本当は去年のうちに書くつもりだったのだけれども、色々あって〆切ギリギリの 1/7 10:30 に 8 件ほど意見提出をした。以下、提出意見。
意見 1
意見対象 : 第1章 【2頁】
本中間まとめは 第1章 第1節 著作権法の現行制度において、現行著作権法での技術的保護手段等の規定状況について説明している。
ここで、技術的保護手段の「回避」とは「技術的保護手段に用いられている信号の除去または改変」と説明されている通り、現行著作権法において、技術的保護手段に対して反応しない機器、いわゆる無反応機の利用は「技術的保護手段の回避」とはみなされず、従って、第120条の2での公衆譲渡規制の対象ともならない。
しかし本中間まとめにおいては、無反応機が現行法では規制対象ではないという視点と、なぜ現行法がそうした規定になったかという視点については、第4章19ページで僅かに触れられているだけで、ほとんど記述されていないに等しい。
無反応機が規制対象外となったのは「平成10年12月10日 著作権審議会マルチメディア小委員会ワーキング・グループ(技術的保護手段・管理関係)報告書」において以下のようにまとめられたことを踏まえてのものである。
なお,ある特定の規格の利用機器において識別,反応する信号により技術的保護手段が用いられている場合に,他の規格の利用機器では当該信号を識別,反応しないため,結果的に技術的保護手段が無効化されることも考えられる。このような場合についても規制の対象とすべきという意見もあるが,このような規制は特定の規格を利用機器において義務付けることと実態としては同じになると言え,今後の技術の進展等を考慮すると適当ではないと考えられる。
なお,このことに関連し,利用機器の提供者はいかなる技術的保護手段にも対応するように設計する義務はない旨を法文上明記すべきとの意見があった。
以上のことをふまえると,技術的保護手段の回避とは,故意に,技術的保護手段に用いられている特定の信号を除去,改変することにより,著作物等の利用機器における当該信号の識別,反応を誤らせ,もって技術的保護手段により制限されている利用を可能ならしめる行為であるといえる。
ゆえに、現行法における回避機器規制は「特定の事業者・コンテンツ提供者を保護する法律となること」を避けるためにあえて無反応機を規制対象から外しているといえる。
本中間まとめにおいてはこの「特定の事業者・コンテンツ提供者を保護する法律となること」を避けるという視点が欠落していることが問題だと考えている。
そうした視点が欠落しているということは、本章において無反応機が現行著作権法での規制対象外であるという事実の紹介が欠落していること、また、本中間まとめ案の検討等が行われた平成22年12月3日の法制問題小委員会席上において、中山委員から「(特定のプラットフォームを保護するものではないのか)マジコンが無ければ今言ったような自分で作ったコンテンツも事実上使えなくなっても仕方がない、こういう整理ですか?」という発言に対して文化庁永山著作権課長から「それは現行のコピーコントロールに関する著作権法の考え方も同様でございまして……」という回答がされたことからも明らかであると考える。
現行法においては、複製防止信号・複製妨害信号等に反応することを義務付ないことによってコピーコントロール規制についても特定の事業者の保護を強制せずに済む内容になっている。
そういう意味では、本中間まとめはそもそも議論の出発点に大きな齟齬があり、現行著作権法でも、コピーコントロール規制に関して特定事業者の保護的な側面が「ある」のでアクセスコントロール技術の回避を規制することによって特定事業者の保護的側面が「ある」としてもそれは元々あったものだと考えるか、コピーコントロール規制に関して特定事業者の保護的な側面が「なかった」のにアクセスコントロール技術を含む技術的保護手段を回避規制対象とすることによって、特定事業者の保護的側面が「生じて」しまうと考えるのかでは、評価に違いが現れるはずである。
私は、著作権法の保護期間を延長する法律がミッキーマウス保護法と呼ばれるどこかの国のように、「ニンテンドー保護法」と呼ばれかねない「著作権法の一部を改正する法律」が国会に提出されることに強く反対する。
また、そのような著作権法改定は著作権法第1条の「文化の発展に寄与することを目的とする」というわが国の著作権法の大目的にもそぐわないものであると意見する。
