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12月26日(金) デジタル・コンテンツの流通の促進等に関する検討委員会 (第47回) [この記事]
恒例の傍聴レポートです。今回の内容は前回の予告どおり技術検討ワーキンググループでのエンフォースメント見直しに関する検討状況報告でした。
議事自体は次の流れで進みました。
- 村井主査からの開催の挨拶
- 小笠原コンテンツ振興課長からの配布資料確認
- 村井主査からの技術検討ワーキンググループでの検討状況報告
- 小笠原コンテンツ振興課長からの配布資料をベースにした詳細説明
- 技術検討ワーキンググループ参加者からの補足説明 (村井主査からの指名)
- 審議・質疑応答
- 村井主査からの、まとめおよび次回以降に向けての方針説明および協力要請
- 小笠原コンテンツ振興課長からの、来年の開催スケジュール
- 村井主査からの閉会の挨拶
最初の挨拶と配布資料確認は飛ばして、村井主査の報告から議事を追っていきます。報告内容は次のようなものでした。
- 後で事務局の方から詳細な説明があるが、最初に私から簡単に検討の背景を説明する
- まず参考資料として配布している第五次中間答申の抜粋、この 2 ページで現状の B-CAS 方式について「現状を固定するのではなく、地上デジタル放送に関する視聴者の理解と、それに基づく受信機の普及を一層加速・促進するという観点から、さらなる改善を模索する方向」で検討しろとなっている
- これに従ってワーキンググループにお願いをして検討をしていただいている
- また 1 ページで、B-CAS 方式の改善の在り方ということで複数の選択肢を検討するが「民間の技術と契約によるエンフォースメントについて議論を尽くす」ということで、そこから議論・検討を出発している
- 今回報告する内容は、そういった現在の方針から民間の技術と契約についてどのような方法論があるのかということを議論の骨格とさせていただいている
- これは以前も報告した内容になるが、カードによる方式、ハードウェアチップを組み込む方法、それからソフトウェアによる方法
- 大きく技術的なカテゴリで分ければその 3 つが検討の対象になる
- 技術検討ワーキンググループでは皆さん専門的な知識を持ち、システムを理解した上で、技術と契約のエンフォースメントの在り方を深く議論して頂いている
- 今日のところは、その議論を本委員会の視点で整理してもらい、それを報告させて頂くということになる
- 今日説明をするのは一旦整理をしたというそういう段階の話で、この中でどれがいいとか、どうすべきかといった議論には至っていない
- こうした選択肢がそれぞれ、本委員会での議論の方向性、要求といったものにどのように答えることができるか、利点・長所・短所、そういった機能的な可能性があるのかということを整理する段階で
- 資料 1 で御覧頂けているようにその整理はある程度できていると思うが、議論に関してはそれぞれの要求事項や発展させていくための要因・課題と結びつけながら議論していかなければいけない
- 基本的にはそういった前提で説明をしていきたいので、そのディテールの説明を事務局からお願いする
以上で報告は終わり、引き続いて小笠原課長からの配布資料をベースにした詳細説明が行われました。説明内容は次のようなものでした。
- 資料に基づいて内容の説明を事務局からさせて頂く
- まず資料を御覧頂きたいが、いくつか前提にしているところがあるので、左肩に書いてある個別の選択肢の説明に行く前に、その前提をいくつか説明したい
- 資料の冒頭に「利用者にとっての選択肢の拡大」と書かれている
- この表に記載されている選択肢は現行の B-CAS 方式に加えてどのような選択肢があるかという観点で検討頂いたものになる
- 現行方式の受信機は既に発売されて数千万台という数に達しているけれども、そうした今の方式の受信機の他に購入の選択肢が拡大するということになる
- 今申し上げたように現行方式の受信機を買っていただいた方は既に三千万・四千万という数に上っているので、こういった既に購入した視聴者の保護という観点から見ても、現行の B-CAS 方式を一切止めてしまい、別の方法を取るということは現実的とは言えない
- 従って、今の B-CAS で売られている製品は引き続き販売され、それ以外にどのような選択肢を用意できるかという観点から議論頂いている
- 以上が資料の前提ということになる
- それから、それぞれの選択肢の横欄のところに、概要・備考・課題とそれぞれ書いてある
- 前回の答申までの検討過程で今のエンフォースメントの方式である B-CAS については委員の皆から様々な指摘を頂いている
- これについては、答申の抜粋である参考資料の 3 ページでいくつか下線を引いている
- 事務局で 3 つの観点という形にまとめさせてもらってはいるが、審議に参加していただいた委員の方々からは本当に様々な課題を指摘頂いている
- 視聴者の意識に関するもの、あるいはエンフォースメントのコストと効果に関するもの、あるいは基幹放送の性格に関するものと、ここではあえて分けて書いているが、様々な指摘、パブリックコメントでも様々な指定を頂いている
- 概要や備考といった部分はそうした指摘を念頭に整理させてもらったものになる
- まず概要というところではそれぞれカードやチップなどと書かれたそれぞれの案が視聴者の目から見たときにどのように使い勝手が変わるのかという点を中心に記載をしている
- 次に備考というところでは、今申し上げた委員の方、あるいはパブコメで受けた指摘を念頭において、それぞれの選択肢についてそういった指摘との関係でリマインドしておく必要があるのではないかと思われる事実関係を指摘している
- それから課題という部分では、これらの選択肢を実現する段階となった時に何をクリアしなければいけないかということを記載している
- 例えば受信機を買った後で視聴者に何を行って頂かなければいけないか、何を知っていただかなければならないか、そういったことが記載してある
- ちなみに備考のところでは全ての選択肢の一番冒頭に「商品企画の自由度向上」という文言を書いている
- ここについては、冒頭で申し上げたとおり、今回の検討の前提が利用者にとっての選択肢の拡大ということになるが、視聴者から見て、あるいはメーカから見て多様な商品のラインナップを提供することが可能になるということでもあると考えられる
- 従って全ての選択肢に共通する、利用者にとっての選択肢の拡大ということを、供給者の目から見た時の商品企画の自由度の向上という形で全ての選択肢について記載をしてある
- なお、課題について一点申し上げると、ダビング 10 以来この場で何度も出ている議論ではあるが、地上デジタル受信機に関わる話なので、基本は民々となっている
- ただ逆に言えば、そこで民間で関わっている多数の方々の理解とコンセンサスがあってはじめて事態が前に進むということが、これまでの特徴である
- ということは、選択肢の拡大とはいえ、B-CAS という現在の方式を何らかの形で改善していくということであるとすると、それを追加するにあたっても、視聴者をはじめ放送事業者あるいはメーカの方々の理解と合意が必要になる
- 従って、関係者の方々が何を理解、あるいは合意していただかなければいけないのか、そういう観点でクリアすべき課題が記載されていると申し添えて頂く
- 次に一番最後の欄の鍵の管理者という点
- 表題に書いてあるとおり今回の説明は技術と契約によるエンフォースメントとなっている
- したがって、放送のコンテンツを暗号化して送り一定の約束を遵守するという約束を頂いた受信機メーカにその暗号を解く鍵を配布するという仕組み、これはいずれも共通となっている
- 鍵の管理者というところについて、全ての 4 つの欄で必要とかかれているのはそういう意味合いになる
- これは放送コンテンツの保護だから特有というスキームではない
- 例えば DVD とか Blu-Ray とかのコンテンツ保護の仕組みは色々と世の中に採用され製品が出ているが、こういった仕組みの中でもコンテンツを保護するために暗号化を行い、暗号化の為にそれを解く鍵を配布する機関があり、そこが鍵を管理し配布している
