6月に国会を通過した、平成23年 法律第62号での不正競争防止法の改定に関して、施行日が今年の 12/1 と後二ヵ月後に迫っている訳で、ARIB STD-B25 仕様確認テストプログラムソースコードを配布している [URI] 人間として、どのように考えているのか気にしてる人もいるかもしれないということで、この機会に記述しておきます。
私は、B-CAS カードの仕組みとは、不正競争防止法 第2条1項11号に規定されている「技術的制限手段」だと考えていて、ARIB STD-B25 仕様確認テストプログラムは「視聴を認められていない者が視聴を可能とする」ような機能は備えていない為、本改定が施行された後であっても配布を継続する予定でいます。
不正競争防止法に規定されている技術的制限手段は、第2条1項10号と、第2条1項11号の二つがあり、この二つは間違い探しをしたくて用意されたのではないか思うほど似通っているのですけれども……まあ、実際の条文を見えてもらった方が早いかもしれません。法律第62号反映前のものですが、当該条文は次の通りです。
十 営業上用いられている技術的制限手段(他人が特定の者以外の者に影像若しくは音の視聴若しくはプログラムの実行又は影像、音若しくはプログラムの記録をさせないために用いているものを除く。)により制限されている影像若しくは音の視聴若しくはプログラムの実行又は影像、音若しくはプログラムの記録を当該技術的制限手段の効果を妨げることにより可能とする機能のみを有する装置(当該装置を組み込んだ機器を含む。)若しくは当該機能のみを有するプログラム(当該プログラムが他のプログラムと組み合わされたものを含む。)を記録した記録媒体若しくは記憶した機器を譲渡し、引き渡し、譲渡若しくは引渡しのために展示し、輸出し、若しくは輸入し、又は当該機能のみを有するプログラムを電気通信回線を通じて提供する行為
十一 他人が特定の者以外の者に影像若しくは音の視聴若しくはプログラムの実行又は影像、音若しくはプログラムの記録をさせないために営業上用いている技術的制限手段により制限されている影像若しくは音の視聴若しくはプログラムの実行又は影像、音若しくはプログラムの記録を当該技術的制限手段の効果を妨げることにより可能とする機能のみを有する装置(当該装置を組み込んだ機器を含む。)若しくは当該機能のみを有するプログラム(当該プログラムが他のプログラムと組み合わされたものを含む。)を記録した記録媒体若しくは記憶した機器を当該特定の者以外の者に譲渡し、引き渡し、譲渡若しくは引渡しのために展示し、輸出し、若しくは輸入し、又は当該機能のみを有するプログラムを電気通信回線を通じて提供する行為
この二つの違いは「他人が特定の者以外の者に……」という部分です。例えば「有料放送に対して契約済み」の視聴者と「未契約」の視聴者を分けて「契約済み」の人にだけ放送が視聴可能となるようにする技術的仕組みは「他人が特定の者以外の者に影像若しくは音の視聴」をできないようにする仕組みであり、11号の技術的制限手段に該当するであろうと考えています。
ARIB STD-B25 仕様確認テストプログラムソースコードは、正規の契約者で、B-CAS カードに正しい Kw と契約情報が書き込まれている場合だけ、Ks を取り出して MULTI2 が復号できるソフトウェアなので「特定の者以外の者」は「影像若しくは音の視聴」が不可能なままであり、当該技術的制限手段を妨げてはいません。
故に、ARIB STD-B25 仕様確認テストプログラムソースコードの配布は不正競争防止法に第2条に規定されている不正競争行為にはあたらないと考えています。以上の理由から 12/1 以降も配布を中止する予定はありません。
震災の影響で延期されていた「足立の花火 2011」を見てきた。中々派手で楽しい花火であった。ちと撮影に失敗してしまったけれど、動画だとこんな感じ。
撮影は SONY の DSC-HX9V。撮影前にマニュアルフォーカスモードにして無限遠固定にしておけばよかったのだろうけれど、設定を忘れていたので途中でフォーカスがふらついている。
昨年 2 月にここで少し触れた [URI] 分譲型集合住宅の管理費等滞納問題に関して、今月に入って大体終りが見えてきたので、当たり障りの無い範囲でどんなことがあったか書いていくことにする。
発端は一昨年。前年の管理組合理事長から来期の管理組合理事を引き受けてもらえないかと頼まれたので、理事を引き受け(役職は駐車場・駐輪場担当でそんなに大変ではなく)毎月の理事会に出ていた。そうしたところ、6月頃に管理会社の担当者の方から、とある区分所有者の管理費等滞納が半年を越えているのでそろそろ対応を検討してもらわなければいけないという連絡があった。
その区分所有者がまだこの建物に居住しているとか、あるいは連絡が取れれば色々と方法があったのだろうけれども、非居住で賃貸に貸し出している方で、当時連絡先も不明だったのでどうしようかというのが問題表面化時の事情。管理会社で住民票を追跡してみたけれど短期間 (1ヶ月程度) で住所をニ転・三転させており、最後は世田谷区へこの建物への転出届だけが提出されていて、足立区への転入届が未提出で、住所・連絡先不明との報告だった。
その段階では、管理会社の担当者に「こうした場合に他の管理組合ではどうしているのか」と聞いてみたところ「こうした場合、大抵住宅ローンも同様に滞納状態になっているので、金融機関が競売等にかけるのを待つ場合が多い」との回答だったので、集合ポストから溢れているチラシの類だけ何とかして、当面様子を見るという理事会での結論になった。
当時は翌年に理事長を引き受ける羽目になるとは思っていなかったのと、管理会社の方の回答が妥当と判断したので、特に意見を出すことはしなかった。
文章だけでは判りづらかったかもしれないので、状況を図で説明してみる。
一般的な区分所有建物(俗にマンションと呼ばれる)の管理形態で、区分所有者全員で管理組合を組織して、理事は任期2年で持ち回り (年に半数ずつ交代) で受け持ち、日常の清掃や点検・管理費等の徴収は管理会社に委託という形。主な登場人物は区分所有者 A(滞納している方/非居住で連絡先不明)と管理会社の担当者、私の三名。
半年以上管理費等を滞納している区分所有者の方が居て、管理会社の担当者が連絡先を調べてみたけれども行方不明というのが当時の状況。その方が所有している部屋は前年 (2008) の10月に賃貸で借りていた方が引っ越して以来空き室の状態。
しばらく様子を見て、金融機関が競売等のアクションに出るのを待つというのが当時の理事会の判断で、様子を見ていたのだけれども、そうした行動が起こされる気配はなく。そうこうしているうちにその期も終りに近づいて、管理会社の担当者からこのまま放置はできないので次の定期集会の議案に「区分所有法 59 条での競売」を入れましょうという提案があった。
区分所有法 59 条の競売というのは、区分所有者の共同生活に対する不利益行為が極まって他に解決の手段が無い場合に管理組合が競売を申し立てることができるという内容で、このケースのように相手方が行方不明で連絡が取れないという場合に利用できるという説明だった。
昨日の続き。「区分所有法 59条 競売」を定期集会の議案として出すことになった訳なのだけど……問題の「建物の区分所有等に関する法律」の 59 条というのは次の内容。
第七節 義務違反者に対する措置
(共同の利益に反する行為の停止等の請求)
第五十七条 区分所有者が第六条第一項に規定する行為をした場合又はその行為をするおそれがある場合には、他の区分所有者の全員又は管理組合法人は、区分所有者の共同の利益のため、その行為を停止し、その行為の結果を除去し、又はその行為を予防するため必要な措置を執ることを請求することができる。
2 前項の規定に基づき訴訟を提起するには、集会の決議によらなければならない。
3 管理者又は集会において指定された区分所有者は、集会の決議により、第一項の他の区分所有者の全員のために、前項に規定する訴訟を提起することができる。
4 前三項の規定は、占有者が第六条第三項において準用する同条第一項に規定する行為をした場合及びその行為をするおそれがある場合に準用する。
(使用禁止の請求)
第五十八条 前条第一項に規定する場合において、第六条第一項に規定する行為による区分所有者の共同生活上の障害が著しく、前条第一項に規定する請求によつてはその障害を除去して共用部分の利用の確保その他の区分所有者の共同生活の維持を図ることが困難であるときは、他の区分所有者の全員又は管理組合法人は、集会の決議に基づき、訴えをもつて、相当の期間の当該行為に係る区分所有者による専有部分の使用の禁止を請求することができる。
2 前項の決議は、区分所有者及び議決権の各四分の三以上の多数でする。
3 第一項の決議をするには、あらかじめ、当該区分所有者に対し、弁明する機会を与えなければならない。
4 前条第三項の規定は、第一項の訴えの提起に準用する。
(区分所有権の競売の請求)
第五十九条 第五十七条第一項に規定する場合において、第六条第一項に規定する行為による区分所有者の共同生活上の障害が著しく、他の方法によつてはその障害を除去して共用部分の利用の確保その他の区分所有者の共同生活の維持を図ることが困難であるときは、他の区分所有者の全員又は管理組合法人は、集会の決議に基づき、訴えをもつて、当該行為に係る区分所有者の区分所有権及び敷地利用権の競売を請求することができる。
2 第五十七条第三項の規定は前項の訴えの提起に、前条第二項及び第三項の規定は前項の決議に準用する。
3 第一項の規定による判決に基づく競売の申立ては、その判決が確定した日から六月を経過したときは、することができない。
4 前項の競売においては、競売を申し立てられた区分所有者又はその者の計算において買い受けようとする者は、買受けの申出をすることができない。
ちと長いけれども、57 条・58 条も一緒でなければ理解できない箇所があるので我慢してほしい。59 条 2 項に「前条第二項及び第三項の規定は前項の決議に準用する」とあるので、区分所有法 59 条で競売訴訟を提起する場合は「2 <略>決議は、区分所有者及び議決権の各四分の三以上の多数でする」に従って集会決議は 3/4 の特別決議が必要で、さらに「3 <略>あらかじめ、当該区分所有者に対し、弁明する機会を与えなければならない」らしい。
うちの場合、50戸以下の中規模なので 3/4 の特別決議に関してはあまり問題にならないのだけど、連絡先が不明な場合に 58 条 3 項の「あらかじめ弁明の機会を与えること」という要件をどう満たせばよいのか疑問だった。管理会社の方によると、これは最後に連絡が取れた住所に議案書を郵送するのと、エントランスの掲示板とかに掲示することで要件を満たせるという説明だった。
