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1月27日(火) デジタル・コンテンツの流通の促進等に関する検討委員会 (第48回) [この記事]
いつもの傍聴レポートです。今回は取引市場関連ということで、昨年 11 月 21 日の第46回では時間切れで以下次号ということになってしまったネット権・ネット法側からの継続説明と、昨年 11 月に設立されたネットワーク流通と著作権制度評議会 [参考 URI : 発足のニュースリリース] からの意見発表が主たる議題でした。
議事自体は次の流れで進みました。
- 村井主査からの開会の挨拶 & 異動の発表
- 小笠原コンテンツ振興課長からの配布資料確認
- 櫻井オブザーバ (デジタル・コンテンツ利用促進協議会) からのデジタル・コンテンツ利用促進協議会の「会長・副会長試案」についての説明
- 松田オブザーバ・齋藤オブザーバ (ネットワーク流通と著作権制度評議会) からの「ネットワーク流通と著作権制度協議会」の検討状況等説明
- 以上の説明を受けての意見交換 / 質疑応答
- 村井主査からのまとめ & 今後の進め方について
- 小笠原コンテンツ振興課長からの今後のスケジュール
- 村井主査からの閉会の挨拶
いつもは省略している村井主査からの開会の挨拶の部分ですが、今回は異動があったのでそこのところを紹介しておきます。
まず大山主査代理が審議会の委員ではなくなったということで、今後はオブザーバとして議論に参加するということになり、抜けた主査代理を中村委員 (取引市場 WG 主査) が埋めることとなりました。
次に今回から新たに 5 名委員が加わったととのことだったのですが、傍聴者にはこの資料が配布されていないのと個別の紹介が無かったので、詳細は把握していません。閉会の挨拶の際に、今回出席されている新委員の姓のみ、田辺委員、藤沢委員、井上委員、三尾委員と紹介されていました。
残りの挨拶と資料確認部分は飛ばして櫻井オブザーバの発表から追っていきます。発表の内容は次のような形のものでした。
- 本来であれば昨年 11 月に説明をした岩倉が出席すべきところなのだが、本日はどうしても都合がつかないということで、私が代理として出席させていただいている
- 昨年 11 月の段階では、様々な質問があり、持ち帰ってとの話になっていたと思う
- しかし、その後色々と状況が変わり、ここに配布している 1 月 9 日付けの試案をデジタル・コンテンツ利用促進協議会として発表し、また今ホームページでも公開している
- 総務省の事務局と相談をしたところ、まずそれを説明するのが良いのではないかということなので、資料として配布して、あわせてこれから説明をする
- まず、資料はパワーポイントと 1 月 9 日に発表した試案自体、そしてネット上での記事、以上の 3 点となる
- 最初のパワーポイントに沿ってかいつまんで説明をさせていただく
- まずデジタルコンテンツ利用促進協議会だが、高度に進んだネットワーク化、デジタル化に対応したデジタル・コンテンツの利用促進策の策定し、例えばわが国のコンテンツ産業の伸び率は世界平均と比較しても非常に低いということからしても、コンテンツの利用促進策の策定がわが国の喫緊の課題ではないかということで、様々な議論を早急に深め、それをもってわが国が世界最先端のコンテンツ大国となることに何がしかの寄与をしようということで昨年 9 月 9 日に設立された
- 会長・副会長については資料に記載のとおり、中山信弘 東京大学名誉教授を会長として戴いている
- 3 ページ目に進んで「会長・副会長試案」の公表の経緯というところに移る
- 設立当初以前から、なにがしかのものを発表したいと中山会長をはじめとしてお話があり、昨年末まで協議会の役員会を開き、何らかのデジタルコンテンツの利用促進を目的とした政策提言をしようということで、会長・副会長の間でまとまった部分と、まとまっていない部分もあるが、まずは広く問おうということで取りまとめて 1/9 に公表したということである
- ホームページは大変簡素なもので、デジタルコンテンツ関係の任意団体は色々あり、それらと比較しても大変貧相だが、この URL [http://www.dcupc.org/] なので参照頂ければ幸い
- 今後の予定としては現在 2/10 までを期限として、広く一般からも意見を募集しているところ
- その意見を集約した後で三月下旬を目処にシンポジウムを開きたいと考えている
- おそらく三月半ばには開催できるのでないかという風に考えている
- 続いて 4 ページ目の「会長・副会長試案」の概要・骨子について
- 中山会長と他三人の副会長で一致したのは、対象コンテンツの利用に関する権利について法律で何か一定の要件の元に集中化した方が良いのではないかという点
- この点について、契約によってやるべきではないかという意見が色々な方から出されていることはよく承知している
- しかし、それでは間に合わないのではないかというのが会長・副会長の四人で意見が一致したところである
- その上で、権利を集中したものを、集中化するだけでは回らないので、権利情報を明確化して、適正な利用を過重な困難なく行って、原権利者に適正な還元がなされる仕組みを作ったら良いということをあわせて提言するべきと
- またフェアユースの導入について、フェアユース規定の導入について現在色々なところで議論が重ねられ、国会にも何時出るかという話になっていると思うが、デジタル・コンテンツの特性に対応したフェアユース規定の導入もあわせて提言するべきではないかという点も意見が一致した部分となる
- 続いて 5 ページ目の対象となるコンテンツについて
- 権利の集中化の対象となるコンテンツとしてどのようなものが考えられるかということだが、これは原権利者の許諾を得て録画・録音・放送された映画等のコンテンツが考えられる
- しかし、これは意見が一致している訳ではなく、幅広く、色々な方々から意見を聞きたいという風に考えている
- 例えば音楽については既に JASRAC さん等でかなり処理が進むのではないかということで、対象コンテンツの範囲外とすることも考えられるのではないかという意見が出ている
- 次に 6 ページ目、権利を集中化するための要件について
- これは原権利者の意思を尊重するということが利益衡量の際にかかる意欲として重要なのではないかということで、原権利者の意思がどのようなものかということを判断基準とすることが考えられるのではないか
- 例えばということで必ずしもこれに捕らわれるわけでは無いが、例えば一定の要件として、何がしかの判断基準として一定の数値で、原権利者からの別段の意思表示、要はこの対象となるコンテンツに関して権利の集中化を行わないという意思表示が、判断基準として一定要件に上がる場合は対象コンテンツを権利の集中化から外すということが考えられるのではないか
- また、コンテンツとしては過去に制作されたコンテンツとこれから制作される新たなコンテンツと、両方があると考えられるが、法律を制定する場合は制定から試行までに一定の期間があるので、施行される時点あるいは施行されてから一定期間経過した後での原権利者の意思を判断材料をするのであれば、過去のコンテンツについても権利処理がある程度進むのではないかと考えている
- 続いて 7 ページ目、法定事業者となるものについて
- 法定事業者というのは先ほど対象コンテンツがあると申し上げたその対象コンテンツの権利を集中した際に、集中した先をここでは法定事業者と呼んでいる
- 権利関係をなるべく簡便にするという観点で、誰か法定事業者を特定した方が良いだろうということで、権利情報の収集を行い、原権利者に適切な還元を行う能力を有しているものと規定するべき
- ただし、この具体的な規定の仕方は色々と難しいところがあるだろうから、例えば経済的リスクを負担して対象コンテンツを制作したものというような書き方や、あるいは権利者情報の観点からすると、放送のコンテンツに関しては放送事業者という形で規定することも考えられる
