珍しく傍聴許可が下りたので、16:00に会社を出て霞が関に行ってきた。一応手元に録音データはあるのだけれども、既に総務省のサイトに速報版 (28kbps) が上がっている [URI] のでこのページには載せないでおく。
今回は放送業者・新聞社に対するヒアリングということで、「現状以上に規制は望ましくない」「既にBPOがある」「コンプライアンスに十分気を使ってる」「視聴者からの批判を真摯に受け止めてる」「クロスオーナシップ規制は廃止すべき」とまあそんな感じの非常に判りやすい主張が行われていた。
質疑応答に入れば入ったで「記者クラブ問題はアジェンダから外す方向で」「記者クラブ問題をアジェンダに入れろ」とのおなじみのやり取りが繰り返される繰り返される繰り返される。
つーかなー上杉構成員の態度は議論を進める意図が感じられないのであんまり評価しない。「聞きたくない主張だったから退席していて何を言っていたか知らん」というのは他人を説得しようという態度には到底思えん。
深尾構成員の以下の趣旨の発言と比べると程度の違いが際立つと私は感じた。
「フリーペーパーやコミュニティ局、ブログ・SNSとメディアが多様化している以上、クロスメディアオーナシップ規制を解除しても報道の多様性は失われない」と主張されるのであれば、そうした新しいメディアでも(新聞社・テレビ局と)同じ情報を取れるようにするべき。記者クラブ問題をアジェンダに乗せることが不適切とは思わない。
次回は 3/29 らしいけれども……多分延々こんな感じでグダグダと進むのだろうなぁ。とりあえず放送コンテンツ保護関係は完全に議題から消えたッポイから次回以降どうしようかしら。第一回の資料 [URI] だとその辺も議題に入りそうだったから一応聞いておこうかと思ってたのだけど。
傍聴申請が通ったので今回も知財本部へ。インターネット上の著作権侵害コンテンツ対策に関するワーキンググループはどうやら傍聴申請を先着順で割り振っているらしいので傍聴できない可能性がほぼ無いのはありがたい。一応今回も録音ファイルを置いておく。
今回は 12:20 まで延長されていたので多少ファイルサイズが増えている。09:55 から録音開始しているので、聞く場合は 4:30 あたりからが会合開始時点になっている。
今回の資料 [URI] を読みながら、委員の総突っ込みを受けながらもわが道を突き進む事務局の暴走っぷりを痛感した。とうとう今回は土肥座長から「迅速な削除をDMCAのようにプロバイダ責任制限法で義務付けるという意見はなかったと思う。事務局の資料には載っているが」という趣旨の発言まで出るありさま。事務局のまとめに恣意があると委員に指摘させてしまうのはどうなのだろう。
んで。第二回の議事録が既に知財本部のページに上がっている [URI] のだけれども、微妙に手元でテープ起こしをしたものと異なっている点があるのでいずれその辺をネチネチとつつく記事を書く予定。
既に知財本部の公式議事録 [URI] が上がっているので、どーしようか迷ったのだけれども、折角作っていたのがもったいなかったのと、微妙に (特定の発言者に関しては大いに) 発言内容が違う形に修整されていたのでテープ起こし版も公開 [URI] することにした。
発言者毎にネームアンカーを打っておいたので、津村政務官の焦りが伺える発言 [URI] とか、山本委員の発表 [URI] 後の、土肥座長の困惑 [URI] のようにリンクを張ることもできるようになっている。
で、公式議事録を読みながら、テープ起こし上の編集技術を超えて内容の修正を感じたのは、森田委員の発言 [1, 2, 3] 部分。いやまあ、録音データを聞けば判る通り大変早口な方なので、言葉が補われて議事録がより判りやすくなるのは良いことなのだけど、どーせなら発言時点でもうすこし伝わりやすくする努力をしてくれればなーと切実に思う。
権利者寄りか利用者寄りかで比較すると、基本的に利用者寄りの発言をしてくれている方なので本当に惜しいなと思う。本人には利用者寄りという意識はなくて、法学者として厳密な態度を取っているだけのつもりかもしれないけれど。
会議の内容についての感想に入る。北川委員の発言 [URI] を聞きながら感じたのが、何故クリエイターはアメリカに流れるのだろうという疑問だ。私の理解ではアメリカという国は、デジタル放送にコピー制約を義務付けようとしたブロードキャストフラグが図書館協会との訴訟の結果導入できなくなってしまったり、DRMフリーなどという無限にデジタルコピーが可能なクリエイターにとって死活問題な方式で音楽データがオンライン販売されていたり、フェアユースなどと言う著作権侵害に対してユーザからの裁判での抗弁を許し得る条文を持っていたりする、無法地帯のような国だと認識していたのだが、ひょとしたら北川委員は間接的にそうした無法地帯に近づけて、クリエイターの国外流出を避けるべきと主張されているのだろうか。
