考える
- 例えば、コンテンツを作成するにはお金を借りたり、保険に入ることが必要になるが、この時に、データ整備がされていれば優遇制度が受けられるとか、逆にそれが申し込みの時の条件になるということも必要かもしれない
- データ取引、コンテンツ取引の時にデータ整備が、流通事業者もデータ整備が必要になってくるので、そうした時にこうしたことを条件化する
- また、例えばコンテンツに関する補助金やアワードを受ける時にはこういったデータ整備がされているものを条件にするとか、より優遇するというようなことで、よりデータ整備を業界全体で進めていくということができれば良いのではないかと考えている
- 環境整備ということで、今回コンテンツのゲートウェイというのが、一定の機能を果たすことを検証できたと思うが、それにあたっても権利処理の窓口は、例えば音楽関係であれば、音楽関係の権利処理管理団体は沢山あるが、そうした方々に窓口を集約して頂いて、もちろん実業務は各管理団体がするけれど、窓口が一つ集約されると、このゲートウェイがより有効的に機能すると考えている
- もしも、これを構築するとなった時の、運用の在り方として、現状では市場が経済合理性に合う規模に達していないということが考えられる
- 例えば、電子政府の一環として、官、または外郭団体としての形で運用し、その後に、中間法人・公益法人・NPO などの形で、これを適切な組織に移管していくということが上げられると思う
- ひとつここで、民間事業者がこうした事業を行うということの検討を協議会でも話させて頂いたが
- それを行うと、現状の経済規模では一回あたりの使用料、データの接続料が非常に高額になり、そもそも、このゲートウェイ自体が使われないということになる懸念が指摘され、こうした提言とさせて頂いている
- 私共からは以上になる
以上で、中村オブザーバからの詳細報告は終了し、発表者は吉川オブザーバに戻りました。吉川オブザーバの発言内容はつぎのようなものでした。
- 全体では 400 ページ弱のレポートだったので、作った本人としては沢山喋りたくてちょっと長くなってしまって、申し訳ない
- 大きなポイントとしては、制作者が権利を持っている番組というのは、意外と沢山あったのだなというのが、感想になる
- あと、実際に放送事業者の方々にもヒアリングさせて頂いたのだが、放送局で管理しているデータというのは、自社で制作・著作を持っているものだけということで、例えば ATP さんに代表されるような、制作会社さんが権利を保有しているものに関しては管理されていない場合が多いようだ
- 従って、ここで何を言おうとしているかというと、データを最初に入れて頂かないと、番組が永遠に商品として流れていくことが無いということがある
- 従って、制作者の方はかなり忙しいようだが、そのデータ入力の負荷をできるかぎり下げて、どうやってデータの入力を促進していくかということを考えて、今回のゲートウェイでは、できるだけ多くのステークホルダーに協力して頂いて、一つの商品を作り上げることを考えた
- 問題になっている部分でもあるが、この業界では、作品という意識を持って制作されている作り手の方が多い
- 作品に、データベースで入れなければいけないデータがついて初めて商品として価値が出て、投資家として投資の対象となってくる部分があることを踏まえて、できるだけ、その作品をより多く流通させる為に、データをどのように集めて、どのように作るかということ
- それを考えるのが重要なのかということになる
- このような話は、我々が突然考え付いたことではなく、コンテンツの世界では、皆が、このようにできればなと望まれていた部分であると伺っている
- しかしながら、色々なステークホルダーさんの間での調整等があって、なかなか踏み込めない部分であったと
- ある権利者団体の方から「三井さん、踏み込んではいけないところに踏み込んでしまいましたね」と、私は褒めて頂いたのだと受け取っているのだが、そうした世界で、新しい扉を開けることができたかなというのが、今回のプロトタイプによる検証実験の大きな成果なのかと考えている
- ちょっと長くなってしまったが、これで私共の報告を終わらせて頂く
- どうもありがとう
以上で、吉川オブザーバ / 中村オブザーバからの、取引市場 DB に関する報告は終了しました。続いて、菊池オブザーバからの、マルチユーストライアルに関する報告が行われました。使った資料は、同じく検討委員会のページ [URI] で資料2・資料3として公開されているもので、報告の内容は、次のようなものでした。
- この場で何度か昨年の取り組みについて説明させて頂いているが、手元の資料 2 と 3 に基づいて、AMD アワードの企画部門賞である、マルチユーストライアルについて説明したいと思う
- まず、資料 2 を見てほしい
- 昨年度のトライアル案件の進捗状況について、かいつまんで報告する
- 昨年度は約 50 作品以上の応募があって、19 作品が選定され
- そのうち 4 作品が、地上波、それからネットでの放送等の展開がされた
- 一番上の「トンスラ」は電通様の提案案件で、資金調達については制作委員会方式で実施された
- 放映については、地上波での放送は完了して、現在は CS 日本で放送中である
- マルチユース展開としては、ネット配信、モバイル配信は完了していて、現在 DVD・サウンドトラックの他、コミック化もされている
- 二番目の「蒼穹の昴」はアジアコンテンツセンター様の提案案件で、制作資金は、アジアコンテンツセンター様の自己資金、それから広告会社と制作会社、中国の制作会社の自己資金という形になっている
- 放映は、NHK さんの予約購入枠での放送ということが予定されている
- マルチユース展開の見込みは、ビデオオンデマンド、DVD、国内外の番販、モバイル配信、出版、加えて、旅行の企画等が進められている
- 三つ目の「30分で体感する、日本文学ドラマ」は大日本印刷様の提案で、資金調達は制作委員会方式
- 放映は、地上波で 09 年、夏編成を前提にスキームの調整中というふうに伺っている
- マルチユース展開の見込みとしては、その後、BS、それから、PC やモバイルでの配信、海外番販、タイアップ広告、DVD と加えて書籍、それから単館等での映画というふうになっている
- 四番目の「フォーク音楽遺産」はライブライフジャパン様の提案案件で、資金調達は番組制作委託という形で、調達先は電気通信事業者
- 放映は IPTV、PC、モバイル向けをほぼ同時に展開され、配信完了している
- このように四作品が実現、または進捗している状況にある
- しかしながら、昨年度のトライアルを通じて、また、取引市場ワーキングでの議論から、多くのご意見・ご要望を頂いたという認識でいる
- 大きな課題について、制作者サイド、それから協力者サイドからの意見を紹介させて頂く
- まず、制作者サイドから一番大きく寄せられたものが、制作会社側で、制作資金の調達や、協力会社を集めるということが困難であるということだった
- 原因としては、地上波枠の確保がなければコンテンツの二次利用以降に着目してリスクを負う出資者がいないということと、地上波の枠の確保がないと、スポンサーの資金がどうしても出しづらいという現状があるということが、多数寄せられた
- また、関係者や事務局も含めて、場の設定などの機会がなかったことが問題だという指摘もあった
- 協力企業の皆からの意見としては、トライアルの趣旨としてコンテンツのマルチユースということで、地上波だけでなく、パッケージや、ネット配信、衛星・ケーブルTVなどの、多メディアを含めた複数の資金回収手段が本来計画されてしかるべきであったが、採択された企画は、ほとんどそうした事業計画性がなかったという声があった
- また、アワードに関する告知や、準備期間が不十分であったという指摘もあった
- 先ほどの、制作者サイドからの意見に対して、放送枠がセットでないと、制作者側のみの実現は困難で、ビジネスプランとして成熟していないというものや、局も実験と割り切って協力して頂きたいというふうな声もあった
- 企画全体を通して、プロジェクトオーガナイザ、ゼネラルマネージャ的な立場が必要じゃないかという意見も頂いている
- 以上のように、進め方やスキームについて、様々な指摘を頂いている
- そのような中でも、昨年度の参加者の中から、このコンテンツ取引市場における新しい取り組みを、今後も是非継続してくれという声も多かった
- そこで、頂いた意見等を踏まえて、改善できるところは改善し、本年度もトライアルを継続するということで関係者の皆の合意を頂いたところである
- 資料の 3 について説明させて頂く
- これは、今回のトライアルのスキーム概要について記載したもの
- このマルチユーストライアルは、昨年度から、自ら制作資金調達のリスクを負担して、コンテンツの流通を自ら担う機会を得て、さらに創造インセンティブを向上させていくことにより、コンテンツの質的向上・流通促進をはかるということを目的として実施している
- 公募期間について、昨年度、事前に十分な告知がなく、準備基幹が短かった等の指摘を頂いているので、約二カ月の公募期間を設けることにした
- 今回の AMD アワードは、09 年 3 月 24 日から、5 月 30 日までを公募期間としていて、6 月末に選定作品の発表を行いたいと考えている
- 企画の選定について、協力者、協力・関係企業の皆から、コンテンツを回収する為の資金回収計画や事業計画が無くて判断できなかったとの、強い御指摘があったので、今回の公募においては企画選定にあたって、番組内容のみならず、マルチユース計画と製作費の自己調達および資金回収計画の観点も評価に加味することにしている
- また、協力企業として記載の方々の協力を検討頂いているというところで、是非とも、変わらぬ支援を頂きたいと考えている
- 選定作品については、協力者へ作品の推薦、提案者と協力企業とのマッチングの機会を設定することを検討している
- このような機会を設定し、検討結果のフィードバックをすることで、企画提案者と協力者の、関係企業との交流を図り、コンテンツの制作現場と取引市場の活性化に繋げたいというふうに考えている
- 以上、本年度、来年度もよろしくお願いする
以上で菊池オブザーバからの報告は終了しました。ここからは意見交換に入り、最初は村井主査からの指名で順次発言が行われて行きました。
最初に指名されたのは、取引市場ワーキンググループで、議論に参加している立場という点から、放送事業者代表委員である佐藤委員 (フジテレビ) が指名されました。佐藤委員の発言の内容は次のようなものでした。
- 調査研究の発表ありがとう
- データベースのことに関しても、また、マルチユースに関しても、やはり、市場が成熟していないところからスタートするということで、色々な仕掛けがなされていかなければいけないというところが、やはり最大の問題であると思っている
- その、コンテンツと新しいメディアの関係に着目していかないと駄目なのじゃないかなと個人的には思っている
- 全てのコンテンツは歴史的に見ても、メディアの特性に合わせて、新たに創造されてきているという部分が非常にあるのではないか
- 新しいメディアが、新しいコンテンツを生み出すということが、クリエイターサイド、コンテンツサイドにとっても、新しいメディアを魅力的であると感じる最大の要因であるということを踏まえると、その新しいメディアのオーナーの方々が、その新しいメディアに向けたコンテンツの創造に向けて、極めて積極的な役割を果たして頂くと言うことが、非常に重要であろうかなと思っている
- 演劇の時代に、演劇を作ってきたものは誰か?
- 映画の時代に、映画を作ってきたものは誰か?
- テレビの時代に、テレビを作ってきたものは誰か?
- マルチチャネルの時代に、マルチチャネルに向けたコンテンツをどうやって作ってきたか?