- 従って、鍵を配布する組織が一つだけというそれ自体が否定されるということではなく、問題はその運用に工夫・改善の余地がどの程度あるのかということが論点だろうということで、念の為、鍵の管理者ということはいずれの場合も必要と書かせて頂いている
- この点については、個々の選択肢を説明する過程で適宜触れさせて頂く
- それからこの資料の表の随所にライセンス管理会社という言葉がでてくるが、これは便宜上ではあるけれど、とりあえず今申し上げた鍵を管理し、配布する機能をもった会社という風にご理解を頂いて説明を聞いて頂ければと思う
- 以上、個々の選択肢に入る前にどういうことを前提にしていたか、視聴者の選択肢の拡大とか、あるいは鍵の管理者、あるいは課題・備考、そういった欄についての意味合いを申し上げた
- それでは、それぞれの選択肢について説明をする
- 以前この委員会で村井主査から 3 つの選択肢、枠組みについて報告いただいている
- カードの小型化、あるいはカードということが無い形でのチップ化、あるいはソフトウェア化、枠組みで言えば 3 つの方法というその枠組みは基本的に変わっていない
- カードというところから説明する
- カードの中は小型化と事前実装という形に分かれている
- ただ、いずれにしてもライセンス管理会社、今で言うところの B-CAS 社が、個々の視聴者にカードという携帯可能なものを貸与するというその仕組みは変化しない
- B-CAS 社が個々の視聴者にカードを貸与するという仕組みなので、視聴者がカードを借りているということに関して、いくつか知っていただくべき事項がある
- それが課題に書いてある、カードの所有権の所在、カードを借りている訳なので、目的外に使用した場合にどうなるか、あるいはカードをなくした場合にどうなるのか、そうしたことについて視聴者の方に知っていただく必要があるということ
- 次に小型化と書いたものと、事前実装の相違点で、事前実装という場合は、カードがあらかじめ受信機に挿入されている
- 事前実装の一番上に受信機メーカ又は販売店でカードを事前に装着した形で受信機を販売するという風に書いている
- その場合にどうなるかというと、事前実装の一番下の欄で視聴者の方々は受信機を購入してアンテナに繋いでチャネル設定をするなどの必要な作業をすればすぐに使えるという状態になる
- ただ事前実装ということであっても視聴者がライセンス管理を行っている会社からカードを借りているということは変わらないので、カードを借りているということについて、一定の情報を知っていただく必要がある
- それが課題のところに書いてある 2 番目の項目で、カードの貸与にかかる情報提供ということで、受信機を立ち上げる時点で受信機に表示をして、そこで同意するというボタンを押したときに先に進むという、一定の操作を取る必要が出てくる
- 次に鍵の配布者という鍵の管理のところにあたるもので、先ほどから何度も申し上げているように、いずれの場合にしてもライセンス管理の B-CAS 社、それから受信機メーカ、視聴者、放送事業者、こういった関係者の関係は現在と変わらない
- 小型化するにせよ、事前実装するにせよ、B-CAS 社が鍵を格納したカードを配布していくという仕組みには変更がない
- ただいずれにしても、仮にカードの小型化ということが実現すると、パソコンあるいは車載機そういった側面で、受信機の多様化が、視聴者にとってはラインナップが増えるという点で非常に大きく役立つのではないかという指摘がある
- 以上がカード型ということに関する説明になる
- 次に、二番目に書いてあるチップ型というところに行く
- カードとの相違だが、アライアンスの管理会社が視聴者にカードを貸与するという枠組みが変化する
- チップの概要のところに書いてあるとおり、コンテンツ保護の機能をチップという部分に集約して、受信機メーカの方が部品としてこれを組み込んで出荷するというところが枠組みとしては大きく異なる
- 視聴者から見ると、カードを誰かから借りる関係が無くなるので、所有者が誰か、無くした場合にどうするか、こういったことを知っていただく必要は無くなる
- それが備考に書いてあるとおり、カード貸与ではないという、従って視聴者が認知して理解する必要がある事項は軽減するというのはそういう意味
- また当然のことではあるが、部品としてあらかじめ組み込まれているので受信機を購入後に改めてカードを挿入する必要はなくなる
- チップの場合、まずライセンス管理会社から鍵の配布を受けてチップを製造するメーカが存在するということが想定される
- 当然この鍵の配布を受ける社は複数のメーカということも考えられる
- 一般の受信機メーカは、こうしたチップの製造メーカからチップを購入して受信機に組み込んで出荷すると、そういう形態をここでは考えている
- ただし、これはコンテンツ保護という仕組みなので、チップ製造事業者が受信機メーカに対してチップを販売する場合はコンテンツ保護ルールを遵守すると契約する会社に対してのみ販売すると、契約する会社に対してのみ技術情報を提供するという条件をつけることになるだろう
- この場合の鍵の管理配布者は、右の管理者というところにあるとおり、当然ながら鍵を管理し配布する会社は必要となる
- ただこの場合、今の B-CAS 社が用いている技術とは鍵や暗号形式等々について異なる技術ということになるかと思う
- 異なる技術ということになると、鍵の管理や配布を行うものが必ずしも今の B-CAS 社である必要はなくなる
- そういう意味で未定と書いてある
- 従って並存ということになれば、今の B-CAS 社とは別にこういった鍵の配布や管理を行う組織ができて、そこがチップの製造メーカ等にそれぞれ配布を行っていくという形が想定される
- この方式の特徴は、受信機メーカがあらかじめ部品を、チップを受信機に組み込むという点にある
- したがって、放送事業者あるいは受信機メーカあるいは視聴者といった関係者の役割と責任が異なるという課題がある
- 例えば今まではカードの所有者は B-CAS 社だったので、カードに不具合があったということになると、カードの所有者である B-CAS 社が責任を持って取り替えるという仕組みになっている
- しかし、部品ということになると、今申し上げた役割と責任という改めて関係者が調べてコンセンサスを形成するという実際のスキーム作りを行う必要がある
- 当然ながらその技術を実際に実装するには一定の時間もかかるということになる
- したがってチップという方式をとる場合、そういった関係者の役割と責任について、コンセンサスを形成して新たなスキームを作るということ、それからあらたな技術の検証を行っていくという、そういったことについて一定の時間を要することになると思う
- それを課題のところに「関係者の間でそれぞれの役割や、役割に応じた責任、目的やスキームに応じた技術方式について改めて検証が必要」と書いている
- 最後にソフトウェアというところ
- 当然チップと同一点もあり、まずライセンス管理会社が視聴者にカードを貸与するという枠組みが変わる点はチップの場合と変わらない
- また、視聴者からみてチップの貸し借りという関係がなくなるので、カード挿入の必要がなくなるという点もチップの場合と同様
- 次にチップとの相違点は、この場合ライセンスの管理会社がコンテンツ保護ルールを守ると契約する受信機製造メーカに直接鍵を配布するという形になる
- つまりチップのメーカということを通さずに、直接受信機製造メーカに対して必要な情報を開示すると共に、鍵を配布するというやり方になる
- 受信機メーカからみると、カードやチップといった部品の供給を他者から受けることはなくなる
- コンテンツ保護に関わるルールを守るという契約をすると、誰でも、それを順守するという人であれば、受信機製造に必要な情報をライセンス管理者から教えてもらえるという形になる
- この点を備考の一番下に書いていて「コンテンツ保護に係るルール遵守を約する全ての受信機メーカに対して、受信機製造上必要な仕様が開示される」ということになり、技術的透明性という観点では向上するだろうということが考えられる
- 鍵の管理・配布に関しては、ソフトウェア形式もチップ形式と同様で、技術が B-CAS と異なるのであれば鍵の配布を行うものが B-CAS 社である必要はなくなるので、ここでは未定という風に記載している