意見 2
意見対象 : 第1章 【5頁】
5頁、最初の○以降で、昨2010年6月11日に定められたDMCA適用除外項目について述べているが、本中間まとめでは (2) 類型の「合法的に入手したコンピュータプログラムを携帯電話機上で動作可能にし、相互運用性を確保する為だけのコンピュータソフトウェア」(いわゆる iPhone の Jailbreak)のみを紹介している。
しかし、同時に追加された DMCA 適用除外項目として以下のものもある。
- 非営利動画、教育用利用、ドキュメンタリ作成の為に一部引用を行う際に行われる DVD CSS の回避
- 既に提供されなくなったドングルが壊れた際に行われる、コンピュータプログラムのコピー保持者によるドングル回避
- 電子書籍において文章読み上げ機能や操作読み上げを阻害するアクセスコントロールを有している場合の回避
わが国の著作権法においては、引用に関しては第32条、視覚障害者の利用に関しては第37条、ドングル関連に関しては第47条の3で保護されており、今回の中間まとめに沿った著作権法改定が行われても、これらの行為自体は違法とされないと理解している。
しかし、第120条の2の回避装置・回避プログラムの公衆への譲渡禁止によって、著作権者はこれらの行為を事実上不可能にすることができる。
特に DVD CSS を回避した上での引用に関しては、完全に不可能になるものと理解している。
アメリカにおいては、当初の DMCA 1201 条では等閑にされていた、知る権利および表現の自由に対しての配慮が、この適用除外規定追加によって行われつつあるにも関わらず、本中間まとめではそうした点に触れることなく、いわゆる iPhone の Jailbreak についてのみの紹介にとどまっている。このために、本中間まとめを作成するにあたっての検討が不十分なものだったのではないかという懸念を覚えている。
第2章以降に対しての意見でも再度記述するが、引用・相互運用性の確保・視覚障害者あるいは聴覚障害者が利用するための方式変換といった著作物の公正な利用を著作権者および著作物流通事業者が禁止することを実質的に許す著作権法改定が行われるのであれば、一国民として反対する。
また、そのような著作権法改定は著作権法第1条の「文化の発展に寄与することを目的とする」というわが国の著作権法の大目的にもそぐわないものであると意見する。
意見3
意見対象 : 第2章 【10頁】
本中間まとめにおいて「また、ネット上の違法流通を恐れて著作物のインターネット配信等を躊躇し……」との記述があるが、これは事実誤認であると考える。
欧米諸国においては音楽配信で DRMフリーでの商用音楽配信が2007年12月より行われ、また昨2010年11月9日より日本 amazon でもDRMフリーでの音楽配信が行われるようになったので明らかなように、商用配信において DRM 等のアクセスコントロール機能は決して必須ではない。
日本において、DRMフリーでの音楽配信が行われる前のデータではあるが、RIAJの公開している「日本の音楽産業2010」に依れば、2009年1月から12月にかけての物理メディアと有料配信を合わせた合計金額は4075億円で前年比10%減となっているのに対して、DRM フリーでの商用音楽配信を行っていた英国では、British Recorded Music Industry の "BPI Statistical Handbook 2010" に依れば同時期の音楽産業全体での収入が 2008 年の£915.6M から 2009 年では £928.8M と 2008 年 9 月のリーマンショック後の不況の影響をフルに受けた時期でありながら、総収入が増加に転じている。この金額は、2008年から2009年にかけての平均£/円レートである170円で計算すると 2008年が1556億、2009年が1578億に相当する。
また、RIAJ の「日本の音楽産業2010」と "BPI Statistical Handbook 2010" を比較すると、特に "Music in the Digital Environment" の章を読むと、英国では音楽事業者が利用者にとっての新たな利便性を提供することでマーケット全体を広げ、より高い収益を上げようという積極性を持っていることが伺える。