- そして、インターネットという新しいメディアに向かって、誰が、コンテンツ制作のリスク、コンテンツ流通のリスクをとっていくかという認識論にもとづいて、そこは考えていかなければいけないのではないかと思っている
- 随分古い話になるが、マクルーハンが「メディアはメッセージなり」という言葉を残している
- まさにそれを借りて言うならば「メディアはコンテンツ」なりということでもあろうかと思う
- いかにもインターネットらしいコンテンツというのがやっぱり産まれてきてしかるべき
- それは放送コンテンツの二次利用ということを踏まえても、インターネットらしいリパッケージングが行われなければいけない
- このマルチユースのトライアルで掲げられていることは、いわゆる二次利用ではなくて、積極的な一次利用をマルチに展開するということだろうと思う
- 是非とも、メディアのオーナーの方に、メディチ家になって頂いて、踏ん張って頂くということが非常に重要なことではないか
- その場合には、放送局も実はコンテンツクリエイター、コンテンツ制作者であるので、その際には、満を持して新しいコンテンツの制作に乗り出していきたいと思っていることだけ、理解頂ければ嬉しい
以上で佐藤委員の発言は終了しました。次に指名されたのは同じく放送事業者の立場から、元橋オブザーバ (NHK) でした。元橋オブザーバの発言内容は次のようなものでした。
- 最近なにかと、フジテレビと NHK が組むことが多い
- 実は、申し上げようかなと思ったことを、ほとんど佐藤さんから言って頂けた
- 私の方から具体的な例として、ひとつ最近の例を紹介する
- メディアのオーナーの方が出資をしたり、あるいは制作の主体になるということで言うと
- 実は 10 日ほど前に、神奈川県の三崎、三浦市で行われた「ロックの学園」[URI] というイベントがあった
- それを、ある IPTV 事業者の方と、私共の子会社の番組制作会社 NHK エンタープライズと、それから民放テレビ局で制作委員会を作り、それで番組を作ったということがあった
- 三日間、相当長時間のロックのライブイベントだが、ライブとしては、IPTV 事業者さんが流す
- そして、今度 4 月下旬に私共の BS ハイビジョンで、一時間半ずつ三日間の枠で放送するというスキームが今回できあがった
- NHK としては、番組を制作委員会から予約購入、放送権を購入するという形で成立した
- 非常に長時間のイベントを放送でやるというのはやはり現実的では無い
- そこはやはりインターネットのメディア特性にあわせたという形で、まさに新しいメディアらしいイベントを、 IPTV 事業者の方が頑張って頂いたのだと思う
- そういう、まさに出資もし、制作主体にもなりという形で、新しいコンテンツが産まれてくるという中で、外から「良質のコンテンツを、放送の側に二次利用させてやるぜ」という新しい取り組みが、徐々にではあるが産まれてきている
- もちろん私達、放送の二次利用も、今の何倍ももっと頑張らなければいけないという認識はある
- しかし、今後、こういう活動がもっともっと盛んになって、放送局が、放送権の取り合いになるぐらいの活性化が是非行われてほしいと思っている
- 前にもご紹介したことがあるかもしれないが、私共は、2011 年以降の新しい BS のスキームでは、BS というチャンネルの中では、4 割ぐらいは外部の制作会社さんに委託をすると経営計画の中で打ち出している
- そういう意味では、番組制作会社と私共放送局のコラボレーションであるとか
- あるいは、新しい IPTV のサービス事業者さんと、番組制作会社が組んで作った新しいスタイルの映像コンテンツを一部放送で使わせて頂くとか
- 色々な形がこれから産まれてくるのだろうと期待している
- 是非、今回の AMD のトライアルだけではなくて、実際にもうマーケットが動き出していると思うので、第二・第三の取り組みが行われることを期待したい
以上で元橋オブザーバの発言は終了しました。次に指名されたのは実演家団体代表の立場の椎名委員 (CPRA) でした。椎名委員の発言内容は次のようなものでした。
- このトライアルも、実証実験も、とりわけ実証実験では、協議会にはフルに参加させて頂いた
- この種の話というのはいくつもあって、データをいろいろな所から書きだしてきて、一つの入れ物に入れれば、ほら、こんなに便利になったでしょという話がある
- あえてそうした発想を取らずに、ゲートウェイという発想を採用した
- しかも、何らかの形を先に想定するのではなくて、実際に許諾のオファーが起きたことを想定して、その必要なパスを追っていくというような発想でやられた
- それなりに実際に、今後を検討していく中での成果は得られたのではないかと思っている
- 一方で、これはいつも申し上げていることで恐縮なのだが
- コンテンツ取引市場の形成ということを言う場合に、何がネックになっているのかということをこの委員会ではずっと追いかけてきていると思う
- そこで明らかになってきたことは、よくいわれるような、著作権とか、許諾権がネックなのではない
- ビジネスを行う上で、不可欠な要素とも言える、誰がリスクとコストを負担するのかという部分が完全に欠落している点である
- 実はこの委員会でも、その点を克服できないままでずっと話をしているような気がする
- そのようにミッシングピースが明確に判っているなかで、はっきり言ってしまえば、マルチユーストライアルでは通信事業者は参加をしないし、データベースに関しては放送事業者さんがあまり乗り気ではない
- そんな中で実証事件やトライアルをやるもの良いが、やはり、そこで得られる成果というのは限定的なものにならざるを得ないのではないか
- 一方で、リスクやコストに言及することなく、あるいはそれを意図的に回避をして、「コンテンツを流通させる特効薬があるよ」と「それは、ネット権だよ」と「フェアユースだよ」というふうな話が提案されている
- クリエイターにきちんと成果を戻すなどという美辞麗句で飾られてはいるが、その実、ネットというフィールドでコンテンツを囲い込んで、地上げをするのを合法化しましょうよと、いうような法改正が提案されている
- しかもそれが、著作権法を始めとする、法律の専門家のすごい偉い先生方によって臆面もなく提案されているというのが今の状況だと思っている
- そのことは非常に深刻だなという受け止め方をしている
- そのコンテンツをぞんざいに扱うという風潮は、今に始まったことではない
- コンテンツの私的複製に関する補償金制度が一方的に無効化されてきたこの数年間の歴史を見れば、既に予見されたことではある
- この風潮を、やっぱり、どこかで歯止めをかけていかなければいけないのではないかなと思っている
- こうしたトライアルや、実証実験もよいけれど、今、急速にコンテンツ制作の現場では疲弊が進みつつある
- その中で、役所として議論するべきテーマというのは、もっと他にあるのじゃないかなとも思えてならない
以上で椎名委員の発言は終了しました。次に指名されたのは同じく実演家団体代表の立場から堀委員 (音事協 / ホリプロ) で、その発言内容は次のようなものでした。
- 過去、この委員会で何度か申し上げたが、流通したい作品として、過去の作品とこれからの作品を一緒に論じていることが非常にナンセンスだなと思う
- これからの作品に関しては「こうしたデータを皆で一生懸命作りましょう」ということを前提としていれば、制作現場の末端まで膨大な作業はかかるが、やろうと思えばやれなくもない
- ただ、過去番組に関しては、さっきの報告にもあったように、データそのものが無いというものが、一杯ある
- そうすると、過去の番組は、全部目視しなければいけないと、もう人手が馬鹿にならない
- それでもやりたいのだろうか
- やりたい人がいるというのであれば、じゃあ、その流通のコストの負担は誰がすべきかという話をしないと、過去作品については流れるはずがない
- 権利者が幾ら欲しいとか、幾ら欲しくないとかの前の段階で、一体何人出ていて、どんな音楽が使われていてと、もう、その音楽自体を記憶で知っている人を頼るしかないという非常に属人的な作業がある
- ユーザさんは、一円でも安く欲しいと思う
- 流通したいと思う人は、流通コストは払いたくないと思う
- コンテンツホルダーは、そこまで自腹を切ってまでやりたくないと思っている
- そういう中で、皆で顔だけつきあわせても、これは厚いタオルの投げ合いだろう
- だから、過去作品と、未来作品ははっきり分けるべきだと、これはもう何回も申し上げている
- データベースの方の報告の 8 ページだが
- 海外販売事業者から日本のコンテンツホルダーが一番儲からなそうだと思っているところに、具体的な希望を出していて、NHK とテレビ東京の番組が多いのが気になるが、非常に具体的だ
- ただ、一つ上にあがって、DVD レンタル事業者になると「昔視聴率が良かった番組で、現在もまだ人気の俳優が出演している番組」、「昔のバラエティ」、「8時だよ、全員集合」、「昔の歌番組」、で上までいって、今度はインターネット、ケーブルテレビ配信事業者だと、「邦画」、「テレビドラマ」、「テレビバラエティ」、これじゃ全部じゃないか
- こんな雑な要求はないのではないか
- 「あれば買う、売れてるものだけ持ってきてくれ」と言っているふうにしか見えない
- 昔よかったということに限定しているということは、将来的にはあまり希望がないと思っているのだと思う
- まさにこの「8時だよ全員集合」について言えば、「8時だよ全員集合」を持っているコンテンツホルダーが、皆が一斉に、どこでも見れるようにしたらこのコンテンツが先細っていくと判っているので、出荷調整をやっている
- それで、古いコンテンツでも新しい人が見て面白いように、今度また TBS さんでやろうとしていて、常に新しいお客さんを開拓していて、これがコンテンツの生命線なのだ
- しかし、レンタルでさえそう思っている
- インターネット、ケーブルテレビ事業者さんに関しては、邦画とはどんな邦画が欲しいのか、テレビドラマとはどんなテレビドラマが欲しいのか、これが無い間は、マーケットなど成立するはずがない
- 今は本の流通の販売店ですらかなり厳しくなってきて、それを「本屋大賞」というのを作ったりして、本の販売員が一生懸命本を読み、その本の、文芸評論家とは違う賞を作って、何とか本を売ろうとしている
- こういうことに関して、この事業者さんはほっといてもできるものだと思っているのだろうかと、非常に疑問だ
- 先ほどの、流通コストを誰が担うのかという議論がない限り、データベースを作っても、ランニングコストを負担する人がいなくなってしまう
- そうしたら、これは宝の持ち腐れとなる
- 宝の持ち腐れにわざわざ人を割いて、今、制作の現場にはそんな余裕は無い
- 一円でも削りたいと思っている中で、この問題を解決しない限り、流通のことを先に言うというのは、マーケット理論から言ってもナンセンスだと思う
- また、マルチユーストライアルに関しても、前の時に制作会社の方が言われていたように、もはや今更という感じで、一次利用の番組を作るのにすらひぃひぃ言っている
- この状況で、大手の何百人・何千人といる会社の人たちが頑張ってもスポンサーが付かないのに、5 人・10 人の零細企業が企画一発でスポンサーを捕まえて、自分でキャスティングをして、いつ放送できるかも判らない番組を作り始めるなどということはありえない
- 考えたところで、そんなお人よしがいるはずがないし、まったく絵に描いた餅になりかけている
- もうそれどころではない
- 今は、原価を抑えなければいけない
- 質の高いものも求められている
- ユーザさんのチェックは非常に厳しくなっている
- 再放送や再編集の番組が増えて、本数自体が激減していて
- 当然出演者の機会も大きく減っている
- そうした中で、運転資金もままならない会社には、とてもこんな余裕は無いように思える
- 「流通の促進」と、このお題目が、いつも、どの会議でも言われている
- しかし肝心の流すコンテンツがこういう状態
- 将来的にもレベルがどんどん低くなっていく
- 数も少なくなっていく
- これで本当に知財立国など成り立つのだろうか
- そんなことをやっている間に、過去番組の目視をしている間に終わってしまう
- 実際に放送の現場で働いたことのある人であれば判ると思うが、BGM に何を使っているかなど、音響効果さんの人しか知らない
- 編集するまで、MA をする、音を入れる作業をする時に音効さんがやってきて、次々と音を入れていく
- それが何の曲なのかは、僕らがプロデューサをやっていた時も、一切判らなかった
- そこは完全分業でやっていた
- それはデータが無いのが当たり前の話で、いつまでこの議論をしているのだろうか
- 正直、実演家団体 (音事協) でもあるし、制作会社 (ホリプロ) でもあるし、一番プリミティブな舞台の制作者でもある
- 流通ではコンテンツが育たないと、切に訴えさせてもらう
- こう言うと、映画は良いじゃないか、アニメは良いじゃないかと他の会議でも言われているようだが、アニメの制作の現場はもうガタガタだし、もはやアニメで世界に打って出るというのは、10 年遅い話になっている
- 映画も、日本の映画は好調だと言われているが、全体の客単価は下がっているし、スクリーン数が多くなったおかげで飽和状態になっていて、動員の人数も増えている訳ではない
- 洋画が下がっただけの話で、ここの所を拡大解釈して、異常に、日本のコンテンツが元気なように思われているのだとしたら、よく、そのデータを見て頂いた方が良いのじゃないかと思う
- ゲームソフトに関してもその通りで、制作コストだけがドンドン上がっていて、今、流通が非常に苦しんでいる部分がある
- 流通だけではとてもコンテンツが育たないという原点にもう一度立ち返って頂いて、どうすればこの国は知財で稼げる、外貨を獲得できる国になるということをもう一度考えて頂きたいと切に思う
以上で堀委員からの発言は終了しました。次に指名されたのは、番組制作者団体代表の立場から寺島オブザーバ (ATP / テレコムスタッフ) で、その発言内容は次のようなものでした。
- 今日は私たちの ATP という連盟の年度末の総会があり、そこに居たため、貴重な話を最初から伺うことができなかった
- 先ほどから、制作の現場が疲弊しているという話があるが、今日の総会で、あるデータが出たのでまずそれを披露してから話に入りたいと思う
- 昨年の 11 月からこの 1 月までの三か月間の、プロダクションの売上と経常利益をアンケート調査した
- これは ATP と全映協 (全国地域映像団体協議会) で一緒にした 113 社のアンケート結果なのだが 43.3% が経常利益で赤になった
- 通常は、この三ヶ月間はプロダクションにとっては掻き入れ時なのだが、その三ヶ月間で 113 社の約 40%、約 50 社が経常利益ベースで赤に転落してしまった
- この調査は去年の 8 月から 10 月にも行ったが、その時は営業利益ベースで赤を食らった会社はそう多くなかった
- なので、世界の金融大不況から始まったある種の経済の悪化が、今、制作の現場を直撃しているという状況にある
- その中で、ATP の総会に AMD の菊池さんも見えて、コンテンツ振興課の飯村さんも見えて頂いて、我々の会員社にこの AMD アワードの説明を頂いた