- 法定事業者が有する権利としては、非排他的な許諾件を持つというふうにして、原権利者自身による利用および利用許諾は妨げないという風に考えるのは如何だろうかと提案として出されている
- 続いて 8 ページ目、対象コンテンツの権利情報の明確化およびその効果について
- 権利を法定事業者に集中するというだけでは、権利者は誰なのか、誰が原権利者なのか全く判らない訳で権利情報を明確化するのがよろしいのではないか
- その為に、具体的に対象コンテンツを何がしかの登録機関を設けて登録するということが考えられるだろう
- この情報として、法定事業者が対象コンテンツの権利情報を、一定の機関に、ここでは仮にコンテンツID管理事業者と定義をつけているが、そこに国際技術標準がある許諾コード方式に基づいて登録し、そのコンテンツID管理事業者は登録された情報を電磁的に公示する
- そして、利用したい人は WEB サイトなりにアクセスすれば、誰が原権利者で誰が法定事業者で、どういうコンテンツが登録されているか判るという仕組みを作るのは如何かという提言である
- その際手続きとしては、一定の要件を満たしたものについてはコンテンツID管理事業者は登録をしなければいけないということで恣意を排除することが必要だろうし、一定期間、登録する前に開示することで原権利者が「私も権利者なのにどうして載っていないのか」という場合に異議を申し立てることができるという規定を設けることができるのではないかと考えている
- 続いて 9 ページ目、対象コンテンツ登録の効果について
- 登録をして利用促進をするという観点から、何らかのインセンティブを設けるということが考えられるのではないか、そのため、原権利者からの差し止め請求や人格権に基づく請求について、一定の場合は免責されるという規定を設けて、ただし、登録までの間に異議を申し立てる期間を設けるということでバランスを図るのは如何だろうか
- 続いて 10 ページ目、対象コンテンツの適正な利用と原権利者への適正な還元に向けた仕組みについて
- 法定事業者の負う義務としては、ただ単に権利を集中するだけでは原権利者に利益が無いので、対象コンテンツにかかる原権利者について、利用された場合に対価の支払いに応じるということが必要であろう
- 例えば当事者間で契約に応じて定められている場合は、それに応じて、また所在不明な場合は何らかの公正な対価を決めるためのメカニズムを策定するということも必要であろう
- もちろん所在不明の権利者に関しては、文化審議会においても検討されているところなので、それとの兼ね合いも検討する必要があるだろうと考えている
- 続いて 11 ページ目、法定事業者の負う義務について
- 対称コンテンツの適正な利用を実現するためにどのような方法があるかということで、大きく二つ考え方が分かれるところで、A 案と B 案ということで両論併記をしている
- 応諾義務を法定事業者に負わせるということで、第三者が合理的な条件で利用の申し込みをした場合は法定事業者はその利用を許諾しなければいけないという規定を設けるかどうか、義務を負わせるかどうかが大きく異なる点
- 法定事業者が、法定事業者の方でビジネスという観点から行う行為が合理的なのだろうとすれば、B 案のように応諾義務を課すことが必要ないのではないかという風に考えられる
- また、利用を促進するという観点を突き進めるのであれば、A 案のように応諾義務を負わせると考えられる
- ここは中山会長と副会長の間でも、両方あるのではないかという方もいれば、どちらかしかないのではという方もあり、意見の一致を必ずしも見てはいない
- 法定事業者以外の事業者というのが 12 ページ目になる
- これを設けるかどうかという点は別だが、例えば映像のコンテンツに関する JASRAC のような機関を設けてライセンス事業を行うという形も考えられるのではないかということで記載している
- もしもこのようなコンテンツライセンス事業者を設けるのであれば、そのようなライセンス事業者に対しては応諾義務を負わせるということは可能ではないかと考えている
- 続いて 13 ページ目、法定事業者以外の事業者について
- コンテンツライセンス事業者を設けた場合に、コンテンツ利用をさらに促進するという観点を推し進める場合、法定事業者に応諾義務を課すことに加えて、法定事業者が一定期間内にライセンス登録を行わないコンテンツに対して、ライセンス事業者が自ら法定事業者となるということが考えられるし、またそのようなことは認めないという趣旨も考えられるということで記載している
- 最後にデジタルコンテンツの特性に応じたフェアユース規定について
- インターネットの技術の進歩は非常に速く、実際には利用するものにとってコンテンツの内容自体は確知・認知されないにも関わらず、複製等が行われるということが実際問題として発生している
- そのような利用については認めようということで、現在文化審議会で議論がされていると伺っているが、技術の進歩は非常に速いことから今後どのような事態があるか判らないという観点からすると、すくなくともそのような場合については著作権侵害には当たらないものとするフェアユース規定を本試案に基づく特別法が策定されるのであれば、独立して設けるべきであろうと考えている
- 以上、申し上げたことがかいつまんだ所で、細かいところは実際の 1 月 9 日付けの試案を御覧頂ければと思うので、よろしくお願いする
- 若干短い時間になってしまったが、以上で私の方から説明を終わらせて頂く
以上で櫻井オブザーバからの発表は終了して、引き続いて松田オブザーバと齋藤オブザーバからの発表に移りました。まず、齋藤オブザーバからのネットワーク流通と著作権制度評議会自体についての説明が行われました。説明内容は次のような形のものでした。
- お手元にネットワーク流通と著作権制度評議会の設立と会員募集の案内というものを配布している
- これは評議会の募集に際して使用したパンフレットをお渡ししていて、そこに設立の趣意を書いている
- 昨年の 11 月 21 日に設立総会を開いて設立したわけだが、この設立の趣意を御覧いただければ意図がお判りいただける
- 設立の趣意に左側の中ほどまで現状認識というものを書いてある
- まず、ネットワーク流通促進が喫緊の政策課題となっている
- それから知的財産戦略本部における検討状況を踏まえ、そうした検討状況では著作権制度を超えたコンテンツ利用の特別な法を作るという検討や提案がなされているという状況がある
- そういった状況を踏まえて、問題意識が高まっている中、本来前提としてはコンテンツの制作と流通の両方の発展がなされなければならないのに、そうした著作権制度を根本から見直すという提案はコンテンツの創作と流通には繋がらないのではないかという意識・認識が出てきている
- それはどこから出てきたかというのが右側の中ほどの段落になる
- そうした制度の検討においては当然コンテンツの制作者、それから著作権関連ビジネスに携わっている方々、ネットワーク関連ビジネスの企業法務を担当している方、著作権制度を研究している方々、関連法務携わる弁護士といった専門家の英知を結集することが本来必要なのに、そうしたコンテンツの制作や流通に関わる人間の意見が十分に反映されていない、考え方に反映されないという状況がある
- そうした方々の間で、著作権法の制度を見直すという検討がコンテンツの創作と流通の両方を発展させるということに繋がらないという方向に行きかねないという認識がある
- ここに書いてある関係者の協議が必要だろうということで、評議会を設立させて、これらの方々の協議によってあるべき政策とは何か、特に著作権制度にとっての政策とは何かというところを提言するためこの評議会を設立した次第である
- 次に添付した資料がネットワーク流通と著作権制度協議会人事という資料になるが、その一番後ろの所に評議会の活動内容というところを添付しており、こちらがこれまでの検討内容になる
- 今紹介したとおり、法議会できちんと議論をしたうえで提言をしようということにしているが、昨年 11 月 21 日の総会で設立した後、分科会を二つ作り、詳細な検討を行っている