クリエイターの国外流出と著作権侵害の横行は因果関係のない話じゃないのかなーと思っている (海賊版被害は日本国外の方がよっぽど深刻) のだけど、実はそうではないというデータがあるのなら示してほしいものだ。P2Pによる帯域の占有に関しても、プロバイダによる帯域制限が行われる前のデータを元にした主張を続けているようだし、どうも、眉に唾をつけながら話を聞いた方がよさそうだと感じている。
で、大学での Winny の例を聞きながら、そういえば大学って学生がインターネットに接続するための環境を提供してるのだから、ある意味ISPとしての機能も持っているよなーとか、そーすると「学生証とICカードを一体化して、それを使った認証を通さなければ学内からのネット接続を許さない」という仕組みが大手私大で「標準的な技術」になったりすると、そうしたシステムを導入できない大学は「結果回避義務」を果たしていないということで「民事上の責任」を負ったりする訳かと妄想して少し楽しくなったりもした。そうした世界というのは、さぞ知的創造性にあふれた環境であって、大学発のイノベーションが盛んになるのだろう。
これは杞憂かもしれないけれども、ISP規制強化の結果、公立図書館で提供してるネットに接続されたコンピュータ端末とかも利用者確認を厳密にする必要が出てきて、そうした事務負担・システム導入負担に耐えきれないが故にコンピュータ端末の提供を取りやめる例も出たりするのだろうかと今から心配になっている。そうした知に触れる為の機会が制限される世界では、さぞかし新たな知財の蓄積が進んで国が豊かになっていくのだろう。
第4回の開催 (3/15) に間に合わせようと、少し気合いを入れてテープ起こしの作業を進めてみた。[URI]
前回は ISP 規制に関するヒアリングだったけれども、今回はアクセスコントロール回避規制強化関連のヒアリングということで、いよいよ私が主目的としてた個所。
ただ聞いててもそうだし、今回テープ起こしをしながら各発言を振り返っても、ちとこれは大勢を動かしにくいのかなぁという気がしつつある。まー簡単には諦めるつもりはないし、悪法に従わずに済ます為の倫理基準をクリアするためにも反対活動は続けるつもりなのだが。
彼を知る為に、今回のアクセスコントロール回避規制強化がどのような戦術によって進められているかを、そして己を知る為に、もしこれが通った場合にどのような結果が待っているだろうかということを書いておく。
まず主なターゲットはいわゆるマジコンおよびMODチップ。マジコンによって違法コピーが横行していて、このままでは日本のゲーム産業の危機であるという理屈で、マジコン等を規制するために、現在不正競争防止法で規制されているアクセスコントロール回避機器等に対して、規制範囲を広げたり、刑事罰を付与したり、対象機器をより緩くしたりしようという主張がなされている。
具体的な検討項目は、以下のリストのような内容。
下に進むにつれて「所詮マジコンが対象なのだから他人事だよ」などと油断してはいられない内容が現れてきている。特に私の場合は最後の三つが切実。
Friioに代表される無反応機も射程に含めた上で、善良な市民が反対しづらい「マジコン対策」を錦の御旗に短期決戦で押し切ろうとされているのが現在の状況。アナログ放送以下の利便性となっているデジタル放送の現状が気に入らず、個人として許されるだろう範囲内で抵抗をしている人達は、その抵抗手段が奪われようとしていることに注意を払った方が良い。
つーかさ、ユーザにもヒアリングしてくれよ。会員でもないのにこういうことを言うのは向こうには迷惑かもしれないけど、MIAU [URI] に声をかければ喜んで行くと思うぞ。実際のユーザの方が電器メーカ団体なんぞよりもよっぽど利害の関係してる当事者だろうにどーしてパブコメ以外の発言機会を与えないのかねー。
今回はほぼ権利者側主張の代弁者となっている北川委員 [筑波大学 大学院システム情報工学研究課 教授] の発言・発表を振り返り、各発言の問題点を指摘していく。まず、北川委員の本 WG 第3回での発言には以下のものがある。
短めの発言の応酬はリンクせず、大きなブロックの先頭のみを挙げると以上のようになる。今回これらの発言について問題点を指摘していく。
順に進めていく。まず、CEAJ/ACCS の P2P 被害状況に関する質問について。北川委員としては僅か1日でこれだけの被害が発生し年間ともなれば膨大な被害となっているということを示唆し、しかも 1日の被害状況を確認するだけでも多大のコストがかかるという主張をされたいように思える。そこで、ACCS での調査がどういったものであったのか、もう少し詳しく説明してみて、北川委員の示唆が妥当なものと言えるか検証する。