議案自体はこの辺りの要件を満たすような書き方がされていて、それ自体は問題ではないのだけど、訴訟を素人でやる訳にもいかないので「弁護士を代理人に選任して、依頼先はこの法律事務所で、かかる費用はこれぐらいなので今期の予算にこれだけ乗せます」という内容の議案になっていた。
代理人として選任が予定されていた法律事務所は管理会社と付き合いのある所で、他の建物の管理組合でもこの 59 条競売を扱ったことがあるということで、費用は弁護士報酬が 50 万、実際に競売を申し立てる際の予納金が 60 万 (競売実施後に未使用分が返却される) となっていた。
この段階で既に察しのよい方は予想がついているかもしれないけれど、集会ではこの費用 (110万) が高すぎるという点が問題になって大揉めになってしまった。
まあ「同じ屋根の下で暮らしていた人間を、滞納が長期に渡ったからといっていきなり訴えるのはどうなのか」という意見もあったのだけど、曰く「110万は滞納額 (当時50万程度) に対して見合わない」曰く「管理会社が提案した法律事務所にそのまま依頼するというのは何だ、相見積を取ったのか」曰く「そもそも訴訟前に理事会として解決に向けどんな努力をしたのか、住宅ローン等の金融機関と連携をとるべきじゃないか」等々。
特別決議が問題にならないのは良いことなのだけど、管理組合の運営に熱心な住人がいるというのはこんな形でまた別の問題があったりする。まあ前期理事会としてやるべきことを怠っていたと言われればそれは受け入れるしかないかなとも思うので仕方がないのだけど。
という訳で「訴訟申立前に今期の理事会が主体になって他の手段等を検討するなど手を尽くすこと」「訴訟申立に際しても、訴訟費用等を十分に比較して依頼先の選定等をすること」と二つの条件付きでの議案可決となってしまった。
昨日の続き。管理費等の長期間滞納者に対して「区分所有法 59条 競売」を定期集会の議案として出したけれど、条件付での可決にしかできず、弁護士に依頼して解決を待つのではなく、管理組合の理事会としてもう少し検討する必要ができてしまったというのが前回までのあらすじ。
2010年の理事会では、任期が 2 年目の理事で男は私一人だけだったので、理事長を引き受けざるを得ず、この辺の検討・調査・交渉をするのも自動的に私の役目ということになってしまった。そんなこんなで「賃貸の方が気楽だよね」と愚痴を書いたのが昨年 2 月 [URI] というわけだ。
まず定期集会で突っ込まれた点の一つとして「競売がそんなに簡単にできるのか」というものがあったため、どういった事例ならば 59 条競売が認められているのかな……と最高裁の WEB ページ [URI] で過去判例を検索してみたところ、仙台地方裁判所の平成20年 (ワ) 1109 号 [URI] が見つかった。
この判例の中を見ると、管理費等の滞納が積み重なったので 59 条競売を求めるという本質は同じなのだけれども、こちらの被告は他の居住者に対して暴行・脅迫等をしていて、訴訟当時、傷害罪および強制わいせつ罪で服役中と、うちのケースとは事情が大分違う。
という訳で「この判例しか見つけられなかったのだけど、管理費の滞納だけで 59 条競売が認められた判例があるか、当初依頼予定だった弁護士の方に聞いてほしい」と管理会社の担当者に依頼。結果、平成21年にこの弁護士が手がけたケースの判決文の写しをもらうことができた。その事件では滞納期間が 3 年を超えて、滞納総額が 90 万を超えようとしているあたりが違うだけで、管理費等の滞納&行方不明だけで 59 条競売が認められていた。
また、区分所有法59条で google に託宣を求めたところ「区分所有法第59条競売大作戦 - 実録!マンション管理 [ マンションサポート.com ]」[URI] に辿り着き、こちらのケースでも、長期間の管理費等滞納で 59 条競売が認められている。
さらに、こちらのケースでは弁護士を立てずに、訴状作成だけ専門家に依頼して本人訴訟で何とかしたようだ。このポイントに関してはこの時点ではツテがあればそういうことも可能なのかという感想だった。
定期集会で指摘された他の項目として「管理会社ではなく、理事会は相手方に対して連絡や交渉といった努力をどこまでしたのか」という点もあったので、そちらの方面も努力をしてみた。その時点で手元にあった情報は次のリストのもの。
まず、登記簿の写しを見る限りでは 1994 年の新築購入時に住宅金融公庫(現 住宅金融支援機構)他から合計 4720 万の住宅ローンを組んでいて、多分普通に 35 年ローンとかだろうから、管理費の滞納が始まるまでの 14 年間を順調に返せていたとしても、2/3 ぐらいはまだ残っていることだろう。
私が中古購入した際の値段等を考えても、ローン残高の方が住宅を売却したときの価格を超えるオーバーローンの状態だと推定できる。定期集会では「オーバーローンの状態では金融機関以外競売はできないのでは」という指摘もあったけれど、59 条競売はそうした状況でも競売を実施することができるという判例が東京高裁で出ており、その場合の条件等は、asahi.com の 2007 年の記事 [URI] にまとまっているので、多少面倒ではあるもののそちらの条件を満たせば問題にならない。
さて、住宅ローンを組む際に窓口になったと思われる銀行支店と、管理費等の引き落とし銀行口座(残高不足で振り替え不能の状態となっている)の支店が同じところだったので、そちらに電話問い合わせをしてみたものの「個人情報保護法もあるので、連絡先を知らせるとか、住宅ローンの残債を知らせるとかできませんよ」という当然といえば当然の回答。この辺はまあそうだろうなと予想していたので対応してくれたお礼を言って引き下がる。
次に、緊急連絡票に記入されていた勤務先……そのものの電話番号は支店統廃合の影響か無くなっていたので、会社名から google 検索で調べて (先物屋さんかぁ、いやいや、職業で予断を持つのは良くないなどと考えつつ) 東京の事務所に電話をかけてみた。こちらの所属を名乗って「以前そちらで勤務されていた○×さんがまだそちらで働かれていれば連絡をとっていただけないか……」と言ったところ「既に退職しています」との回答が。
緊急連絡票には親戚欄もあり、一応そちらにも名前・住所・電話番号が記載されていたのだけれども、姓がこの方と異なり(しかも名前から推測される性は男)多分奥さんの親族だよなぁということで、個人に電話するのは迷惑だろうと見送り。
最後の賃貸契約を仲介していた不動産会社に電話問い合わせをしてみたけれど、こちらも「音信不通になって困ってる」との回答でこれは本格的に意図的に行方をくらまそうとしてるとしか判断できないよなぁとの思いを強くした。
この状況 (オーバーローン & 行方不明) では、管理会社の提案のように 59 条競売以外に方法がなさそうと思いつつ、麻生みこと「そこをなんとか」[Wikipedia] で存在を知った自治体の法律相談を利用してみるかと考え、足立区の無料法律相談を探して予約の電話を入れた。
これは「他の手段等も検討しろ」と「費用をもっと安くできないか考えろ」という集会の決議条件を満足させることを考えてのこと。そんなに混雑はしていないようで、予約の電話を入れてから一週間後に実際に相談をすることができた。
そういう訳で、その時点で判っていた上の事情をまとめて「59条競売という管理会社提案の手法は妥当か、他に方法がないか」「実際に依頼をする場合、費用はどのぐらいになるのか」の二点を質問してきた。
区の無料法律相談は一人当たり 30 分までという制限があり、事情説明だけでかなりの時間を取られるので、十分な答えはもらいにくいんじゃないかなという感想を持ったりした。一応質問 2 点の答えはもらえたものの……
という回答で、ちょっと期待はずれな内容だった。最初の「いきなり 59 条競売は無謀では」という回答には、相手方が暴力団関係者とかなら話は別だけどというエクスキューズが付いて、さらに「滞納管理費等請求で訴訟を起こして、そちらの判決で債務名義を取ってからの方がよいのでは」という助言もいただけた。
次に「電話番号から追跡して」の部分に関しては、その方針で依頼する場合の費用は、例えば相談相手の弁護士の方が引き受けるとしたら「着手金 10 万、成功報酬 10 万」という数字で……これは訴訟外で交渉して滞納管理費等を支払うように説得するまで含めた額ではあるものの、やっぱり弁護士に依頼するとそれなりの報酬が必要になってしまうのねと思ったり。
で最終的に 59 条競売までやる場合の費用に関してはその場では(相談時間の問題もあり)聞くことができなかった。自治体の無料法律相談の席では「直接受任とかの交渉をしちゃだめよ」という建前になっている以上仕方がない面もあるけれど。
後は、離婚交渉とか隣地境界とか過払い請求のような一般的な事例とは違って、59条競売まで進むのは珍しい事例なのか、相談した弁護士の方もあまり詳しくないようで、カッチリした回答をもらえなかったのも残念なポイントだった。
弁護士会の有料法律相談は 30 分 5250 円ということだったので、金銭の支出が絡む問題は理事会での承認を経てからでなければまずかろうと先送りした。
こういったことをしているうちに、あっという間に一ヶ月が過ぎる。こうした調査・検討で判ったことをもとに、集会の席で反対意見を出してくれた方々を個別に相談して今後の方針等を検討することにしよう(そうしないとまた揉めそうなので)と考えた。実際に相談してみた内容については次回に続く。
昨日の続き。行方不明で管理費等を長期滞納している区分所有者に関して、管理組合理事会として調査をしてみたけれど、覚悟の失踪のようで、所在を突き止めて滞納分を支払ってもらうのは現実的に不可能なのではという所感を得たのが前回までのあらすじ。
定期集会の際に意見を出してくれた他の区分所有者の方々にこれらの事情を個別に説明して、今後取りうる手段について相談してみたというのが今回の内容。
集会の際に意見を出してくれた方は三名で、仮に B さん、C さん、D さんと呼ぶことにする。それぞれは次のような意見だった。
まず B さんは「住宅ローンの状況によっては競売は不可能なのではないか、金融機関との連携や他の手段を検討する必要があるのではないか」という意見。次に C さんは、「いきなり訴訟は乱暴じゃないか、管理組合として連絡を取る努力をどこまで取ったのか」という意見。最後の D さんは「この議案の費用では現在の滞納額に対して見合わない、他の弁護士から相見積を取るべき」という意見。
最初に B さんに相談してみたところ、B さんの側でも色々手段を調べて検討してもらったようで「この件については最終的に 59 条競売まで進めて、競落者に対して特定承継人として滞納管理費を請求するしかないかもしれない」と昨日の記述でも触れた Asahi.com の記事 [URI] のプリントアウトを持ってきて、同意してくれた。