- ライセンス管理会社、それから受信機メーカ、放送事業者、そういった関係者の役割と責任が変わるので、スキームの変更に必要な検討とコンセンサス形成には相当の時間がかかる
- それから、チップの場合と比較すると、ライセンス管理会社からの情報の公開先はチップ製造会社に限られるのに対して、ソフトウェアの場合はコンテンツ保護ルールを守ると契約したものであればだれにでも仕様を公開するということになるので、鍵情報を得るものの範囲が非常に広がることになる
- コンテンツ保護というセキュリティがからんだスキームに対して、セキュリティ上どうなのかという問題も議論する必要が出てくると言える
- 以上が、カード・チップ・ソフトウェアという 3 つの大まかな説明になる
- それぞれ視聴者の目から見てどのように変わるかというところを概要として出発点にし、これまで頂いた指摘の関連で、備考として事実関係を指摘させて頂いた
- 先ほどからの繰り返しになるが、実現するとすれば、いずれにしても関係者の理解とコンセンサスが必ず必要になる部分は出てくる
- 現状はあくまでも、とりあえず今の段階で整理させてもらった状況ということになる
以上で小笠原課長からの配布資料を用いた詳細な説明は終了しました。この後で村井主査から次の内容の補足が行われました。
- 今説明のあったようなカテゴライズと議論の深堀は、技術ワーキンググループでの膨大な資料と検討の成果を、この委員会で説明をできるようにまとめて頂いた資料に基づいた説明になる
- そういう意味では、可能な限りの整理ということで色々十分でないところもあるかもしれないという検討になっている
- 選択肢は複数あり、それぞれ一長一短あり、さらに各選択肢でも、役割と責任の分担ではさらに多くのバリエーションがありうる
- 従って、どれがいいとか、どれの方が優れているとかを決められる段階にはない
- しかしながら、本委員会の議論に基づき、可能な選択肢ということで検討を行い、そうした順番で検討をするという指示を頂いているので、検討グループではそのように作業をお願いしている
- 今日は、今の説明に関して、本委員会からの率直な意見や感想、コメント、アドバイスを頂いて、それを技術ワーキングに持ち帰り、さらなる検討の結果を報告するというプロセスを踏ませて頂きたい
- という訳で、技術検討ワーキンググループには放送事業者と受信機メーカのそれぞれの立場の方に参加をお願いしているので、今の説明に対してのフォローをそれぞれの立場からしていただいて、その後に皆の意見を伺いたい
以上の補足の後で、放送事業者の立場ということで関委員が指名され、次の内容の発言を行いました。
- 今事務局から行われた説明は非常に詳細で、かつ WG の色々な議論も反映しているので、フォローという話でもないのだが
- 若干、WG で検討してきたこと、それから今日まとめられた部分に対する意見として述べさせてもらいたい
- 今日、参考資料にもついているが、特に地上デジタル放送の推進という観点では、もっとも理解と協力を求めていくべきは、国民・視聴者であると答申でも書かれている
- その中で、エンフォースメントの在り方に関しては、答申にも書かれているように民々の話ということになっている
- ただ、今話したように、理解と協力を得るべき視聴者の方から、このエンフォースメントの手法の改善を求める指摘が出ていることは事実
- そういう意味で、放送事業者としてはこの指摘を真摯に受け止めることが重要と考えている
- 本日取りまとめられたこのあり方に関して、答申にあるように、技術・契約によるエンフォースメント手法の改善ということで、一応 3 つというか、4 つ述べられている
- 今後、この委員会の議論を踏まえたうえではあるが、放送事業者としてコストや利便性で受け入れ可能なものであれば、幅広く検討していきたいと考えている
- すこし付け加えになるが、今回の資料は、技術・契約によるエンフォースメント方式の改善から手をつけて、議論を尽くせという部分があったので、その観点から取りまとめを WG で行ってきたと考えている
- さらに今後の検討ということでは、委員会の場では考えられる選択肢を幅広く提示するという観点から、さらに制度によるエンフォースメントの議論を進めて、この委員会に報告していくことが必要なのではないかと考えている
以上で関委員からの発言は終了しました。次に村井主査から指名されたのは、同じく放送事業者の立場である藤沢オブザーバで、その発言内容は次のようなものでした。
- 私の方からも、先ほどから村井主査や関さんが話されたことと同じようなことになってしまう
- 私としても、これからの放送のデジタル化を進めていくためにもっとも御理解を頂かなければいけない視聴者の方々と、今の B-CAS 方式に問題があるのであれば、それを真摯に受け止めて解決に向けて検討していかなければいけないというつもりで WG に参画させて頂いている
- このエンフォースメントやその運用をどういう風にしていくか、実現をどういう風にやっていくかということは民々で決めていかなければいけない部分があるということだが
- その中でどのような選択をしていくかという選択肢の対象の考え方について、やはりここは、コスト対効果、視聴者にとっての利便性、それから実現性がどのように担保されるのかという総合的な判断の下で良いものを取り入れていくべきだろうと考えている
- そういう意味で言うと、この資料にあるように B-CAS 方式に必ずしも限ることはなく、広い選択肢の中で検討していく必要があるのだろうと私も考える
以上で藤沢オブザーバからの発言は終了しました。次に村井主査から指名されたのは受信機メーカの立場の田胡委員で、その発言内容は次のようなものでした。
- 事務局、関委員、藤沢さんがおっしゃった事に尽きる
- メーカから地上デジタル放送の普及の観点からみると、商品の多様性が市場でも待たれているので、商品企画上の自由度や選択肢が広がるのは非常に良いことと思う
- B-CAS に拘ることなく、真摯に検討していきたいと思っている
- ここではまだ課題の途中だが、クリック契約という言葉で見られるような使い勝手の話、あるいはコスト、原則コストは受益者負担になると思っているがそういうコストの話、これらを深堀しなければいけない
- 最後は民々で決めるのだろうと思っているが、その辺を深堀しておかなければいけないのではないか
- またメーカとしての観点で言うと品質保証の問題は非常に重要な観点で、チップやソフトは相当メーカ側に話が寄っているので、そうした品質保証の観点の議論もこれから必要になるのではないかと思う
- いずれにしても、選択肢が増えて多様な商品ができるということは地上デジタルの普及促進になるということで、前向きに検討していきたいと思っている
- ひとつ大前提として確認したいことがある
- B-CAS は有料放送と併用して使っているのが最大の特徴なのだが、今回検討されているのは有料放送をスコープに入れていないということを理解しておいて欲しい
- 前提として、説明のなかに入っていたかどうか聞き漏らしてしまったので、一応、有料放送は対象外という前提で WG では議論が進められていると、フォローというか改めて申し上げておく
以上で田胡委員からの発言は終了しました。最後の「有料放送は対象外」つまり、BS/CS 向けに B-CAS カードは存続し、三波チューナでは B-CAS 搭載のものだけが販売され続けるという確認に対して、村井主査から次のような内容の回答が行われました。
- 地上デジタル放送、無料地上デジタル放送の為の仕組みの選択肢ということで、皆が説明をしていた
- そういう前提で議論が進んでいくことは、第五次中間答申でもそういったことになっていると思う
- 一応確認しておく
以上が村井主査からの確認に対する回答もしくは補足でした。ここまでで技術検討ワーキンググループの参加者からの補足は終了して、通常の質疑・討論に移りました。まずは村井主査から指名の順での発言ということで、最初に指名されたのは河村委員でした。発言は以下のような内容のものでした。
- 資料を見させて頂くと、前提が利用者にとっての選択肢の拡大とある
- 先ほど主査はどれが良いのか、悪いのかという段階ではないと発言されたが、この表を利用者にとっての選択肢の拡大という観点で見ると、どう見ても、一番下のソフトウェア方式が利用者にとっての選択肢の拡大という点で良いだろうというのが私の意見となる