まず、Winny / Share といったセンターサーバの無い日本型 P2P ファイル共有ソフトウェアでは次の図のような手順でファイルのやり取りが行われる。
以上の手順でファイルのやり取りが行われる P2P ファイル共有ネットワークの特徴として「ダウンロードした者は自動的に二次配布ノードとして活動を開始し、新たなダウンロード要求を受け付ける」という点がある。
また「センターサーバーが無く、接続ノード間のファイル情報通知によって自律的にファイル共有ネットワークを構築する」という特徴から、ダウンロードを望むユーザは目的ファイルの情報をキーワード等の形で登録し Winny/Share を起動し続け、希望するファイルのダウンロードが完了するのを待ち続けるという行動を取る。
「ダウンロードした者が自動的に二次配布者となる」という特徴と「ユーザは常時共有アプリを起動し続ける」という行動から「ある一瞬に Winny/Share ネットワーク上に存在していた配布ノードの数を数えれば、それはファイル共有ネットワーク上でのそのファイルのダウンロード総数にほぼ等しい」という結論が出てくる。
ACCS の発表した Winny/Share 上での被害実態報告は、まさにこの調査を行った結果、これだけの被害実態だと見積もったという内容だった。調査期間が 24 時間だったのは、Winny/Share ネットワーク上の全ノードの 95% 程度をカバーするために 24 時間必要だったのでそうしたというだけで、一年間での被害実態が知りたいならば、同じ調査を一ヶ月後に行いどれだけ被害金額が増えたかを確認して、増分を12倍したものを年間損害額とすれば良いだけだ。
実際に、ACCS はこの調査 (2008年 8月 10日) のほぼ一年後に Winny/Share/Gnutella を対象に実態調査を行っている [報告書] のだけれども、Winny に関してはインデックスポイズニングによって汚染されたデータしか手に入らないので比較対象とすることができず、結果 Winny に関する報告は 2008 年の 1 年半前の古いデータだけとなってしまっている。
北川委員がこれらの事情を知らないはずは無いと思いたいのだが、にも関わらず、24 時間のサンプリングによって算定された被害金額の 365 倍が年間被害金額であるとほのめかすような質問をされたのはどのような意図があってのことなのだろうと大いに疑問を感じる。
実際には ACCS の萩澤参考人によって、年間被害金額の具体的な数字のデータは無いが、一定量増える程度だろうという回答 [URI] がされているので、聡明な他の委員の方々が印象操作に騙されることはないと思いたい。
続いて 3 番目の Yahoo オークションでのマジコン流通状況に関する質問について。こちらは ITMedia の「その後のマジコン、オークションからは姿を消したものの……?」という記事 [URI] でネットオークション上からほぼ駆逐が完了していると、昨年 3 月の時点で報道されている。
またこちらも、萩澤参考人の回答 [URI] にあるインターネット知的財産権侵害品流通防止協議会 [URI] によって実効性のある侵害品対策が行われており、権利者も満足しているという報告書 [URI] が知財戦略本部宛に提出されている。
これらの情報を北川委員が持っていないはずがないと信じたいのだが、そうすると、何故今更 Yahoo オークションを問題として取り上げようとするのかが判らない。印象操作を図るにしても、これほど簡単に現在の事実とは異なると指摘されるようでは、また当の権利者からもオークションは問題では無いと言われるようでは逆効果しかないのではと思う。
残りの発言に関しても言いたいことがあるのだけれども、とりあえず今日のところは時間が少なくなってきたので、この 2 つだけにしておく。残りについてはまた明日にでも。
昨日の続き。今回は 4 番目の Winny/Antinny に関する部分から。Antinny が日本の社会に与えた脅威は DoS 攻撃よりも、警察・自衛隊等からの情報流出の影響の方が大きかったと私は評価しているのだけれども、北川委員としては情報流出よりも一社団法人の開設していた WEB ページに対して法人の想定していた以上のアクセスがあったことの方が脅威だと評価されているらしい。