ただし、弁護士に依頼するのであればこうしたところもあるのではないかと 子浩法律事務所 の紹介記事 [URI] のプリントアウトも持ってきてくれて、渡してくれた。
次に C さんに相談してみたところ、この方は昔、滞納者がまだここに居住していたころに同時に管理組合の理事を引き受けていた関係で、奥さん同士の付き合いがあったらしい。他に一人、今は部屋を売って外に引っ越しているけれども、もっと深く付き合いがあった人がいたとのことで、その人に連絡が取れないか聞いてみてくれたとのことだった。
結果は、その方もやっぱり連絡はとれないということで、特に進展はなかった。また C さんが理事長をしていた時(10年前)に同じように滞納の問題が起きていて、その時には相手方の住んでいるところが判ったので直接説得に行き、任意売却をしてもらうことで解決したという情報を聞くことができた。
同様に D さんとも直接の相談を試みたのだけれども、この時には相談したいので都合の良い日時を教えてくださいと入れたメモに対して回答がなく、相談することが適わなかった。
定期集会では色々あったけれど、総じてこのケースの対応を引き受ける羽目になった私にたいして同情してもらえていて、色々と協力が期待できそうなのが有難かった。
この間に一度理事会が開催されており、その席でこれまでの調査結果について報告して、区の無料法律相談で薦められた弁護士会の有料法律相談を利用したいということで 5,250 円の支出の決議をもとめてみた。こちらは特に反対もなく認められたので東京弁護士会の北千住法律相談センターに予約を入れて相談に行って来た。
こちらの法律相談では、59条競売以外に問題を解決する方法はなさそうという判断の下で「区分所有法 59 条での競売を認める訴訟を経て、競売申立をするという方針で依頼するとしたらどれくらいの金額で引き受けてもらえるか」と、管理会社の提案の法律事務所では競売申立の際の予納金 60 万円に関して、「競売手続きの中で執行費用として使われなかった分しか返ってこない」という説明だったのに対して、こちらの調べでは「予納金から支出された執行費用は、競売代金から(抵当よりも)最優先で配当を受けられるので、全額返って来る」はずだったので、どちらが正しいのかの 2 点について質問してきた。
回答は、受任した際の費用については着手金が 50〜60万。成功報酬が同じく 50〜60万。さらに実費として必要経費(おそらく競売申立時の予納金もここに含まれる)とのこと。また、競売申立時の予納金の行方についても、今回応対してくれた弁護士の方は詳しくなかったらしく、要領を得ない回答しかもらえなかった。
区の無料法律相談の際も、今回の弁護士会との法律相談の際も見積もりを取る際の仁義だろうと考え、管理会社から提案を頂いた法律事務所に依頼する場合の費用 (弁護士報酬 50 万 / 予納金 60 万) は教えずに回答してもらっていた。
これら二件の法律相談を経ての所感は「こうした事案を手がけたことのある弁護士に当たらない限り、適切な回答はもらえない」と「管理会社の提案してくれた弁護士は、決して暴利を貪ってるわけではなく、むしろ安い部類に含まれる」の二つだった。
競売申立の際の予納金の扱いに関しての説明に不満が残るけれども、そこに関しては実際に依頼をする際に、浦野雄幸 編「基本法コメンタール 第5版 民事執行法」[Amazon] の 291 ページのコピーを出して質問すればよいかと考えた。当該記述は以下の通り。
6 配当の順位および額
<略>
金銭執行にあたっては、執行費用は、その執行手続きにおいて債務名義を要しないで、同時に取り立てることができる (四二II) から、差押債権者は、予納した金銭のうち費用として支出された分について、また各債権者は、それぞれ支出した執行費用について売却代金から償還を受けることができる。
手続き費用(執行費用のうち共益費用であるもの)は、当然最優先順位で償還される。これに対し、手続き費用でない執行費用 (配当要求や債権の届出、計算書の提出等に要した費用など) については、各債権者の元本債権と同順位(もっとも、元本と利息と費用の間では、費用・利息・元本の順位となる [民四九一I参照])で償還を受ける (竹田・前掲実務 I 二○四頁、近藤・前掲注釈 (4) 二七九頁) 。
浦野雄幸 編「基本法コメンタール 第5版 民事執行法」(2005年 日本評論社 p.291)
また、B さんから教えてもらった子浩法律事務所 について、google にお伺いを立ててみたところかなり評判が悪いようで、住所調べて督促状を送るだけしかやってくれないので結局解約したという他のマンションの管理組合広報 [URI] が見つかる始末。ここに頼んでも金の無駄になりそうという所感を得た。
以上の事情から、当初議案の予定通り、管理会社提案の弁護士に依頼する方向で理事会の結論としようかと考えて、「かくかくしかじかの方針でいますが、意見があったら聞かせてください」と再度 D さんの所にメモを入れてみた。
今度は返事がもらえて、理事会前に打ち合わせがしたいということだったので打ち合わせを設けたところ、次のリストの意見だった。
後々この時の判断を悔やむことになるのだけど、「弁護士に依頼しなくてもできるのでは」という意見について、私が調べた範囲でも本人訴訟で何とかしているケースがあった (「区分所有法第59条競売大作戦 - 実録!マンション管理 [ マンションサポート.com ]」[URI] がその例) ので「訴状作成等を協力してもらえるならば可能かも」と考えてしまった。
まあ無理だと判った時点で弁護士に依頼しても良いのだしと考えて、とりあえず自力でできるだけやってみるかと方針を決めてしまった。今から考えれば、この時の判断は間違いだったとしみじみ思う。ある程度の目処が立つまで 1 年半もかかることになるとは思っていなかったからなぁ。
という訳で、本人訴訟を前提に自力で訴状や証拠書類の準備を進めることになりましたという状況で次回に続く。
昨日の続き。行方不明で管理費等を長期滞納している区分所有者に対して、最終的には区分所有法 59 条での競売を前提にして弁護士に依頼せず、本人訴訟でできるところまでやってみる方針にしたというのが前回までのあらすじ。
訴訟申立等に必要な具体的な下準備を始めたところから、その過程で明らかになった新事実を書いていくというのが今回の内容。
5 月の連休を接続するため 5/6 と 5/7 に有給を取っていたのでその間に、いずれ必要になることが判っている書類を集めておくかという訳で、登記簿記載事項証明書とか住民票の除票とかを集めることにしてみた。管理会社の担当者の方に頼むこともできたのだけど、所轄の法務局が徒歩 30 分の距離にあったことと、時間を節約することを考えて。
まず、登記簿の写し自体は誰でも取得できるものなので、特に問題なく取得完了。こちらは以前管理会社の担当者から貰ったものから特に更新されている内容はなかった。登記簿上の住所は足立区のうちの住所のまま更新されていないので、訴訟とかの際には転居履歴を全部繋げるために戸籍の附票が必要になるのだろうなとか考える。
次に、最初の転居 (緊急連絡票の記述によれば 1999 年 4 月) から 5 年以上経過しているので無駄足だろうと思いつつ、足立区の区民事務所に向って、登記簿上の住所からの住民票除票が取得できないか窓口で聞いてみる。住民票の第三者交付ということになるので、窓口の方にマンション管理組合が管理費等の滞納問題を解決するため連絡先を探していると説明し、理事長に就任していることを証明するため理事会の議事録を見せる必要があったものの、発行の申請自体は受け付けてもらえて記録を探してもらうことができた。
結果は、予想通り転居からの保管期限を超過しているので記録が残っていないとの回答が。ここで粘っても意味がないので、対応してくれた方に礼を言って素直に引き下がる。次に、管理会社の方から聞いていた最後の住所ということで世田谷区で住民票の除票が取得できないか試してみることにした。
こちらは転出届けから 2 年以内ということで無事に住民票の除票を取得することができて「世田谷区喜多見から足立区加平への転出届けが出されているけれど、足立区の方には転入届けが出されていないようですね」との事情を聞くことができた。ただし、住民票の除票に本籍を記載してもらえば、後は戸籍の附票を取って登記簿上の住所と関連づけることができるかと期待していたのだけれども……住民票の第三者交付では本籍地を記載してはいけないという形で指導が出ているらしく、本籍を記載してもらうことができなかった。
ここに関しては本籍地が不明だと、戸籍の附票を取得して登記簿上の住所と転居履歴を結びつけることができず、訴訟の際に困るのだけどと食い下がってみたものの、司法書士か弁護士にでなければ本籍地を記載した住民票の除票は発行してもらえないということで、諦めることにした。ここは後で専門家に頼むしかないのかもと言うことで、他の作業を進めることにする。
過去の記録と今回取得した除票で判明した限りでは、この滞納している方は次の順で転居していた。
んで、折角世田谷区まで来たことだしと、弦巻・成城・喜多見の現地を見ておくことにした。いずれ訴訟の際に公示送達の申立書を出す場合は調査報告書として添えて出さなければいけないらしいので。[参考 : 東京地裁 民事21部 公示送達申立 書式サンプル URI]
とりあえず弦巻と成城には表札等を見る限り他の人が居住しているようで問題なしだったのだけれども、最後に居住していたことになっている喜多見の住所 (オートロックのない2階建て集合住宅の一室) を確認してみたところ、表札は出ていなかったものの、玄関先に傘立てが出されており、その中に緊急連絡票に記載されていたお子さんの名札のついた傘が確認できてしまった。おまけに、ベランダには布団と洗濯物が干されていて、中には男物と思しき白のワイシャツが……。
転出届けだけ提出して、行方不明になったフリをしつつ、元の住所に住み続けているというオチだったのだろうかとか、管理会社はいったい何を調べて行方不明と報告していたのだとか、頭の中を色々な考えが駆け巡る。最後に残ったのは、相手方が行方不明でなく連絡先が判ったのだとすると、直接区分所有法 59 条で競売を求めるのは難しくなってしまうのでどーすりゃいいのよという悩み。
連絡先が判ったのに何もせずに 59 条競売を求めても「他の方法によつてはその障害を除去して共用部分の利用の確保その他の区分所有者の共同生活の維持を図ることが困難であるとき」に該当しなくなってしまうので、裁判所は競売を認めてはくれないだろう。
5月の理事会では「訴訟するにしても本人訴訟で進めることにした」件と今回の調査の結果と、最後の住所に住んでる可能性が高いのでもう少し督促とか交渉とかをする必要があると報告をした。