「ネット上の違法流通を恐れて著作物のインターネット配信等を躊躇し……」という内容は、既存の物理メディアおよび着うた等の市場を失うことを恐れて新たな市場の開拓に消極的な事業者の言い訳として使われているだけだと考えている。
実際に着うた・着うたフルにおいては携帯電話事業者の間を超えたデータの引き継ぎができず、Softbank で購入したデータは DOCOMO や au に移行する際には捨てなければいけないという状況や、電子書籍においても、DRM の存在によって、マーケットがデバイス、メーカによって細分化され、SHARP の GALAPAGOS で購入したものが、SONY のREADER では利用できないといったユーザの利便性に配慮しているとは到底考えられない事態が現れている現在の状況で事業者の都合のみを配慮し、利用者の利便性に対する配慮が欠けた著作権法改定を行うということは一国民として到底許容することができない。
特に本中間まとめはアクセスコントロールの機能を持つ技術を著作権法での技術的保護手段として認め、回避機器および回避プログラムの公衆への譲渡を禁止するものであるため、公衆である利用者自身が、現行著作権法が認める公正な利用である権利制限規定に沿った利用をすることを不可能としてしまう。
アメリカでの DMCA 適用除外規定についての意見 2 でも記述した内容の繰り返しになるが、私が想定している適法な利用とは具体的には、第32条の引用、第37条および第37条の2にある視覚障害者・聴覚障害者が利用するための変換、第47条の3にある相互運用性を確保するためのコンピュータプログラムのコピーの合法保有者自身による改変等である。
つまり、アクセスコントロールの機能を含む技術を規制するということは著作権者および著作物流通事業者に対して現行著作権法での権利制限規定を回避する手段を与えることに等しいことであることを承知した上で、慎重な検討が行われることを望む。
そもそも、本中間とりまとめの直接の契機となった内閣府知的財産推進戦略本部、インターネット上の著作権侵害コンテンツ対策に関するワーキンググループによって平成22年5月18日にまとめられた「インターネット上の著作権侵害コンテンツ対策について(報告)」によれば、回避行為規制に関して「正当な目的で行う回避行為は適用除外とした上で」とあるにも関わらず、それを無視して「正当な目的で行う回避行為」を実質的に不可能とする内容の中間とりまとめが行われるのは何故なのか、本パブリックコメントでは個別意見に対する回答は行わないとされているため、回答を期待することはできないものの、今後開催されるであろう法制問題小委員会あるいは著作権分科会の席上で、何らかの納得のいく説明が行われることを望む。
意見4
意見対象 : 第2章 【10頁】
本中間とりまとめでは「社会的にどのような機能を有しているか」なる法制化が困難に思える珍妙な観点を持ち出して、アクセスコントロール技術をコピーコントロール技術の一部であると強弁しているが、それらの観点をどのように条文化・法制化するつもりなのか、今後開催されるであろう法制問題章員会あるいは著作権分科会の席上で何らかの納得のいく説明が行われることを望む。
また、コピーコントロール技術とアクセスコントロール技術を組み合わせた技術的保護手段の中でアクセスコントロール技術のみを回避する装置あるいはプログラムも規制対象となりうる法制化を行おうという趣旨の中間まとめであると理解しているが、そうした法制化が行われた場合、第120条の2によって新たに刑事罰の対象となる行為が拡大されることになるが、条文解釈において曖昧性が残らないのかどうか、罪刑法定主義の観点から問題になることはないのかについても同様に納得のいく説明が行われることを望む。
意見5
意見対象 : 第2章 【14頁】
本中間とりまとめ当該ページにおいて、ゲーム機・ゲームソフト用の保護技術の部分で、ニンテンドーDSのいわゆる「マジコン」に対して「当該セキュリティに適合する信号を新たに付加し、正規の媒体であるかのように動作することによってセキュリティを回避する」との説明がなされている。
しかし、仕様が不明なインタフェースに対して接続するデバイスを開発する際に、接続できることが判明している正規の製品のふるまいを観測し、通信プロトコル等を調査解析した上で同等のふるまいを行わせることによって新たに開発するデバイスを当該仕様非公開インタフェースに対して接続可能とすることは技術的には一般に行われることであって、一技術者としての感想を述べると、何らかの違法複製対策であるとは通常考えられない。