- 去年のこともあるので、この公募トライアルに関する変更点を説明して頂いた上で、去年に比べて、テレビ局さんに第一ウィンドウとして放送権を買って頂くということは前進しているだろうかとお尋ねした
- ところが「多分それは縮小するだろう」と、昨年度よりも「放送権譲渡で資金調達・資金回収を図るということを期待すると、それは間違った形になるだろう」という返事を頂いた
- となると、先ほどから言われているように、ただ放送ありきではなく、はじめに違うところを見つようということを、この実証実験では言っているのだと思う
- 半数に近い現場の制作会社が営業利益が赤に落ち込む中で、放送権譲渡で資金回収を図れないこのトライアルに、私も会員社に強く進めることはできないだろう
- これが正直な実感になる
- 従来の、クライアント・代理店・放送局・プロダクションというお金の流れが今までの民放の番組のスキームだった訳だが、放送局さんはこれとは違った形で優良と思えるコンテンツを手に入れることができる
- もちろんそのコンテンツが本当に優良であるかどうかは、トライアルに公募して企画がとおり、制作が始まらないとなかなか判断できないかもしれない
- 色々な意見はあると思うが、優良と思えるコンテンツを従来とは異なるスキームで手に入れるという、新しい放送のありようとして、もう少し挑戦的に放送局さんに対応してもらう訳にはいかないのだろうか
- この間も、NHK さんの「テレビの、これから」という大討論番組で、視聴者と制作者のある種、思惑のズレが露呈したと思うが、我々にとって、テレビの放送文化というのはとても大きなものがあると思う
- それがずっと、ある種、制度自体が金属疲労をおこしているのではないだろうか
- 単に不景気・景気の問題だけでなく、様々な不祥事も含めて、今までのスキームがある種の疲労をおこしているのではないか
- その時に、新しいスキームを作ること自体は、天下国家といえば大げさになるかもしれないが、視聴者の信頼に応えるべき姿勢なのではないかと
- マルチユーストライアルに関してはそのような意見を出させて頂きたい
- データベースに関して、このことも先ほど堀さんがおっしゃっていたように、過去と現在、日々本当に HD の素材が今、生まれている
- これは、我々も今「EIZO 創庫」というデータベースを作っていて、これは過去のコンテンツと素材の販売を考えているのだが、その機能でこの実証実験に参加している
- しかし、ここに放送局が参加していないことで、我々にとって、大きな出口が見えなくなってしまっている
- 本来ならば、2011 年の完全デジタル化に向けて、納品形態が絶対に変わるはずだ
- 我々が理想としているのは、取材から編集、納品という流れのワークフローの中でメタデータが生成できて、納品した時には全てのメタデータが付いていて、完全なデータベースもそこで作成されているという、そういう状況を理想として考えている
- やはり、過去のモノを人が見て、そこで様々な形でデータを付けていくという、この、本当に愚かしいこの作業を、我々の次の世代には、もしくはすぐそこまで来ている後ろに来ている世代にはそんなバカなことをさせたくない
- そのためにも、放送物を納品する時のフォーマットを含めて、フォーマットはどうなるかということも含めて、データベースやメタデータを考えていかなければ、単なる実証実験で終わってしまうということを非常に危惧している
- もうひとつ、メタデータをつけていく人件費、コストを誰が見るかということについて、こんなことを言うのは我々自身が辛いのだが、今、我々の環境が劣化、悪化している中で、スタッフにそこまでのことをなかなか言いづらい
- ただ日々、本当に知財立国を支えるべき素材やコンテンツが、どんどんと、名無しの形でどんどん減っていってしまう
- 出来るならば、そのデータを付ける、付与していく作業もコミで、ある種の制作費がついていて、そして、どのようなメタデータをつけるかについては各局さんで統一をとって頂いて、納品された時には統一フォーマットのメタデータが付くような、そんな仕組みは考えられないものかと夢想している
以上で寺島オブザーバからの発言は終了しました。次に指名されたのは、高橋委員 (フリージャーナリスト) で、その発言内容は次のようなものでした。
- 取引市場形成のデータベースの検証実験やマルチユーストライアルの二つの報告を伺って、消費者としては感想めいたことしか申し上げられないということを先に伝えておく
- 委員としてこの件に関わってきて、桜の花が咲いたのが二回目か三回目かと思うほど長くかかっている
- マルチユーストライアルに関して、もう一年やるということだが、駄目だったならば官なり制度なりと言いつつ、もう一回とやっているうちに、その時には手遅れになっているのかなと、非常に暗い気持ちで皆の話を伺っていた
- 最初の報告の、最後の考察の所に「市場の成熟していない状況で民間事業者が行うと利用料が高額になり、利用が促進されない可能性があるから、電子政府機能の一環として官や外郭団体が運用」云々と書いてあるが、この官の支援というのは私たち国民の金なので、意味のあることに使って頂きたいと思う
- 良いコンテンツが良い競争の中で産まれてくるので、無理に競争をさせても良いものは産まれないなと正直感じた
- 以上感想になる
以上で高橋委員からの発言は終了しました。ここで村井主査からの指名は終了し、ここからは希望順での発言が行われていきました。最初に発言を希望したのは三尾委員 (弁護士) で、その発言内容は次のようなものでした。
- 私もちょっと感想的なところからお話したいと思う
- これまで長い間議論されてきていて、昨年来の議論と報告書も拝見させて頂いたが、今回の二つのトライアルは、たぶん経緯としてはそもそもはスキーム自体を国が関与して変えていった方が良いのかということが議論されていたと思う
- だけれども、やはり民間ベースでやるのが良いだろうという結論になって、それで、業界全ての方々が賛同されている訳だから皆で考えていこうということになって、この二つのトライアルが開始されたという経緯だと思う
- その中で、今回の発表にあったように、データベースについてはきちんとできれば取引の流通に寄与するのではないかという話だっと思った
- ただし、入力データの作業をするのが大変で、コストも時間もないということで誰がそれを負担するのかという点がネックになっている
- マルチユーストライアルの方についても、色々な問題点があり、それほど大きな効果、実証的な効果は得ていない、いろいろ問題が多いという報告だったかと思う
- それでも、一度民間で頑張ってやっていくという結論もとでこのトライアルが開始されて、一定の方向性として、完全にゼロではなくて、作ってみても良いかな程度のレベル感になっているのだと思う
- そもそも、「コンテンツを流通しなくても良い」と断言される方はおそらく居ないと思う
- 誰かがその時間とコストを負担してくれれば、流通した方が良いと、多分そうした考えなのではないかと思う
- そうした中では、やはり前に進んでいかなければいかないんじゃないかと、私としては思う
- 昨今問題になっている、ネット権・ネット法構想について、ネット権構想自体はそれほど明確な意図が判らないと、私としてはそうした印象を持っている
- 私としての個人的感想だが、これは、権利を集中化させるということが本旨ではなくて、要は誰かに時間とコストを負担させるスキームを作ろうとしているのじゃないかと思う
- 権利を集中させることによって、その権利者が時間やコストを負担するというそういう流れを考えているのじゃないかと思う
- やはり今、この業界は確かに疲弊している
- 時間とコストをだれも負担したくないという所で色々なトライアルもスタックしていて、先に進んでいないと思う
- そういった中で、ネット権構想が、脈々と潰れないまままだ残っているという現状は、やはりその必要性というものを誰かが感じているからではないか
- それはどこにあるのかというと、やはり、誰かが、リスクとコストを負担して、前に進んでいく、そういう、エネルギーを負担しなければいけないというものがあると思う
- このままではいけないということだと思う
- ちょっと口はばったい、皆、判っているのだと思うが、誰がコストを負担するのだ、リスクを負担するのだ、先行きが見えないじゃないかということはもちろんあると思うけれども、もう少し、前に進むべき方向性というのは、ないのだろうか
- 今、テレビ業界も非常に広告収入が減っていて、厳しいというのは色々なところで言われている
- その中で新しいビジネスモデルを模索されているとは思う
- なのでキャリアと放送局の融合ということは、実はどんどん進んでいるのであって、どちらが負担するべきだということを言うのではなく、全体として盛り上げていく方向で考えた方が良いのではないか
- そうでないと、ネット権構想の中に、変に足元をすくわれてしまうということもあると思う
- 私の個人的感想だが、もうすこし前向きに進んでいった方が良いのではないかな思った
以上で三尾委員からの発言は終了しました。次に発言を希望したのは浅野委員 (IBM) で、その発言内容は次のようなものでした。
- このデータベースの環境整備の為の実証実験とか、あるいはAMD におけるマルチユースのトライアルというのを含めて、試み自体は良いと思う
- しかし、この延長線上で、元々この委員会で検討している、コンテンツ流通を促進していくというような大きなうねりに結びついているのかというところにおいては、やはり疑問がある
- そこの所をどうやって突破していくのかというところにおいて、あまりに小規模だと、参加者が言っているところが、非常に大きな問題ではないか
- もともと、ネット権という話が出ているように、ここの委員会でも、コンテンツの流通なりを如何に促進していくかと、あるいはコンテンツ市場を如何に立ち上げていくかということを、ずっと議論してる
- その中で、ネット権構想というのが一つの考え方として世の中に打ちだされている
- この考え方自体に関して、この委員会でも二回ほど議論をして、その中では、積極的に賛成だという話では出なくて、かなり批判的なコメントも、特に権利団体の方々から出てきた
- そうした中で、このネット権みたいな話が出てきている、しかもそれ自体が、下火にならずに、むしろどんどんと勢いを増していると、そういう現状がある
- その中で、特に権利団体の方は、ネット権構想に関しては、かなり激しく反対という立場でコメントを出している
- 確かに、権利団体の言っているようなことも、誰がリスクを負担するのかということが決まっていなければいけないのじゃないかと、もともとその流通を先に注力して、ネット権構想というものを打ち出す前に解決しなきゃいけない問題はあるのじゃないかという指摘は、私も理解できる
- しかし、これだけやっぱり勢いを増している、こういうようなネット権構想みたいなものが、どんどん世の中で議論が活発化していることに対して
- そうではないのだということであるなら、むしろ「コンテンツ流通に関してこうであるべきだ」というようなことを「それに関しては我々自体はこうしていくのだ」ということを
- 特に権利団体の方は、単にネット権構想に対してリアクションみたいな感じの批判をするよりは、デフェンシブな形でやるよりは、むしろオフェンシブな形で
- 自ら「こうしたほうが、コンテンツ流通においては正しく流通するのだ」と、「よりコンテンツの取引市場に対して、我々の方法論、意見の方が良いのじゃないか」ということを、ちゃんと打ち出すべき時期にきているのじゃないかと思う
- だから、そういうふうな考え方を是非ともお聞きしたいと私は思う
以上で浅野委員の発言は終了しました。この発言に対して最初に回答したのは椎名委員で、その内容は次のようなものでした。
- 言っていることは、よく判る
- 実証実験の方でも、権利の集約、窓口の集約、まあ津田先生も言っている「権利者が権利の集中化を進めるべきである」という議論だと思う
- そのことは、一般論としてはもちろん理解できる
- これまでも、権利情報の集約化とか、その、権利者側で推し進めている課題については、これまでも披露をし、これからも前向きに取り組んでいきたいと思っている
- しかし一方で、集約化と簡単に言っても、やはり先ほども出荷調整という言葉が出たように、実演家にとってビジネスの根幹とも言える許諾権を、今存在している、例えば著作権等管理事業法のような法律の中に全て集約できるのかといえば、それは難しく、かなり困難なことが伴うと思う
- 仮に、それを無理やりそういうことをやったとしても、それが良い結果をもたらすかどうかというのは、すごい疑問であると考えている
- 様々なコンテンツがやっぱり、ふんだんに制作される環境を維持していくということの為には、やはりクリエイターにきちんと対価が戻っていくためのインフラや、そういうシステムがきちんと、確固たるものとして整備されていく必要がある
- その点について、我々権利者団体とか、関係する事業者とかの責任はすごい大きなものだと考えている
- しかし、我々が今直面している問題というのは、そういうレベルの前の段階であって、クリエイターに与えられている権利が極めて過分なものであるということを前提として、それをショートカットする議論として、ネット権とかフェアユースが出ているのが原因だと思う
- この検討委員会の中でも、コピーワンスからダビング10への経緯の中で、コンテンツへのリスペクトということが、そういうフレーズが一時踊ったわけだが、その Blu-Ray ディスクの指定も一向に行われていない
- 補償金制度は立ち枯れ寸前という今の状況の中で、さらにネット法とかフェアユースとか言われている
- そういう、どっちらかというと、刃物を突き付けられている状況で「お前ら提案はないのか」と「自分らでそれを切り開く提案はないのか」と言われるのはちょっと筋としては違うのではないか
- そのように、あくまで思わざるを得ない。そういうふうに思う
- もちろん、そういうふうな状況に、権利者が置かれているということとは別に、権利者団体がすべき役割、その流通促進に資するべき部分があるのではないかということについては、やっていくべき仕事は沢山あると思う
- そういうことを厭おうとは思わない
- しかし「お前ら、そこでネット権と言われちゃうから、やらなきゃなんないんじゃないの」と言われてしまうと、それは非常に不本意だなという気がする
- そんなことよりも、この検討委員会のメンバーの方々には、その、これまで解決していない部分、それから課題として掲げている部分、宿題になっている部分を、今後どうやって解決していくのかということの知恵を出して頂きたいと思う
- 対価の還元も実現していない
- そういうことをやっぱりこの検討委員会で、やって行って頂きたい
- 我々の行うべきことはきちんと行っていくが、この検討委員会の委員の方々にはそうしたことをお願いしたいなと思う
以上で椎名委員からの回答は終了しました。次に回答したのは華頂委員 (日本映画製作者連盟 : MPAJ) で、その内容は次のようなものでした。
- 先ほどからリスクとコストの負担という言葉が出ているが、映画制作者は、リスクとコストの負担をしっぱなしであり