- その途中の段階にする理由が私には見つけられない
- 商品企画の自由度という面から見ても、透明性という点から見ても、おそらくは参入できるメーカがもっとも多くなるだろうという点から見ても、この中で選択するとしたらソフトウェア方式であると、消費者としてそういう意見を持っている
- ただし、もう少し付け加えさせて頂ければ、今回のこういった検討が長い間続けられている訳だが、B-CAS の仕組みやルールといった様々なことを知るにつけ、有料放送の仕組みをそのまま公共性の高い地上波放送にあてはめたということに大きな誤りがあったと思う
- 昨今、貧困の問題や雇用の悪化、非正規雇用の問題、皆非常に困っている時に、権利者さんの著作権という権利を守るために、スクランブルと著作権保護技術、今ではダビング10の信号が送られている
- 一方、視聴者には全く録画を行わない人も沢山いる
- そういった方たちはもしかしたら経済的に豊かではないかもしれない
- しかしテレビだけは買う
- ほぼ 100% の世帯が持っているので、2011 年までには買い替えなければいけないから
- そうした方たちがテレビを買う時に、なぜ、スクランブルされたものを受けて、それを解除する仕組みというコストを負担しなければいけないのだろうか
- その方々の立場になってみると、たとえソフトウェアになったとしても、それを買わなければいけない理由がまったく判らない
- これは消費者保護の面ですごく問題だと考えている
- テレビから出ていく時に、もしかしたら録画機器につながるかもしれないので、コンテンツ保護技術のルールが受け渡されていくのは当然かもしれない
- しかし、エンフォースする為のスクランブルを受けて解除する仕組みのコストを、そうした全く録画をしないか、あるいは録画をするとしてもまれにしかしない人にも負担させるというのは、そうした人たちをないがしろにしたやり方だという思いを非常に強く感じている
- やはり、スクランブルを行わない方法を、是非、検討の選択肢に残しておいて欲しい
- 制度というのは、色々な立場の方、消費者・メーカ、色々な立場の方にアレルギーがあるのは判っている
- しかし、この気持ちの悪いスクランブルという方法と、それを解除する仕組みを全員に買わせるということは、非常に、何か悪質な感じがする
- こういう仕組みでは無い、よりシンプルな形のものを検討して欲しい
- シンプルであることに反対する人は誰もいないのではないかと思う
- 消費者もメーカも放送局も、皆、これにコストをかけている
- 権利者の方達の意向がクリアできるのであれば、何かシンプルにする方法が考えられるのではないか
- 言いっぱなしで申し訳ないし、そういうことは現実には大変なのかもしれない
- しかし、省庁の縦割りを超えて、この問題について、グランドデザインをして、地上波のテレビ放送というのはこうあるべきということを考えて欲しい
- 折角 2011 年に向けて、大きな節目があるのだから、そこに向かって小手先のことではない、大きな、グランドデザインをしたら良いのではないかとひしひしと感じている
以上で河村委員の発言は終了しました。次に村井主査から指名されたのは長田委員で、その発言内容は次のような形のものでした。
- 4 つの選択肢を見させて頂いたが、商品企画の自由度という項目、これが全ての選択肢に書いてあるが、かなりその程度は違うのだろうなと思った
- 河村委員の発言と重なるが、これから来年以降がきびしい
- 多分来年は国民にとってすごく厳しい時代を迎える社会となるだろう
- それでも 2011 年までに完全デジタル移行を完了させなければいけないという非常に大きなミッションを持っている
- それを考えれば、極力その商品企画の自由度を向上して、色々な受信機の選択肢が提供されるようにしなければいけない
- 多分、2011 年までに皆が色々な対策をするのは非常に厳しくなるのではないか
- 前回の委員会から、今回の委員会の間にもその厳しさは増したのだろうと思っている
- 一方、今回示されたものは色々整理をして頂いたものだと考えているが、この中でどれがいいかとかは、コストがどの程度かかるのか、商品企画の自由度がどのくらい差があるのかよく判らない
- エンフォースするためのコストの掛け方がそれに見合ったものなのかも、この表ではちょっと良く判らない
- そこを良く示して頂きながら、スクランブルをかけない形でのエンフォースメントが無いかということをきちんと選択肢として頂いたところで、国民にとって、利用者にとって何が一番暖かい方策なのかということをその時点で選ばせて頂くしかないと思っている
以上で長田委員の発言は終了しました。この段階で、村井主査から次の内容の補足説明が行われました。
- これも前提としての説明が不十分だったところかもしれない
- 今の段階では、コストがどのように、どこにかかるのかということを計算するのは大変難しい状態にある
- ワーキンググループの中では、コストという議論も色々な形で出てきている
- しかし、どこにどの程度コストがかかるかということは多様性が非常に大きくて単純比較ができないので、今回は取りまとめの中に入れていない
以上の補足の後で指名されたのは高橋委員で、その発言内容は次のような形のものでした。
- 慎重な検討の結果の報告ありがとう
- 技術ワーキングの関係者の方々にお礼を申し上げたい
- 先ほど河村委員が発言されたように、説明を伺った限りでは幅広く検討した結果もう結論が出たのかなという感想を持っている
- デジタルの時代に、手間暇・コストのかかるカードというものはアナログ時代の遺物というイメージで消費者に受け取られていると思う
- B-CAS 以外のオプションを探してくださいと申し上げていた訳だが、やはり中に組み込む、チップ・ソフトの方式はそれなりに魅力があると考えている
- ただしチップの方式では、手間はかからないようだが、消費者がリスクを負担して、貸し借り・紛失の問題があるようなので、これを見る限りではソフトウェアの方式が良いのだろうと思う (注: チップ方式と事前実装と勘違いしているのかも)
- コストに関しては判らないというお答えだったが、長い目で見れば多分確実にエンドユーザの負担は安いだろうと思う
- 使い勝手+コスト負担は結局のところエンドユーザの所に来る
- このコストを下げる為には事業者の中での競争性が不可欠で、そこから言うと、鍵の管理者は一社独占ではなく複数のところでやって頂くことが、機能・性能の改善とコストダウンにつながって行くのではないか
- なので、ソフトウェアという、この一番下の方式でぜひとも検討して頂きたいと思っている
- 先ほど技術ワーキングの関係の方々から、実現の為に関係者の理解・コンセンサス、民々でというお話があった
- この民々という話を聞くと、どうしてもコピーワンスを思い出してしまうので、民々の中には、本当の民である消費者の考えというものをしっかりと入れていただきたい
- 幸い、久しぶりにこの地下二階の講堂にきて、ダビング 10 が実現した時のことを思い出した
- 多分それ以来の開催だと思うが、非常に困難な課題だったけれども関係者の理解と協力の下、満足な結論ではなかったものの、コピーワンスから一歩進んだダビング 10 にいけたという共通した経験を持っている我々は、技術・契約のエンフォースメントに関してはもっと大きく、一歩をここで進めて欲しいと思っている
- 2010 年には、カードレスの受信機が売られるように、その期間、コストだけでなく開発普及ということから、そこの計算も綿密にやって頂きたい
- 余分なことではあるが、迅速にやって頂くということと共に、答申にも書かれているように、透明性を高く、皆が納得できる形で、フェアということを重視して頂きたいと思う
- 消費者保護ということでお二人の委員から発言があったが、私は消費者保護の立場から公正取引委員会の、独占禁止懇話会に入っている
- やはり、この問題には重大な関心を持っているので、そういう視点からも今後議論をしていきたい
以上で高橋委員からの発言は終了しました。この後でも、村井主査から次の内容のコメントが行われました。
- どの方式が良いという話を頂いてしまったが、やはり、色々な検討項目がありまだその段階にはない
- 検討委員会としては、今お二方からご指摘頂いたような意味での思惑があるわけではないと思う