- 現在の会員数は 118 名の会員がおり、この中には研究者・弁護士・関連企業の法務担当、それから権利者団体の方々が参加している
- これまで分科会としては流通促進に関する分科会と権利制限の一般規定に関する分科会という二つの分科会を設立しており、これまで既に流通促進に関する分科会について 2 回、一般規定に関する分科会は 1 回開催しており、それぞれの分科会には 30 名以上の出席で協議を進めている
- 評議会の趣旨について若干述べると、評議会については先ほど申し上げたとおり会員が 118 名となるが、会員から選任された理事によって理事会を作り、理事はここに記載しているとおり関係する著作権事務に多く携わっている弁護士を中心に理事を組織しており、会長には齋藤博弁護士に就任を頂いている
- 松田弁護士は、会長職務代行となっている
- また顧問として、ここに記載されているような著作権方面で広く認められている先生方にご就任いただいている
- 参考資料として会則と運営規則を添付しているので、第3条の目的および活動を御覧頂きたい
- これは先ほども申し上げたことだが、目的としては提言を公表することとしている
- 提言のスケジュールだが、先ほど詳細下資料のとおり分科会を開催していて、この問題の検討を日をおかずに進めていき、今年度中には提言を発表したいと考えている
以上で齋藤オブザーバからの説明は終了し、松田オブザーバからの発表に移りました。発表内容は次のような形のものでした。
- こういう状況で検討中で、我々の協議会としては中間の意見であっても、こういう言葉でまとまっているとは発表する訳にはいかない
- しかし、異論の無い所は間違いなくある
- 私のペーパーの資料 2 を頭から説明しても判りにくいので、別紙 1 から入らせて頂く
- これは簡単な絵で概要を申し上げたものになる
- デジタルコンテンツのネット流通を阻害しているのは一体何かということで、知財本部で検討されているように、ビジネスモデルが成立していないとか、違法コンテンツが氾濫しているとか、コンテンツの権利処理が煩雑で、これが進んでいないということが指摘されている
- 私共が検討するのは三番目のコンテンツの権利処理の煩雑さを如何に簡単にするか、場合によっては権利処理をできれば一元化したいということを考えている
- 今、櫻井弁護士から新しい提案がされたところではあるが、資料 2 の別紙 1 を見て頂きたい
- 実はほとんどのところは我々の考え方も同じところである
- 何をしたら、放送コンテンツがネットに流通するだろうかということを考えた時、別紙 1 のこの 4 つの網掛けを解決しなければいけないということは誰しも同じ意見だろうと思う
- メタデータ化して、外からも権利処理の内容が判り、幾らでコンテンツが利用できるだろうかということが判れば流通が促進されるに決まっている
- これを信託でやるのか、管理事業者でやるのか、その他の形態でやるのか、全く独自の企業でやるのか、これは色々な形態があるが、促進するためにはこのデータを処理した結果が見られるように、メタデータ化をしなければならないはず
- さらにメタデータを使って、流通させるということで収益が上がるということを、実業家の方でビジネスモデルを作ってもらうことで流通が促進されるといことも間違いない
- この二点についてはおそらく異論がないところだろう
- 新しい法律を作って、配分ルールを公正なものにして、権利を一元化して、義務的な条項を入れて流通に置くという方向を考えるのが左側のところになるが、これを法律でやるかそれとも契約でやるのかが私共と先ほどの櫻井弁護士さんの説明で若干違うところだが、思い自体は変わらない
- 日本の情報通信システム、それから優れたコンテンツを海外に出していきたい
- そのことで文化と産業を促進したいというのは誰しも同じ意見だろうと思う
- それで配分ルールの合意と一元化を形成する為にはどうすればいいだろうか
- 配分ルールとして政令で定めろという主張もあったし、公正な配分をしろという義務を課せば良いと提言された方もいた
- しかし、そうしたルールを作れば配分ルールが形成されるかというと、私は絶対にそんなことはないだろうと考える
- 配分ルールは権利者ないしは権利者以外の関与者の方々が努力して積み上げて頂くしかないだろうと思う
- 法律を作れば構成が簡単になり、どんどん流通するということは無い
- むしろそれを強制することになると、ますます配分ルールの形成はできないという風に考えている
- 権利の一元化、これは私も賛成している
- 賛成しているが、著作権法をベースにしてガイドラインと契約、モデル契約で一元化を推進していくということが我々の提案で、法律で一元化するべきではないと考えている
- これについては別紙 4 を参照して後で説明申し上げる
- この法律部門の所の最初の配分ルール・一元化の問題は発展的な流れで考えると、権利処理・一次利用をライセンスビジネスと二次利用につなげて、ビジネスモデルで公衆に提供するという形を別紙 2 に書いているが、この赤の部分だけを検討すればおそらく法律的な議論としては良いだろうと考えている
- ライセンスビジネスもビジネスモデルも、本来であればビジネスマンの方で考えて頂いて発展させて頂きたいが、ただネットにコンテンツを流せば良いというビジネスでは絶対に限界があると思う
- 今までもそれをやろうとして成功していないのだから
- 将来的には日本のコンテンツを中国語版にするとか、日本のコンテンツを要約するとか、複数の放送番組を結合してさらに高度な情報にするといった加工をしなければ、今テレビで流しているものをそのままネットに流してビジネスが発展するとは思えない
- そこでフェーズ 3 にマルチユースと簡単に書いているが、この点をにらむと、コンテンツの権利処理の赤の部分でも将来こうしたビジネスモデルが成立するように契約モデルを作っていかなければいけないと思っている
- 従って、ライセンスをしやすくビジネスモデルを作りやすいコンテンツの権利処理ということをにらんで契約モデルを作るということをしなければならない
- その範囲内で全体をにらみつつ、コンテンツの権利処理では配分ルールと一元化を遂げていかなければならないと思う
- 次に別紙 3 を見て頂きたい
- 今までの議論の中で、どういった項目をチェックして検討すれば、今言ったフェーズ 1 からフェーズ 3 までの項目をおおよそ検討できるであろうかということで、16 項目あるのではないかと考えている
- 新しい協議会の方の 1 月 9 日の整理はまだついていないが、おおよそネット法の権限に近いものと考えて解釈することができるのではないかと考えている
- この 16 項目を検討することになるが、この検討項目も将来の発展を見据えた検討なのか、それとも配分ルール・一元化の法律的なスキームを組み立てるかの問題であるかで分けて考えると、資料 2 の 4 ページ下の段に書いたように、この 16 項目のうち第一フェースと書いたところが法律家が考えるべきことだろうと考えている
- 第一フェーズとして 4 つあるが、新法を作るか契約でやるかは別として、法律家が考えなければいけないだろうものは 1〜4 までと 11/12/13/16 の項目をチェックすれば第一フェーズのところはおおよそ議論ができる、形が大体判るだろうと思う
- 今日は特に各論に入る前に、1〜4 までのところを説明すればおおよその議論ができるのではないかと考えたので、それだけの説明をさせて頂く
- 別紙 3 にまた戻らせてもらう
- 私共の趣旨ではデジタルコンテンツに関する著作権、著作者のその他の権利、それから著作隣接権は現行の著作権法上の権利として残す
- デジタル化したとしても、新たな権利や新たな義務を課すということはしない
- 第一次利用者、放送番組であれば第一次放送として利用した時の放送局・放送としていただければ良いかと思う
- 必ずしも放送局に限定する必要はないが、とりあえず第一次利用者は放送局と考えて頂く
- 第一次利用者に諸権利に関して二次利用についての権利処理を契約で行ってもらう
- 契約によって一元化することができれば、二次利用の前提環境を作るということになる