この理事会から、昨日の記事で「訴状作成等に協力する」と言ってくれていた D さんがオブザーバとして参加してくれていて、これまでは管理会社がメール便で送っていた督促状を、裁判等での証拠能力の高い内容証明郵便で送るべきだとアドバイスしてくれた。内容証明郵便の督促状が届くかどうかで居住の有無も判定できることだし、それも良いかと考えた。
内容証明郵便の費用を調べてみたところ、用紙や字数の制限がきつく、また枚数が増えるに従って料金も上がっていくようなので、電子内容証明郵便サービス [URI] を利用することにした。こちらだと、字数の制限が少ないようだったので。
電子内容証明のおかげで督促状の文面は A4 一枚でおさまったのだけれども、今回最後の住所 (世田谷区喜多見) と転出届けでの転出先 (足立区加平) 双方に送ることにしたので費用が 2675 円になってしまった。高いなぁと思いつつ仕方が無いので許容する。
結果、足立区加平に関しては (そもそも転出届け時点で住所が間違っているので) 「宛所に尋ねあたりません」で返却されてきたものの、世田谷区喜多見の住所に宛てた内容証明郵便は配達完了した。この結果から、相手方はこの住所に居住していることは間違いないだろうと判断して、督促状に記載した期日まで振込みを待つと同時に、督促状に対しても反応が無い場合に備えて臨時集会を開催することにした。
というのは、定期集会の決議はあくまでも 59 条競売を前提にして弁護士に依頼する場合のものだったので、本人訴訟を前提で進める場合は、理事長が管理組合を代表して訴訟を行うという形の決議を改めて取得する必要があるだろうと考えたため。管理規約の方で理事長が管理組合を代表して訴訟できるという条項があれば必要なかったのだけれども、古い区分所有建物なので、国土交通省が配布している平成23年版 標準管理規約 単棟型 [URI] の第 60 条 3 項の規定が追加されていなく、訴訟等の法的手段前に集会の決議が必要になった訳だ。
そんな作業をしていたら、D さんから「google で滞納者の名前で検索してみたら懲役 2 年 6 ヶ月の実刑判決を受けている記事が見つかった」との連絡が。正直、なんじゃそりゃという気分になりながら、次回へと続く。
昨日の続き。行方不明で管理費等を長期滞納している区分所有者に対する所在調査等を進めていたら、過去の逮捕・処分歴が google 検索で拾えたというのが前回までのあらすじ。今回はその処分歴の詳細に関して。
といっても、あまり詳しく書くと特定できてしまうのである程度ぼかして書くことにする。D さん(アドバイザーとして協力してもらっている区分所有者の方)からのメールには 2ch 掲示板のログと、とある WEB ジャーナリストの記事の URL が貼られていて、そちらによれば詐欺の容疑で京都府警に逮捕され、2008 年 4 月に京都地裁で懲役 2 年 6 ヶ月の実刑判決を受けているとのことだった。
当該記事の会社名は緊急連絡票にかかれていた勤務先名と完全一致しているうえ、住所もこれまで調べた結果と符合しているので、ほぼ間違いはなかろうと思いつつも、WEB 上の記事ではソースとして弱いので北千住の足立区立図書館に行き、朝日新聞の過去記事検索サービスを利用して検索したところ、京都版地方面の記事が 逮捕時・初公判時・地裁判決時の 3 件ヒットした。報道は、この方(管理費等を長期間滞納している区分所有者)の勤務先での営業活動の中に詐欺にあたる行為があったということで逮捕・有罪判決を受けたという内容で、特に暴力団関係者であるとか、そういったことはなさそうだったのが救いではあった。
新聞報道の度に住所が変わっていたのだけれども、これがまた住所移動歴と完全に一致しているので、相手方当人だと判断せざるを得ない。2007 年の 10 月に逮捕で、2008 年の 4 月に懲役 2 年 6 ヶ月の判決ということで、未決拘留期間を差し引くと 2010 年 6 月当時には、既に釈放されていてもおかしくはないかもと考えた。そうしたことはさておくとしても、理事会での報告や訴訟等の法的手続きの際に利用するため、検索結果として表示された記事を表示されているディスプレイごとデジカメで撮影してデータとして残しておくことにする。
この辺りの事情を知るまでは、督促状が配送完了したことだし、住民票で辿れた最後の住所に住んでるのだろうと考えていたのだけれども、逮捕されて実刑判決を受けているのだとすれば、既に離婚されていて、家族は別のパートナーを見つけて一緒に暮らしているという可能性も出てくる。一方で、模範囚&未決拘留期間加算で既に刑期を終えて釈放済みで家族の元に帰ってるという可能性もあり、今後の進め方に悩んでしまった。
裁判記録等を調べることができればもう少し判断材料が得られるかもということで、調べてみたところ、刑事裁判の記録は一審が行われた地方検察局に保存されていて、現地に行けば閲覧も可能ということだったのだけど、流石に京都は遠くて見に行く訳にはいかない。電話で聞いてみるかということで、京都地方検察局の代表電話番号に次のような形で問い合わせてみた。
検察の担当の方からはかなり丁寧な対応をしてもらえたものの、服役中かどうか、服役中だとしたらどこにいるかについては、この刑事事件の直接の被害者に対してでなければ教えられないということで、裁判記録に関しても複写といったことはしていないので、現地に来て閲覧してもらわなければいけないとの回答だった。
希望に添えず、申し訳ないという形で謝られつつ、弁護士会照会という公的な手段を取ってもらえれば服役の有無等について回答できるので、弁護士会照会を使ってもらえないかと頼まれた。勝手に開示してしまうと、秘密保持義務違反ということで問題になってしまうのだろうということで、直接教えてもらうのは諦めて、対応してくれたことにお礼を言って電話を切った。
管理組合が貧乏なので本人訴訟を前提に考えてて弁護士に依頼することは考えてないのだけどなーと思いつつ、D さんと相談。別の手段を教えてくれるか、あるいは知り合いの弁護士を紹介してくれるとかするかもと勝手に期待していたのだけれども「簡易裁判所に相談窓口があるはずだからそちらに聞いてみて」との回答。
なんだっかなぁと思いつつ、東京簡易裁判所に電話して、申立手続き案内窓口の利用方法について問い合わせ。予約等は必要なく、受付時間に窓口に来てくれればよいということだったので、翌日に午前半休を取って簡易裁判所に行ってみることにした。
という訳で、簡易裁判所の申立手続き案内窓口へ。今回は次の内容を相談してきた。
回答は、最初の質問については「訴訟申立前の場合は弁護士会照会を利用するしかない(弁護士会照会を利用するのが最も安い)」で、次の質問に関してはマンションの滞納管理費請求は訴訟として一般的らしく、裁判所で用意しているテンプレートを出してくれて、これを埋めてくださいということと、添付して出す必要がある書類はこの通りですと教えてもらえた。/p>
どうやら弁護士会照会を利用するしかなさそうだということで、管理会社の担当者に「この件で弁護士会照会だけを利用することが可能か」と「可能な場合その費用はどの程度か」を聞いてもらった。
結果、当初(59 条競売の議案で)依頼先となる予定だった弁護士の方が弁護士会照会だけでも引き受けてくれて、費用は 2〜3 万程度ということだったので、理事会決議を経た上で照会を利用することにした。
こういった調査・検討をしているうちに、6月の理事会と、それに先立って開催した臨時集会が終了し、細かな事情質問等はあったものの「本人訴訟を前提に調査・検討を進める」「訴訟等の代表として理事長が当たる」「手に負えない場合(相手方が弁護士を立てて争う姿勢を見せた場合)は弁護士に依頼する」件について承認が得られて一つ壁を超えることができた。
また、訴訟等の法的手段に訴える前に(既に釈放済みで)面会が可能ならば、一度面会して管理費等の支払いの直接交渉をしておいた方が良いのではという意見もあったので、管理会社の担当者の方と、理事長の私と、もう一名、理事の方の合計三名で、相手方の(少なくともご家族が)暮らしていると思われる世田谷区喜多見の住所を直接訪問してみることにした。
なお、内容証明郵便で送った督促状に対しては、特に反応はなく、この時点では無視されてしまったのかなとか考えていた。
と、こんなところで長くなってきたので次回に続く。
まだまだ続くよ滞納問題。相手方の逮捕・処分歴が明らかになったけれども、現在の所在は不明のまま。弁護士会照会を利用して問い合わせることにしたけれど、まだ結果は出ていない。管理組合理事長を代表として滞納管理費の督促に法的手続きを取る件の集会決議は取得できたものの、相手方の所在が不明なので具体的な訴訟等に訴えることができない状況。というのが前回までのあらすじ。
弁護士会照会の結果が出るまで何もしないのも無駄なので、管理会社の担当者ともう一名の理事の方に付き添ってもらって、相手方又は相手方の家族が暮らしていると思われる住民票上の最後の住所を訪問してみることにしたところからが今回の内容。
さて 7 月の最初の日曜に現地を訪問してきた。日曜午後なので在宅であることを期待していたのだけど……生憎と留守だったようで、留守番をしていた(外見から判断する限り小学校2年〜学齢前の)お子さんが出てきてしまった。
こういう展開は予想していなかったのでどうしようと思いつつ、管理会社の担当者の方の名刺を預けて「ご両親に○○○管理組合へ連絡して欲しいと伝えて」と伝言をお願いした。また、この一点だけ確認させて欲しいということで「お父さんは一緒に暮らしているか」を尋ねてみたところ「一緒に暮らしてます」との回答だった。
あまり立て続けに訪問するのも迷惑だろうし、迷惑行為を実施したということで訴えられたら本末顛倒なので、伝言の効果を待っていたところ、翌々週に管理会社に対して奥様から電話があった。
担当者が応対した電話の内容は以下の通りと聞いている。
かなりご立腹であったようで、管理会社の方も電話応対に苦労したらしく、それが仕事とはいえ申し訳なく思ったり。それはさておき、まあ筋の通った話ではあるので、信頼しても問題ないだろうと考えた。
私は相手方の元奥様の主張を信頼して問題ないだろうと考えたのだけれども、オブザーバとして協力してくれていた区分所有者の D さんと、この離婚しているという情報の扱いと、相手方の所在が判明して、面会することが可能であったら訴訟等の前に任意売却の手続きを薦たいという方針に関して衝突してしまった。
私は電話で聞くことができた情報で訪問してきた住所に相手方が居住していないと判断して問題ない(公示送達等の申立書に書ける)と判断したのだけど、D さんは、元奥様に対して離婚していることを証明できる書類を出させるべきで、再度訪問するか手紙を出す等のアプローチを取るべきという立場。