Antinny に関しては4年近く前に更新を終了しているページではあるが、Internet Watch の「本誌記事に見る"Winny流出"」[URI] が関連情報を広く押さえている。2006年以降も状況が収束した訳ではなく情報流出事件は継続的に発生しているようだが、報道によってより被害が拡大してしまうことが懸念され、最近ではよほど重大な事件以外は報道が行われていないようだ。2ch ダウンロード板で「仁義なきキンタマ」スレを眺めていると、現在でも流出事件が継続していることが確認できる。
私は北川委員とは異なり、DoS 攻撃よりも情報流出が、特に官公庁からの情報流出が遥かに深刻な問題であると考える立場なので、情報流出の問題に関してのみ論考する。
結局のところこの問題の本質は、組織がコントロールできないネットワークに接続されたPC上に機密データが存在することだったと考えている。なぜそうした事態が発生するかと言えば、業務の効率化とか予算の不足とか色々な問題はあるものの、結局は「組織の構成員のセキュリティ意識がその程度だから」に行きつく。組織の構成員のセキュリティ意識を超えるセキュリティを達成することはできないというのは当たり前な結論だと思うのだけれども、そこを飛ばして軽々しく「法的措置も含めて何か有効な対策が」と小手先の対策に飛びつこうとする人がいるのは困ったことだと思う。
次に 5 番目の Winny 裁判に関して。現在検察側が最高裁に上告中で結論が出ていないのでコメントしづらい問題ではあるものの、検察側証人として協力した ACCS の人でも極力中立的なコメントに留めている [URI] ことから伺えるように、著作権侵害幇助での起訴は無理筋だったのではと考えているようだ。
個人的にはあの捜査&裁判は匿名でアプリケーションを公開していても作成者を特定することが可能だと知らしめることこそが目的で、有罪にできればめっけもの程度の意図だったのではと考えているので、最初から Winny 作者が実名で公開していればあのような裁判は起きなかったのでないかと思っている。
6 番目の JEITA 発表に対しての質問にしても、アクセスコントロールが消費者の利便性に制限を加えるものであり、消費者は既存メディアよりも利便性の低下するメディアを受け入れないという自明のことを思えば、アクセスコントロール回避規制強化に協力したところで消費者からの支持は得られない。従ってマーケットの拡大がもたらされることはないし、産業全体の拡大に寄与することはないと簡単に否定できてしまう。
アクセスコントロールの無かったビデオテープから、アクセスコントロールのある DVD への移行をユーザが受け入れたのはテープメディアからディスクメディアに移行することによって「巻き戻し」の手間が消滅し、ランダムアクセスの自由を受け取れるという圧倒的な利便性の向上があり、アクセスコントロールの存在による利便性の低下を相対的に小さな問題だと受け止めたからだ。アクセスコントロールを伴う新しいメディアでマーケットを作ろうとするならば、それが既存メディアと比較して利便性が向上すると消費者に思い込ませることに成功し無い限り失敗に終わるだろう。
こういった当たり前のセンスを持たずに、アクセスコントロール回避行為があるからマーケットが成立しないなどといった思い込みによって知財政策を立案したところで、それが実際の収益に結びつくことはないだろう。
いよいよ本命部分。7 番目の北川委員からの発表では平成 21 年版の情報通信白書のデータを利用しながら日本の情報通信産業がどのような状況にあり、経済全体を成長させるためにどうするべきかということを提案している。幸い平成 21 年版情報通信白書は総務省によって公開 [URI] されているので、実際のデータを見ながら発表を検証する。
まず、日本の情報通信環境の評価に関して。これは白書では第 1 部 第 2 節の「総合評価で立ち遅れる日本の情報通信」[URI] に記載されているデータを使っている。
これらのデータを北川委員は「非常に客観的に、総務省が総力をあげて出してきたデータ」と評価している。では、実際にそれらのデータがどのように作られたものか白書のテキストから読み取ってみる。
まず「これはひどい」と感じたのが比較方法。サンプル数 7 とか 24 とかで、しかも正規分布を期待できる訳でもないデータで偏差値を取って何の意味があるのだろう。純粋に順位データで比較したり、あるいは最高位と最低位の数値の中でどの程度の位置にいるかで比較した方が遥かに意味のある数字が出そうに思える。
おそらく点数を比較するときは偏差値を使うものだと思い込んでいて、偏差値とはどのような意味を持つ統計データかという意味を知らない人が書いたのだろう。こんなものを政策評価に使ってるからいつまでたってもピントの外れた政策しか出てこないのだと思う。