- かつ、マルチユースを積極的に展開しているので、ネット権などという法律の力を借りる必要はまったくないと考えている
以上で華頂委員からの回答は終了しました。ここで村井主査から、堀委員に対して「如何ですか」との水が向けられ、それに応えて次のような内容の発言が行われました。
- これまでのコンテンツ産業というのが、例えば法律とか、例えば政治家の先生とか、役所の方々から、「ああせい、こうせい」と言われるほど注目されていなかった何十年をずっとすごしてきて
- 例えば BS が出来たり、CS が出来たりというのも、テレビ局の皆さんが新しいメディアができて、それをビジネスにしようというところで、我々の団体と交渉して、そこで民々で、まったく今までにないメディアが登場しては、それに流通するコンテンツのこと、対価のことを、これまでずっと交渉でやってきた
- 今現在、浅野さんが言われたように、権利者というのは確かに受け身だなというのは、気持ちとしてある
- あるのだけど、非常にドメスティックなマーケットの中で、悠々自適と、世界第二のコンテンツ立国だというふうに思ってきたことが、どうも、これだけじゃまずいなということにさらされて、こういうことになっているのだと思う
- それが今まで、放送局と、我々実演家、事業者が、何とかビジネスをこしらえてきた部分が変わりつつある
- そういう部分では、今、浅野さんが言われたことに近いようなこともやらなければいけない時期ではあるかもしれないけれど、まだ、そこの考察というか、それが判らない
- 先ほども申し上げたように、我々実演家の会社も、制作会社も、極めて零細な会社が多くて、それで成り立ってきてしまったものだから、大きな仕事がなかなかしたことも無いし、それなりの資金というのも持っていない
- ただ、商品の値段はどんどん下がるというなかで、今打って出るのが、非常に、なかなか言いづらい部分であるというのは御理解頂きたいと思う
- 先ほどのネット権とかの話で、誰かに負担させるというのは、僕は至ってシンプルだと思っていて、誰かというのは使う人が負担するものだと思っている
- それは民放の放送に関しても、広く、あまねく、スポンサーさんが、消費者の皆さん視聴者の皆さんが商品を買って頂くことで負担していたというモデルとして、今までずっと続いてきた
- 無料放送が続いてきたモデルでこれは、あまねく負担して頂いていたものだと僕は思った
- その誰か、というのを、誰かに決めようというのは、僕はシンプルに、使いたいという人が値段を決めて、それを流通させるべきだと、それがマーケットだと思っていた
- 誰かを規定してもらおうと、それを放送事業者に負担させるとか、レコード会社に負担させるとか、そのわずらわしさとコストを負担させるというのはとても乱暴な意見だなと思う
- 様々なことが、同時に、あちこちで別々の人が色々なことを言って、さらされている実演家、事業者の団体だということだけ御理解頂いて
- なるべくそのユーザの皆さんが、できるだけハッピーになるような努力はしていきたいと思う
- それで我々もビジネスをやっていかなければいけないと、本当に自腹を切ってやるわけにはいかない訳ですから、その落とし所が、良い形というのを、模索している
- なので、もう少し時間を頂きたい
- 拙速な結論だけは出して頂きたくないというのが我々の考え方だと御理解頂きたいと思う
堀委員からの回答は以上でした。ここで、予定していた時間が終りに近づいたということで、村井主査から、まとめのような、次回以降に向けての方針のような、次の内容の発言が行われました。
- 本日のテーマ、コンテンツ取引市場の形成ということで、先ほど、高橋委員から「桜何回見たかしら」という指摘があった
- かなり長い時間をかけて議論をして頂いていると理解していて、特に、権利処理に関して「ネット権」という話も、何度か来て頂いて、発言して頂いたり説明をして頂いたりと、様々な立場の方の様々な角度からの発言をして頂いたと思う
- それで、ネット配信を含めて、コンテンツ取引を促進するということで、そういう意見・論議をしつつ、先ほど三尾委員の方から、「それぞれの立場で、具体的に何ができて、前に、どうやったら進められるのか」という話があった
- この委員会は、それぞれの立場の方が参加してこのテーマを議論をしているということに、価値も、使命も、役割もあるのではないかと思う
- そういった意味で、その考えの中で進めて頂くことが大変重要だと思う
- なので、皆で、取引市場ワーキンググループの方でも、そういった具体的な議論を今後も進めて頂きたいというのが一点
- そして今、最後に、権利者団体の方々にそれぞれの立場でお話を伺った
- 今の、それぞれの立場で具体的に何ができるかを考えるという、先ほどの話に従って
- この権利者団体の方々にも、今いくつかご発言頂いて、権利処理にかかる問題というのも、色々な指摘を頂いた
- それに対してどう応えていくかということを、一緒に考えて頂けるというふうにご発言頂いたと思う
- これも是非、皆と、是非考えて頂きたいと思っている
- そういう話で、うまく進むとすれば、先ほど三尾委員も言われたような、前向きに、ワンステップかツーステップか判らないけれど、桜をもう一回見ることはなく
- 長い間かけている議論も一歩進んで
- 或いは、新しい選択ができるという方向に行くのではないかと思う
- また、そうあるべきではないかと思うので、そういう意味では、権利者団体の方も含めて、是非、一緒に考えて頂きたいと思う
- 色々な意見が、今日、深いところでの意見が伺えたと思うし、報告も伺ったと思う
- まだまだ色々と思う所があるかと思うが、そういうことは引き続き、事務局の方に伝えて頂くことで、取りまとめるように努力をしていきたいと思う
- 是非、よろしくお願いする
以上で村井主査からのまとめは終了しました。この後、事務局の小笠原課長から、次回の予定について「技術ワーキンングの進捗次第だが、四月中に可能な限り、技術ワーキングの進捗状況を報告できるように調整を進めている」との発言があり、最後に村井主査から閉会のあいさつで今回の会合は終了しました。
◆◇◆
感想に入る前に前回の会合で聞いた議事録の公開に関して、会合時点ではまだ公開されていなかったのですが、会合前に事務局の方から「現在委員の先生方に確認を取っているところで、四月上旬には公開できるはず」とのフォローを頂いていて、実際、現時点で第38回までの議事録が公開されています。
とりあえず堀委員の第30回の発言 (「コピー商品が問題であり、機器が問題なのでない」の部分) とか、第37回の発言 (「発言が公式の議事録が出る前に非常に詳しく書き込まれている」の部分) がどうなっているかが楽しみだったのですが、第30回の方はあまり手を入れられていないものの、第37回の方は「公式の議事録が公開される前に」という肝心の部分が落ちているのが……載せるなと要望を出したりしたのかなーと微妙に楽しくなったりしました。
◆◇◆
で今回の感想です。マルチユーストライアルに関して、去年の委員会で制作事業者側から出された要望が完全に無視されている説明を聞きながら、こうやってテレビが沈んでいくのかと感じました。
第44回の柏井オブザーバ、澤田オブザーバ、寺島オブザーバの発言を振り返ると、「なるだけ、地上波で放送できる枠というのをしっかり作って頂きたい」「(枠を出す前提がない以上)企画に根本的に欠陥があって続ける意味はない」「地上波さんが枠を出す前提を作ってほしい」と、制作事業者として参加しているすべての方が「地上波であらかじめ放送枠を確保した上でのアワードとして欲しい」との要望を出しています。
その結果が「放送権譲渡で資金調達・資金回収を図るということを期待すると、それは間違った形になるだろう」だとしたら、それは「放送権譲渡で資金回収を図れないこのトライアルに、会員社に強く進めることはできないだろう」と言う意見しか出てこないでしょうね。
◆◇◆
もう少し書いておきたい感想も (取引市場 DB とメタデータ等や浅野委員の意見に対しての権利者団体代表の発言についてとか) あるのですが、それはまた後日ということにしておきます。
4月8日(水) デジコン委 (第50回) 感想あれこれ [1] [この記事]
昨日の時点ではまた後日ということで省いていた考察部分です。取引市場 DB 関連では、ある意味予想通りとも予想以上とも言える現状が報告された訳なのですが、ポイントは次の点だと考えます。
- 番組制作事業者が制作著作を持つ番組に関しては、テレビ局はほぼ何もメタデータ (出演者/利用楽曲/放送日時/タイトル等) を持っていない
- しかし、番組制作事業者も約 40% 程度しかメタデータを管理しておらず、また、管理しているメタデータも二次利用の権利処理に十分ではない
- 放送局が制作著作を持ち、メタデータを (多分) 管理している番組については「ネットが放送と競業関係にあり、ネットに流す利益がない」とのことで放送局に流通させる意思がない (第31回/第33回)
- 二次利用事業者は番組の存在すら知らず、また、仮に番組の存在を知っていたとしても、どこにコンタクトを取れば二次利用の許諾が取れるのか、そもそも条件次第で二次利用を許可するつもりがあるかすら判らない
この状況では放送番組が収益化できないのも当然と思えます。この状態で、それぞれの立場の方々はどのように考えているのでしょうか。
まず放送事業者として発言されている佐藤委員の意見を振り返ってみます。
- ネットには、ネットにあわせたコンテンツが必要である (放送番組をそのままネットに流す必要はない)
- ネットのオーナーがネットにあわせたコンテンツを自ら作るべき
- 金を出すなら、テレビ局でネット向けのコンテンツを作ってもいい (中抜きとプロダクションへの丸投げで稼がせてもらう)
佐藤委員の発言を要約すると、このような形になると受け取りました。まあ、括弧で補足している部分については私の邪推 100% で、実際にはそんなことはないのかもしれません。ですが、今までの会議での発言を聞く限りでは、そのような意図が色濃く感じられるので、あえて付け加えています。
さらに、同じく放送事業者として発言されている元橋オブザーバの意見を振り返ってみます。
- IPTV 事業者の中で、自ら資金調達・制作を行ってネットに向いたコンテンツを配信し、また放送向けに作り直してテレビに二次利用させてやるという例が出てきている
- こうした取り組みがもっと盛んになるべきだ
- 放送局も放送番組の二次利用にもっと頑張る必要がある (NHK オンデマンドをさらに発展させていく必要がある)
- NHK では BS について、4 割の枠を外部に開放する予定だ (プライムタイムアクセスルール相当の取り組みを、制度による強制なしで実現する / なので制度とか言い出すのやめてね)
元橋オブザーバの発言を要約すると、以上のような内容になると受け取りました。個人的にはそれなりに筋の通った意見だと考えています。
次に、実演家 (出演者) 団体を代表して発言されている椎名委員の意見を振り返ってみます。
- 取引市場形成にネックとなっているのは著作権・許諾権ではなく、リスクとコストを負担する者が不在だからだ
- これを無視して「ネット権」「フェアユース」などで「コンテンツ流通を促進させる特効薬がある」と言うのはけしからん
- コンテンツの私的複製補償金制度が一方的に無効化されてきたのと同じ、コンテンツをぞんざいに扱う流れがあらわれている、これに歯止めをかけなければいけない
- コンテンツ制作の現場は疲弊している、こうしたトライアルや実験よりもやるべきことが他にある
ええと「シンプルな言葉を繰り返し繰り返し主張する」プロパガンダの基本をおさえた良い方法であるのですが、それなりに教養のある人が集まっている (ことになっている) こういった場で使うのに適切な方法なのかなと、常々疑問だったりします。
最後の、「こうしたトライアルや実験よりもやるべきことがある」にしても、番組制作事業者に対する海外での公費助成例について「対価の還元ではありえない」と切って捨ててたり (第44回) していた方の主張でなければ、もう少し説得力が出たんでしょうね。惜しい事です。
続いて同じく権利者団体の代表として発言されている堀委員の意見を振り返ってみます。
- これからの番組は「メタデータを入れて行こう」と言えば、できなくはないが、制作の末端まで大変な労力がかかる
- しかし、過去の番組はメタデータが無いものが沢山ある
- このメタデータを入れる流通コストを誰が負担するのだという話をしないかぎり、過去作品については流れる訳がない
- 実際、BGM に何が使われているかなど、音響効果さん以外プロデューサも誰も知らない、完全分業なのだから、データが無いのが当たり前だ
- 流通コストを誰が負担するのかという話が無い限り、このデータを入れたところで宝の持ち腐れになるだけで無駄だ
- 二次利用事業者の購入を希望している番組が漠然としている、売れるものだけ持ってきてくれと言われているように感じる、こんな雑な要求はけしからん
- 「8時だよ全員集合」という例もあがっているが、これはどこでも見れるようにしたらこのコンテンツが先細っていくので、コンテンツホルダーが出荷調整をやっているのだ
- 出版で言えば、流通側で「本屋大賞」というものを作って、書店員が本を一生懸命読んで、何とか本を売ろうとしている
- 二次利用事業者の方達は、そうした努力をしなくても、勝手に売れていくとでも考えているのだろうか
- 流通だけではコンテンツが育たないという原点にもう一度立ち返えるべきだ
堀委員の発言を聞いてると、毎回、「協力しなくてもいいから、せめて邪魔だけはしないでいてくれないかな」と思うのですが、そう感じているのは私だけでしょうか。今回のもなかなか強烈でした。
一点、どうしても指摘しておきたいところがあります。「BGM に何が使われているか、判らないのが当然」という状況を放置するのが権利者団体の代表として適切な行為なのか、よく考えてほしいのです。
堀委員個人は「コンテンツへのリスペクト」などという甘えたことはこれまで主張されていない方ですし、ある意味、音楽プロダクションの収益だけの代弁者となるのは役割として正しいことなのかもしれませんが、所属タレントの権利を守るためにも、他者の権利を尊重するフリぐらいはしておくべきなのではないかと思います。
実際には、JASRAC と TV 局との間の包括契約によって法律上は問題がない形になっているのでしょうけれども、この仕組みがあるからこそ「ネット権」などという、ネット上では包括契約を制度で強制しようという意見が出てきていることを理解しておくべきです。
次に、メタデータの入力コストをだれが負担するべきかについてです。私は過去コンテンツというのは、畑で育った作物のようなものだと思っています。それを土から掘り出し、泥を落として、箱に詰めて、市場まで持っていくのが作り手の仕事だと考えています。そして、市場でセリ落として、実際の店舗に並べ、顧客に販売するのが流通の仕事だと考えています。
なので、メタデータを付けるコストは流通側で負担しろなどという意見を聞くと、収穫作業すら厭がって、畑で作物を腐らせていく怠け者を見たような思いがするのです。