- この前提環境をどのように作るべきかについてはモデル契約とガイドラインによるべきだろうと考えている
- これは趣旨でここまでで止めておくが、後でもう少しこの趣旨の説明を別紙 4 でさせて頂く
- 対象コンテンツは個人的意見で言えば、音楽は今更処理をする必要はないだろうと考えている
- また映画についても、メタデータ化が進んで色々なものが容易に利用できるということになれば、少なくとも法律家が権利の一元化を考える必要性はないと考えている
- そうすると、求められ、なおかつ一元化できていないところが何かと考えると、放送コンテンツが議論の対象となるのではと思う
- 少なくとも放送コンテンツが一番一元化しにくく、権利処理しにくく、流通に置きにくいということは間違いないと思っている
- このことを何らかのスキームで解決できれば全てのコンテンツが対処できるということに当然なる
- 処理されるべき権利の内容としては、著作権・著作隣接権とパブリシティ権でよいのではないかと思っている
- 商標項や意匠項について、利用や実施という概念は映像にはないと考えている
- 移りこみの問題もあえてここで考える必要はないと思っている
- 肖像権については一般的人格権なので、肖像権という一般人の権利を法律やガイドラインで権利処理するのは不可能と考えている
- 法令について、当然のことながら新しい法律を制定する必要がない
- しかしながら、あえて著作権法の中でも、検討するべきだろうという項目は挙げている
- 例えば契約条件の中である程度の推定規定を設けて、業界慣行が成立している場合や、同種の著作物について配分やその他のルール条件が慣行として認められている場合、争いがある場合に一定の条件を推定するということが可能ではないか
- それから複数の重畳的な権利者が存在する場合に、正当な事由なくこれを拒否するものに関してはこれを拒め得ないというような規定も、著作権法の中にわずかにある訳だが、それとオ案じようなことを重畳的な権利関係にも適応できるかという規定を設けるという検討も必要と思う
- もし一元化した権利をさらに管理事業法上のルールに従って利用を促進しようとするのであれば、これを現行の管理事業法でできるかどうか検討しなければいけない
- 先ほどマルチユースを促進することの原権利について、法律家が検討することも必要であるとすると、同一性保持権の不行使特約がどこまで有効であるか検討する必要があり、この部分については、著作権法上こうした規定が存在しても良いのではないかと考えている
- この程度のことを著作権法上の改正として盛り込まれるかどうかということになる
- この制度を捉えて、具体的な手続きはどうするか、それを別紙 4 で説明していく
- まずコンテンツをジャンル分けして、そして配分モデルもジャンル分けする
- このジャンルはできるだけ細分化した方が良いと考えている
- それから契約モデル、当然ながら配分モデルと契約モデルは不可分で、これを外から、権利者も利用者も見られるようにする
- しかし何もかも見られるようにするのではなく、関係者が見られる範囲を設定しなければいけないと考えている
- この入力フォーマットに従って、第一次利用者が権利者コードを入れていき、そしてデータベースを作り、このデータベースをリンクすることでメタデータとする
- そうしたものを作り上げておけば容易に利用できるということになる
- しかしこういったシステムを作ればそうなるという訳ではなく、本当に大変なのは最初の 1 の段階でジャンル分けをしたところの配分モデルを決めるところになる
- これはかなり大変なことで、契約でやるのだから時間がかかって追いつかないだろうという意見が必ず出てくる
- しかしこの配分モデルを法令で決めればよいのか、あるいは正当なというば配分ができるのか
- もし法令で決めるのだとしても、業界慣行や皆の中の意見を聞いて調整する諸機関が必ず必要になる
- それならば、ここの所は当事者間の契約でやれるかとことんやってみなければならないのではないか
- それができるのであれば、私はどんな法律スキームでもできるだろうと思う
- こういう提案をしたのは、先に平成 19 年に経団連で同じような議論をしたとき、法令で一・二の三できめるのではなく、そんなことは決められっこないのだから、どうしたらこういうモデルを作ることができるだろうかと考えて、契約モデルを沢山作り、それを選択によって当て嵌めをしていくしかないだろうとなった
- 場合よってはネットに出していけないという権利者がいれば、それもデータに落とせばよいと私は考えている
- どうしても出したくないのだとすれば、そういうデータをきちんとしておくべきだと思う
- 出ないデータを明確にすることも必要だろうと思う
- 後は、出ないコンテンツと出るべきコンテンツの市場における競争をやらせてみて、そういうことの結果として契約モデルを収斂させていく、収斂させることでもっとスピードアップした権利処理ができるようになるだろうと考えている
- 最後に、この方法によってもどうしてもトラブルが若干おこるだろうと考えている
- この手続きの中に、ガイドラインの中で ADR を作るべきだろうと思う
- それから、この方法を取るということは法律の義務を課していないのだから、アウトサイダーあるいはインサイダーであっても私の契約環境は違うという人は民事訴訟で訴えられるようにしておく、そうした権利は残すべきだろうと思う
- 何もかも新法で押さえ込むということをしない方がかえって良いだろうと思う
- それでも収斂すれば必ずこのビジネスは成功するという風に考えている
以上で松田オブザーバからの発表は終了しました。ここから質疑と意見交換に入りました。最初に発言したのは椎名委員で、その内容は次のようなものでした。
- 今日ここでネット法・ネット権に関する新たなバージョンの説明を頂いたが、我々からすると相変わらず安価に効率よくコンテンツを創作したいという虫のよい話にしか聞こえない
- 前回岩倉さんがお越しになって説明された折にも申し上げたことだが、ネットワークにコンテンツが潤沢に供給されるという状況を実現する上での最大の問題点はネットワークの収益性の悪さなのだ
- その問題を解決せずに、何故ネット権を創設することが流通の活性化を実現し、またクリエイターへの適切な対価の還元を実現するのかという点について本委員会から質問させて頂いたが、その点についての答えが、今日の説明の中でも一切していただけてはいない
- この点について、これからでも構わないのでお答え頂きたい
- またネットというメディアを活用する上で、もっとも優位な立場にある通信事業者自身がコンテンツ制作に前向きでない中で、何故、音楽・映画・放送という既存のコンテンツだけを標的にして流通促進をはからなければいけないのかという点について、全く理解できない
- そうした前提がありながら、前回の提案とは違うのだということなので、あえて拾っていくと、前回までは権利者全てを従わせる強行法であったのが、今回は権利者の意思表示が条件となっているということ
- その意思表示の要件として、色々挙げられているようだが、細かなところは抜きにして、強行法でないのだとすると、現行の契約となにも変わらないものであって、何故法律による制度が必要なのか理解できない
- またネット権を行使する主体としての法定事業者について、この前も別にレコード制作者・映画制作者・放送事業者に限らないとおっしゃって居た訳だが、今回は権利情報の収集等を行い原権利者に適切な対価の還元を行う当事者としての能力を有するものという表現になっていて、コンテンツホルダーに限らないという表現にかえられたようだ
- その能力を有するかどうかということを誰がどのような基準で判断するのか、また、そもそもそんな能力を有するものが出てくるのであれば世話がない訳であって、そうであれば、こんな制度は必要なくなる
- また仮にそうした能力があるものが現れて、コンテンツホルダー以外のものが法定事業者となった場合にコンテンツホルダーも与えられている送信可能化権はどうなってしまうのか