まあ、こうした比較に偏差値を使うのがおかしいということは北川委員も指摘してるのでまだ救いはあるのだが、それにも関らず、そのおかしなデータを自己の主張の裏付けとして利用しているのはどうなのだろう。
さらに、データ処理の手法が変という以前の問題として、安心に関する評価の元となっているアンケートの設問が……ここは白書から説明文をそのまま引用する。
アンケートでは、分野ごとの全体的な安心感を把握するため、各分野の具体的な課題を3件ずつ例示した上で、各分野について「不安はない」「どちらかといえば不安はない」「どちらともいえない」「どちらかといえば不安である」「不安である」の選択を求め、「不安はない」「どちらかといえば不安はない」の回答率の合計を安心感とした。
これは情報通信環境での具体的なリスクの有無を評価したいのだろうか、それとも国民性として楽観的か不安症かを評価したいのだろうか。私にはこれで評価できるのは国民性だけのように思える。まあこれは「安全」に関する調査ではなく「安心」に関する比較らしいのでこの設問でも正しいのかもしれないが。
白書を詳しく読むと判るように「基盤」評価では「安全」に関する項目の「ボット感染度」では感染数が最も少なく 7 カ国ではトップに位置しているのに「安心」では最下位にいるという訳の判らないデータとなってしまっている。
北川委員はこの「安心」のデータを「安全」のデータであるかのように誤解させ、その原因が P2P 共有ネットワークであると主張するかのような発表を行っている訳だが……こんなもので騙されるアホな人はいるのだろうか。
これらの白書のデータから今後の政策課題を抽出するとしたら「基盤と比較して利活用が低く、不安感が高い。行政サービス等で情報通信技術を積極的に活用し、利便性を高めて実利用を促進させ、不安感を取り去ろう」ではないのだろうか。実際に白書でも以下のようなコメントがある。
このように、日本の情報通信の利用者は、文化的背景や国民性もあいまって、客観的には安全な社会基盤が整備されているにもかかわらず不安と感じる利用者の割合が高いという結果が出ている可能性がある。図表2-2-2-12はその例を示すものであり、パソコンのボット感染度でみた安全面では、日本が最も高い評価となっているにもかかわらず、「安心」の総合指標(図表2-2-2-9を参照)は最も低い結果となっている。
また、図表2-2-2-13は、Symantec社による「Norton Online Living Report 2009」による12か国(日本、米国、カナダ、英国、フランス、ドイツ、イタリア、スウェーデン、中国、インド、オーストラリア、ブラジル)を対象とした利用者調査の結果を示したものである。日本は、「自分のコンピュータへ遠隔から誰かに侵入されたことがある」という回答で最低の11%となっているにもかかわらず、「自分の個人情報の安全性に不安がある」という回答は最高の55%となっている。このように、日本の情報通信の利用者は、安全が必ずしも安心に結びついていない傾向が見られ、安全対策を徹底するとともに、利用者の安心を高めるための普及啓発策等が必要と考えられる。
引き続き 7 番目の発表部分から。今度は北川委員提出資料 [URI] での参考 3 部分。
北川委員の主張はコンテンツ・アプリケーションレイヤーが経済成長の牽引者であり、コンテンツこそがそのコアであるだった。さて、それでは実際に図を見てみよう。
上図は当該個所の図を白書から引用したものだがこれを見て、受注ソフト開発とシステムメンテナンス、BtoC EC/モバイルコマース (ネット通販) がコンテンツ・アプリケーションレイヤーに含まれることに違和感を感じるのは私だけだろうか。
受注ソフト開発というのは、大きな物で言えば、例えば e-Tax のシステム開発とか年金管理システムの開発、小さなもので言えば中小企業の在庫管理システムとか経理システムとかを連想するのだけど、これらをアプリケーションと呼ぶことに抵抗を感じるのは私だけだろうか。パッケージソフト (サイボウズとか) であればアプリケーションレイヤーに含めることに異存はないのだが、受注ソフト開発に関しては大いに疑問を覚える。システムメンテナンスも大半は受注ソフト開発で作成したシステムの保守業務であろうから、アプリケーションレイヤーに含めるのは疑問だ。それらはもはやプラットフォームレイヤーに含められるべきものではないのだろうか。
さらに、EC サイト運営のみをプラットフォームレイヤーに分離し、EC (ネット通販) 本体をコンテンツ・アプリケーションレイヤーに置くに至っては訳が判らない。Amazon で家電製品を買ったらそれはコンテンツ・レイヤーに属する経済活動なのだろうか?