正当に所有する機器に対して、相互運用性を持った機器を作ることは誰はばかる必要が無い正当な行為だと考えるし、新たに作成した相互運用性を持った機器を、対象機器の正当な保有者に提供することも、特許権に反しない限りは正当かつ妥当な行為だと考える。
こうした行為の適法性が DMCA の下で争われたのが、本中間まとめ4頁の脚注 1 部分でふれられている Lexmark 裁判であり、完成品メーカがアフターマーケットを独占支配する為に DMCA を乱用することは許されないという裁判官意見が付された上で、DMCA 違反ではないという判決が下されたと理解している。
実際に自主作成ソフト(いわゆる Homebrew)をニンテンドーDSの実機上で動かす場合場合はマジコン同様の手段を使う以外に方法が存在しないが、それがコピーコントロールの機能を有する技術であり、回避する装置が規制されるべきだという議論には同意できない。
マジコンという具体例から離れて、より一般的に考えると、本中間まとめにそった著作権法改定が行われた場合、プラットホーム企業(マジコンの場合は任天堂)が契約し実行を許諾ソフトウェアしかそのプラットホーム(マジコンの場合はニンテンドーDS)では実行・再生することができないということになる。
この法は事実上プラットフォーム企業に対してその独占的地位を乱用することを保護し利用者および著作者から抵抗手段を奪う法となりうると考えている。
マジコンの例ではプラットフォーム企業、サードパーティ共に日本国内企業なので問題を把握しづらいかもと考え、iPhone の例にあてはめて再度説明してみる。
iPhone においては、Apple Store 以外からのソフトウェアインストールを拒絶することで、ユーザの手元で不正にコピーされたソフトウェアバイナリがインストールされることを防ぐという側面を持っている。
本中間まとめのマジコンについての説明を援用するならば、正規流通ソフトウェア以外の実行を拒絶するこの仕組みはコピーコントロール技術であり、本中間まとめに従った著作権法改定が行われれば、当然のように回避プログラムの提供は違法とされるのであろう。
しかし、Apple Store でソフトウェアを流通させる為には Apple の審査を経る必要があり「妄撮」アプリ(*)の例にみられるように、日本国内では適法に流通可能な出版物を模したアプリケーションが Apple Store の審査を一度は通過したものの、数カ月後に通告等なしに一方的に削除されるというという事例が発生した。[* "電子写真集「妄撮」 米アップルが配信を停止" [産経ニュース 2010,6/2]]
このように、プラットホーム企業(この場合は Apple)がサードパーティ (日本の出版社) に対してその独占的地位を乱用してコンテンツ作成者に対してその内容に過剰に干渉するという例が有りうる。
こうした場合において、プラットホーム企業と契約を結ばずにコンテンツを実行する手段が昨年の DMCA 適用除外規定に登録されたいわゆる「Jailbreak」である。
しかし、回避プログラムの譲渡や回避サービスの提供が第120条の2で禁止されている状況ではそれらの手段を利用者に対して提供することができず、プラットフォーム企業の認める内容のコンテンツしか作ることができない。
マジコンによって結果的に可能となっている違法複製ソフトウェアの実行がゲーム産業に被害を与えていることは認識するものの、本中間まとめでマジコンを著作権法の規制対象に加える為に用いられているロジックには、著作者を流通事業者のくびきにつなぎ、離脱することを悪としかねない危険な内容となっているため、容認することができない。
そのような法改定は「文化の発展に寄与すること」と第 1 条において謳っている著作権法で認められるべきではないと考える。
意見6
意見対象 : 第3章 【16〜17頁】
本中間まとめではフラグ方式等以外に「暗号型」技術、ゲームソフト用保護技術を著作権法で規制する技術的保護手段に含めるために、現行著作権法の技術的保護手段の定義部分の見直しを適当であるとしているが、これまでの意見1〜5で記述してきたように、どちらの技術も著作権法で規制する技術的保護手段であることが不適当だと考える。