- 以前の主張ではクリエイターへの適正な配分を実現するという観点から実演家のワンチャンス主義に関する規定をオーバーライドして、適正な配分を行おうという趣旨であったものが、今回のご意見では、説明はされなかったけれど「会長・副会長試案」を拝見すると「著作権法の枠組みを大きく外れることを避けるべく、ワンチャンス主義の適用を行う」となっている
- この点は非常に大きな後退だと思っていて、落胆をしているが、そもそも著作権法の枠組みを気にかけるのであれば、そもそもこんな提案はされない方がよいのではないか
- また法定事業者の応諾義務も A 案 B 案で意見がまとまっていないということなのだが、応諾義務を課さないとすればどういう流通促進効果があるのか判らない
- このパワーポイントも「会長・副会長試案」もそうなのだが、冒頭で権利の集中とはっきりおっしゃっておきながら、原権利者の反発を回避されようという考え方からか、様々な選択肢や緩和条件をちりばめるような努力をされたようではあるが、そのことが逆にこの制度の整合性を薄めてしまったようにも思う
- 「会長・副会長試案」を拝見すると「契約による権利集中化作業は百年河清を待つ」という表現をされている訳だが、民間の努力では足りないと呪文のように言われている
- 一方で NHK オンデマンドを契機として、実演家と放送局の間では既に様々な取り組みが始まっている
- とりわけ実演家サイドでは不明権利者の探索を含めて権利処理の集中化あるいは円滑化について色々と努力を重ねてきている
- そもそも人の財産を取引しようというときに、時間と費用をかけるのは当たり前のことであって、何故コンテンツに関して時間と費用をかけることが否定されなければいけないのか相変わらず理解に苦しんでいる
- 前回の繰り返しになるが、法律というものはあくまでも社会全体に与える影響に最大限配慮して、一定のバランスの中で決められていくことが原則だと考えている
- 特定の産業や事業者を優位に立たせるために立法が行われるようであってはいけないと考えている
- そういう意味で、この種の提案は我々にとっては到底受け入れがたいものであると申し上げておく
- 松田先生の提案について、先生がかねてからこうした持論をもっているということは承知している
- 今日説明を頂いたことで、さらによく理解ができたと考えている
- しかしまた一方で、こういうこともある
- 例えばブランド品のバックをブランドの直営店で買っても、それからインターネットの楽天等で買っても、多少の価格の違いはあるにせよ、ネット上で格別破格の値段で買えるということはない
- また、インターネットで販売するということをブランドが強制されることもない
- ブランドによっては直営店でしか販売しないようにしようという販売戦略をとる手法もある
- ネットに関するコンテンツ流通促進策として提案されるものは、ことコンテンツに限って、あまねくコンテンツがネット上で破格の値段で提供されなければいけないというおぼろげな前提に立って、さらに売り手の販売価格に関する裁量権がある程度平準化されて、一律一元化されたルールの下で取引されなければいけないということが、あたかも前提になっているように思えてならない
- こういう種類の提案が今まで色々あった訳だが、そういう提案はコンテンツの利用から収益を上げる立場から見れば、すべからくネットに流さなければいけないというふうなことも含めて、如何に滅茶苦茶な話であるか、ぜひ皆さん一度よく考えていただきたいと思う
- ただ、コンテンツというものが権利の束であって、それを処理する手間がブランドバックとは違うという話については、それをより効率的にするべきだという議論は当然あり得る話で、そこは権利者団体側から努力するべき議論であると思っている
- 実際我々 CPRA においては、応諾義務を伴う著作権等管理事業法に基づく使用料を定めて、その仕切りで良いという権利者の方々がの委任を受けて権利処理を進めてきている
- だからと言って、全ての権利者が個別の交渉の機会を失って、すべからく一元化されたルールの元に従わなければならないとするような提案であるならば、それが如何に権利者側からの発議によるものだとしても、これは実現性がかなり厳しいものがあるのではないかと思う
以上で椎名委員の発言は終了しました。ここで村井主査から両オブザーバに対して何か回答はと求めて、櫻井オブザーバ、松田オブザーバの順で回答が進みました。櫻井オブザーバからの回答は以下のような内容のものでした。
- 私のほうは中山会長ではないので「百年河清」というのがどうかについて、私としてはなかなか回答しづらい所ではあるが、私見として答えさせていただく
- まずネットでの収益性が悪いということがコンテンツのインターネット流通が進まないことの原因ではないかという話があり、これはおそらくおっしゃるとおりなのだろうと考えている
- しかし、この際の権利処理に要するコストが非常にかかるということもまた指摘されているところであると考えている
- それをなるべく下げるというのが虫の良い話だとおっしゃられてしまうと、その通りなのかもしれない
- しかしそのコストによって、本来ならば収益を上げられるかもしれない収益性が下がり、結局は通信事業者も含めて前向きになれないという点があるのであれば、それはもったいないことなのではないか
- また、CPRA 様をはじめとして、NHK オンデマンド等での民間の取り組みをされているというのも重々承知していて、あれをやるにしても大変な力と時間がかかっているのだろうと思っている
- CPRA のホームページで権利者を探しているということで探されていたとしても、それで当該権利者が出ているコンテンツをネットに流すということが適法となるかといえば、それは法的な裏づけとはならないだろうと認識している
- そうであるのならば、そういうことも含めて適法にするような法的な手立てを与えた方が望ましいのではないかというのが一つの観点となっている
- もちろん、新しいコンテンツに関してはそうした手立ては必要ないのかもしれないが、過去のコンテンツについてはどうしても不明確な部分が出てくるのでそこの部分を何らかの法的な手続き、法的措置をとって適法に行わせるようにしてはどうかといのが一番大きな差だろうと考えている
- 契約によって処理を進める場合、過去のコンテンツの全てについて、契約による処理をするのは難しいだろうと考えていて、契約モデルを作成してそれに基づいた手続きをしていくのは今後のコンテンツには役立つのだろうが、過去のコンテンツについてはどうなのだろう
- 折角日本が色々と、過去に優秀なコンテンツを持っているのだから、そこを覆うよう処理を進めるのが望ましいのではないかという観点が、どこまで法律で処理をするのか、それとも契約でできる部分をやっていくのかというところで見解が分かれるのではないか
- やや散漫な回答になっていて、ポイントを外しているかもしれないが、以上で回答とさせていただく
櫻井オブザーバからの回答は以上で、次の松田オブザーバからの回答は以下のような内容のものでした。言葉が飛んでいると思った部分を、私の判断で括弧にくくって追加していますが、これが松田オブザーバの意図を正しく反映したものかどうかはちょっと自信がありません。
- ブランドバックが強制されて売られることはない
- どこのルートに流すかは自由
- ネットを促進することを、安く提供することを前提に提案されるのはおかしいのではないか
- 権利者側・売り手側が幾らで売りたいということがあってもよいのではないか
- 全てのコンテンツを出しなさいということだと、出したくない人はどうすればよいのだろう
- こうした問題が提起されていると理解した
- しかし、どんな制度を作るにしても、全部出す必要は無いだろう
- それから、安く提供された方が良いというのも間違いないだろう
- そして、強制はされないけれども出してもらったほうが良いというのはどこにあるか、これがポイントだと思う
- まず、ネットというインフラができて皆が使えるようになった
- そのとき、シャワーのように情報を降らすのではなく、好きな時間に、自分の選択で見たい、いつでもどこでも自分の選択でという文化が既に生まれてしまっている