あまり適切な例えではないかもしれませんが、例えばライブやコンサートの DVD を売る場合に、当日コンサート会場に来ていた全観客の許諾を取る必要があるとしたら、そしてその許諾事務を流通側に負担させたとしたら、果たしてライブ DVD という商品はあり得ただろうかということを考えてみて欲しいのです。実際には、観客の許諾を取る必要がなく、権利処理は同事務所内の出演者だけで済むからこそ、ライブ DVD 等が商品ジャンルとして成り立ち、国内音楽 DVD は 2008 年の売り上げで 306 億を確保し、海外ドラマに次ぐ第 4 位のジャンルにまで成長したのではないでしょうか。
さて、言わば当事者である、番組制作者はどのように考えているかということで、寺島オブザーバの意見を振り返ってみます。
- 取引市場 DB に放送事業者も参加してほしい
- 全ての放送事業者で、二次流通事業者が求めているメタデータを統一した上で、それを納品物の一部として指定して欲しい
- そして、メタデータに対しての対価が幾らであるという形で、支払明細に載せてほしい
- そうすれば、これから作るコンテンツに対して、後から、人が確認してメタデータを付けていくという愚かしいことをせずに済む
取引市場 DB に関しての、制作事業者からの要望はこれだけです。ポイントは「メタデータ付与の分だけ、トータルの支払いを上げてくれ」とは言っていないところだと考えました。
「(売れるかどうか判らないけれど) 流通の為にメタデータをつけてくれ」とスタッフに頼むことはできないが「テレビ局がつけろと要求していて、その対価はこれだけとなっているから、メタデータをつけてくれ」と頼むことはできるということなのだろうと理解しました。
その程度の要望すら受け入れることができないのだとすると、いよいよもって救いはなさそうです。
4月13日(月) デジコン委 (第50回) 感想あれこれ [2] [この記事]
前回 [URI] に続いての、デジコン委 (第50回) への感想です。浅野委員からの「ネット権構想に対して反対の姿勢を打ち出すだけでなく、コンテンツの流通拡大に対して、こうすれば巧くいくという案を出すべき」という意見に対して、各権利者団体からは様々な意見が出されました。
このうち、華頂委員の「映画のコンテンツに関しては、映画制作者がリスクとコストを負担してマルチユース展開を進めているので、ネット権の助けを借りる必要はない」という意見に関しては、それなりの合理性があると考えています。映画のコンテンツにも問題がないわけではありませんが、それらの問題がネット権構想で解決できない以上、確かに「ネット権の助けを借りる必要はない」となるでしょう。
また、堀委員の「権利処理のコストと手間は流通に負わせればよい」という意見については既に取引市場 DB に関しての感想の際に触れたので、今回は繰り返さないことにします。
順番は前後しましたが、椎名委員の「刃物を突き付けられている中で、何か案はないのかと言われることは不本意だ」という意見についてです。まず椎名委員が「刃物を突き付けられている」と表現しているネット権構想が、どういった問題意識から出てきたものなのかということを考えてみます。
そもそもの出発点は第31回 [公式議事録] で中村 WG 主査から報告されているように「海外と比較して日本は放送番組の二次流通に対して消極的」という状況があり、結果として、TV 番組を見逃した場合 (特にそれが DVD 等の二次流通が行われないような番組の場合) 違法流通以外に視聴手段がないという状況があります。
そうした状態で、放送番組については権利情報が集約されていないため、使用している楽曲の権利者・出演者・脚本家等々全ての権利者と個別に交渉して許諾を取らなければならず、そのコストと手間が二次流通の障害になっているという観点から、ネット上での二次流通に関しては、法によって権利窓口をひとつに指定して、かつ合理的な条件での利用申請については許諾の義務を負わせることで二次流通を促進させようというネット権構想が提案されました。
実際には今回 (第50回) で、ネット権云々以前の問題 (そもそも誰が権利者なのかすら判らない状態なので、権利処理自体が不可能) だということが報告されているのですが、もともとネット権構想が提案されたのは権利者が二次流通を「妨害している」あるいは「(阻害要因を取り除く) 能力がない」「能力はあるが怠けている」「能力はあり努力しているが、結果が伴っていない」のいずれかだと思われているからです。
そうしたことを踏まえて椎名委員の発言を振り返り、上記のどれに当てはまるかということを考えると (出荷調整という観点から)「妨害している」が半分、「努力しているが、結果が伴っていない」又は「能力がない」が半分という形に見えます。これでは、部外者の立場から言わせてもらうと「刃物を突き付けられている」という状況も自業自得に思えます。
実際にはそれぞれの立場で言いたいことがあるのでしょう。しかし、僻みつづけたところで状況の好転がありえない以上、すこしでもマシな選択肢を選ぶ努力を積み重ねる方が良いと考えています。「なんて不幸な私」という自己憐憫に浸りつづける楽しさも判らなくはないので積極的に止めるつもりはありませんけれど、そうした態度が同情を得ることはないでしょう。
4月14日(火) 雑感 [この記事]
うーん。デジコン委 (第51回) の傍聴申請の締め切り二日前になっても情報通信審議会の開催案内一覧ページ [URI] にはリンクが追加されないのか……。
このページはメンテナンスされていないのだろうかと思いつつも、情報通信審議会のページ [URI] から直接 (左側の開催案内リンクから) 来ることができるのは上記一覧ページだけなんだよなぁ。
まーデジコン委の開催案内ページ [URI] 自体には 4/7 から記載されてるし、総務省のトップページからも (今は消えているけど) リンクが張られていたから、私のような、前回で懲りて更新チェッカに両ページを追加してた人間には影響ないのだけど……。なんというか、公開してる文書の量が量だからページメンテナンスも大変なんだろうけど、もちっと何とかならないものなのかね。
4月19日(日) ARIB STD-B25 仕様確認テストプログラム ver. 0.2.4 [この記事]
更新しました。ダウンロードは [URI] からどうぞ。変更点は次の二つです。
- 終端パケットが野良パケット (PMT に記載されていない PID のパケット) だった場合に、ストリーム内の ECM が 1 つだけでも復号が行われないバグを修正
- transport_error_indicator が立っている場合はパケットの解釈と復号を行わずに素通しするように変更
基本的にはバグ修正ですが、受信環境が安定している人の場合は ver. 0.2.3 のまま更新しなくても問題はありません。
4月25日(土) デジタル・コンテンツの流通の促進等に関する検討委員会 (第51回) [この記事]
恒例の傍聴レポートです。今回の議題は事前予告の通り技術検討ワーキンググループからの検討状況報告で、議事は次の順で進みました。
- 村井主査からの開会の挨拶 & 今回の議題連絡
- 小笠原課長からの配布資料確認
- 村井主査からの、技術検討ワーキンググループでの検討状況概要説明
- 小笠原課長からの、資料を用いた検討状況の詳細説明
- 村井主査からの、補足説明
- 以上を受けての、各委員のコメント
- 村井主査からのまとめ兼言い訳
- 参加者からの、追加コメント
- 小笠原課長からの、今後のスケジュールに関しての報告 & 協力要請
- 村井主査からの閉会の挨拶
ほぼ定型文の開会のあいさつと配布資料確認は飛ばして、検討状況概要説明から議事を追いかけていきます。村井主査からの説明は次のような内容のものでした。
- 資料 1-1 と参考資料 1 ということで、前回の資料と新しい資料が比較できる
- これがどれくらい変わったかによってどれくらい検討をしたか判るということもないかもしれないが
- 沢山の議論を整理して、特にここで皆に頂いた意見を一つ一つ踏まえて、それから 3 回ワーキンググループを開催して議論を進めてきた
- そして今日、状況の報告ということだが、特定の結論や合意に達したという状況ではない
- ただし、ワーキンググループ参加者の協力で、議論は相当進歩している
- 方向性等に関する見え方も大分広がってきたと感じている
- そうした状態だが、概要を説明させて頂く
- 今回の変更のポイントは、大きく分けて3つで報告させて頂く
- 一つ目は報告の中心を「コンテンツ保護に係る機能を開示する方式」ということに置いた
- 今までの B-CAS カード方式の小型化とか事前実装化ということについては、どういう技術的な課題があるかということが判っているので、一番最後に回した
- それで、「コンテンツ保護に関する機能を開示する方式」というのは、技術も運用も新しい仕組みを導入する必要がある
- 従って、検討する点は大変多くなっている
- このフィージビリティ、方法論を含めて、この論点を中心にワーキンググループの中で議論をした
- その経緯を反映して、説明の方もそうなっている
- 第二のポイントとして、前回までチップ方式・ソフト方式と言って区別をしていたが、その区分を止めた
- チップかソフトウェアかというのは、チップという部品の形で受信機に入れるか、ソフトウェアとして入れるかが違うだけで技術的には区別がない
- その区別は、あくまでも商品企画上の判断ということなので、選択肢として区別することを止めている
- 従って、この「コンテンツ保護に係る機能を機能を開示する方式」というのは、前回まではチップとソフトウェア方式と書かれていた方式のことになる
- 三点目は、この委員会で何回か話題になった、ライセンス機関について
- これは B-CAS での B-CAS 社のことだが、その機能を説明する資料を添付している
- ライセンス機関というのが実際にはどういうものなのか、例えば競争とか独占とか、そういう議論を委員会で頂いている
- 現在の方式での B-CAS 社もライセンス機関のひとつなので、その機能の説明をしてから議論を進めているので、そのための資料も今回用意している
- 変更点は以上の三点
- 報告の内容そのものは、まず「コンテンツ保護に係る機能を開示する方式」ということで、概ねコンセンサスが得られていると考えている内容で確認と説明をする
- それから、本日は資料として用意していないが、技術方式の詳細や関係者の役割と責任についてワーキンググループでの議論の紹介をする
- この報告そのものは今から資料を使って事務局からやって頂いて、後で私からまとめる
以上が村井主査からの検討状況の概要説明でした。引き続いての小笠原コンテンツ振興課長からの詳細説明は次のような内容でした。
- 資料 1-1 に従って、技術検討ワーキングでの議論内容の中間報告をする
- コンテンツ保護の方式を基本的に開示するという方式について、技術ワーキングでコンセンサスが取れている点を 1 ページ目の箱の中に、二重丸が四つ並んでいるようにまとめてある
- 飽くまで、まだ検討中の段階で得られてきたコンセンサスの姿ということで、今後の議論によって必要であれば適宜修正やバージョンアップしていくことがある
- まず第一の丸で、検討の対象としては地上デジタル、基幹放送のもっとも典型ということで、当面は地上デジタルを対象としていく
- また B-CAS 以外の新たな選択肢ということを前提として考える
- つまり、新たな開示を原則とする方式というのは B-CAS が存続する前提で、それと並ぶ新たな選択肢という位置づけで検討している
- それから開示という意味は、コンテンツ保護に係るルールを遵守すると約束した全ての方に対して分け隔てなく全てに対して技術仕様を開示する、そうしたことを基本的な考え方としている
- これが第一の概ねコンセンサスが取れているポイントになる
- 第二のポイントとして、技術と契約なので、技術の内容が固まったとして、それをどう運用していくかということが当然ある
- その際、基幹放送ということでほぼ全世帯の方々に行きわたるということを前提としている
- すなわち、非常に多くの視聴者の方々に基幹放送の使い勝手・在り方が影響を及ぼす
- 当然ではあるが、善意の視聴者の方々に対して影響を与えるようなオペレーションは行わないと、これを確認している
- 三点目として、こうした新しい方式ということでも放送波の暗号化を前提としている
- 従って、先ほど先生から話があったように、暗号化の前提となっているライセンスを発行・管理する機関が必要になる
- B-CAS 社もこのライセンス機関の一つになる
- これまで、何度となくこのライセンス機関の在り方について、委員の方々からの言及があった
- 地上デジタルテレビ放送、基幹放送が極めて多数の方々に影響を与えるということを考えると、この機関の役割はかなり公共性を帯びてくる
- となれば、その組織・運営ということは可能な限り透明性が確保されているということが重要になる
- である以上、株式会社というよりは非営利ということを前提として、色々な意味で透明性が外から見た時に、色々な情報の透明性が高い法人ということが望ましいのではないか
- これが三点目になる
- 最後に、今回あくまでも技術と契約ということによるエンフォースメントを検討の対象としている
- 当然ながらこの契約外、※1に書いてあるように契約の外にいる人が、手続きを踏まずに、鍵を不正に取得して受信機を作る
- つまり、コンテンツ保護にかかるルールを全く守らない受信機を、販売・譲渡目的で製造し、販売・譲渡するということがありうる
- こういう人が契約の中に入っていない場合、これは契約によるエンフォースメントの範囲外になる
- そうした人に対して、現行制度によるものを含んで、制度的対応が必要になるのではないか
- しかし、現在検討している新方式の早期運用開始を目指すということが現在の検討の大目的である
- このため、契約外の人たちへの対し方としては、あくまでもそうしたことを目指すというということで、まずは技術と契約でどこまで対処できるのかの範囲を検討して、かつその範囲の早期明確化を図る
- どういった技術方式にするか、契約による当事者の責任はどうするか、その内容を可能な限り早期に明確化して、その方式の運用開始を目指す
- これが基本原則で、技術と契約の内容が確定してその新方式の運用が開始されるまでに、適切な場で、現行法制度の実効性ということの検証を行い
- 技術と契約を補完する制度が必要か否か、要非を含めて検討を開始して、制度の在り方について検討を進めていくというのがコンセンサスとなっている
- ライセンス発行機関の詳細については、三枚目に内容をつけているので、後ほど説明をする
- 以上が、新しい、コンテンツに係る技術仕様については基本的に開示をしていくという、そういう考え方に立った場合の概ねのコンセンサス
- 一枚めくって頂きたい
- この新しい方式ということについて「概要・備考」の所はほぼ前回の復習といったところだが、技術ワーキングで何をどう議論しているか簡単に振り返ってみる
- この技術仕様を基本的に開示していくということについての概要だが、まず、ライセンス発行・管理機関というのが必要となっている
- このライセンス発行・管理機関が何をやるかというと、まず「コンテンツ保護に係るルールを順守します」ということを約束する受信機メーカ、あるいは受信機メーカにチップを供給していくメーカ、そういった方々に基本的にはコンテンツ保護にかかる機能の仕様を開示していく