暗号型技術、ゲームソフト用保護技術を技術的保護手段の対象とすることを適当とする本中間まとめの意見に反対する。
なお、ゲームソフト用保護技術のうち非暗号化方式に関しては、そもそもマジコンそれ自体に利用されている技術に関しては複製権侵害が関与していない以上、どのような規定の仕方であっても著作権法での技術的保護手段に含めることに反対である。
ただし、暗号型技術に関しては現行著作権法での「回避」の定義を見直し例えば「電磁的撹拌を復元した上での複製」のように通常の表示・実行と言った単なる情報へのアクセスにおいても必須となる暗号の復号単体を含まないようにした上での規定であれば賛成しても良い。
意見7
意見対象 : 第4章【19頁】
本中間まとめ19頁、「3.回避機器規制の対象となる行為」において「現行の規制と同様に……規制対象とすることが適当」とされており、第120条の2の条文を変更することは考えられていないものと理解している。
これは公衆への譲渡を規制するだけであれば正規製品の開発や研究等が阻害されることはないという判断にもとづくものであると理解している。
しかし、昨今のインターネット環境の充実に伴い、特にソフトウェアプログラムの開発については、ソース公開ソフトと呼ばれる、プログラムのソースコードを公衆に対して開示し、開発初期から利用者の意見や利用者から提供される修正・機能追加ソースコードを取り入れて開発を進めていく手法が広まっている。
実際にインターネット上で稼働しているサーバ等の大半はそうして作成されたlinux や apache といったソフトウェアで動作しており、特に linux はgoogle による andoroid の基礎としても使われている。
こうしたソース公開ソフトウェアの世界では、DRM の正規ライセンスを取得した場合ソース公開という手法が取れなくなるため、独自に DRM を解析した上で暗号の復号コードを組み込んだ DVD 視聴ソフトウェア等が提供されてきた。
現行著作権法の「プログラム」の規定はソースコードとバイナリを区別せず、また、第120条の2において回避プログラムの公衆送信に対して単純に罰則を加えるものとなっているため、暗号の復号それ自体を技術的保護手段の回避と見なす第30条の改定が行われた場合、実行可能なバイナリプログラムとしては暗号を復号した上で視聴する機能しか持たない場合であっても、プログラムソースコードの復号処理だけを抜き出せば「回避プログラム」の公衆送信と見なされるという懸念がある。
これらのソース公開ソフトウェアのソースコードはパッケージ化された上で「産総研」「理研」といった研究機関の FTP サーバ上にミラーされ、日米間のトラフィックの削減や国内研究者、ソフトウェア開発者に対する高速なアクセスを提供している。
第3章に対する意見6で、暗号の復号単体を「回避」と見なさないような規定とすべきであるという意見を述べたが、その意見が受け入れられず、また本中間まとめのまま、現行著作権法と同様に適用除外規定を設けることなく公衆送信が違法とされた場合、これらの FTP ミラーサイト管理者に対して著作権法違反というリスクを背負わせるか、あるいは、ミラーを取りやめて国内研究者・ソフトウェア開発者の作業効率を低下させ、日米間のトラヒックを圧迫させ、いずれにせよ日本の技術的国際競争力を低下させるという結果をもたらすことになる。
そうした事態をもたらすことがないように、以下の規定見直しが行われることを望む。
- 不正競争防止法と同様に、試験・研究目的での譲渡および公衆送信を適用除外とする除外規定を追加すること
また、権利制限規定に従った公正な利用を保護するために、以下の規定見直しが行われることを望む。
- 第31条〜第47条の8の目的で利用することを確認した上での譲渡および公衆送信を適用除外とする除外規定を追加すること
意見8
意見対象 : 中間まとめ全体
これまで本中間まとめに対して縷々意見を記述させてもらったが、本中間まとめ全体に対して、実質的にアクセス権を創設するに等しい著作権制度の根幹に関わる問題であるにも関わらず、また不正競争防止法等、他法令との影響を考える必要のある問題であるにも関わらず、全体的に検討が不十分であり、影響範囲の見積りが甘く、また著作権法自体に内部矛盾を招きかねない中途半端なまとめとなっているという不満がある。