- コストの面としては、ソフトウェアではいずれ安く、チップではいつまでの消費者の負担が高いと、そうしたことは必ずしも言えない部分がある
- 放送事業者のシステムが大変であるとかもコストとしてはかかってくる
- コストは先ほど説明したように、色々なところで色々なふうにアレする
- いずれにせよ、今承ったことは色々な意味で大変重要だと思うので検討する
- しかしどれが良いということはまだ言えないと、一応説明しておく
以上のコメントの後で指名されたのは椎名委員で、その発言内容は次のような形のものでした。
- 技術と契約によるエンフォースメントの在り方ということで整理していただいたようだが、権利者として現時点では、技術と契約でなければいけないとか、制度でなければいけないとか、申し上げる立場にはない
- しかしながら、ここで忘れるべきでないのは、現在の B-CAS 方式の問題点は鍵を配布してしまっていることにあると思う
- コンテンツを保護されるかという観点からみると、カードという形を踏襲する限り、小型化しようが事前実装しようが、それを悪用しようと思えば悪用できる
- 見直しの効果が期待できないのではないか
- 今後どのような方式が導入されたとしても、既に配布されている数千万枚のカードと混在使用される以上、コンテンツを保護するという抑止力という面から見れば、本質的な解決にはならない
- 唯一効果的なのは制度によるエンフォースメントであって、その選択肢、あるいは選択肢の併用ということを引き続き検討して頂きたい
- また最近、B-CAS に関する週刊誌の報道が盛んで、独禁法違反であるとか、本来不要なカードであるとか、一社独占が問題であるとか、色々な記事が踊っているのを拝見する
- そこに書かれていることの真偽は判らないが、コンテンツ保護の為に B-CAS が採用されたという文脈の中で、あたかも権利者が B-CAS に関与していたかのように思われるとすれば、これは非常に困ることになる
- 再三申し上げているように、権利者は B-CAS の導入に一切関与していないとあらためて申し上げる
- ここまで一定の批判にさらされている以上、小型化や事前実装などという辺りでお茶を濁して、カードの枠組みを変えないという選択肢は如何なものかと考える
- また、河村委員の発言で、権利者がスクランブルに固執していると取れるものがあった
- スクランブルを外したり、ソフトウェアによる方式に転換することに対して、セキュリティレベルが下がるので権利者が納得する訳がないと、これが実際に技術検討ワーキンググループの中でもまだ言われているらしい
- これも以前からの表明の繰り返しになるが、権利者としては、スクランブルが無いからとか、ソフトウェアであるからといって、一律単純に否定するつもりはない
- むしろ権利者としては総合的に、ユーザの利便性を判断していこうという立場にあり、これまでもそれを貫いてきた
- 権利者・権利者として慮っていただくのは大変有難いが、それでかえって選択肢を狭めることがないようにお願いしたい
以上で椎名委員からの発言は終了しました。次に村井主査から指名されたのは堀委員で、その発言内容は次のような形のものでした。
- 今の椎名さんの話の重複もあるが、権利者が著作権を守るためだけにスクランブルと B-CAS を導入したと思われるのは如何なものかと思う
- この B-CAS の導入に権利者は一切関与していないので、改めて申し上げておく
- 色々と技術的なことを説明されても、技術音痴な立場としては全く何が良いのか判らずに聞いている
- 2011 年まで、一体コピーしたくなるような放送番組が残っているのかと考えるほど、今は厳しい状況にある
- ダビング 10 が決まった悪しきこの講堂で、私たちはこの先の、競争力の高いコンテンツを作るということを目的に始めたはずのこの会議で、3 年も 4 年もかけてまだカードや Blu-Ray の話、私的録画録音補償金の話というアナログ的なことをやっている
- 何も解決できず店晒しになっているというそのことにものすごく落胆をしている
- ここで皆さんは、どれほど楽しみにドラマの録画をされるのだろうか
- あるいはスクランブルが無ければ、ものすごく沢山見て頂けるのだろうか
- 総花的でありながら非常にミクロな話をしている
- じゃあコピーしたい人から直接課金できるような技術を皆で考えようとか、もっと二十年・三十年先のことまで想像できるような技術の話ができないのだろうか
- 権利者とかコンテンツにリスペクトをするためには、皆はどう考えるのかという建設的な意見が何も出ずに、目の前にあることをなんとなく解決していく
- 大抵は誰かが妥協をして、なんとなく有耶無耶に決まっていって、その間に体力だけがどんどん落ちていくことに問題があると思う
- コンテンツを作ったりする会社にいる人間としては、B-CAS が残っていたら何がいけないのか、仮に B-CAS が廃止されたらどんな未来があるのかということを是非教えて欲しい
- 来年の 3 月の決算を越して、どうやってコンテンツ作成の会社を維持していこうかということで汲々としている
- チャネルができればできるほど番組が減っていくという悪循環が甚だ不安
- おそらく消費者の皆が選択できる番組は徐々に減っていくと思う
- 長い未来を考えたビジョンを、是非、技術ワーキングの方々にもアイデアを出して頂きたい
- 取引市場のワーキンググループでも我々も考えていきたい
- そこにユーザの方々にも協力して頂きたい
- そういう会であってほしいと願う
以上で堀委員からの発言は終了しました。次に村井主査から指名されたのは浅野委員で、その発言内容は次のような形のものでした。
- 技術・契約によるエンフォースメントという検討課題の中で、3 つのカテゴリに分けて、長所・短所と解決しなければいけない課題をまとめて頂いたのは、ある意味前進だと考えている
- ただし、このカテゴリの中を見ると、長所には商品企画の自由度向上というものが全てにあり、短所の方は下に進むにつれ少しずつ軽減されていくという風に見える
- こうして見ると、消費者団体の皆さんが言うように、これはソフトウェアしかないと誘導されているようなイメージで、そうした意見が出てくることも止むを得ないと思う
- 逆に私がこの説明を見たとき、課題の方を見ると短所は少ないかもしれないが、検討しなければいけないことは増えてるイメージがある
- 主査から、まだカテゴリとしてどういうものがあるかということを出した段階という話があったが
- やはりこの部分はもうすこし検討していく必要があるのではないか
- そこの深堀を是非お願いしたい
- 課題として検討しなければいけないことが、ここには書かれていないので、これがどれほどの難しさなのか理解しようとしても、これでは判らないという話になる
- これをもう少し深堀してもらいたい、是非お願いする
- それからもう一つ
- 確かに、有料放送の仕組みをここに持ち込んでしまったという諸悪の根源のような問題はある
- これを如何に今から訂正していくかということを技術・契約のエンフォースメントの観点から考えるよりは、今後ワーキンググループで検討されるという制度エンフォースメントで真摯に検討して頂ければ良いのではないかと思う
以上で浅野委員からの発言は終了しました。ここで村井主査から次の内容の、コメントというか……言い訳というか……が行われました。
- 指摘して頂いたように、これは技術・契約による検討で制度による検討はまだ行っていない
- しかし堀さんがおっしゃったような、タイミング感が色々あるので、その辺を主査として……
- この表で抽象化して説明する為に大分議論があったのだが……本当は元の紙は畳ぐらいの紙に一杯書いてあるところから、そこのところの取りまとめのやり方にも色々と苦労がある
- つまり、そこに上手くいっていないところもあるかもしれない
以上のコメントの次に指名されたのは中村委員で、その発言内容は次のような形のものでした。
- これまで熱い検討が戦わされてきたものと思う
- 関係者の皆様に敬意を表する
- チップが良い、ソフトが良いという発言があった
- また、ノンスクランブルが良いとか、制度でなければという指摘もあった
- いずれも重要な選択肢だと思うが、同時にいずれもそれなりに決着に時間がかかるだろうし社会的なコストもかかるだろうと思う
- 実装しても 2011 年以降になるものもあるだろうと思う