- 約束を守るという受信機メーカ・チップメーカであれば基本的にはわけ隔てをせずに、仕様は開示をしていくというのが基本的な考え方になる
- この、仕様の開示を受けた受信機メーカとしては、仕様にそった機能を、ソフトウェアとして、あるいはチップという形で受信機に搭載するか受信機メーカの商品企画次第ということで、そこは※の2に書いたとおり
- そこは受信機メーカの商品企画・判断で自由に選択して、受信機に機能として搭載される
- 従って、受信機の中の部品として入っているので、視聴者は受信機を買った後はアンテナの接続とチューナ設定という通常の操作を行うだけで、改めてカードを取り出して実装するということをしなくても視聴することが可能になる
- 受け取った仕様をチップという部品として形にして実装するのか、或いはソフトウェアということで組み込んでしまうのか、これはもう完全に商品企画の自由ということで、特段この二つの区別はしないということで枠を取り払っている
- それから、視聴の為のカードは不要になるので、それに係る知識を事前に必要とするとか、あるいは知らないところでカードを抜かれてしまって見られなくなるとか、そういったこともなくなる
- またカードの貸与ということも無くなるので、視聴者の方々が予め知っておかなければいけないことは、その分、当然軽減される
- それから技術的透明性ということで見ると、コンテンツ保護に係るルール、つまり受信機に実装してほしい機能をかならず付けるということを守るというメーカであれば全て、製造上必要な仕様は開示されるということになる
- 透明性ということでは、非常に向上が図れるのではないか
- こういったことで、技術仕様を基本的に開示していくという方式を考えている
- 引き続き、技術ワーキングで何を議論しているのかということについて
- 課題の所に書いてあるとおり、ようは技術と契約と書いてある内容について、多少詰めなければいけない所が残っている
- すなわち、今説明した、技術を開示していくといった、そういった路線で行った時に
- ふさわしい技術方式と
- 契約といった時に、当事者である、放送事業者・メーカ等々、関係者がどういった責任と役割を担うのか
- そうしたことについて、整理を引き続きやっている
- 検討状況については、ここでは、具体的方策について検討中ということしか書いていない
- 口頭で恐縮だが、技術・契約ということについて、どのようなことが検討されているかということを若干説明させて頂く
- まず、技術の方式としてどういった要件を満たすことが必要なのだろうかということについて
- 次のような要件が必要とされるのではないかということで、検討が進められている
- まず何よりも、ユーザの利便性を確保するという方式であることが必要
- 先ほど申し上げたように、備考のところにある通り、この方式のそもそもの検討目的はユーザの利便性を上げようということだった
- なので、それに合致した方式であるということがまず必要と、当然言えるだろう
- それから、これも当然のことではあるが、地上デジタル放送ということであれば、既に既存の様々な標準方式が存在する
- そういった既存の標準方式とは当然、整合が取れた方式であることが必要だろう
- それから、これは再三繰り返しているが、これが何の為の技術かといえばコンテンツ保護の為の、コンテンツ保護のエンフォースメント (強制) ということを目的としている
- 以上が大まかな、ごく当然の目的をちょっと確認的に申し上げたところで、後は技術的な内容に入っていく
- いわゆる三重鍵方式 (Ks/Kw/Km 方式) が望ましいのではないか
- 具体的には、放送波自体をスクランブルしている鍵 (Ks)、これが当然必要になる
- それから、受信機に対して、一台一台割り当てられる、これは一台一台の鍵が全て同じである必要がないということだが、受信機自体に割り当てられる鍵 (Km) が二番目に必要になっている
- そして、送信側からある程度のコントロールをする為に三種類目の鍵 (Kw)、具体的に言えば、鍵(Ks) を運ぶためのコンテナのようなもの (ECM) と伺っているが、そうした鍵 (Kw) も必要になる
- 技術的にはそうした、三重の鍵が必要になる
- こういった三重鍵というのは、今現在使われている技術方式なので、整合性を確保するという面もあるかと思う
- こうしたことに配慮することによって、既に市場に出回っている、そろそろ 5000 万台になろうとしているデジタル受信機との互換性を確保する
- これは当然配慮しなければいけないことでもある
- それから技術方式としては、何度かこの場でも出ている通り、有料放送には影響を与えないということが大前提
- この新方式を導入することで、有料放送のセキュリティに影響を与えるようなことがあってはいけないということ
- 基本的には、この新方式と既存の B-CAS カードを用いた方式はサイマルクリフトということで併存することを前提として考えられている
- これも当然のことだがサイマルクリフトということで、いずれにしても送信側の方に、何らかの造作が必要となる
- 何らかのコストが当然発生する訳だが、そういったコストが最小限となる必要がある
- あと、100% の技術ということがないのは皆さん良く承知の通り
- しかしながら、かなりの専門知識を持った技術者が相当の時間と労力を使っても迂回・改ざんすることが難しい、そうしたレベルのセキュリティが当然要求される
- 以上、かなり細かい技術的な話をしたが、いずれにしても
- ユーザの利便性の確保
- 既に出回っている受信機との互換性確保
- 有料放送に影響を与えないこと
- 一定のセキュリティ確保
- そうしたことが新方式の技術的な前提条件としてある
- そうしたことについて、技術の内容として議論が行われている
- 次に契約というところについて
- 契約のそれぞれ当事者がどのような役割と責任を担うかということ
- この契約の大前提として、受信機に鍵をかける秘密情報が実装される
- この秘密情報が漏洩した時に、どのようにリスク管理をしていくか
- それでこの契約をどのようにしていくかということを考える必要があるというのが基本的な姿勢
- 契約当事者として、受信機側とコンテンツホルダー側のそれぞれが居るが、セキュリティに関する義務もあれば、そういったコンテンツ保護に係るルールを実装するしないということに関する義務が、例えば受信機メーカの方に契約上課せられる
- これもごく当然のことだが、契約でエンフォースメントを担保する以上、契約に定められた義務に違反した場合にどうなるかということを考えていかなければならない
- これがあるから、契約によって全ての受信機にコンテンツの保護に関する機能が搭載されているということが実現されている
- ただしその際に、善良なメーカが過大な負担を負うようだと、これは民々の契約である以上、経営判断として重すぎる負担の契約は誰も入ってこないということになってしまう
- メーカさんを始めとする当事者が義務違反の時に過大な負担ということを伴わないということを考えておく必要がある
- 少しブレークダウンすると、例えば契約を故意に破るという、そういう人に対しては、一般的な、民事上の契約破棄・損害賠償、それから販売の差し止め、故意で行った場合は当然そこまで行くだろう
- しかしながら、いわゆる過失の場合、そういった場合まで過大な負担ということを決めてしまうと、なかなか契約に入ってくる人そのものがいなくなってしまう
- 過失という場合には、できるだけ改善を行っていくという努力、努力目標ということで整理をしていくのも一つのやり方では無いか
- 契約について、いま申し上げたように、できるだけ当事者間で、バランスのとれた役割分担と責任ということで、できるだけ整理していくように議論が進められている
- 以上、技術と契約について、それぞれ検討が進んでいるということの具体的な内容の一端を紹介した
- 技術と契約ということなので、契約の外にいる人に対しては現行法制度を含めて、制度による対応ということを検討する必要があるのではないかという議論がこの場でも行われている
- 現行法制度ということで例を上げれば、不正競争防止法とか著作権法等といった現行法制度があり
- それをどういうふうに活用していくか、あるいは限界があるとすればどういった手の入れ方があるのか
- そういった検討も今後進めていくべきではないかという議論が行われている
- 次にライセンスの発行・管理機関ということで、結局、今説明したことを図にするという形になってしまうが、4枚のペーパーの三枚目の絵を見て頂きたい
- 真ん中に、赤い箱でライセンス発行・管理機関ということを書いている
- 注の5と書いてある通り、新たに開示方式を導入してその為に発行機関を作るとしたら、既に B-CAS 社が一つあるので、この B-CAS と併存する一つの独立した機関ということになる
- これは何をやっていく必要があるのかということだが、まずなによりもライセンス契約の主体となって、放送事業者とあるいは受信機メーカと契約を結ぶ、その主体となる
- 放送事業者さん、それから受信機メーカさん、それぞれに対して受信機に一定の機能を組み合わせていく上での義務を定める、その一方の主体となるのが、このライセンス発行・管理機関ということになる
- エンフォースメントの基本は、放送波のスクランブルを解く為の鍵を発行し、鍵を発行することの対価として、コンテンツ保護に関するその機能を担保として、それを基本として機能している
- それぞれ契約当事者として、放送事業者・受信機メーカ、あるいは商品規格上、チップ・部品メーカということも出てくる
- 例えば受信機メーカとの関係で言うと、このスクランブルを解くための鍵を渡すと同時にコンテンツ保護に係る仕様も開示する
- その対価としてコンテンツ保護に関する機能ということを、必ず、この受信機メーカさんは約束をすると、あるいは、そういった機器を作る時に、一定のセキュリティレベルということは守るということを約束する
- その引き換えとして鍵を発行すると、それを渡すと同時に仕様を開示すると、そういった関係が受信機メーカさんとの間にはある
- 放送事業者さんとの関係では、一定の、コンテンツ保護に関する信号を必ず放送波の上に搭載するといったようなことを約する事と引き換えに、一定の鍵を渡しておくと、そういったことを放送事業者さんにも行っていく必要がある
- いずれにせよ、エンフォースメントということを契約上担保するということは、スクランブルを前提として、それを解くための鍵を一つの機関が管理して、その鍵を配布するということと交換で、一定の機能を担保するというい仕組みになっている
- 技術・契約でエンフォースメントをしようとすれば、必ずこういった機関の設立が必要になるということ
- ただ、先ほどの合意形成のところあった通り、地上デジタル放送は極めて多数の方々に影響する仕組みなので、この運営としては可能な限り透明性を保つことが望ましい
- 以上が、いわゆるソフトウェア方式と言われていた、仕様を開示する方式に関する紹介になる
- 最後のページに今までの B-CAS ということを前提にして、それを小型化ないし事前実装していくということの取り扱いを、少し議論を紹介する
- 技術ワーキングにおいて、基本的には二つとも、選択肢として引き続き検討していくべきではないかと
- また、この二つに関しては民々で、意思のある参加者の間で、導入に向けて、それぞれ民間で進めていけばよいのではないかという取り扱いになっている
- 一部、小型化について一定の整理が行われたということもあると聞いている
- この二つの選択肢については、民間において、今後も導入に向けて引き続き検討を頂ければよいのではないかという整理がされている
- 今、縷々申し上げた、一定の開示方式ということについて、仮に導入に向けたステップということをいくつか確認する
- 先程、合意形成というところで紹介したとおり、この仕様開示方式という新たな技術方式について、最低限必要な要件をまずは整理する必要がある
- 要件ということが定まり、その要件に合致した技術方式が初めて定まると
- おそらく具体的には要件が公表され
- その要件に合致した技術が公募され
- 要件に合致すると考えられた技術がいくつか実際に提案されて
- そうして提案されたものの中から複数または単数の技術方式が確定して
- そこではじめてこの開示することを前提とした技術方式が確定をするということになる
- ただし、技術方式が固まるのと並行して、技術・契約なので、契約の主体となるライセンス発行機関があわせて設立されていく必要がある
- こうして技術・契約のうち、技術の内容が確定し、契約の主体であるライセンス発行機関ということが固まると
- 初めて、受信機側と送信側でなにをしなければいけないのかということが定まり、それでタイムラインというものが見えてきて、運用開始に向かう
- プロセスとしてはそういったとことを辿るのではないかと考えている
- ちょっと長時間になったが、以上が技術検討ワーキングにおける検討状況の報告になる
以上が小笠原課長からの詳細説明でした。引き続き村井主査から補足説明が行われて、その内容は次のようなものでした。
- いま事務局から丁寧に説明して頂いた訳だが、最初に申し上げたように、技術ワーキングでは、この「開示方式」と言われている従来の B-CAS を使わない方式の議論に時間を使ってきて
- その結果として大体、技術的な要件だとか、色々な組織等々の役割分担ということの基本的な考え方というのは相当整理されたという報告だった
- しかしながら、本当にアクションを動かしていくということに関しては、これは、技術的にもかなりヘビー級で、沢山のことをやっていかなければいけない
- それからライセンス機関等々というのをどのように機能させていくのかと、こういうようなことはまだまだ整理しなければならない事柄だと思う
- しかしながら、議論がそこまで進められるという準備ができたという辺りのことが報告の位置づけだと思う
- それで、技術・その他に関して非常に細かい技術的なことも議論されていて、そこの部分も事務局から口頭で説明して頂いている
- これも少し複雑な技術的なことを、どこまで説明した方がよいかということで、いろいろ考えていたのだが、基本的には全てオープンな議論をするということの話で進めてきた
- そういう意味ではかなり技術の細かいところ、あるいは議論で細かい議論をしたということも含めて説明させて頂いた
- また判りにくいところがあれば補足を是非させて頂きたい
- 技術ワーキングに参加して、そういった、今説明した議論に参加していた委員の方にも、今日は参加して頂いているので、その補足も含めてお願いできればと思う
以上が村井主査からの補足説明で、ここから、これまでの説明を受けての意見交換が開始されました。最初に村井主査から指名されたのは河村委員 (主婦連) で、その発言内容は次のようなものでした。
- チップとソフトウェアのところの線が無くなったというのは変化として判った
- ただし、それは技術的に見たら同じだからということで、同じような表を見て、同じような意見を何回……、今日は三回目かなというふうに考えている
- そんなにしょっちゅうこのテーマでやっている訳ではないことを考えると、かなり長い間ワーキング議論されているのかなと思う