任意売却に関しても、私は第一位抵当権を押さえている住宅金融支援機構の任意売却の制度 [URI] を相手方に提案して、「管理組合の労力と費用を最小にする形で解決を試みるべき」という意見だったのに対して、D さんは「任意売却は売却相手を見つなければならず、そんなことは無理だ」等々と反対していた。
とりあえず、元奥様へのアプローチに関しては、弁護士会照会の結果が出ればそれで訴訟等の手続きには十分なのでこれ以上のアプローチは必要ないと説得することができたものの、任意売却に関しては意見を一致させることができなかった。
前回書いた、裁判所の相談窓口の利用を推奨された件とか、この辺の意見衝突とかの事情から、あまり D さんの協力には期待することはできないのかも、と思い始めた。
弁護士会照会の結果待ちの状態のまま、他にできることが尽きたので、暫くこの件の進展は無くなってしまう。区切りがいいので、今回はこれぐらいにして次回へと続く。
昨日の続き。滞納者の服役情報等を入手するために弁護士会照会を利用したものの、中々回答がなく、結果を待つ以外にできることが無くなってしまったというのが前回までのあらすじ。
結局 8 月中には回答は届かず、D さんから照会の結果はどうなっているのかとせっつかれつつ、回答待ちの状態だと毎回同じ答えを返す日々。今回は趣向を変えてこれまで特に説明なく使ってきた「公示送達」・「競売」・「任意売却」とかの用語解説をしてみる。
まずは「欠席裁判」から。通常の訴訟では原告が訴状を裁判所に提出して、訴状が被告に特別送達で送られて、初回の口頭弁論日時が決まるので被告側はそれまでに答弁書を裁判所に提出するか、少なくとも公判当日に出席して原告側の主張を認めるとか否認するとかの主張をしなければいけないのだけれども、答弁書の提出も当日出席もなかった場合に欠席裁判と呼ばれる状況になる。
欠席裁判となった場合、被告側は原告側の主張&提出証拠を全て真実と認める陳述をしたものと見なされる。これを訴訟用語で「擬制陳述」というらしいのだけど、こうなった場合、原告側の請求はそれが法に反するものでない限り全て認められることになる。
次に「公示送達」に関して。これは訴訟の際に相手方が行方不明であったりして訴状等を送達することができない場合に原告側が取ることのできる手段で、裁判所の掲示板に 2 週間、送達すべき書類等を掲示することで、相手方に書類が届いたものと見なすという制度。
当然ながら、普通の人が裁判所の掲示板をチェックしていたりする訳が無いので公示送達の利用が裁判所に認められた場合、ほぼ 100% 上で説明した欠席裁判となり、被告をサンドバック状態でフルボッコにできる。
このように公示送達というのは非常に恐ろしい手段なのだが、登記簿上の住所とか住民票上の住所が実際に住んでいる場所と一致している場合であればそんなに恐れる心配は無い。訴状等は最初の一回は必ず住民票上の住所に送られるので、裁判所から特別送達という見慣れない郵便が届いた場合に無視するとかの無謀な行動に出なければ問題ではない。
ただし、転居の際に転出届・転入届の提出をサボっていたり、あるいは出鱈目な転出届を提出して住民票上の住所を不定にしている場合、公示送達を使って欠席裁判に持ち込み、好き勝手な主張を裁判所に認めさせるという手法に対して無力となる。今回の件では、実際に公示送達を利用することになるわけなのだが「こんな恐ろしい手段があるなんて……転出届・転入届の手続きや、銀行・クレジットカード・証券会社等に登録している住所の更新手続きはきっちり忘れないでやることにしよう」としみじみ考えた。
次に「競売」に関して。裁判所の不動産競売というのは、裁判所が不動産を売りに出して、期間内に一番高い値段をつけた人にその不動産の所有権を移転させ、対価として支払われたお金を抵当権者・債権者にルールに従って配分するという仕組みだ。住宅ローンの返済が滞った場合に借り手(債務者)の資産をお金に換えて、借金(債務)の全部または一部を回収するためによく使われる。
区分所有建物の管理費は先取特権のある債権ということになっているので、管理費の支払いが滞った場合は、特に借用書とか裁判所の判決文とかが無くても競売を申し立てることができる。けれども、予定落札価格を超える額の抵当が既に設定されている場合、売却代金の配当は、執行費用・抵当・非抵当債権の順で配分されて、非抵当債券にあたる滞納管理費まで回ってくるお金がなくなってしまう。こうした場合に管理組合が競売申立をしたとしても、裁判所は競売を申し立てる意味の無い人が競売手続きをしたと考えて競売を中止する。これは法律用語だと「無剰余却下」とかいうらしい。
例えば市場価格が 1800 万程度の不動産に金融機関 E、金融機関 F、金融機関 G の順で抵当が設定されていて、それぞれ住宅ローンの残高が 1500 万、500 万、300 万だったとする。この場合、競売を実施させることができるのは金融機関 E と金融機関 F だけで、金融機関 G は抵当を設定している立場であっても、競売を申し立てることができない。さらに、この不動産の持ち主が固定資産税の滞納を続けていたとしても、都道府県ですら公売をすることはできない。当然ながら抵当権に縁の無い管理組合には手も足も出ない。できるのは競売代金の配当がある金融機関が競売を申し立ててくれることを待つことだけだ。
ここは重要なところなので、図を使って説明する。次の図のような場合には、競売の対価は必ず右端の上からの順で配分され、債権に対して配分の無い債権者は競売・公売を申し立てることはできない。
この図の場合だと金融機関 E と金融機関 F が競売を実施することができるけれども、どちらが競売の申立をしたとしても配当の順序は変わらない。例えば金融機関 F が競売申立をしたとしても、より優先される債権に配当された残りしか受け取ることはできない。また、図の下の方に滞納管理費と滞納固定資産税というものがあるけれど、この図の場合だとこの二者(と金融機関 G)は競売から配当を受け取ることができないので「無剰余却下」になって競売・公売はできない
ただし、区分所有建物の管理組合の場合、区分所有法 59 条競売という手段があり、こちらの訴訟を通じて裁判所から競売を認めるという判決を取り、その判決が確定した後ならば競売から直接の配当がない無剰余の場合でも競売申立をして、競売を実施してもらうことができる。
59条競売の場合でも配当の順序は変わらず、管理組合は競売の代金から直接滞納管理費を回収することはできないのだけれども、区分所有法 8 条に「特定承継人の責任」という条文があり、管理組合は競売で区分所有権が移転した相手に対して滞納管理費を請求することができる。具体的な条文は次の通り。
(先取特権)
第七条 区分所有者は、共用部分、建物の敷地若しくは共用部分以外の建物の附属施設につき他の区分所有者に対して有する債権又は規約若しくは集会の決議に基づき他の区分所有者に対して有する債権について、債務者の区分所有権(共用部分に関する権利及び敷地利用権を含む。)及び建物に備え付けた動産の上に先取特権を有する。管理者又は管理組合法人がその職務又は業務を行うにつき区分所有者に対して有する債権についても、同様とする。
2 前項の先取特権は、優先権の順位及び効力については、共益費用の先取特権とみなす。
3 民法 (明治二十九年法律第八十九号)第三百十九条 の規定は、第一項の先取特権に準用する。
(特定承継人の責任)
第八条 前条第一項に規定する債権は、債務者たる区分所有者の特定承継人に対しても行うことができる。
今回の滞納管理費のケースで解決方法として挙がっているのは、区分所有法 59 条競売で区分所有権を支払い能力のある第三者に移転させて、特定承継人となったその第三者から滞納管理費を回収しようという道筋だ。
最後に「任意売却」について。任意売却の場合、競売とは異なりお金の流れは次の図のような形となる。
任意売却の場合、裁判所が強制的に競売してしまうのではなく、通常の不動産取引と同様に、仲介不動産会社を介して市場で不動産を売却する。
通常、不動産会社を介した不動産取引では固定資産税の滞納や管理費の滞納がある場合、売買契約の際に売買代金の中から相殺されるのが一般なので、管理組合にとっては競売の場合よりも滞納管理費の回収確率が高い。
問題は金融機関にとって任意売却がどう見えるかで、この図の場合では金融機関 E にとっては残債全てが回収できるので(期限一杯まで返済してもらった場合の利子が入ってこなくなる問題を除けば)特に問題はない。
しかし、金融機関 F と金融機関 G にとっては任意売却で回収できるお金からでは資金の完全回収ができない。特に金融機関 G にとっては一銭も資金を取り戻せないのでまったく任意売却に同意するメリットがない。
といっても、抵当を消してもらわないことには売買自体が成立しなくなってしまうので、いくばくかのお金(いわゆるハンコ代)を渡して、また任意売却後の返済計画を示して、抵当の削除に同意してもらうという交渉を(不動産会社と売主が)することになる。
一般に管理費の滞納で 59条競売と任意売却が選択できる場合、管理組合は任意売却を選ぶ。何故なら、59条競売の場合は地裁で通常訴訟をして、さらに競売申立をしてと裁判所相手の手続きが二回も必要な上に、それらを全部管理組合(又は管理組合の依頼した弁護士の方)がやらなければいけない。
訴訟費用に競売申立費用、予納金・登録免許税と金はかかるは時間も取られるはまったく良いことがないのに対して、(住宅金融支援機構の住宅ローンで)任意売却をさせる場合にやることは [URI] の一番下にある「任意売却の手続きについて」の書類を住宅ローン窓口の銀行支店に提出するようにと滞納者を説得するだけで済む。
首尾よく書類を出してもらえれば、後は所有者と不動産仲介会社が働くだけで済んで、管理組合は何もしなくて済む。第二位以下の金融機関が任意売却を認めてくれない場合でも、(任意売却の申し出をした時点で期限の利益は消滅するので)住宅金融支援機構が競売申立をしてくれるかもしれないと期待することができる。
実際、管理会社の担当者も 7 月の訪問時に相手方との面会が適えば任意売却を薦めるつもりという意見だった。ところがなぜか D さんからは反対されてしまっていた訳だけど……きっと何か私の説明がマズかったのだろう。
結局、8 月中には弁護士会照会の結果が出なかったのだけれども、9 月の中ごろになってようやく回答が届いた。その内容については次回に続く。
昨日の続き。7 月に弁護士会照会の依頼をしてから約 2 ヶ月経過して、ようやく回答が届いたというところから。
法務省矯正課からの回答では、9月現在「東京都葛飾区小菅1−35−1 東京拘置所 在監中」ということでようやく相手方の居場所が判明した。府中ではなく小菅ということはまだ控訴して戦っている最中なのかぁ、控訴してなければもう出られていたんじゃないのかなぁとか考えたりもした。