- 一方、私は取引市場ワーキングを担当しているが、そちらの議論でも、未来を見据えて抜本的に新しい考え方で新しい市場を作ろうという願いと同時に、民間で解決をして実績を上げるため、時間を掛けずに今できることにはどんどんトライをしていこうというスタンスで進めている
- 同じ審議会なのでその対比で言うと、制度を作っていこうという重いシステムだけでなく、それを待たずともひとまず今、民間で簡単に改善できるものは選択肢として持っていても良いのではと考えている
- そういう意味で言うと、事前実装方式は非常に評判が悪いものの、それが何らかの利用者の利便性向上に繋がり、さほどコスト増加にならないのであれば、現時点では旗を降ろさずにいてもよいのではないか
以上で中村委員からの発言は終了しました。ここで村井主査からの指名は終わり、ここからは希望者順に自由に発言が行われていきました。最初に発言を希望したのは大山主査代理で、その内容は次のようなものでした。
- 全体の話は色々整理頂いていて良いのではないかと思うが、今一つ本質に戻ったところを考える必要があるのではないかと思う
- 既に御存知だとは思うが、電子署名に使われている RSA の 1024 ビットという一般に使われているアルゴリズムが、鍵長の関係で安全性が低下していて、政府では 2014 年ぐらいに止めるという話が出始めてきている
- それと、この表の一番右にある鍵の管理者という部分、ここを見ると、全てで必要と書かれていて、鍵は必要ということになっている
- 鍵が必要ということは、当然何らかの手法があり、それに対しての鍵なのだろうと、暗号アルゴリズムも含めた将来像を考えた場合、どのように考えているのだろうか
- 10 年もてば良いと考えているのか、20 年もてばよいのか、それとも 30 年もたせたいのか
- 普通セキュリティの話は費用と効果のバランスを取るもの
- 鍵が必要と書かれている以上、ここが一番お金がかかるはずで、他ではほとんどないだろうと思う
- これは地上デジタルの無料放送について、制度的な話を講じる必要があるかどうかという議論とも重なる部分
- もし 10 年 20 年 30 年と、長期にわたって安全性を確保する必要があって守るのならば、今までの経験から考えて鍵の更新やアルゴリズムの更新という方が遥かに大変だろう
- カードにしているのは、差し替えができるカードの場合その鍵やアルゴリズムの更新が楽になる
- カードだけ変えればいいという仕掛けになっているものがあった
- ここで判らないのは、チップやソフトウェアといった形でも、鍵を勝手に読み出せるとか、勝手に書き換えがでいるとかの仕掛けだったりするとそれは全然安全性がない
- そこは鍵の管理をする意味がないという話になる
- ここで言われているチップやソフトウェアというのは、書き換えが簡単にできないものを技術的に導入しない限り、鍵が必要だという話自体が矛盾してしまう
- そこを技術ワーキングで十分に詰めて頂きたいと思う
- ソフトウェアが安全だと思っているのは、これは組み込みソフトだからと思っているのだと考えるが、組み込みソフトであってもリバースエンジニアリングや他の方法が沢山ある
- 多分そうした議論はまだされていないのではないか
- あまりここで議論をするつもりはないが、新しい方法で形を変えても、実効性があるのかということを考えずに議論をしても、10 年もしないうちにまた同じことをやることになるような気がする
- そもそも論に戻り、コンテンツに対して製作者の権利をリスペクトするという基本論に戻れば、それはその方の許可を貰って、有償・無償関係なく、本来許可を貰ってその情報に対してアクセスできるというものを作るべきと思う
- これは契約でやる以上、将来にわたっても変わらない話だと思う
- その観点で言うと、これは難しい、先の話になってしまうが、利用者が誰かということと、それからその機器が安全かということの二つを確認しないとできない
- 機器がいい加減であれば、利用者が正しくてもその情報を横から抜いてしまうということになる
- ここで言っている B-CAS カードの本来は、機器の安全性を言っていたはずで、利用者の特定をしていた訳ではないと思う
- ここのところは仕掛けの上で、論理的に不十分なところがあるのじゃないかなと思っている
- 人の確認と、機器の安全性の確認ができて、なおかつその人が許可をもっているかどうか見られるようにすれば、それは多分将来にわたって、確実にコントロールできる
- その技術というのは総務省さんが言われるユビキタスの時代であればそう遠くないはずと思う
- それはある意味究極の方で、全ての正当な関係を確認する方の話で、地上デジタルの無料放送でそこまでやるのかというのは議論がある
- しかし、繰り返しになるが、鍵の管理がある以上、ここのところをちゃんと生かす方法を考えない限り、そもそも鍵の管理者を置くべきではない
- 置いても意味がないということは今までの歴史が証明していると思うので、そこのところを申し上げておく
以上で大山主査代理からの発言は終了しました。次に発言を希望したのは河村委員で、その内容は次のような形のものでした。
- 先ほど椎名委員が、権利者がスクランブルをかけたり暗号化に拘っているという意見を私が申し上げたかのようにおっしゃった
- しかし、私はそのように申し上げたつもりは全く無い
- 多分私の言い方がすごく下手なのだろう
- いつも思うのだが、話した後で、全然意図とは違うことがどこかに載っていたりもする
- これは多分、本当に言いたいことをはっきり言わずに意見を言っているからという面もあるかと思うので、余計なことを言ったと後悔するかもしれないが、誤解を受けているのならば今日はちょっと言っておこうかと思う
- 私が言ったのは、全てのこれらの仕組み、スクランブルやコピー制御といった仕組みは権利者を守るために行われている
- これだけの大変な仕組みを使って、全く録画をしない人にもその仕組みのコストを負担させられ、安い、アナログの時のような機械が無いのでデジタル移行を控えているという面から見て、消費者の権利が侵害されていると思っている
- 一方この仕組みがあることで、権利者の方々はどれほどの損害が回避できているのだろうかということを私は申し上げたかった
- 著作権法違反で逮捕されている人たちの行為ということではなく、私たち全ての人がやっていたことを、これだけの仕組みを使って、さらにこれだけの検討を使っている
- どれだけ、損失の回避になっているのだろうかということを投げかけて、権利者の方の為にやっているのだから、何か納得できるような、もっとシンプルな方法やもっと別のルールでやれば、もっとシンプルな機器で本当になんでもないテレビを買うことができるのではないか
- その損失の回避で申し上げたということを付け加えさせて頂く
以上で河村委員からの発言は終了しました。次に発言を希望したのは椎名委員で、その内容は次のような形のものでした。
- それでも、よく判らなかった
- 多分もっとおっしゃりたいことがあるのだが、それをストレートに言っていないのではないかという気がする
- 折角権利者の損失の回避ということをおっしゃって頂けたので、ちょっとリマインドとしてお話しする
- ダビング 10、コピーワンスとダビング 10 という議論の中で、対価の還元という話が出てきたが、この対価の還元が宿題になったまま解決策が見つかっていないという状況がある
- そこが問題なのだということを、権利者以外の委員から指摘頂いたということで、少しうれしかったので、そのことを申し上げておく
以上で椎名委員の発言は終了しました。次に発言を希望したのは大山主査代理で、発言内容は B-CAS の仕様についての確認の質問でした。ここのやり取りは大山主査代理からの質問と、関委員からの回答、村井主査からのコメントという形で進み、その内容は次のようなものでした。
- (大山主査代理) 今の B-CAS の仕組みというのは仕様について全て公開されているのか?
- (大山主査代理) よく判っていないので、公開されているのであれば、それを読んで勉強したい
- (関委員) B-CAS の方式を全体で言うと、鍵の暗号方式、鍵をどういう風に暗号化しているという方式だけが非公開で、それ以外は全て ARIB のスタンダードと TR に書いてある
- (大山主査代理) 鍵を教えないということか?