- しかし、最初の、冒頭の主査の話の中では「合意に達している結論を言える段階にない」ということを聞いて、大変がっかりした
- 私は、細かな技術的なことは判らないが、全体の流れを見て、消費者からどう見えるかという印象を申し上げる
- まず、これは選択肢を拡大するということの為に、透明性をあげようということの為にやっていることのはず
- 選択肢を拡大するということは、元々の B-CAS システムを使い続けたいと思っている人は使い続ければ良いわけで
- つまり、新しい方式にしなければいけないというのであれば、色々な反対も出るかもしれない
- しかし、選択肢を作るということにどうしてこれだけ合意ができないのかということに、こう、疑念が湧いてくる
- つまり、私がずっと以前から言っている、B-CAS というシステムが何らかの形で、商品とか価格のバリエーションの狭さに関係しているのではないかということに
- 地デジのテレビが最初に世の中に出てきたときから、今は随分良くなってきたとは言っても、その価格帯とか、商品企画の狭さとか、全てがフルスペックであることとかの形が
- アナログのテレビの時の量販店の風景と全然違うと、何度も申し上げてきた訳だが
- 「それに B-CAS が関係しているのじゃないか」と言っても「そうではない」というお答えしか返ってこない
- しかし、選択肢を広げることにこんなに合意ができないということは、やはり私の疑念は正しかったのかなというふうに見える
- つまり選択肢が拡大する、それを採用しなくても良いのに歓迎していない、もしかしたら恐れているようにすら見える
- そうではないということであれば、そのようなことをきちんと見せて頂きたい
- 私はもう、この表を見ながら意見を言うことが何度目かなと思って、非常にうんざりしている
- このソフトウェア方式をとって、エンフォースメントするというのがダビング10という著作権方式で、そこに非常にジレンマがある
- もっと、基幹放送であって、生活必需品であって、100% の人が 2011 年度に買い替えなければいけないというものなのに
- 例えば著作権保護技術にしても、途中で見直すというようなこともあった
- もっといい世界が開けるのではないかと思っている
- それでも、今、この中から選ぶということであれば、ソフトウェア方式、その選択肢の拡大をしましょうと
- 私としてはそこが全然満足できない途中段階だけど、それを何回言っても、それすら、何か、非常に抵抗が強いのかなという印象を受ける
- 消費者として非常に残念に思う
- まだ半分の人は地デジの対応テレビを持っていないし、私も持っていない
- しかし、今までに買った 5 割の方と、これから買う 5 割の人というのは、考え方も生活ぶりも違うと思う
- こういうことが続いていると、やはり 2011 年に向けて、総務省さんが心配している普及とか
- そういう面から見ても、影響が出ることは必至なんじゃないかなと思う
以上が河村委員からのコメントでした。次に指名されたのは長田委員 (東京都地域婦人団体連盟) で、その発言内容は次のようなものでした。
- 河村さんの発言と、同じような意見になる
- まず一つは、技術の透明性というのは、何事にも絶対に必要なこと
- たまたま昨日、情報通信法の方の検討会があり、そこでもやっぱり技術の透明性は大切で、これからの法体系の中でもクローズアップして行きましょうと、コンセンサスがあった
- そういうことから言っても、まず技術の透明性を担保できるようなそういう方式が、これから同じ技術でエンフォースメントするにしても、それは絶対に必要なことだろうと思っている
- まあ、そもそも論から言えば、どうして地上波のテレビにスクランブルをかけたり、そういう何か、技術的な制約をかけれなければいけないのかと元々疑問に思っている
- しかし、河村さんがおっしゃっていたように、あともう 2 年ちょっとしかない時期に、何とか皆さんにご協力を頂くとすれば、より自由な、色々な、我々が選べる色々な形の商品が出てくることが絶対条件だろうと思う
- そのためにもまず、せめてまず第一段階として、この新しい制限しない方式を是非、極力早く、実現して頂かなければと思う
- なにか、エコポイントとかなんだとかと、買い替えを抑止するアイデアがどんどん出てきているのに、地デジに協力しようと思わせるものが何も出てこない状況
- ある意味では、とにかく早く、新しい、シンプルで、使い勝手が良くて、私たちのニーズに合うようなものが、選べるような状況になれば、エコポイントを使って地デジ対応をしてみようという気持ちになると思う
- そこは一日も早く、なんとか具体的にやって頂きたい
- 大体私の、ここに何年も座っている経験からしてみると、紙に出てこなくて、口頭でその部分が説明される場合と言うのは、何か裏で、私には良く判らない、何か揉め事存在していることが多いのかなと思う
- はやく紙が出てきて、さっさと、こういう先ほどのプロセスをパッパッパッと進めて頂いて、もうこのくらいには実現できるということを具体的に示して頂かないと、ますます買い替えを待つということになる
以上が長田委員からのコメントでした。次に指名されたのは高橋委員 (ジャーナリスト / 情報通信審議会委員) で、その発言内容は次のようなものでした。
- 遅れて来たので「技術と契約に関して検討が進んでいる」という小笠原課長の説明の半分から聞かせて頂いた
- 議論の詳細、紹介の詳細は残念ながら聞けていないが、村井先生の話を聞くと、動かしていくにはまだ整理しなければいけない部分があるということで、準備は整っているのだけど、決めるには至っていないというふうに判断させて頂いている
- 前々から河村委員が発言されているように選択肢の拡大という問題と、選択肢そのものの決定の透明性や、迅速性や、一日も早く決めて頂いて、消費者も行動できるようにして頂きたいということをお願いした立場から言わせてもらうと
- この、ソフトウェア方式も含めた方法というのは、半年かもう少し (しか検討していないの) だと言われるのかもしれないが、B-CAS そのものは二年半前から検討しているわけなので、もう本当に、この辺で結論を出せないと、この委員会、情報通信審議会は何をやっているのかと
- もうそういうところに来ているのだと、私は認識している
- 国会の質疑も、インターネットで視聴したり、あるいは議事録を読んだりしているが
- 3 月 18 日と 30 日の参議院、衆議院の 4 月 9 日の総務委員会でも B-CAS の問題が取り上げられていて、一般国民がこの問題に対して非常に強く関心を持っているということ
- とにかく早く何とかしなければいけないという思いでいる
- 色々と、報道やネット上での消費者の意見だとか読んでいる
- やはり最近見た物の中では、内閣府の調査で、三月末に初めて、その薄型テレビ、地デジ対応のその普及率が 5 割を超えたという話があった
- 地デジチューナが昨年の半ばから、前年同月比プラスという状況が続いていて、全国 2000 の家電量販店の二月の販売台数調査というものを見ると、前年同月比で、台数で三倍強、金額が二倍、これは低廉化がしているからだということだと思うが、そういう結果が出ている
- まあ、節約志向が高まっている訳だが、そうせざるを得ない消費者が増えているということはこうした数字で見れると思う
- 今までの、その約半数の方達は進んで購入した人達がかなりの率を占めていると思う
- しかし、これからの人たちと言うのは、買い替えに消極的だった人たち、あるいは二台目・三台目は三波共用じゃなくてもいいと思っている人たち
- それがこの地デジチューナのところに出てきているのだという風に思う
- 今までの購入層と違う人たちに地デジ移行に付き合ってもらうということに関して、迅速性と透明性というのは、それから選択肢の拡大というのは非常に重要だと考えている
- ネットでも、テレビの画面のアナログの表示を苦々しく見ているという意見が沢山ある
- 最近見て、ああなるほどと思ったのは、そのアナログの表示は民放のコマーシャルの時には消えている、何を考えているのだと
- 普通の番組の時には出ているのに、なぜコマーシャルだけ消えているのだという御意見もあった
- そういうことからしても、本日、ソフトウェア方式についての、説明、私が聞いた以上のことがあったのかもしれないけれども
- チューナ 5000 円を目指してきてのは B-CAS が前提の目標数字だと思う
- これが、カードがいらない、スロットを使わなくてもいいと言うことで、3000 円台を狙っていくということは当然のことだと思う
- その方向に向けて、動き出せるように是非、村井先生を始め、舵取りをお願いする
- 協力できるところはしたいというふうに思っている
- なので、後ほどまた、放送事業者の方、メーカの方のお話をお伺いした上で、説明を求めさせていただくかもしれない
以上が高橋委員からのコメントでした。次に指名されたのは椎名委員 (CPRA) で、その発言内容は次のようなものでした。
- エンフォースメントの問題というのは技術ワーキンググループで話がされているということで、消費者の方々同様に我々もその中に入れる訳ではない
- 定期的にこうして出されてくる資料を眺めてどうなのだろうなという感想をその都度しゃべっているということになる
- 一般論として、これも何度も言っていることなのだが、これまでに権利者が利用者が不便なやり方の方がいいのだと拘ったり
- 利用者の利便性を高めることを頭から否定したりということは無い
- それはダビング10を巡る顛末からも判って頂けるものと思う
- ダビング10の議論と言うのは、結構、この場所で色々と細かいことがされた訳で
- でまあ、その中で色々と話し合ってきたわけだが、不便な方が良いのだという風に思っていることはない
- そう、はっきり申し上げて置きたいと思う
- 従って当然ながら、今の時点で B-CAS に拘るということはない
- 新たな方式が採用されるのであれば、それは一視聴者としても反対する理由は無い
- 兎角、権利者が止めたとか、権利者の反対にあって駄目になったということは使われる訳で
- これは不可避的に使われる運命にあると思っている
- そうしたことを、今、縷々申し上げたように、利便性については非常に重要なファクターだと思っている
- なので、技術ワーキンググループの方々は、是非この点に留意して頂ければと思っている
- 一方で、インターネットへのコンテンツの流出は、拡大することはあっても一向に収束する気配はない
- そういう状況下にあって、コンテンツ大国であるとか、市場の拡大をミッションに掲げる政府の審議会にあっては、是非とも、有効なコンテンツ保護の方式に関する常識的な配慮をお願いしたい
- さらに実情を申し上げると、ネット上への流出以前の問題として、そのコンテンツ制作に投じられるお金が非常に大きくシュリンクしているという状況がある
- そのような時期だからこそ、コンテンツが保護されることによって、創作のインセンティブが確保されてこそ、コンテンツを生み出す原動力が維持されるという、基本的な考え方について再認識して頂いて
- その上で、この問題を考えて頂ければというふうに思う
以上が椎名委員からのコメントでした。次に指名されたのは堀委員 (音事協 / ホリプロ) で、その発言内容は次のようなものでした。
- この話題何回か聞いていて、特別技術者ではないので詳しくないので何度聞いても、何が良いのか良く判らないというのはある
- どちらでも、安い方が良いのではないかという消費者の皆さんの意見には賛成をしている
- 先ほど椎名さんが発言した通り、権利者が B-CAS じゃなきゃ駄目だと言っているとか、権利者がスクランブルじゃなきゃ駄目だと言っているという、何かこうテクニックに使われる部分がよくあって、我々が居ないところで、よくそういう話題が出ている、我々が居ないところで、そういう話題が出ているらしい
- あくまでも、僕らはそうした、B-CAS に拘っている訳では無い
- 技術のエンフォースメントというのはもう僕らの範疇外なので、知識もない
- 是非、村井先生中心に、皆さんの為に、国益になるような、本当にコンテンツ大国になるべき、技術を使われれば良いのだと思う
- その前の段階で、ダビング10が導入された時にも申し上げたことだが
- 難しいことではなく、簡単なことでもエンフォースメントはできるのだと
- 今、デジタル放送では、画面の右上に各局のマークが入ったように記憶してる
- 是非これは、あの時に、四方一両損という話をして頂いた時に、「その番組は無断で動画サイトに上げちゃいけない」という啓蒙活動を、消費者団体の皆さんも、テレビ局の皆さんも今の段階からやって頂きたい
- またプロバイダの方々、画像サイトを運営している方々も、右肩にマークが入っている画像というのは、自動的にブロックされるというような、そちらの技術的な保護手段というのも、とって頂くということも、同時に始めて頂ければなと思う
- 既にもうダビング10始まって大分経っているが、その辺の啓蒙運動をして頂けるという念押しをしたうえで、権利者側はダビング10を聞き置いた形で、実施されている
- なので、その啓蒙も、聞き置いたままにしておかないで頂ければありがたいなという風に思う
以上が堀委員からのコメントでした。ここで村井主査からの指名は終了し、発言を望む人が発言していくという形になって、最初に発言を求めたのは浅野委員 (IBM) で、その発言内容は次のようなものした。
- 最初、村井主査とそれから事務局の方からの説明を聞いていたところでは、一応、前回からの報告から見ると、まあ、合意ができたものということにおいて、こういうもの・こういう形になりましたと説明を受けていて
- かつ今、まだ書類上は出ないけれど、こういうものを議論しているということを聞いていた時には、全て合意はできていないにしても、相当進んだのだなという印象を受けていた
- しかし、河村さんの方から「合意ができていなくて残念だ」という形で一番最初に発言されたので、これはそういう風に見なければいけないのだと、今改めて認識した
- 逆に、この件についてはもともと、第五次中間答申において、何を検討するのだと、これが課題だということでワーキンググループを作ってずっとやってきた訳になる
- しかもそれに関して、ここまで合意ができているのだから、後はいつやるのかなと、あと残っている課題は少なくて、いつやるのかなというイメージで捉えていた
- だけど、どうもそうではないということであれば、逆に、何が合意ができていないのかということをやっぱり知りたい
- ワーキンググループの中だけで議論している中において合意ができないにしても、この場で、何が合意が取れないのかということを理解したい
- 何故かと言うと、もうそろそろ、今度は第六次になるのですか、中間答申の時期が迫ってきている
- 先ほどの高橋さんの (発言のように) 「もうこれは随分長い間議論しているけれど、審議会の存在自体が問われかねない」ということもある
- 何かここで、合意ができていなくて、その結果として中間答申何も出せないというようなことであれば、それこそまさに、この委員会の存在意義が問われる