通勤中に電車で荒川を渡る際に見えていたあそこに居たのか、意外とご近所に居たのだなと益体もないことを考えつつ、次の手を打っていくことにする。なお、右の写真は荒川千住新橋から見える東京拘置所の姿。
とりあえず、これまで住民票上の最後の住所に送っていた督促状はおそらく本人には届いていなかったであろうから、改めて小菅に宛てて内容証明郵便で督促状を送ることにする。また、どうせ督促状は無視されてしまうだろうから、督促状の支払期日を待つ間に訴状の作成を進めることにした。
まず今回の訴訟では、いきなり区分所有法 59 条競売を求めるのではなく、滞納管理費等の請求単独で訴訟を行うことにした。弁護士を立てない本人訴訟なので、相談窓口が充実している簡易裁判所で訴訟が行える金銭請求だけにしておいた方がよいだろうという判断と、相手方の所在が判明している状況で督促状を一発送っただけで即 59 条競売を求めるというのは流石に無理筋に思えたので。
で、これまでぐだぐだと所在調査に時間を取られているうちに、滞納管理費等の(遅延損害金を含めない)総額が 60 万を超えてしまったので、「小額訴訟」は使えなくなり、自動的に通常訴訟を選択することになった。相手方の所在は判明しているので訴訟ではなく裁判所の「支払い督促」を使うという手もあったのだけれども、債務名義を取るだけだとしても、訴訟という手順で進めることで、相手方の出方を見たりこちらも場数を踏むことができたりと今後(59条競売で訴訟をする場合)のことを考えれば色々メリットが存在したため。
それはさておき、簡易裁判所の申立相談窓口で以前貰って来たテンプレート [PDF] を参考にしつつ、最終頁の請求の趣旨と紛争の要点の箇所は微妙に書くべき項目が違っていたので、[PDF] のようにフォーマットだけ真似て新たに作成。1・2頁に関しては受け取ったテンプレートにそのまま手書きで書き込んで使わせてもらうことにした。
また、訴状に添付する登記簿・住民票等の書類は発行後 3 ヶ月以内という条件があるので、5 月に取ってきたものは使えない。改めて登記簿等を取り直すことにした。
まずは登記簿記載事項証明書からと取ってきたところ、5 月に取得したものとは登記内容の甲欄に変化があった。6月29日付けで、足立都税事務所によって固定資産税滞納の為に差押が行われており、所有者の住所も世田谷区喜多見に更新されている。
足立都税事務所は北千住にあり、行こうと思えば行ける場所なので、駄目で元々と覚悟をしつつ、ひょっとしたら事情を聞くことができるかもと訪問してみることにした。結果、この差押を担当した方と面会して事情を聞くことができて「固定資産税の滞納があったので差押をしたけれど、抵当の方が優先しているので公売にかけることはできない」ことと「都税事務所の方で金融機関に問い合わせてみたけれど、やっぱり返済は止まっていると回答があった」と教えてもらうことができた。
都が公売にかけてくれれば、管理組合の手間が省けてうれしかったのになぁと悲しくなったりもしたけれど、事情を教えてもらえたことにお礼を言う。また、バーター取引という訳ではないけれど、弁護士会照会を利用した結果、東京拘置所に居ると判明したので今後の対応を検討しているところという管理組合側の事情を教えておいた。
次に戸籍の附票を取りに足立区民事務所へ。弁護士会照会の副産物として、相手方の本籍地が足立区加平だったということが判明していたので、戸籍の附票を発行してもらうことにした。今回は訴状を作成した上での第三者発行を申し込みなので、すんなりと発行してもらえて、今回の訴訟に必要な公的な書類は取得完了した。
他の証拠書類は管理組合で作成するか、あるいは管理組合が保管していたものか、あるいは管理会社に作成してもらうものなので何も問題にならない。そうこうしているうちに督促状の期限も過ぎて、当然ながら振込みはないし、相手方からの返答もない。10 月の理事会で訴状提出の日取りを決めたら訴訟申立だーと考えていたら……。
督促状に記載した期限(金曜日)を超過した二週間後の火曜日に、相手方からの返事が届いてしまった。手紙の消印は督促状に記載の期限の 7 日後で、内容は「こうした事態になったことを詫び」て「あと二ヶ月待ってくれ」というものだった。正直どうしようか悩んだのだけれども、相手方が拘置所の中では任意売却の手続きを取ってもらうのは現実的でないという判断と、当然ながら収入・資産ともに無いであろうことと、督促状への回答がなんら根拠を示すことなく 2 ヶ月待って欲しいという内容であった点を踏まえて、これ以上の直接交渉はせず訴訟申立をすることにした。
この決断の背景には、相手方にそのつもりがあれば、訴訟の中で交渉することも可能だし、訴訟の席での交渉の方が調停委員とかの意見も聞けて良いだろうという判断もあったため。訴状の中でこの手紙に触れるかどうか悩んだのだけれども、この手紙の存在を記載せずにいて、訴訟の席で相手方から「督促状に回答したのにいきなり訴訟申立するのは横暴だ」などと主張されたら裁判官からの心象が悪くなると考え、経緯説明書に「期日を過ぎた消印の手紙での回答、なんら根拠を示さずに 2 ヶ月待てという管理組合にとって到底受け入れられない内容」とごく自然に、かつ極力相手方に対して裁判官の持つ印象が悪くなるような方法で予め記述しておくことにした。
そんなこんなで、管理会社の担当者に付き添ってもらって東京簡易裁判所に行き、訴状を提出。何とか 10 月中に訴訟申立をすることができた。裁判内容詳細は次回に続く訳だけれども、これまでにこの件で管理組合が支払うことになった費用は以下の通り。
という訳で、訴訟申立までにかかった費用は合計 31,725 円。本当はこれに登記簿や住民票の除票、戸籍の附票を取得した際の費用も載せるべきなのだろうけれども、一回 700 円とか 300 円で、手続きが面倒なために自腹を切ってたので管理組合からは支出していない。
本人訴訟でもこれだけ必要になって、しかもこの訴訟が終わっても後二回、59 条競売請求と競売申立の手続きが必要になるという気が滅入るような状況が控えている訳ですな。はっはっは。
昨日の続き。何とか 10 月中に訴訟申立をするところまで進めたというのが前回のあらすじ。今回は訴訟の内容詳細について。
申立相談窓口で書記官の方に相談にのってもらいながら作成した訴状なので、特に問題なく訴状は受理されてその場で事件番号と担当書記官が記入された受付票を発行してもらえた。
訴状を提出したのは金曜日だったのだけど、翌週の火曜日に裁判所の書記官から電話で「口頭弁論日時は 11 月 XX 日でどうですか」と確認が来た。特に予定も入っていなかったので問題ないですよと回答。翌日に特別送達で期日呼出状が届く。
さてさて、相手方は刑事裁判を経験している人なので当然欠席裁判の恐ろしさは承知しているだろうし、拘置所の中からは出て来られないにしても答弁書を出してくるのだろうなと考える。なるべく悪い予想をしておいた方がショックも少なかろうと裁判は長引くのだろうなと心の準備をしながら、公判当日、指定された時間の 15 分前に法廷前に着き、室内に入る。
同時刻帯に 5 件程度別件の裁判が行われていたようで、法廷内は込み合っていたけれど、入室して右側の机の上に置かれていた出席票に名前を書く。他の裁判(大抵は貸し金の過払い返還訴訟で、中には本人訴訟で進めている豪の者も)が淡々と事務的に片付けられていき、私の番に。書記官から名前を呼ばれるので傍聴者席から中に入って原告席に座る。
裁判官から「原告は陳述しますか」と聞かれて「訴状の通りです」と回答。すると、裁判官は「被告は出廷せず、また答弁書の提出もなく……云々」と言うことで、今回の訴訟は本質的にはこれだけで完了した。実に他愛ない。
ただし、請求の趣旨 [PDF] に書いていた遅延損害金の「年18.25%の割合による金員(日歩5銭 年365日換算)」が問題になった。これは管理規約に遅延損害金は日歩 5 銭と書かれていたので、理事長の一存で勝手に減額するわけにもいかず、そのまま請求の趣旨に入れていたもの。裁判官からここに「消費者契約法の上限金利 14.6% を超えるのはマズイでしょ」と突込みが入った。
当然指摘されるだろうなと予想をしていたので「管理規約に日歩 5 銭とあったので、仕方なく書いたが、裁判所の判決で減額されるのであれば、区分所有者の皆に説明が付くので受け入れる」と答えてこの件は解決。判決言い渡しは○○日(判決文は郵送するので、当日出席は必要ないよ)と連絡されてそれで終り。
さて 12 月になり、第二回口頭弁論期日も過ぎて判決文が(やっぱり特別送達で)届いた。さてさて、次の手段(差押可能な資産・収入が無いことを証明して、59条競売を求める)の準備を始めますかと思っていたら、その週のうちに裁判所の担当書記官から電話が来た。
曰く「東京拘置所に判決文を送ったら、11月X日 (第一回口頭弁論前) に釈放されていて、送達できなかった」とのことで、これを聞いた瞬間、書記官相手でありながら「はぁ?」と声を上げてしまった。書記官からは「○○○号室に戻って来てないですよね」と確認されたけれども、当然戻ってない。
書記官の方に「どうすればよいですかね」と聞いてみたところ「裁判所からの問い合わせでは帰住地を教えてもらえないので、もう一度弁護士会照会で問い合わせてもらえないか」との依頼が。また「それでも駄目な場合は公示送達も使えるので、とりあえず照会してみてほしい」とのことだった。
という訳で、管理会社の担当者に電話連絡。裁判所の書記官から聞いた話を伝えたところ、「はぁ?なんですかそれは」との声が上がる。やっぱりそうなるよなと思いつつ、二人してしばらく乾いた笑いを漏らす。とは言え、照会の件は問題なく引き受けてもらえるとのことでそのまま依頼する。理事会決議は事後承諾ということで後回しになってしまうけれど、今回は結果を急ぐ必要があったので。
再びの弁護士会照会の結果待ちに。今回の照会は 1 ヶ月で結果が出たのだけれども、肝心の回答は「照会の件についてはお答えいたしかねます」という内容。
以上の事情を裁判所書記官に伝えて対応を相談したところ「そうした事情であれば公示送達の申立をしてください」ということだったので、東京地裁 民事21部のサンプルを参考に公示送達申立書を提出。
こうしたやり取りをしている間に 2 月となり、私が理事長であった期は終了した。今から振り返ってみるに、本人訴訟を前提に進めるという決断をした結果、一年経過してどんな進捗があったかというと、2008年10月分から2010年10月分の滞納管理費について、裁判所の判決という形で債務名義を取り、時効を 5 年間から判決後 10 年間に伸ばすことができただけで、それ以外は何も進んでいない。むしろ、滞納問題を解決できずに 1 年が経過したことで滞納額がさらに 30 万積み上がってしまっている。