- (村井主査) 普通は鍵だけは当然教えないのですが
- (関委員) 鍵と暗号方式
- (村井主査) 鍵と暗号方式があるのですか
- (関委員) 鍵そのものと、その鍵の暗号方式ですね
- (村井主査) 暗号方式も公開されていないのですね
- (関委員) ワーク鍵のです、スクランブル鍵のではないです
- (村井主査) 普通は鍵がなければできないという形ですが、なぜこういう……
- (関委員) カードなので、SIM カード、要するに流用ですね
- (村井主査) 技術的なアクセスのことは、その、ちょっと後で
以上で大山主査代理からの質問とそのやり取りは終了しました。次に発言を希望したのは高橋委員で、その発言内容は次のようなものでした。
- 先ほどの小笠原さんからの説明の中に、利用者にとっての選択肢の拡大は重要だけれども、既に三千枚・四千枚と配布されている B-CAS の購入者の保護の観点が必要だとおっしゃったように思う
- その、既に配られている消費者に対する保護というのは何を意味しているのか教えて頂きたい
以上の質問に対して、小笠原課長から、次の内容の回答が行われました。
- 想定の前提ということで聞いて頂きたい
- 先ほど、チップとソフトというところで、現在の B-CAS とは異なる技術方式を使うことがありうるということを申し上げた
- かつ、それは鍵や暗号化といった技術で別になる場合がありうると申し上げた
- そうすると、ありうる可能性としては仮に B-CAS を廃止して、別方式とした場合、暗号と鍵が変わることになる
- あくまでもやり方によるが、技術の方式が全く違ってしまうと、既存の今まで販売されていた B-CAS の受信機では、新たな放送が全く受信できないということが、極端な場合ではあるがありうる
- 従ってあくまでも、B-CAS という方式は今までどおり売られていて、それに加えて、選択肢として異なる技術を用いたものが導入されるというそういう想定で話をした
- 従って、消費者保護とはどういう観点かという質問への回答は、既存の、既に数千万台販売されている受信機を購入された視聴者も、引き続き放送を受信できるという観点で、消費者保護と申し上げたということになる
以上で小笠原課長からの回答は終了しました。ここで、新たに発言を希望する人はいなくなり、村井主査からのまとめと、次回に向けての方針説明が行われました。その発言内容は次のようなものでした。
- 先ほど説明したように、技術検討ワーキンググループでは、非常に大規模な表を整理をして頂いたり、この右側に鍵の管理者という欄を作って頂いたり、どうすればこの委員会の場で議論がしやすいかという観点で報告用にとりまとめをして頂いた
- その結果、技術的なことが省略されて簡略化されたり、抽象化されてしまって判り難くなっている部分もあるかと思う
- そういうことも含めて、色々な意見をこの後も事務局に寄せていただければと思う
- 引き続きよろしくお願いする
- それからもう一点
- 今日頂いた話は大変重要なことを含んでいて、例えばタイミングの問題、2011 年の為に議論しているのだからどうすべきかという話があった
- それから、コンテンツのリスペクト、今後のマーケットの拡大の為にどうすべきかという堀さんからの話
- それから、大山先生がおっしゃった、実効性や利用者の特定性とか機器の安全性の話
- だけれども、今までの経緯があり、それに対して技術・契約のエンフォースメントの在り方がどうかということで今、検討をしているというのが今回の報告になる
- 従って、検討の順番としては、こういう順番でやらして頂いているという説明をした通りに進めている
- ただし、2011 年に向かってのタイミングとして、本当にそれで大丈夫なのかという意見も今日は頂いた
- また、実効性や大山先生から指摘いただいたような、本当にロングレンジでのソリューションの話
- 2011 年に向けて出てくるであろう地上専用受信機の話
- そういうことに対して、どういう風にするかという、タイミングにあわせたソリューションを、全部同時に考えるのは難しいが、是非持ち帰らせて、技術検討ワーキンググループで話をさせて欲しい
- そういう意味では、技術検討ワーキングに参加している委員の方々には、引き続き、厳しいスケジュールで沢山の負担の課題があると思う
- しかし、技術検討ワーキンググループの主査の立場として、ワーキンググループでは、こうした技術の話をして、それから色々な契約を話す中で、常に親委員会ではこうした要望があった、こういう意見があった、こういう懸念があったと、頻度高く振り返りながら議論の調整をしていきたいと思う
- それを含めて、技術検討ワーキングに参加している方に、引き続き、これらを含めた検討をして頂きたいと、改めてお願い申し上げたい
- 今日の貴重な意見本当に、技術検討ワーキンググループの主査として感謝を申し上げたい
- 本当にありがとう
以上で、村井主査からのまとめは終了しました。この後、事務局の小笠原課長から来年のスケジュールについて、16 日、29 日の週で調整中との報告があり、最後に村井主査からの挨拶があり、今回の会合は終了しました。
◆◇◆
どうも、技術検討ワーキンググループのメンバーとしては、制度エンフォースメントに心が傾いているけれども、村井主査としては制度エンフォースメントに消極的ということなのかなというのが今回の会合を聞いていての感想でした。
一視聴者である私個人としては、制度エンフォースメントには大反対です。というよりも消費者団体代表の方々が何故あれほどまでに B-CAS の存在を目の敵にしてるのか、まったく理解できません。
B-CAS が残ろうが、無くなろうが、コピー制御方式が残る限り、ユーザの利便性はアナログ放送と比較して低下したままだと私は考えています。既に地上デジタル受信機が 1 万 5 千円程度で売られている中、もしも B-CAS が無くなることで、仮に受信機がタダになったとしても、利便性の低下の方が消費者にとっては 1 万 5 千円よりも大きいと考えているのですね。
であるならば、コピー制御方式を固定して、コピー制御方式に対応していない方法でテレビ放送を視聴することを不可能にする、制度エンフォースメントなど視聴者にとっては何の利益にもならないと考えているわけです。
◆◇◆
これは堀委員の発言に対するコメントになるのですけれど、私の場合だと、コピー制御が強制されたならば、テレビを見ること自体ができなくなります。
現在、私がテレビ番組を見るのは、次のような方法を経由してだけになっています。
- 前日中に放送された番組のうち、気になるものをノート PC にコピー
- 職場に持ち込んだノート PC で録画分を再生し、視聴しながら、ペチペチとコードを書いたりバッチ結果を眺めたりする
自宅には一応テレビもありますし、録画機器も色々ありますが、テレビの前にしがみついてまで見たい番組はないので、ここ 1 年ほどテレビの電源を入れたことがありません。
なので、コピー制御が無いからテレビ放送を見ているが、コピー制御があればテレビを見れないという立場に私は居ます。そもそも録画した番組を、ノート PC にコピーできるというデジタル放送対応録画機など見たことがないので。
ここの所は堀委員の発言とは違って、テレビ番組に価値があるからコピーしたいのではなく、テレビ番組に価値がないから、タイムシフト&プレイスシフトをして見れるなら見るけれど、それができないのなら見ないという立ち位置に私は居ます。
いや実際のところ録画せずにタイムシフト・プレイスシフトができるなら、録画なんてしなくてもいいのですけれどね。そういう意味では、価値があるからコピーしたいのではなく、価値がないからこそコピーが必要という立場です。
もちろん私のような視聴者は特殊例でしょうし、そんなものは切り捨ててしまえというのがテレビ局のスタンスだと理解はしてるのですけれどね。
◆◇◆
小笠原課長の説明に対するコメントとか、河村委員の発言に対するコメントとか、大山主査代理の発言に対するコメントとか、もうすこししておきたい内容はあるのですけれど、それは後日ということにしておきます。
12月29日(月) デジコン委 (第47回) 感想あれこれ [この記事]
傍聴レポートを上げた段階ではまた後日ということでコメントを省略していた部分についてです。一応発言順ということで、小笠原課長の詳細説明の部分のところからやっていきます。
説明を聞いていて一番驚いたのは、ソフトウェア方式のみではなくチップ方式でも現行 B-CAS 方式とは技術方式を変更することを考えているという部分でした。
技術方式を変更する場合、鍵データを既存 B-CAS 方式受信機向けのものと新方式受信機向けのもの、二つを同時に、同じ放送波の中で送る必要があります。もちろん以前「ソフト CAS の可能性」という記事 [URI] で書いたように、物理的な放送電波を分けて平行しておこなう方式であれば、鍵データを同じ放送波で送る必要はなくなるのですが、コストの問題でそれが採用されることはないだろうと考えています。
異なる方式の鍵データを同じ放送データの中で同時に送る場合、B-CAS 方式の既存受信機では新方式のデータを無視しなければいけませんし、新方式の受信機では B-CAS 向けのデータを無視しなければいけません。この時、新方式の受信機で B-CAS 向け鍵データを無視するのはそのように受信機を作るだけなので簡単なのですが、既存受信機で新方式向け鍵データを無視させるのはすこし難しい問題になります。
既存受信機は新方式の鍵データが送られるようになるということを想定せずに作られている可能性があるので、下手をすると、新方式での鍵データを B-CAS カードに渡して正常なスクランブル鍵を受け取れなくなったり、複数の鍵データがあることで非対応の放送データだと停止してしまう可能性があります。実際、私が作成した ARIB STD-B25 仕様確認テストプログラム ver. 0.2.2 では、複数の鍵データが送られてきた場合正しく認識できずに誤動作を発生させます。