これらの 4 つをプラットフォームレイヤに移動させると、コンテンツ・アプリケーションレイヤーの経済規模は 13.69 兆円に凋落し、プラットフォームレイヤーは 22.46 兆円に膨張する。
さらに、橙で塗られた 10% 超の成長を遂げている分野はほぼ全てがプラットフォームレイヤーに集中し、コンテンツ・アプリケーションレイヤーに残った成長率 10% 超の分野は「モバイルコンテンツ 0.42 兆、SNS/ブログ 0.04 兆」の二つだけとなった。
さて、権利者を保護するために現在成長を続けているプラットフォームレイヤーに足枷を嵌めることは果たして適切な政策なのだろうか。
最後に、8 番目の総合セキュリティ会議関連の発言。Exit Action として以下の 4 つが紹介された。
今の所できているのは 1 つ目だけだと言われているのだが、2 つ目以外はそこそこ実施されつつあると認識していたので少し意外だった。
まず 4 番目の捜査・検挙・起訴に関しては、警察・検察・権利者が関係者で、ISP は令状があれば発信者情報開示を行うだけの立場でしかない。また、Winny/Share/ParfectDark と着実に逮捕者が積み上がり、淡々と進められている状況にあるように思える。
3 番目の損害賠償請求に関しても、4 番目で身元が特定できていれば後は権利者が訴訟を提起すれば良いだけの話で、やらない理由に関しては部外者からは判らない。
で、2 番目のスリーストライクに関して、そもそも私の知る限りでは累犯者 (刑事罰を受けたにも関わらず、著作権侵害を繰り返した人) が出ていない以上、スリーストライクの出番は来ないように思えるのだが……まあ北川委員としては次の 9 番目の発言で見られるように警告メール三回で訴訟もなしにアウトにしろと考えているようなのでこういった発言が出てくるのだろう。
この発言に対する森田委員の回答 [URI] にあるように、フランスよりも悪質なスリーストライクを立法措置もなしに ISP の自主判断で導入しろと言ってもそりゃ無理だろうというのが私の感想だ。
以上のように、北川委員は他の委員に対して誤った印象を植え付けるような内容の発言をしたり、間違った現状認識を元に政策提言を行ったりと、その発言を聞く際は基本的に疑ってかかるべきだということを知ってもらえたのではないかと思う。
短絡的に立法措置に飛びついたり、私でさえ指摘できるようなスキだらけの主張をしたりと現段階では「無能な働き者」との評価が適当ではないかと私は考えている。
今回のネット著作権侵害対策 WG は 13:00〜15:00 と昼のコアタイムに入っていたので、一日有給を取ろうかとも思ったのだけど、16:00 から全社コンプライアンスセミナがあったので、12:00〜16:00 私用外出 (戻る) とだけサイボウズに入れ、知財本部へ。自由度の高い勤務形態を許容してくれる会社の懐の広さがありがたい。
とりあえず、以下恒例の録音データ。
今回が中間まとめということであの空気のまま押し切られてしまうのだろうかと懸念していたのだけれども、大谷委員・平野委員・森田委員の意見が功を奏したか「個人の回避行為に関しては導入するにしても慎重に検討を進める」となってくれたのがありがたい。とりあえず大谷委員の意見を紹介。 (厳密に一致する語句ではない)
平野委員の意見紹介。こちらも厳密に同じ語句では無い。
森田委員の意見紹介。同上。
とりあえずこれらの意見を応援しつつ、まだ検討は続いているので油断せずに監視を継続するつもり。なるべくはやく今回の非公式議事録も公開したいと考えている。
今回はアクセスコントロール回避規制とは何が問題なのかということをなるべく判り易く伝えることができないか努力してみる。まず、アクセスコントロールとはそもそも何かという点について、実際の例を下に挙げる。
最後の例は第3回の山本委員の発言で確かにその通りだなと認識したので追加したもの。こうした例にみられるように、情報やコンテンツへの接触自体を制御する仕組みなのでアクセスコントロールと呼ばれている。
こうしたアクセスコントロールの回避例は日本国内では、一部が不正競争防止法で規制 [回避する機能のみを有する装置の譲渡禁止] がされているだけで、著作権法では規制されていない。
一方、アメリカでは DMCA によってアクセスコントロールの回避行為の一部が規制されている。不正競争防止法と DMCA でのアクセスコントロール規制に関して比較表を作ると、以下のようになる。
事例 | 日本 (不正競争防止法) | アメリカ (DMCA) |
DVD DeCSS | 判例なし
ソフトの譲渡も規制対象のはず |
規制対象外 MPAA v Jon はノルウェーの裁判で DMCA 外 判例あり DeCSS バイナリは規制対象 (DMCA) DeCSS ソースは規制対象外 (言論の自由) |
DS マジコン | 判例あり [地裁レベル]
マジコン販売を禁止する |
直接の判例なし
Lexmark 訴訟と同等の判断が適用されれば規制対象外 |
MOD チップ | 判例なし
マジコンと同等に規制されるはず |
MOD チップ以外に HomeBrew 起動手段があれば規制対象になるかも 判例あり (カリフォルニア地裁) 規制対象 |
有料放送のCAS | 摘発例あり? [不競法は民事なのに?]