このことは、技術的保護手段ワーキングチームの座長であり、法制問題小委員会の委員長である土肥氏自身が、平成22年12月3日の法制問題小委員会席上で小泉委員の質問から始まったやり取りに際して「このワーキングチームというのは技術的保護手段のワーキングチームなものですから、30条問題というその非常に大きな問題はワーキングチームとしてもどこまで含めるかという問題があったわけですね」と告白していることからも明らかである。
著作権法にアクセス権を追加するに等しい本中間まとめが、憲法上保障された権利である国民の知る権利にも影響するところが大きい問題であるにもかかわらず、このように座長・委員長自身が認めるように、不十分な僅か二ヶ月間の検討でまとめられ、実際に著作権法の改定まで行われようとしていることは非常に問題であると考える。
そもそも、本中間まとめの発端となった知財推進計画2010自体が、内閣府知的財産戦略本部の「インターネット上の著作権侵害コンテンツ対策に関するワーキンググループ」の席上において、委員からの「憲法問題の専門家を加えたうえで議論すべき問題ではないか」や「(著作権者にアクセスのコントロールを認めることに対して)ここでもっと議論するべきではないか」いう指摘を無視して拙速にまとめられたものであり、より広く視点を増やした上で、更なる検討が行われるべきであると考える。
その際には、今回の技術的保護手段ワーキングチームのように国民に対して非公開の場で、誰がどのような発言をしたのか検証不可能な場で検討が行われるのではなく、公開の場で正々堂々と、国民に恥じぬ議論が行われることを期待する。
まあ嫌味に色々と意見を送ってはいるけれど、以上の 8 意見を要約すると「そんな焦らず慎重に検討すれば」になる。ただ……これまでの実績から考えてもパブコメ自体はアリバイとして実行だけしてほとんど変更なしにそのまま報告書にするつもりなのだろうなと予想できるのが悲しいところ。
私が危惧している内容(暗号の復号自体を「回避」と見なしたり 独自非公開インタフェースを「保護手段」とするような定義変更) の著作権法改定が行われる場合は 永山 祐二 著作権課長 と 壹貫田 剛史 著作権課長補佐、土肥 一史 技術的保護手段 WT 座長を著作権法改定に伴う弊害の責任者として末永く語り継いであげようと思う。
1月9日に AVX 命令が追加された Intel 新 CPU が発売されたので、メインマシンをリプレース。データ用に 3TB HDD を使いたかったのと、そろそろ自宅でも x64 アプリの検証をできるようにしておくべきかと考えて OS は Win7 64bit を選択。そんなこんなで、こんな環境ができあがった。
とりあえず、Friio / カメレオン USB-FX2 x 2 / PT2 rev.B すべて正常動作を確認。PT2 は旧 PC には入れていなかったのだけど、昨日たまたま発売情報を見つけたので 10 分ほど職場から出てドスパラ本店で購入。手元の PTx 系ボードは PT1 rev.A が 2 枚、PT1 rev.B が 2 枚、PT2 rev.B が 1 枚になった。
PT1 は別に組んだ録画 PC に入れているので検証してはいないけれども、新規購入した PT2 に関しては SandyBridge 環境でも正常動作を確認。使っているマザーボードはスクリーンショットの CPU-Z で確認できるように MSI の P67A-GD65。
今回 64bit 環境を選んだ訳で、ドライバにはコード署名が必須になってしまった。Cypress の USB-FX2 開発環境 (Cypress Suite USB 3.4 [URI]) では署名が提供されていなかったり、PT2 に関してもアースソフトからは署名が提供されていないのでどうしようかなと悩んだりもした。
まあ、現行のドライババイナリに関しては対応方法が確立されている (カメレオン USB-FX2 に関しては K-an! の知見そのまま、PTx に関しては up0255.rar で対処可能) ようなのでそちらを使っても良かったのだけど、札ビラで物事を解決するとしたらどの程度かかるのかなという訳で軽く調べてみた。
結論。日本でコード署名を入れる場合は GMO グローバルサイン [URI] でコードサイニング証明書を取得するのが一番楽な模様。ドキュメントも充実しているし。金額は年間 59,850 という訳で個人で払うにはちょっと躊躇う額ではあるけれど、SRS さくらの専用サーバとして借りているこのサーバを VPS に置き換えてしまえば余裕で賄えてしまう額ではある。(昨年10月から移行を考えて VPS サーバを確保しているのだけど、時間がなくて作業を進められていなかったりする)