私はこのような前提から、技術方式を変える必要があるソフトウェア方式は早々に検討対象から脱落して、チップ方式だけが残るだろうと予想していました。なので、チップ方式でも技術方式の変更を考えているという発言に驚いたわけです。
今回の説明を聞いて、驚くと同時に ARIB の STD と TR をひっくりかえして、複数の技術形式の鍵データを同時に平行して送出することを想定しているかどうか調べなおしてみました。
結果 B-CAS カードから取得できる CA_system_id と CA_descriptor 内の CA_system_id を比較して、一致する場合のみを有効なものとして扱い他のものは無視するようにと、TR-B14 第4編 書かれていたので、一応規格としては異なる技術方式の鍵データを平行して複数同時に送信することをサポートしていることを確認できました。このとおりに受信機が作られていれば、新方式の鍵データが送られてきても既存受信機でも問題はおきません。
問題はこのとおりに受信機が作られているかどうかということになります。ARIB のテストストリームに無効な CA_system_id を含んだ複数の CA_descriptor を持つサンプルデータがあれば、テスト段階でそれに対応できているかどうか検出できるので、そういったデータを使ってテストされている受信機であれば問題はおきないでしょう。
テストデータにそういったサンプルが含まれていない場合、テスト段階では未対応であったとして異常は検出できないので、受信機によって新方式の鍵データで誤作動する可能性があり得ます。このどちらなのかは、ARIB のテストデータを見たことがないので私には判断できませんが、技術検討ワーキンググループで問題視されていないということは、大丈夫なのかもしれないと考えてます。
◆◇◆
そういう訳で、ARIB STD-B25 仕様確認テストプログラムの方は、そのうち ver. 0.2.3 に (CA_system_id をチェックする形に修正して) 更新することにします。
◆◇◆
次に、小笠原課長の説明の中での B-CAS カードの所有権のところについてです。ここは常々疑問を感じていたところで、私は昨年 12 月にこの検討委員会の傍聴を開始するまで、B-CAS 社が、B-CAS カードの所有権が B-CAS 社にあると主張していることを知りませんでした。
それまでにも、またその後も、デジタル放送受信機を購入する際に、B-CAS カードの所有権が B-CAS 社に残り B-CAS カードは貸与という形で扱われるという説明を受けたことはありません。そんな説明を受けたことのある人はおそらくどこにも居ないはずです。
通常の販売契約が成立していて、事前説明が無い以上、購入前に B-CAS 社が貸与であると主張していると知る術はなく、商品のパッケージの内部に入っている以上商品の一部だと考えられるものの所有権が、出荷元に残るなどということが許されるのだろうかというのが常々疑問だったりするのです。
民法だと即時取得という規定が第192条にあるらしいのですが、私はあまり法律に詳しくないので、この B-CAS 社の主張がそれと矛盾しないのかどうか正しく判断することができません。どーにも怪しいような気がしていて、ユーザの手元の B-CAS カードの所有権が B-CAS 社にあるということに素直に納得することができないでいるのです。
消費者保護という観点からすれば、正規の販売契約が成立していても、パッケージの内側に隠されているペラ紙一枚で所有権が移転していないということを主張できて、勝手に書かれた条件での契約が成立し、その契約に違反したときには没収できるなどという詐欺もどきのビジネス手法の方がよっぽど問題に思えるのですが、何故かその辺を主張される方はいないのですよね。
もちろんデジタル放送受信機の販売の際に、契約書を渡して署名捺印させ、契約書を購入者と B-CAS 社の双方が保管するという形で契約した人にのみ B-CAS カードを貸与するという形にするのであれば私としても全く文句を言うことはできなくなります。
◆◇◆
で、河村委員の発言へのコメントに移ります。一番気になったのは「気持ちの悪いスクランブルという方式」という箇所でした。
冷徹なコスト評価と利便性評価の結果から、制度エンフォースメント導入を主張するのであればまだ理解できなくはないけれど「気持ち悪い」という個人的な感情を満足させるためにスクランブル廃止と制度導入を訴えられても同意できないなぁというのが感想です。
この「気持ち悪い」という個人的感情をスクランブル廃止の根拠として主張する脇の甘さと、スクランブル廃止の為に制度でのコピー制御強制を受け入れても良いと主張する部分さえ無ければ河村委員の意見に同意できるんですけれど、その辺が惜しいところなんですよね。
折角 7 月 8 月に主婦連でやったはずの地上デジタル移行に関するアンケートの結果も活用してないし。7 割が「アナログ放送と同じ機能で判りやすく」と言ってるのだから「コピー制御が存在することによる判りにくさをユーザは望んでいない」という主張もできるはずなのに、何故それをしないのかと。
この場で武器に使わないのなら、アンケートを取った意味がないじゃないかと傍から見ていて歯がゆくてなりません。
消費者はコピー先デバイスが制限されることとコピーの深さが制限されることに不満を感じているのに、コピーの数が問題だと勘違いしてダビング 10 を導入し、消費者の半数以上から利便性について「変化が無い」と思われている [URI カカクコムでの登録ユーザに対する調査] ように、この先も実際の消費者の感覚とはピントのずれた所を問題だと勘違いして、無駄な改善案の検討で時間を浪費していく姿しか思い浮かばないのが悲しいところですね。
◆◇◆
最後に大山主査代理の発言内容についてのコメントです。まず、安全性の確保期間について、実効性を 10 年以上の長期に渡って確保したいのであれば、鍵長やアルゴリズムの更新が可能なカード方式を保持した方がよいのではという意見についてです。
昨年末に書いた [A|B|C] ように、暗号理論的には大穴が開いていて、現時点でも本気で計算量を投入してしまえばどうにかなってしまう程度の保護しかない以上、カードをちびっと変更したぐらいでは実効性の議論をしたところで無駄でしょう。
現行 B-CAS 方式は暗号理論以前の問題でコピー制御を強制するための手段としては機能していないわけですが、それでも、本来の目的である限定受信方式としては十分な強度をもっていて、現時点でも有料放送は契約者以外には視聴できない状況がほぼ保たれています。
つぎに、利用者の特定とその利用者が視聴権限を持っているかどうかを特定する仕組みが本来必要なのではという意見についてです。
現在の B-CAS カードにはまさにその機能が存在します。というよりもそちらの機能こそが本来で、受信機の安全性確保の方がおまけのような機能だったといえるでしょう。
カード ID によって保有者を特定し、そのカード ID で有料放送を契約していれば、カードにスクランブル鍵を取り出すための情報が書き込まれ、スクランブル鍵を取り出して契約済み放送をデスクランブルできるようになるというその仕組みこそが本来の B-CAS カードの機能でした。
それだけとして考える場合、契約済みカードでありさえすればスクランブル鍵が自由に取り出せて、それ以外のスクランブル解除のためのアルゴリズムも全て公開されているというのは、受信機を作成するための参入障壁が非常に低いという意味で、むしろ消費者保護の観点では非常に喜ばしいことでもあったのです。
契約情報管理の為に一定の保護が必要な部分は B-CAS カードという IC カード内のロジックに閉じ込めて情報を開示しないことにより安全性を確保し、なおかつ、そのカードにアクセスする正規の手順と得た鍵を使ってスクランブルを解除する方法を公開しておくことで受信機作成への参入障壁を下げて価格競争を促進する。実際、専門家ではない私ですら復号処理を書けるほど、参入障壁は低いと言える訳です。
また、受信機を買い換えた場合でも、カードを移動するだけで契約情報を引き継げるという点と、受信機自体が元々有料放送に対応しているので、追加でセットトップボックスを買う必要なく、契約手続きをするだけで既存の受信機で有料放送に対応できるという点も、無駄にリモコンが増えて行かずにすむという点で、ユーザの大きな利便性となるはずでした。
B-CAS の不幸は、その有料放送の視聴契約管理の機能しか技術的には存在しない仕組みを、視聴者と放送局の間に契約が存在しない無料広告放送で、コピー制御の強制手段として使ったところにあります。
そういったところを理解しないままに、カード形式を擁護しようとしても、あまり実りのある発言にはならないのじゃないかなと感じました。
まあ、だからこそ、B-CAS の技術仕様は公開されているのだろうかという質問をして、公開されているならばそれを読んで勉強したいという発言が出たのだと思うのですが…… Friio 登場から一年間今まで何をしてたのだろうと別の意味で不安になったりもします。
◆◇◆
各発言者への感想のうち、残していた部分は以上のようになります。
それはそれとして、とうとう 12/27 から 1 年が経過したというのに、第30回の公式議事録は未だに公開されないのですねと。このまま来年のパブリックコメント募集の時期になっても公式議事録が未公開のまま進むのだろうかと不安になってきます。
12月30日(火) ARIB STD-B25 仕様確認テストプログラム ver. 0.2.3 [この記事]
予告していた更新になります。ダウンロードは [URI] からどうぞ。
今回の更新で CA_descriptor を解釈する際に、CA_system_id を確認して B-CAS カードから取得したものと一致した場合だけ有効な ECM/EMM として扱うように変更しました。
本当にチップ方式またはソフト方式を現行 B-CAS と異なる技術方式として採用するかどうかは不明ですが、一応それに備えておくために対応しておきました。
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