CATV違法チューナの販売を禁止 |
判例あり
DirecTV で個人の回避行為を禁止 |
無料放送のCAS | 判例なし
2条1項11号を素直に読めば規制対象外 回避者は全員視聴権限を有している |
類似サービスなしで不明 |
書店のビニールラップ | 判例なし
規制対象になるなら法が間違ってる |
書店事情を知らないので不明 |
日本とアメリカで規制対象とするかしないかが異なっているのは、アメリカの DMCA が規制対象を著作物の違法利用を伴うアクセスコントロール回避に限定し、しかも適用除外事例がフェアユース法理によって柔軟になっているためだ。
DeCSS 訴訟に関しては「購入した DVD を如何なる手法で見ようとも自由」との判決であったし(間違い : ノルウェーの裁判結果を DMCA 下の訴訟と勘違いしていた)、プリンターインクカートリッジの訴訟である Lexmark 裁判では「DMCA とは著作物を守る為の法であり、完成品メーカが部品市場を支配するための法では無い、そのような DMCA の悪用は許されない」とまで書かれた判決が付いている。DirecTV の件は本来見る権限がないはずの未契約ユーザが料金の支払いなしに見ていたからこそ規制することができたのだ。
現在、知財本部のネット著作権侵害対策 WG で行われているアクセスコントロール回避規制強化とは、既にアメリカよりも幅広い範囲を対象としている日本で、さらに対象機器を広げたり、ユーザの回避自体も違法化したりしようというものだ。
物事を判り易くするために、おとぎ話をしよう。昔々欧州の片隅にネロという名の牛乳運びをしている少年が居た。彼は街で噂になっているルーベンスの聖母被昇天が見たかった。しかし教会に行ってみても「貴様のような小汚いガキに見られると絵の価値が下がる」と罵られ、蹴りだされてしまう。
これはアクセスコントロールである。
色々な経緯があって、これまであった牛乳運びの仕事も無くなり、暇を見て書いていた絵をコンクールに出展しようとしても受け付けで付き返され、嘲笑される。行き詰ったネロ少年はある冬の晩に教会へと忍び込み、月明かりの下で望んでいた絵を心行くまで観賞する。
これはアクセスコントロール回避である。
そのように著作者の権利を侵害したネロ少年を天が見過ごすはずがない。天罰覿面、ネロ少年は愛犬パトラッシュと共にその晩の内に息の根を止められ地獄へ付き落とされた。
これはアクセスコントロール回避規制である。
上はあくまでもおとぎ話だ。とりわけ極端な例を取り上げたおとぎ話だ。しかし、著作権法にアクセス権を追加する、あるいはアクセスコントロール回避行為を禁止して著作権者に実質的にアクセス権を与えるというのは、本質的にはこのようなおとぎ話も可能にするだけの力を著作者に与えるということだ。
お前は見ても良い、お前には見せない、そういった選別をする権利を著作者に与えることが「文化の発展に寄与する」とは私にはどうしても思えないのだが、ネット著作権侵害対策WGの委員の方で、著作権法 1 条を読んだことのある方はどれだけいるのだろう。
今日はネット著作権侵害対策 WG において、アクセスコントロール回避規制強化の必要性を訴える際に利用されているマジコン規制に関して、海外の例を見つつもう少し考えてみる。
まず、マジコンとはなにか。簡単に言えばマジコンとは任天堂 DS の専用ゲームカートリッジスロットに MicroSD カードを刺し、MicroSD の中のプログラムを読めるようにするためのアダプタだ。身近な例をあげれば、携帯用の MicroSD カードを普通の PC やプリンタの SD カードスロットに入れる際、物理形状や電気特性を合わせるためのアダプタをかました上で挿入する。それの任天堂 DS 版がマジコンである。
ただし、それだけでは任天堂 DS は動かないので、マジコン本体が正規の DS ソフトカートリッジと同等の応答を返して DS 本体に現在刺さっているのが正規の DS ソフトだと認識させねばならないし、MicroSD 内のプログラムデータを選択してゲームとして起動したり、あるいは MicroSD 内部の音声データや映像データを再生する機能を有したランチャーソフトをファームウェアとして MicroSD カードに書き込まなければいけない。