- この文化を育てるか、それとも育てないかというのは皆が考えなければいけない問題になって、ある意味では国が考えなければいけないテーマになっている
- その時、固定的な商品と同じように考えるわけにはいかないという問題意識が皆に、社会全体にあるからこそこういう議論が始まっている
- 椎名さんが言われることは、私は個人的にはもっともだと思う
- しかしこうした会議が必要とされている背景は、次の時代で国民皆が、いつでもどこでも自分の選択で見たいメディアを楽しむ、総じてこれは科学技術や文化の発展にも繋がるし、先行すれば世界に市場を形成することもできるだろうし、遅れれば後進国になるだろう
- それが厭だから、こうして議論をしているのだろう
- そうすると、どこの所を犠牲にして、何かを得なければいけないという議論をするべきだろう
- そこでどうしても譲れない部分はあると思う
- 椎名さんの意見の中で「すべからく」という部分、これ (が要請されること) はおそらく無いだろうと思う
- 誰かが、そうしたルートに供給しようかと最終的に決められるということを (著作権法で) 守ってもらいたい
- これがもっとも重要なところ
- それが何故なのかは自分の中でも明確な法律的主張として整理できてはいないが、これがもっとも重要だと私は思っている
- 論文や文芸、エンターティメントといったものを「あなたの作品を私が利用するから出しなさい」ないしは、許諾義務まではないが、そうした社会状況だから出しなさいという圧力をかける社会が良い社会とは思えない
- 言論や文化というものに繋がる、作った人の意思というものを尊重して頂きたい
- それで、どうしても私の文化は外に出したくない、どうしても本で読んでもらいたい、どうしても私はインターネットは厭だという人は止めたらいいだろう
- そういう自由は認めるべきだと思う
- そういう自由を認めつつ、最大、多くのコンテンツがいつでもどこでも、自分の選択で見られる社会を作ろうということをしなければいけないのではないかと思っている
- 私が一番疑問に思っているのはその点になる
以上で松田オブザーバからの回答は終了しました。以上の二つの回答に対して、村井主査から質問者の椎名委員に「よろしいだろうか」と確認を求め、椎名委員から松田オブザーバの回答について、次の内容のコメントがありました。
- 松田先生がおっしゃった、情報が豊富化していくことは一つの流れであって、止まらないし皆の利益になるということは否定するつもりは全く無い
- やはり「すべからく」という部分がネット権・ネット法で我々が直面してきた問題なので「すべからく」ということが回避できるのであれば、そうした環境を実現化あるいは最大化していくのは権利者側の務めでもあると考えている
- その話はよく理解ができた
以上が椎名委員からのコメントの内容でした。次に発言をしたのは堀委員で、その内容は次のようなものでした。
- 今は一次利用のものを作るのすら大変で、二次利用の話をしている場合ではないが、単純な感想だけ言わせてもらう
- 櫻井さんが説明されたことは、前回岩倉先生が説明された時に申し上げた「御伽噺を難しくしたようなもの」というところから、ネット権・ネット法という比較的判りやすい言葉を全部削ってしまったもので、一体何を言っているのだろうかとさっぱり判らない
- 要は作ったコンテンツは推定譲渡してくださいと言おうとしているのかとしか解釈できない
- どちらが判りやすかったかというと、松田先生の案の方が具体的だなというのが単純な感想になる
- デジタルコンテンツ利用促進協議会の方々は、非常にコンテンツの法律に詳しいのだと思うが、実によくご存知で、この提言の中でも 2 ページで「日本はアメリカののように俳優団体が団結して映画会社と団体交渉し、しかるべき契約に持ち込むという基盤を有しない」と、良くご存知なのだとしたらこちらを提言されては如何だろうか
- 使いたいという人の主語にあわせてこれを出してくるのはちょっとチグハグではないか
- そんな状況が日本にあり、アメリカ型はすばらしいのだと
- アメリカには隣接権がないから自由にネットに使えるという、それがパイを広げているという説明が以前どこかにあった
- それは全部スクリーンアクターズギルド (SAG) という出演者の団体、労働組合ですが、それが映画・テレビのプロデューサと契約のモデル・ガイドラインを決めて、二次利用した場合の対価が明示されていて、社会保障番号にしたがって、不明者がでないようにちゃんと契約を作っている
- それを良くご存知の検討委員会の皆が、こんなに簡単なことを遠まわしに、難しく、難しく、利用者に利用させてくれという
- 現実的にはプロの役者にとっては簡素
- よく思い出して頂きたいが、コンテンツが二次利用されるようになり、それが消費者に届くようになってまだニ十数年しか経っていない
- これはセルビデオを買うのが非常に高いからレンタルが登場して、だからといって映画会社は倒産しなかったし、新たにテレビドラマもビデオパッケージもレンタル会社も出て、そこでビジネスモデルを考えた
- 一度も権利者に対して権利の切り下げでビジネスを成功させた例はない
- だから、松田先生がおっしゃていたように、まずビジネスモデルはビジネスマンが考えるべきで法律家は考えるべきではない
- 改めて申し上げるが、ネットの時代は良い時代にならなければいけないと僕も思っている
- ただ流通のコストや製造のコストが下がる分、今までの権利処理に要していた実演家なり、原権利者に払うお金が減らずに、これだけコストを下げても消費者に渡すことができる、だから許諾してくださいと言われたらすぐに許諾する
- そんなモデルは一回も来ていない
- インフラにお金がかかるので、コンテンツに払う金がない、権利者がうるさいから権利をさげてしまえ
- そういう論争、ここに出ている副会長の皆さん会長さん、一度もここから逸脱しない
- こんなにアメリカの契約を良く判っている方があえて何故、権利制限の話を、今度はネット法というあえて判りやすい法律を外してまで、もう僕はさっきの説明を聞いていてさっぱり判らない
- 4 枚目のデジタルコンテンツの特性に対応したフェアユース規定の導入というのも、これは技術の話を言っていてコンテンツそのものについては言っていない
- 技術の革新に対応したことをやりたいというのであれば、よく判る
- ただそれとコンテンツの中身、面白さ、それを一般の消費者に届けなければいけないということがごっちゃになっている
- だから、このフェアユースという言葉でもやれ日本版という名前がついたり、アメリカのフェアユースを拡大解釈して権利制限に結びつくような議論を持ち込むのじゃないかと推測する
- 数え上げればキリがないが、あえてなぜ今回は原著作者という言葉を多用するようになったのかよく判らない
- 著作権者とか作曲家とか、いわゆる原権利者は出演者と比べれば数が少ないので処理は煩雑ではないはずなのに、原権利者という言葉を使ったのは何故なのか
- もう、あえて前回よりさらに判りにくくしているのではないか
- 「会長・副会長試案」の内容について、 A 案については非常に難しい言葉で書かれていて、あえて B 案というのを出されているが、要は A 案は許諾権を消滅させることじゃないか
- 「応諾義務を負わす」という応という言葉と負わすという言葉と漢字を二つ使って、わざわざ難しく書くのではなく、許諾権を切り下げると書けば良いじゃないかと。なぜ難しく難しく書くのかなと、当然不思議でならない
- いわゆる法定事業者の能力を有する会社、素人が普通考えたとき、それを判断すると大企業になる
- 資本が安定していて、しっかりしている会社というと日本においてはステレオタイプに大企業になる
- 我々が放送局と二次利用について、この 20 年間渡り合ってきたのも一出演者とか一プロダクションでは対応できないから音楽事業者協会というところで、利用の料率やどれくらいの権利をバックしてもうかということを交渉で全て決めてきた
- それは最低限の先ほど松田先生が言ったガイドラインであって、その他についてはどうぞ個別の契約でやってくださいと団体でやってきた