海外だとこの辺りの事情がどーなっているかというと、GlobalSign の US 本社では個人開発者 (Individual Developper) 向けに $99 で Code Signing 用の証明書が取得できるのが物凄く妬ましかったりする。 [URI]
それはさておき、あまり費用もかからない訳だしアースソフトでこの辺りの手続きを取って署名 (.cat ファイル) を付与したドライバインストーラを提供してくれればなぁと思う。
昨日出た、まねきTVの最高裁判決 (サービス提供者であった永野商店の著作権侵害 (公衆送信可能化権侵害) を認める判決) の判決文が最高裁 WEB ページに公開されていた [URI] ので早速中身を読む。大きな誤解がなければという前提で、大体内容は把握できたと考えるので解説を書くことにする。
まず知財高裁判決では、SONY 製の「ロケーションフリー」という製品がペアリング済み特定機器との通信機能しか持たないことから公衆自動送信装置にはあたらないと判断して、公衆送信可能化権を侵害していないと判断していた。ここで、著作権法の中には出てこない単語ではあるけれど今後の説明の為に「公衆自動送信装置」と対立するものとして、特定の通信相手との通信しか行わない/行えない装置を「限定自動送信装置」とこの記事の中では呼ぶことにする。
図にすると次のような内容になる。
あくまでも送信の主体は個々のロケーションフリー本体の所有者で、永野商店は電源・ネット・アンテナ付きのロケーションフリー設置スペースを貸しているだけなので著作権侵害にはあたらないというのが知財高裁の判断だった。
対して、今回の最高裁判決では次の図のように解釈することで、限定自動送信装置を使っても公衆自動送信にあたるとしている。
判決のポイントは、限定自動送信装置を使っていたとしても、アンテナ線の接続や公衆が利用可能なネットワークへの接続等の設定を行っているので送信の主体は個々の機器保有者ではなくサービス提供者の永野商店であると解釈しているところ。
送信の主体が機器保有者ではなく、サービス提供元になったので公衆自動送信可能化権侵害と判断して永野商店のサービスを違法であると決定した。
今後は知財高裁に差し戻されて、損害額の計算等をして放送局から永野商店への損害賠償請求を認める判決を出すという流れになるのだろう。少なくとも知財高裁は最高裁が出した判断を覆す権限を持っていないので、まねきTVが違法という判決が変わることは、著作権法改定が行われるか、あるいは数10年後に同種の事例が最高裁までたどりつき、同じ最高裁で判例が変更されない限りゆるがないものと思われる。
この判決に対する感想を書いておくと、一言。「サイテー」に尽きる。
ただし、同種のサービスを行う余地はまだ残されていると判断している。アンテナ線の接続・ネットワーク線の接続等を「まねきTV」が行っていたので送信の主体が「まねきTV」であるという内容の判決なので、機器保有者本人の設置場所への立ち入りを許し、本人に接続・設定等を行わせれば、今回の判決の影響を受けずに同種サービスを行うことができると解釈している。
それでも萎縮効果は大きくなるだろう。判決を誤読して「公衆回線に自動送信装置を繋いだら、それが公衆自動送信装置ではなく、限定自動送信装置であったとしても公衆自動送信可能化にあたる」と解釈してロケーションフリー本体が違法であると判断する人も出てきかねない。
大事なことなのでもう一度。この判決に対する感想を書いておくと、一言。「サイテー」に尽きる。
追記。電気屋さんの皆さま気を付けてください。最近はネットに接続可能な TV が増えておりますが、そういった TV の設置作業を請け負い、アンテナ線とネットワーク線の接続を行うと公衆自動送信可能化の主体であり、送信主体でもあると見做されるというのが今回の最高裁の判決ですので。
お年寄りにテレビの設置をお願いされても、これこれこういう理由でできないのです、文句は最高裁の裁判官に言ってくださいと断りましょう。今度の選挙での裁判官国民審査では 「田原睦夫」「那須弘平」「岡部喜代子」「大谷剛彦」に×を付けてあげるのが良いと思います。