- やはり、その所に関して、このワーキンググループにおいて、あと時間もちょっとしかないので、まさにそこに向けて合意形成を目指して、早く結論を出して頂きたいなということを是非、村井主査にお願いする
以上が浅野委員からのコメントでした。次に発言を希望したのは襟川委員の代理として来られていた岩浪委員 (インフォシティ) で、その発言内容は次のようなものでした。
- 久しぶりに出席させて頂いてですね、浦島太郎だなと思っている
- 本日資料配られまして、小笠原さんの説明を聞いて、村井主査の技術検討ワーキンググループの皆さまも選択肢を出されて、すこしずつ進んでいるのだなと思って聞いていた
- そうしたら河村さんから、消費者の方はという意見になったので「ああそういうことなのかと」僕も改めて思った
- 浅野さんの意見と同じなのだが、消費者側からすると、以前、そういった発言もあったかと思うが、やはり B-CAS というか、その BS デジタル放送が始まったころに、知らない間に、選択肢も検討も与えられないで、なんだか決まっているという御不満がやっぱりあると思う、全体的に
- ただまあこれも、かつて僕はこれに答えたことがあるが、かといって、当時の規格化とか技術開発から言っても、そんな無茶なことは言わないでよということが、一方ではあるのだとは思っていた
- 従って、そこらへんの所を責めても、僕はまあ、仕方がないだろうという感想になる
- まさにこの委員会、会合が始まってもう十分に検討を長いことしている訳だが
- まあ従ってやはり重要なのは、選択肢が提示されて、やっぱり皆の検討にゆだねて決まっていくという話なのだろうなという風に思っている
- 今回、選択肢が示された表なのかと思っていたので、やはりそこが進める上では、選択肢の提示が重要なのではないかなと思っている
- もうひとつ、これもちょっと以前に言ったのだが、まあ、新しいルールを決めて頂くのは本当に良いのだと思っている
- しかし、正しいルールに従って受信機とか技術開発をするものが、沢山出てきて、コストダウンを含めて、多様な形態の端末を含めて出てくるという話になるのが目的というか、良いことなのだろうなと思っている
- 逆の言い方をすると、どうやって作っていいか判らないとか、あるいはもう、正しいルールに従って正しくやろうとする者があまりやる気になれないみたいな状況になると、これも以前出たけれど、あまり良い結果が出ない
- つまり、ルールに従って正しくやろうとしない者が登場して、かえって、ルールに従って正しくやるものが登場しないというようなことになると思う
- 選択肢を示して、提示して検討して頂く先に、いずれにせよ、結果としてはルールを守って正しく参入しようとするものが判り易く、正しく参入できるということになるのが良いかと思っている
以上が岩浪委員のコメントでした。これらの発言を受けて、村井主査から次のような発言がありました。
- 色々な意見、貴重な意見を頂いているが、私も技術ワーキンググループの主査として、説明した趣旨を理解頂いたうえで話を頂いていると思う
- これも確認になるが、私達、技術ワーキンググループでの議論は、本委員会でどなたがどういう意味のことを発言されたかということを、本当に一つ一つきちんと話題にしている
- それに対してどのように取り組めて、応えられるか
- こういうことで、議論の進め方は必ずそのプロセスを踏んでいる
- そういう意味ではそれぞれ形が多少変わったというところもあると思うけれども、よく見て頂ければそのことに対する対応という形で進められている
- 皆さん大変忙しい中で進めているということもあるし、技術に関してはまったく新しい技術なので検討にしていく段階で、どういうタイムラインの中で、どこまでできるだろうかということをやっぱり検討していかなければいけない
- 従ってそういう意味で技術の方式とか、ご覧頂いたように「ソフトウェアである」という意見も頂いているし、それにもとづいて技術ワーキングの中で議論をしてきた
- 技術検討ワーキングの中で議論してきて、それを具体的に進める場合には、送信側受信側の準備ということで、そのあたりのことに関して非常に至急整理をして調整をする必要があるだろうということが、私の方から今日、報告した内容になる
- 今日は先ほど申し上げたように、技術ワーキングの参加者の方々も参加されているので、その方々に今の発言を伺った上で、御発言を頂ければと思う
以上の発言の後で指名されたのは藤沢委員 (NHK) で、その発言内容は次のようなものでした。
- なかなか厳しい意見、言葉を頂いた
- ひとつだけちょっと、WG メンバーの名誉の為にも申し上げておきたい
- なにか基本的に「新しい方式を進めるのが嫌だ」とか、そうした考え方があってなかなか前に進まないということでこの WG に参加している人は一人もいないと思う
- これは私たちの能力の問題なのかもしれないが、遅々として進まないように見えるかもしれないが、正直本当に、一生懸命やっているつもりでいる
- 今日示した資料は、言ってみれば基本的な、さっき小笠原課長からもあったように、基本的な要件を策定するにあたっての、もしかしたら基本的な考え方レベルかもしれない
- 実際、これから重要なのは、実際にどういう方式でやっていくかということ
- あるいは、要件をもっとブレークダウンしたもの、そうしたものが必要になっていく
- そこの部分は、今日は口頭で話したというところもあって、若干、それから中身が複雑で判り難くかったというところがあるかもしれない
- 一生懸命やっているつもりではあるので、そこの部分だけは御理解頂きたい
- 今後も、折角新しい方式を導入していくということだが、ここに書いてある要件が満足できないと新しい方式をやる意味が無い
- そこの部分はしっかりと、これから一生懸命取り組んでいきたいと思うので、よろしくお願いする
以上が藤沢委員の発言でした。次に指名されたのは関委員 (Dpa / フジテレビ) で、その発言内容は次のようなものでした。
- まったく今、藤沢さんに全部言われてしまったので、特に付け加えるところはない
以上が関委員の発言でした。次に指名されたのは田胡委員 (JEITA / 日立 / B-CAS) で、その発言内容は次のようなものでした。
- 私もそうなのだが、本当にワーキングは真摯にやっている
- 特に技術の公開性、それから基幹放送という点で運用上のオペレーションのあり方、運用の透明性、かなり真摯に議論をしていて、一定の方向性がもう出たと思っている
- 先ほどから、合意形成がない、なぜ出ないということだが、これは合意というのは、最終的にはやるっきゃないということ
- 後は具体的に、メーカとしては地上デジタルの円滑な普及の為に、商品企画の自由度を再三再四申し上げている
- なので、早く導入したい、これは一刻も早くりたいというのは全く一緒
- それはもう大前提はこれだと、一刻も早くやろうとという大前提で議論してきたつもり
- 従って、あとは具体的には、先ほど藤沢さんが発言されたように、あるいは、事務局の小笠原課長が発言されたように
- 具体的な中身、新方式の技術の中身を速やかに決定しなければいけない
- そのための要件定義が必要で、私の感じでは、ほぼ出揃っている
- これだけでは駄目で、もう一つ、契約の母体、これがまさに透明性がいる
- ではどういう組織を作るかと、これは組織を作るので、組織がないと契約できないので、これは実行あるのみ
- そういう意味で、早期に運用するための残りの課題を整理して、後は民々
- 民々でどうやるかというところに速くもってきて、一刻も早く
- ウチの、当社の技術者も、いつできるのだと、再三再四問い合わせが来ている
- なので一刻も早く運用を開始できるようにということについては全く異存がない
以上が田胡委員の発言でした。ここまでの意見を受けて、村井主査から次のような内容のまとめが行われました。
- 今、参加者の方々からも色々なコメントを受けて、説明頂いた
- 再三申し上げて、皆さんにも言って頂いて、ちょっと言い訳めいた話になってしまうが
- あまりに早くしろというプレッシャーがあるものだから、何となくこう、ずっと宿題をやっている部屋にお母さんが飛び込んできて、宿題をやりなさいと言われたみたいな気分がちょっとされたのかと思う
- 今あの、今回この資料の 1 の 3 のところの、ライセンス管理・発行機関がいると
- それは今までとは違う機関なのだと
- じゃあどういう機関になればいいかと
- こういうことは本当に具体的なプロセスで検討が必要
- ただしこれが定義される為には、やはり技術、鍵とは何か
- 最初に小笠原課長から説明頂いた、三重鍵の仕組みで合意できるのか
- そうすると、鍵はベンダーや放送局に流れるのか
- すると放送局はサイマル、つまり二種類の電波を出すと言う準備はどうしたらできるのか
- この鍵はどう配布されるのか
- そうしたことをずっと検討してきた結果として、ここまで来たということが報告できる
- なので、この後ろ側をどこまで説明できたかと
- 決して何か止めている要因があって、そのことはあまり説明ができないので、こそこそ説明したというつもりはあまり無い
- それで、むしろそこにある、その背後にある長い話を全部ここで説明するタイミングというか、時間が取れないだろうということで、今報告して意見を伺っている
- そのところを集約して意見を頂いている、あるいは理解を賜るようにした、こういうことで、いずれにせよ説明をさせて頂いたと思う
- いずれにせよ、このコンテンツ保護の技術方式を開示していくとか、オープンであるとか
- 何度も、権利者、椎名さん達から言われているような、コンテンツに対するリスペクトというものを技術的にどう実現できるか
- それからコストの問題、それから消費者に、言わば迷惑が、負担がかからないようにどうすればよいか
- このあたりはやはり本当に、なんというか、すごく稚拙なアイデアで実現できるようにしようと考えると、やはりそこで消費者に迷惑がかかる、負担がかかる技術になっても困る
- そのあたりもかなり、技術ワーキングの方では丁寧に議論されていると思うので、そういった意味でここまで大体来た
- それでこういう方式で、何とかスタートする
- それで色々と説明をして、皆さんから本日頂いた意見、すなわち浅野委員の「審議会、中間報告があるので、それまでに何ができて、どういう報告ができるのかということを、我々考えなければいけない」ということを、この委員会として言って頂いたと思う
- その意見に代表される話、季節がめぐるとか色々とあるけれど、確かに報告のタイミングはひとつのタイミングなので、それまでにどこまでできるのかというタイミング感がある
- それから、地上デジタル、それからデジタルコンテンツの流通、そもそも地デジの議論をこの技術ワーキングではしている
- そういう意味では先ほどから話題になっている、2011 年という、そういう意味からの、この場合は技術を逆算していくタイミング感
- そうしたタイミング感を含めて、説明の責任
- それからそういったエンフォースメント、地上デジタルのエンフォースメントがどういう方面に行くか
- これは非常に多方面の大きな関心があると思うので、それにきちんと応えていく、説明をしていくということの責任もあると思っている
- そういう意味で、今回の浅野委員から発言して頂いたような、審議会の中間報告ということの答申に向けての議論を至急に進めていくということを頑張っていく必要があると考えている
- 本日頂いた議論それから指摘されたことを技術ワーキングに持ち帰って、引き続き議論させて頂くということで
- 技術ワーキングの参加者の皆には、本日委員の方から発言して頂いた早期取りまとめと言うタイミング感、そういう強い話を頂いたということで、是非、技術ワーキングでも今後の検討に協力をお願いしたい
- 取りまとめの時期は大体判っているので、そういう意味では残された時間というのは非常に限られてきている
- 基本的な考え方は、関係者の間での相違がないと私は考えているので、指摘頂いたように、一歩前進してワーキンググループの中で、それからここの委員会でのコンセンサスをまとめられるということで
- 残された時間の中で、最大の努力をしていきたいと思うので、改めて、委員の皆のご協力をお願いしたいと思う
- またこの件に関して、少し、今日も説明ごとだったり、判り難いところがあったと思う
- また、こういったところに対する意見、それで技術に関することなので、沢山の事を知った上で、やはり、正しい理解に結びつくところもあるかと思う
- 判りにくいところは多々あったかと思うので、そういったことを含て、意見、あるいは質問含めて、事務局の方に連絡頂ければと思う
- 事務局の方も、そういった説明を、また委員の方にして頂くということを私の方からもお願いしたいと思う
以上が村井主査からのまとめでした。この段階で多少時間が余っていたので「他に何か」という呼びかけが行われ、それに高橋委員が発言を求めました。その発言内容は次のようなものでした。
- 先ほど、厳しい母親のように言われてしまった
- 子育てでは姿勢を重んじるということが大事なことは重々承知している
- ここの場で「能力の問題」とか言われてしまうと、パワハラとか、こちらも心が痛む
- 検討して頂いても、結果が出せないと困る問題だと思っている
- なので、一般の国民に判るように
- なぜ今遅れているのか
- いつまでにできるのかという問題と
- もしできたものが万一、多くの方々が納得できないものが残ったとしたら
- それは何故なのかときちんと説明しなければいけないと思っている
- 私は情報通信審議会の委員なので、総会の日付は 7 月 10 日と決まっていて、例年の習いから言うと、多分あと数回できればものすごくやったということになるだろう
- ワーキングの方々はそれ以上汗を流してくださると思う
- こちらで数回と言っても、後、ニ・三回で多分決めなければいけないと思う
- 是非、今後のロードマップ、タイミング含めての説明をやはり次回ぐらいに、いつまでに何をするという形でひとつ、消費者・国民に不信を持たれないように示して頂けると嬉しいと思う
- よろしくお願いする
以上が高橋委員からの追加コメントで、これを最後に発言を希望する人はなくなりました。
最後に事務局の小笠原課長から次回以降のスケジュールについて「5 月、6 月は月あたり二回の頻度での開催を考えている」との連絡と「次回は 5 月 13 日を軸に、取引市場 WG の意見とりまとめへの意見交換を予定して調整中」との連絡があって本日の会合は終了しました。
◆◇◆
今回の感想としては「皆、空気読む能力が高いなぁ」と、その一言に尽きるでしょうか。
個人的にはたとえデジタル放送だろうが、無料広告放送にはコピー制御が不要 (どころか有害) だと思っている人間としては、コピー制御の廃止ではなく、コピー制御を維持し続けるための強制手段の選択肢拡大が話し合われていること自体が時間と費用の浪費に思えるのですが……。いい加減、委員の皆さんはその辺りに気が付かないものでしょうかね。
まあ、制度の検討も今後行われていくということらしいので、どうもこれは次の中間答申が出たその先の議題になってしまうのかなぁと思いつつも、変な方向に行きそうになったらすぐに警告を上げられるように、今後も監視を続けていこうと思っています。
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