- それが今までやってきた努力は全て駄目で、これから未来は権利を制限すれば一元化できるというのはあまりにも御伽噺にほどがある
- ワンチャンスを推進するという話も、先ほど椎名さんからもあったけれど、日本のワンチャンスとアメリカのワンチャンスは皆さんがこの提言に書かれているように、まったく契約の内容が違うので混同しないで頂きたい
- もしよろしければ、SAG とアメリカの映画プロデューサー協会の契約のガイドラインとなっている契約書をここの会議に出していただければ良いのではないか
- それに比べたら、日本の契約書は本当に薄っぺらでな契約書で、それでも今まで二次利用をちゃんと交渉でやってきた
- これは CPRA 芸団協さんがやる前から音事協がやってきたことなので、これについてもよく調べていただきたい
- それをもって今、CPRA と音事協が、一元ということば使いたくないが、データの集約、権利の処理窓口の一括化というものに向かって進み始めているし、NHK オンデマンドさんとの交渉もわずか数ヶ月で実施に動いた
- その後、フジテレビオンデマンドさんとも交渉をしているし、現に音事協が制作に協力したコンテンツが各五カ国の言葉に翻訳されて世界向けに配信されている
- こういう努力についても、是非調べてお書きいただければと思う
- それに比べれば、まだ松田先生がおっしゃっていたように、最終的に自由競争によって、契約によってということの方が我々としては遥かに近い心をもっていると思う
以上が堀委員からの発言でした。この発言に対しても村井主査から「さっぱり判らないと言われても、全部説明するわけにはいかないでしょうが、何かお答えいただけることがあれば」とコメントを求めましたが、今回は両オブザーバともコメントは希望しなかったので、次の発言者に移りました。
次の発言者は佐藤委員で、その発言内容は次のようなものでした。
- 前回同様に椎名委員と堀委員に全て言っていただいた後なので、あまり多くを語ることがない
- 基本的には松田先生がおっしゃった法律家が決める話と、それからビジネスが決める話で、基本的に違うことを考えてやること
- 確かに時間はかかるが、だからといって法律でやったところで、結局具体的なルールをどう決めるかということで結局話し合いが必要で
- ぐるっと回って、そんなにスピードは変わらない、そういうことだと思う
- さらに言うと、コンテンツ流通、特にデジタルコンテンツの流通は DVD もあればデジタル放送もあるし、色々な形のデジタルコンテンツの流通がある中で
- ネット、インターネットをどう活用するかということについて、誰が、どのように判断し、一つのコンテンツから収益性を極大化する道としてインターネットの利用の仕方をコンテンツオーナーと権利者が共に協議しながら考えることがコンテンツ大国を作る道だと考えた時、そういう協議の場を無視するような形の法律を作ることは、コンテンツ大国を語りながら、実はコンテンツが豊かに作られ、流通され、収益を上げる道を閉ざそうとしている行為であると思わざるを得ない
- 椎名委員、堀委員がおっしゃった通りのことなので、これぐらいしか私は言うことができない
- ただ、何故ネット法、あるいは今回提案のようなもので性急にことを運ぶことを目指されるのか
- もちろんタイムスケジュールの観点は判らなくもないが、特にネット法を主張されている方々の様々な文章を読ませて頂くと、コンテンツ大国、あるいはコンテンツ立国という言葉の裏で、本当はコンテンツは何かの肥やしに過ぎないのではないか
- 本来国が目指されなければいけないのはコンテンツ大国ではなくて、コンテンツがいつでも安価に利用できることを前提とした、もうひとつ別の産業政策なのではないかと思う
- 皆さんも、ネット法の方々が出されている文章を読まれれば「本当は iPod に対抗したかったわけ?」とか「本当は Walkman を継いだ、iPod をしのぐようなものが日本から出なければいけなかった」だからもう一度そんな産業立国を目指せといっているのですねと
- なので、その障害となるコンテンツが中々流れないようなビジネス論議に早く蓋をしなさいといっているように思えてならないと付言させていただく
以上が佐藤委員からの発言が終了しました。ここまでで、事前に予定されていた発言は終了したようで、村井主査が「そのほかに意見のある方は」と発言を求めたのに対して、櫻井オブザーバが佐藤委員の発言に関して、次の内容のコメントを行いました。
- 最後の佐藤様からの質問について
- 性急にというところ、私も中山会長の意見を全て把握しているわけではないが
- 松田先生が先ほどおっしゃていた中にひとつあったように、皆がインターネットを目の前にして、インターネットで色々なものを楽しめるという状況で、国として早く動かなければコンテンツの後進国となってしまうのではないかと、そういう考え方が大きい
- それで、早くやったほうが良いのではないかという考え方が出ていると私は認識している
- また、時間がかかるのは法律も契約も同じではないかというところについて、繰り返しになるかもしれないが
- 法律によれば、過去のコンテンツについても処理ができるのではないか
- 契約では、過去のコンテンツについて処理を進めるのが難しいのではないかと認識している
- 権利の集中化を一定範囲で図るということで会長・副会長の意見が一致していると私の中では認識している
以上が櫻井オブザーバからのコメントでした。次に、松田オブザーバも発言を求めたのですが、すこし発言内容をまとめるのに時間がかかりそうだったため、ほぼ同時に発言を希望していた菊池オブザーバから先に発言してもらうこととなりました。菊池オブザーバの発言は次のような内容のものでした。
- 桜井さんのプレゼンを聞いて、これは市場の失敗を立法・法律によって解決しようとしているのかと解釈した
- 市場の失敗というは基本的に例外であって、これを定量的に証明するのが公共政策上一般的なことなのではないか
- その上で、市場が失敗するといっても、それは規模の経済であるとか、公共財とか、外部経済であるとか、いくつかある
- おそらく皆さんが考えているのは外部経済をイメージしていると思う
- 外部経済で得をする人があるのならば、それを最初から供託金にするなり、補償金にするなり、コンテンツ側に払うとかのそういうバランス論を考えた方が良いのではないか
- 市場の失敗があるのならば、それは例外なので、証明を定量的にするべきだというのが私の理論になる
以上が菊池オブザーバからのコメントでした。続いての、松田オブザーバからの発言は次のような内容のものでした。
- ビジネスを作り上げてもらうのはビジネスマンにやって頂かなければならないのだけれども、これをできるだけ促進した方が良いということ自体は反対が無いのではないかと思う
- 先ほど言ったように、文化が生まれたからであり、その文化に対応するためのコンテンツ流通の仕方や、コンテンツ自体を変えるということもしていかなければいけないのだろうと思う
- それを、通信やそれから受信の機器等、オーディオ機器等の側の立場で考えるのか、それともコンテンツを持っている権利者側の立場で考えるという対立は止めていただいた方が良いのではないかと思う
- それがどうしてかというと、著作権法はあまり詳しくない方から見ると、産業の足を引っ張っている規制だと捉えている方がいらっしゃる
- これは全く規制ではない、私権なので規制ではない
- 行政府が何らかの判断をして可否を決するようなものではなくて、私権の対立だから規制ではない
- しかし、新しい産業を興すための規制なのだと考えている方がいらっしゃる
- この考え方は実は日本だけの考え方で、何故日本にこうした考え方が生まれたのかというと、これで実は三回目になる
- 最初は昭和 50 年代の終わりに、著作権でコンピュータソフトウェアを保護するかどうか考えた時に同じような対立があった
- それから十数年経った時に、著作権の中の人格権についてはより要件を緩和するべきという運動がおこった
- それはもう国際大シンポジウムを開いて対立があった
- 私は、今度の状況は三回目だと思っている