当初予定通りに弁護士に依頼した場合であれば、もう少し先まで物事は進んだんじゃないかななどと考えて嫌になる。それはさておき、流石にこの状況で後任の理事長に後は任せたと問題を投げ出す訳にもいかないので、この問題を解決するまでの間ということで、2011 年も「○○○号室管理費滞納問題対策委員」という肩書きで今期の理事会に顔を出すことになった。
今期の理事会になってからの具体的進捗は次回に続く。
昨日の続き。簡易裁判所で滞納管理費等請求訴訟に勝訴したけれど、また相手方の行方が判らなくなってしまったよというのが前回までのあらすじ。相手方行方不明では交渉も説得もできないので、いよいよ区分所有法 59 条競売で訴訟をする以外に選択肢がなくなってしまった。
59 条競売は「訴額算定が著しく困難な場合」に該当して、簡易裁判所ではなく地方裁判所が一審裁判所となる事件なので、簡易裁判所の申立相談窓口は使えない。かと言って、WEB 上にサンプルは見つからないし、参考になりそうな書籍も見つからない。訴状作成を担当するということで「○○○号室管理費滞納問題対策委員」になった訳だけれども、どうしようかなと悩んでいた。
一方、管理組合理事会のメンバーは半数の 3 名が入れ替えとなったのだけれども、偶然今年の書記を引き受けてもらえた方が司法書士だったということで、これは私が何もしなくても問題が解決してくれるかもと期待したりした。
3 月の理事会で上の事情を聞き、早速、区分所有法 59 条競売の訴状の雛形をもっていたりしないかと尋ねてみたところ、そうしたものは無いが、似たケースを手がけたことが無いか、同業者に聞いてみてくれるということで、お願いすることにした。
4 月の理事会で結果を確認したところ、そうしたケースを手がけた人はいなかったとのことで、まあ珍しい事件だし、仕方がないのかなと諦めた。D さんの知人も司法書士ということだったから聞いたところで同様だろうなと考え、どうしようか悩んでいたところ……管理会社経由で当初依頼予定だった弁護士の方から「管理費滞納だけで59条競売が認められた判例があるか」と質問して、その弁護士の方が手がけた事件の判決文写しを貰っていた [URI] ことを思い出した。
その弁護士の方から見ると「判例あるか」と聞いて判決文をまきあげて、その判決文を参考に訴状を作って本人訴訟で進めるとか……マジ鬼畜だよなぁ、仁義もクソもあったもんじゃないよなぁ、そんなことされたら普通許せないよなぁと考える。
が、考えただけで心の中で「ごめんなさい」と謝ってその方針で実際に訴状をでっちあげた。麻生みことの「そこをなんとか」を読んでるせいで、昨今の弁護士事情を痛いほどよく判っているだけに本当に申し訳なく思うのだけど、貧乏には勝てなかった。
5 月の理事会で、その訴状を見せて「こんな感じで訴状を作ったので、戸籍の附票を発行してもらって来てください」と今期の理事長にお願いする。これは戸籍の附票を第三者交付してもらう場合、現任の理事長の方が窓口の方に説明しやすいため。
戸籍の附票だけでなく、登記簿記載事項証明書も必要になるのだけど、こちらは誰でも発行してもらえるものなので、私が取りに行った。どうせ前回の訴訟の時から変更はないだろうと思っていたのだけど……次のニ点で変更があった。
差押が解除されているということは、滞納固定資産税を納入した以外に考えられない。一体どういうことなのだと疑問だったので、以前事情を聞くことができたという甘えもあり、再度足立都税事務所を訪問した。
前回と同じ方に対応していただけて、そこで確認できたことは「滞納固定資産税の一部納付と引き換えに(相手方の事情から考えて全部納付は不可能と考えて)差押の解除を行った」ということと「相手方の連絡先等の記録は残ってない」ということだった。また「来年 4 月になれば、やっぱり滞納になっているだろうから、そうした場合は再度差押をすることになるだろう」という話も聞くことができた。
連絡先の記録が残っていなかったことを残念に思いつつ、今度の 59 条競売訴訟で公示送達申立書にこの話を書くため、応対していただいた方の名前のメモを取らせてもらっていいでしょうかとお願いして、了承いただけたのでメモを取る。
理事長にお願いしていた戸籍の附票はどうなってるかなとおびえながら帰宅したら、理事長も迅速に戸籍の附票取得に動いてくれたらしく、取得してきた書類がポストに入っていた。早速中を確認してみると……住所が世田谷区喜多見から荒川区○○(特定を避けるため伏字)に更新されていた。
この時点で、ああ予定通りに 59 条競売をすることは無理か……また督促状からやり直しか……この徒労感をどうしたらよいのだろうと絶望に浸る。
かといって、いつまでも「なんて不幸なんだろう」という感情に溺れていても仕合せになれない(それはそれで楽しいのだけれど)ので、気を取り直して状況調査再開。戸籍の附票には「荒川区○○ ×丁目××番×号 ○○方」と載っていたので、問題の住所を google で調べてみたら「更生保護法人 ○○会」がヒットした。
聞きなれない更生保護法人というものが気になって調べてみたところ「拘置所・刑務所から釈放された人が定住先が決まるまで一時的に居住するところ」とのことで、なるほどそういうものがあったのかと一つ知識が増えた。
ここに居たのならば、管理費滞納訴訟で判決文の送り先を知るために弁護士会照会をしたときに教えてくれてもよかったんじゃないのかなとか色々と考えが巡るが……とりあえず、更生保護法人という半公的な所に住んでいるのなら、面会して、任意売却を薦めることも意味があるのではないかと考えて、現理事長と管理会社の担当者と電話で相談。
相談の結果「一度、相手方と管理組合で面会しておく意味はあるでしょう」という結論になり、管理会社の担当者の方が更生保護法人の番号に電話をして、面会の予約を入れてくれるという筋書きになった。
ところが、管理会社の方が電話をしてみたところ「既に○○さんは引っ越してしまった」との回答だったそうで……一応、相手方の携帯電話の番号を教えてもらえたということで「○○○マンション管理組合の者が面会をしたいので都合の良い日時を連絡してください」と伝言メッセージに入れてみたものの反応なし。
翌週水曜まで待っても折り返しの電話はなかったので、ここまで対話を拒否されている状況では、面会・説得共に無駄だろうと判断して、当初予定通りに 59 条競売で進めることにして、理事長と一緒に 5 月 25 日に訴状提出に行くことにした。
59 条競売の訴訟申立と訴訟の詳細に関しては次回に続く訳だけれども、この件を素人が本人訴訟で進めていたことの最大の痛恨事は、相手方が拘置所から釈放されて、更生保護法人に住んでいる間に面会等の機会を持てなかった所にあると考えている。
例えば、刑事弁護の経験がある弁護士ならば更生保護法人という仕組みを知っていて、出所後には住民票登録がされている可能性が高いと判断できたのではないかと思うのだ。そうすれば、12 月に判決文の送達ができなかった時点で法務省矯正課への照会ではなく戸籍の附票取得を選び、居住中の更生保護法人を突き止め、相手方が引っ越す前に面会することができていたかもしれないので。
そうすればこうした面倒な 59 条競売やら競売申立をせずに済んでいたのではないかなと思って、後悔しているのだ。
昨日の続き。結局、区分所有法 59 条の競売請求訴訟をすることになりましたというのが前回までのあらすじ。今回はその訴訟の詳細に関して。
そんなこんなで現理事長と一緒に 5 月 25 日に東京地裁に訴状を提出して訴訟申立をしてきた。検索してこのシリーズに辿り着いた人が一番知りたいのは、実際にどんな訴状で出したのかという辺りだと思うのだけど、このとき提出してきた訴状を見せてもあまり参考にならなそうなので提出した訴状自体は出さない。
というのは、このとき提出してきた訴状と添付書類には不備があったらしく、裁判所の書記官から補正命令(あるいは訴訟指導)としていくつか追加書類の提出を命ぜられたため。最終的に提出することになった書類から逆算した訴状と添付書類を見せた方が役立つと思う。
書記官との細かなやりとりを逐一書いていっても楽しくないと思うので、最終的な訴状と添付書類の中から、実際にこうした訴訟を進めようとしている人が参考にしたいであろう部分を(一部伏字にしたうえで) リンクしておくことにする。
順に解説していく。まず訴状に関して。既に書いたように、区分所有権の競売を許可を取る訴訟では訴訟物の価額を算定することができないので、一枚目左下に書くように 160 万で代用して、訴訟申立費用の印紙代は 13,000 円になる。訴訟申立にはこの 13,000 円の他に、簡易裁判所での訴訟と同様に、訴状や判決文等を郵送するための予納郵便切手代として 6,000 円が必要になる。
請求の趣旨についての説明は省略する。これ以外に書きようがないと思うので。肝心なのは請求の原因以降の部分なのだけれども、基本的には区分所有法 59 条の要件事実を満たしていますよということをつらつらと書いていけばよい。
共同利益違反行為があって、それが重大で、他に解決手段がないということを書いていけば良い訳なのだけど、具体的にはこのシリーズで最初のころに触れた asahi.com の記事 [URI] にまとめられている要件を一つ一つクリアしていることを書いていけばよい。上でリンクした訴状もそれを意識して書いていったつもりだ。
1〜9 までの甲号証のうち、2 号と 4 号はこの訴訟に際して改めて作成しなければいけなかったものなので、他の管理組合で参考にしたい場合もあるかと考えて公開しておく。裁判所はこうした書証の書式については寛容なので裁判所の知りたいことが書かれてさえいれば大抵問題にはならないのだけど、そうは言ってもこうした訴訟を初めてやる人は細かな書式が気になるかもしれないので一応公開。こんな感じに書いておけば、私達の場合は裁判所はそれでよしと受け入れてくれた。
証拠説明書については訴状の方で逐一書いておけば出さなくても良いと言ってくれる裁判所もあるようなのだけど、私達の場合、追加で書証を出してくれと言われて出した部分もあるので、改めて証拠説明書を出してくれと言われてしまった。
最初から添付して出すのだとすれば、こうした形になるかなということで、参考に公開しておく。もっとも、証拠説明書に関してはウチのものを参考にするよりも 大島 明「書式 民事訴訟の実務」[Amazon] を購入して読んだほうが確実かもしれない。
公示送達申立書に関しても、こうした内容のものを書けば、それで裁判所は公示送達を認めてくれた。ポイントは、住民票上の住所には住んでいないことを証明できる報告書と、相手方が所有している部屋に住んでいないということを証明できるような報告書を添付して出すことのようだ。
私達は当初、住民票上の住所に住んでいないことの報告書だけ出していたのだけれども、書記官から所有している部屋に住んでいないことを(電気メーターが動かないこととかで)確認した書類を出してくれという依頼が後からきたので、59条競売の訴訟で公示送達を使う場合は、このように最初から両方を用意しておいた方が良いのだろう。