- その三回目に至っても、著作権、コンテンツ側の権利が強すぎるから流通に支障をきたしているのだと、権利をある程度削減してこれを一元化あるいは報酬請求権化という意見があるけれど、それは著作権が強すぎるからデジタルコンテンツが流通しないのだと、こうした図式で捉えている
- 日本は物作りについては世界でトップ、通信についても世界でトップなのだろう
- そうした産業をドンドン伸ばしたいという国是は絶対にある
- それを否定するべきではないと思う
- その時に、日本はという風に言われる時に著作権法を削減すればと、そういう対立関係で考えてしまうからそういうことになる
- 同じ問題はアメリカでもあったのだが、iPod があれだけ隆盛になったのはそれを乗り越えたから
- 訴訟や交渉で乗り換えてきたからだ
- 日本はそれをしないで、言ってみれば他人に責任を負わせたような形で「ああできなかった」といっているだけ
- もっと権利者側と利用者側で徹底的に議論して、徹底的に新しいモデルを作っていただけないか
- 法律家がやることなど、本当に僅かなこと
- 実を言うと櫻井先生の構想も私共の構想も法律的には違うがやり方がほんの少し違うだけ
- 目指すところは全く同じ
- むしろ、特にビジネスモデルははっきり言って出てきていない
- 出てきたものは皆潰れている
- テレビ局がコンテンツとしてどんどんインターネットに流せばどんどん見るなどということはない
- ビジネスモデルとして成り立つということはない
- だから、それだけでは駄目で、違うことを考えなければいけない
- それは他の審議会等でもやっているようだが、どうぞ、権利者側の方もコンテンツ側の方も、どうしたら自分のコンテンツがより、世界市場で売れるのかということを考えて、話し合ってみては如何だろうか
- そのことが重要で、融合をしなければ駄目で、共同でやってほしい
- お願いする
以上で松田オブザーバの発言は終了しました。ここまでで今回の質疑・意見交換は終了です。この後で、村井主査から次の内容のまとめと今後の進め方についての説明がありました。
- 預かりしていた時間が来てしまったが、如何だろうか
- 何かこれだけは、言い残しているということが沢山あるだろうと思うので、色々な意見をいただけると思うが、二つの方法で意見を集約していきたいと思う
- ここでは放送コンテンツ流通の権利処理問題ということで議論をしたり説明をして頂いたりしてきた訳で、今まで二回にわたって意見、質問を頂いた
- ひとつは皆の意見・疑問、また先ほどは出てこなかった幾つかの質問、そういうものを含めて事務局に集約していただきたい
- もう一つは、この委員会としての考え方をまとめていくということで、今までどおり、取引市場ワーキングの方でこの議論の整理、あるいは必要な議論の掘り出し、その他議論を進めるということを検討していただきたいと思うので、これは中村委員の方によろしくお願いする
この後で櫻井オブザーバと松田オブザーバへの本日来ていただけたことに対するお礼があり、村井主査からのまとめは終了しました。
その後、小笠原課長から 2 月のスケジュールについてはまだ調整中で、コンテンツ保護に関するエンフォースメントについて議論していただくことを予定していると発言があり、村井主査からの閉会の挨拶があって今回の会議は終了しました。
◆◇◆
今回の椎名委員の発言を聞いた限りでは、CPRA は既に著作権等管理事業法に依って応諾義務を負っているとのことなので、第46回の感想として書いた内容 [URI] はちと邪推がすぎたかと反省してます。
◆◇◆
で、椎名委員や堀委員が嫌っている映画の場合のワンチャンス主義について。ここの契約の実際がどうなっているのか知らないのだけど、映画の場合には例えば DVD 等で二次利用されたとしても、ネット配信で二次利用されたとしても一切対価は実演家には渡らないのでしょうか?
そうなのだとしたら、放送コンテンツでも同様の状況が実現されようとしていることを嫌うのは良く理解できるのですが、それでもアメリカでは SAG が契約条件という形で戦って二次利用時の料率まで含めた契約を勝ち取っています。
日本ではそうではないとしたらそれは権利者団体が SAG と比較して怠慢だっただけじゃないのかなーとか思ってしまうわけですが、実際のところはどうなのでしょう。
放送コンテンツでは隣接権があることに甘えて、放送局が DVD 程度しか想定しない契約しか作らないことを見過ごし、結果として収益機会を減らしているのではないでしょうか。
まーこういうことを言うと、違法コンテンツが氾濫している収益性が低いネットは収益機会とは言えないという答えが返ってきそうな気もしますが、誰と交渉をすれば良いのかも、相場がどの程度なのかも判らない状態だと、それはいい加減な話しかでてこないんじゃないかなぁと。ここ一年ほど周辺状態を外野から眺めてきた人間の感想としてはそうなります。
◆◇◆
とりあえず櫻井オブザーバの説明内容に関しては、岩倉弁護士と同じ法律事務所の人間とはいえお仕事って大変なんだなぁという感想しか出てきませんでした。
◆◇◆
で松田オブザーバからの提案内容に関して、著作権法に人格権的な規定があるのは知っていますが「規制ではない」と言い切ってしまうのはどうなのかなぁというのが感想です。
例えば公衆が利用可能な自動複製機械の禁止に関する規定とかは規制以外の何物でもないと素人的に考えているわけですが、専門家的にはどう見えているのでしょう。
オンラインストレージサービスは「選撮見録」裁判や「MyUTA」裁判のように、いざとなったらアレで全て潰されてしまうので、日本で法的リスクを背負わずにそうしたサービスをすることはできないのだろうと認識していますが、実は違ったりするのでしょうか。
続いて、自分の作品を外には出したくない、提供する形をコントロールしたいという人には、そうした自由を認めるべきではないかという部分についてです。
そうした自由は当然存在するとは思いますが、それを「文化の発展に寄与すること」と第一条で謳っている著作権法で保護する必要があるのだろうかというのが私の疑問点です。
芝居という形のもの、あるいはライブという形のもの、装丁・挿絵といった部分まで目を光らせた形のもの、そうしたものでしか伝わらない部分こそが重要で、文化の本質であるという意見はありえるでしょうから、提供する形をコントロールしたいという点については理解できます。
でも、一度は公表されたものを外に出したくないという意思を保護することが「文化の発展に寄与する」とは思えません。
外に出したくないのならそもそも公表しなければ良いだろうと考えるわけで、実際著作権法には公表権が認められていますが、一度著作者の意思で公表された著作物には公表権はおよびません。
以上「規制ではない」という部分と「外に出したくないという自由も認めるべき」という部分の 2 点が松田オブザーバの意見で同意できなかった点になります。
それ以外の「自由な時間に、自分の選択で情報に触れることができるという文化を育てるべき」や「新法の成立は必要なく、著作権法をベースに事前に契約で備えておくべき」「マーケットで競争させることで契約の収斂を待つ」という提案の本質部分に関しては賛同しています。
しいてアラを探すとしたら「ホントに放送局が契約モデル構築して、外にメタデータ提供をするという事務コストを負担するだろうか?」という点になります。
中村 取引市場 WG 主査が当初目指していた形をさらに一歩進めたような提案だというのが発表を聞いていての感想なのですが、昨年 1 月、2 月の 第31回 [傍聴レポート] と第33回 [傍聴レポート] を振り返ってみると「既存市場と衝突するからテレビ局は消極的」とか「既存の相対取引で十分と考えるものにとってメリットが無い」とかで放送事業者にやる気がない為にぽしゃったということがよーく判る状況です。なので、実現性はあるのかなと考えてしまう訳です。
最近は BBC の iPlayer の影響と、NHK オンデマンドの影響で多少は風向きが変わりつつあるのかもしれませんが、実際のところがどうなのか外野からは判りづらいのでなんともいえません。
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