公示送達申立書や証拠説明書には事件番号を記入するところがあるけれど、東京地裁の民事訴訟受付窓口では、訴状受付の際にその場で事件番号を付けてくれるので、裁判所に何度も足を運びたくない場合は、事件番号のところを空欄にしてあらかじめ書類を作っておいて、窓口で事件番号を記入して同時に提出するということもできる。
実際私達はそれを使ったのだけれども、結局追加書類提出で何度か理事長に裁判所に足を運んでもらうことになってしまった。私の不手際が原因で何度も手間をかけてもらうことになって申し訳ないと思っている。
そんなこんなで書証も十分となり、公示送達も認められ、第一回口頭弁論日時が 8 月 11 日と決定し、期日請書として届いた。私も理事長に付き添って当日裁判所へ(暑い中一応スーツを着て)行ってきた。
理事長に一緒に(原告席)について来てくれと頼まれてしまったので、いいのかなと悩みながら(問題があれば裁判官から傍聴席に戻るように言われるだろうと考えつつ)一緒に入って隣に座る。裁判官から「二人はそれぞれどういう立場の方ですか」と尋ねられたので、「原告である現理事長と、訴状作成を担当していた、前理事長かつ管理費滞納対策委員の者です」と答えて、「まあいいでしょう」と認めてもらう。
結果は、公示送達なので当然ながら相手方は出廷・答弁書提出いずれもなしで原告側請求が認められたのだけど、一点だけ、証拠説明書の中で「原本」と書いていた甲 2 号証と甲 4 号証について、裁判官から「原本を見せていただけますか」と質問が。予想していなかった質問だったので、しばらく固まってしまったのだけれども、見かねたのか「それとも既に提出しているものが原本という扱いでしょうか」と助け舟をだしてくれたので「はい。作成者が○○○マンション管理組合ですので、提出したものが原本です」と回答して事なきを得た。
こういう面白みのない裁判でありながら、傍聴席には傍聴者が 2 名ほど座っていて、私はこれが「そこをなんとか」で触れられていた傍聴マニアというものか……楽しそうな趣味だなぁと思ったりもした。それはさておき、管理費滞納者が所有している部屋の区分所有権競売が裁判所の判決として認められた。残るは実際の競売申立なのだけど、この辺が区切りがよいのでそれはまた次回へ。
昨日の続き。区分所有法 59 条での競売請求が東京地裁によって認められたというところまでが前回までのあらすじ。今回はその判決を受けての実際の競売申立から。
59条競売訴訟自体は、「競売を申し立てることが可能である」と認めてもらうところまでだけなので、競売を実施するには、この判決を元に競売申立を東京地裁民事21部(民事執行センター)に対して行わなければいけない。
競売申立書の書式はどうすればよいのだろうということで、民事執行センターのサイト [URI] を眺めてみても載っているのは債務名義を元にした競売か、担保を元にした強制競売の場合しかない。私達の場合は形式的競売という書式で出さなければいけないのだがどうすればいいのだろうと悩んだ。
とりあえず裁判所の書記官の方も使っている「書式 ○×の実務」シリーズから 園部 厚「書式 不動産執行の実務」[Amazon] を購入して読んでみたけれども、形式的競売に関しては後ろの方にさらっと書かれているだけでやっぱり良く判らない。簡易裁判所ではないので、申立の書式相談にはあまり対応してもらえないのだろうなと思いながら、民事執行センターの館内案内図を眺めていたら「総合案内窓口」という文字が目に付いた。
ひょっとしたら簡易裁判所同様に競売申立の書式指導もやってくれるのかなと考え、ダメで元々と考えて民事執行センターの窓口まで行ってみることにした。
足立区から目黒の学芸大学駅までは都心を挟んでほぼ反対側で、しかも民事執行センターは駅からも距離があるのが辛かった。とりあえず 1F の総合案内窓口に行ってみたところ、不動産競売の書式の詳細等の相談は 3F の不動産執行書記官室に行ってくださいと案内された。で、3F の窓口に行って相談してみたところ、偶々空いている時間に訪問できたためか、具体的な書式まで踏み込んで説明をしてもらうことができた。
最初はこちらの説明が悪かったため、債務名義を元にした競売の書式の説明をしてくれたのだけれども、無剰余が予想されるので 59 条競売の判決を取って、形式的競売での競売を考えていて、その書式を聞きに来たと再度説明。形式的競売のテンプレートは用意していないけれども、担保権の実施の強制競売の書式を元に、債権目録だけ省略して出せばよいですよと教えてもらい、さらに、過去に区分所有法 59 条競売の判決を元に競売申立を行った例の実際の申立書表書きも見せてもらえた。
窓口で応対してもらえた書記官の方に申立書の写真を撮らせていただいてもいいですかとお願いしてから、表書きをデジカメで撮影。これを参考に申立書と添付書類を準備することにした。
実際に作成した申立書は次のようなものになった。
添付書類 1 番目の判決正本というのは、59 条競売訴訟で裁判所から受け取った判決文の正本。こちらはコピーではダメで、判決文そのものを出す必要がある。
2 番目の「判決確定証明書」は、 59 条競売の訴訟で判決文が被告に送達されてから控訴期限が超過しているので判決が確定しているということを証明するために裁判所から発行してもらう書類。これは訴訟を担当していた書記官に依頼すれば発行してもらえる。
4 番目の公課証明書は固定資産税の状況を証明するための書類で、管轄の都税事務所で発行してもらえるのだけれども、通常は本人以外には発行しない書類なので、第三者交付してもらうには競売申立書等を見せて、裁判所に提出する添付書類だと説明する必要がある。
5 番目の資格証明書というのは、民事執行センターのマンション管理組合の配当要求書の書式例 [URI] の 5 ページ目にあるもののこと。これまで(簡裁&地裁民事13部の裁判)は定期集会の議案書と議事録、理事会議事録を提出すればこうした書類を出してくれとは言われなかったのだけど、民事 21 部では出す必要があるらしい。
6〜11番目に関しては説明は不要だと思うので省略して、12番目の売却に関する意見書は民事執行センターの不動産強制競売の書式例 [URI] の中にある「f.特別売却に関する意見書」[URI] のこと。
以上の書類の他に、不動産強制競売の書式例 [URI] にある「(2) 現況調査等に必要な書類」の a. 〜 h. を用意して、理事長に民事執行センターに提出してきてもらった。
一緒に行った方が書類に不備が指摘された場合にやり取りが楽になるかと考えていたのだけど、理事長から一人で行ってきますよと言ってもらえたので、遠いことだしその言葉に甘えて提出してきてもらった。
申立書には特に問題はなかったようで、そのまま受け付けてもらえたらしい。事件番号と予納金・差し押さえ登録免許税に関しては後ほど郵送で連絡するので、そちらに従ってほしいというやり取りがあり、その後、予納金 60 万円。登録免許税 47,200 円の振り込み用紙が理事長の元に届いた。
指定された通りに振り込みを行い、振り込みが確認できた(今月頭の)時点で民事執行センターから不動産競売開始決定通知が送られてきた。
という訳で、民事執行センターの不動産競売の流れ [URI] を見る限り、まだまだ受付係の段階で 4 番目の「開始決定告知」ではあるものの、管理組合がやらなければいけない仕事はほぼ済み、後は競売が実施され執行費用の配当があるのを待って、競落者に対して特定承継人としての滞納管理費の請求を行うだけとなった。
というところで経過を書いて相手方に管理組合の手口等が伝わっても問題がなくなったのでこのシリーズを書き始めたという次第。現段階までの管理組合の負担額は以下のようになった。
合計負担額は 721,625 円。他に上の計算には入れていない細々とした証明書取得費用が加わる。予納金 60 万に関しては、競売成立後に全額戻ってくるはずではあるものの、本人訴訟で進めた一番安くすむはずの場合でも、競売で解決しようとするとこれだけ必要になった。しかも期間は競売開始決定までで 1 年半消費している。
おそらく競売が成立するまではさらに半年程度かかるはずで、しかも競売成立後に改めて競落者(特定承継人)に対して滞納管理費の請求をしなければいけない。
なんかね……うん。当初予定通り弁護士に依頼した場合の予算 110 万と、現時点までの費用&労力を比較すると……最初っから弁護士に依頼してた方が仕合せになれた気がしてきて悲しい。もう作業は残ってないだろうと思っていたのだけど、配当要求書の関係で現に今も追加作業が必要になってるし。
長らく続けてきたこの件も前回で現時点まで追いついたので、今回で最後にする。どこかから長いので三行にまとめろという声が聞こえてきたような気がするのでやってみるとすると……。
どんなふうに苦労したかということが知りたい場合は 1 回目の [URI] から読んでもらうことにして。たまたま私が理事長をやっていた期は国勢調査の年で、しかもアナログ放送廃止前年だったため、その辺りの手続きやら調整やら調査票の配布やらまでやる羽目になったりもした。
また、簡易裁判所の滞納管理費請求訴訟で裁判官から指摘された遅延損害金条項とか、口座振替の実態と異なっている振込み日条項とか、管理費の滞納に際して理事長が訴訟を起こすことができるという(最近の標準管理規約にはある)条項が存在しない件とかの改定を管理規約に対して行うにあたっての作業も発生した。
マンションは「管理」を買えという説もあるけれど、その「管理」って各区分所有者が応分の負担をすることで成り立たってるのねということを痛感したというか……。現在賃貸住宅に住んでて「家賃を払い続ける生活にさよならをしたい」とか「駅近マンションで快適な都会の生活を」とか考えてる人は区分所有者になる場合、こういった苦労を(ある程度)負担しなければならんのだということをよーく考えてから決断したほうがいいと伝えておく。
個人的には、10戸前後の小規模マンションは絶対に買わない方が良いと思う。50戸未満の中規模マンションもこうした負担が苦にならない人以外は止めといた方が良いと思う。100戸以上の大規模であれば……それはそれでまた別の苦労があるのだろうけれども、一戸当たりの責任がかなり薄まるのでまあ買ってもいいんじゃないのと思う。
管理費等の滞納の話に戻る。59 条競売での解決策は必要な費用と労力を見れば判るとおり最終手段で、ここまで持ち込まなければ解決できないというのは最悪のケースに相当する。区分所有法 59 条競売というのはある意味敗戦処理のようなものなのだなと痛感した。
ここ数年間の、サブプライムから始まってリーマン・ギリシャと続く不況の影響で他の管理組合でも管理費の滞納とかが増えているのかもしれないけれど、なるべく早めに相手方と面会でもなんでもして、早期解決を目指した方が良いと心から忠告する。