現在、日本ではマジコンの販売は不正競争防止法の規制対象であり、販売差し止め請求を認める司法判断が東京地裁で下されている。[判決文 | ソフトウェア情報センター から入手]
一方スペインおよびフランスでは、マジコンは Homebrew と呼ばれる自主作成ソフトを動かすのに必須のものであり、その結果不可避的に無断複製 ROM イメージが動作するようになったものだとの判断で、規制するにはあたらないという判決がくだっている。[報道 スペインの件 | フランスの件]
東京地裁での判決文を読むと判るように、この点については日本でも争点となっているのだが、裁判所の判断に少し興味深い内容が含まれている。
着目ポイントは 2 番目の「MOD チップの用途として自主作成ソフトがあることは立法時に考慮済み」という箇所。東京地裁ではそこに関してあまり踏み込まず、市川正巳裁判長、大竹優子裁判官、宮崎雅子裁判官は 3 番目の「少し自主作成ソフトが入っていても "のみ" を満たす」という日本語として苦しい条文解釈をした。
私が 2 番目を気にしたのは例えば以下のようなマジコンがあったらそれは不正競争防止法の規制対象になるのだろうかという疑問をもった為だ。
任天堂 DS ではそうしたものが作れないのは判っているが、もしもそうしたものがあった場合、常識的には流石にこれは規制対象外だろうと思える。ただし、不正競争防止法 2 条 1 項 10 号を読んでみると「営業上用いられる技術的制限手段」とあるだけで別に違法複製物に対象を限定している訳ではない。
任天堂のかつてのビジネスモデルはゲーム機本体は当初は赤字も覚悟で安価に供給し、サードパーティからのライセンス料や自社ソフトの儲けでそれ以上に稼ぐというものだったと言われている (現在でもそうかは不明)。そういう意味では任天堂と契約を結ばない Homebrew はプラットホームにただ乗りする不正競争者である。
ライセンス外のソフトメーカが入れないように専用バスという技術的手段を使っているのに、それを回避されるのは不正競争だと言われれば、条文上は正しい主張にも思える。
つまり Lexmark 訴訟の DMCA 判決での裁判官意見とは対照的に「現行不正競争防止法はプラットフォーム企業が、サードパーティを支配することを許す法だ」ということになるのだろうか、というのが私の知りたい点なのだ。
昨日は記憶をベースに日本語訳だけを載せたけれど、Lexmark 訴訟での DMCA に関しての裁判官コメントを原文と共に紹介する。
We should make clear that in the future companies like Lexmark cannot use the DMCA in conjunction with copyright law to create monopolies of manufactured goods for themselves just by tweaking the facts of this case .. [判決文 | EFF から入手 | 該当箇所は 21 ページ]
私たちは、将来 Lexmark のような企業がこの裁判の事実をこねまわし、著作権法と組み合わせて自社の為に製品の独占環境を作ろうとする企てに DMCA を使うことはできないと明確にしなければならない ..
さて、私が Homebrew は単独でも不正競争防止法での規制対象なのだろうかという点を気にしているのは、昨年のデジコン委 第54回 [URI] で聞いた襟川さん (光栄) の意見が記憶に残っている為だ。発言のポイントを再掲すると以下の通り。
例えば、フランスやスペインの中学生がマジコンを活用して Homebrew を作り、クラスの皆に遊ばせてゲーム開発の腕を磨いていく中、日本では大学を卒業したうえで企業に入社しなければ実機で動くゲームは作れないとなれば、襟川さんの指摘していた差というのはますます開いていくのだろうなと思う。
まあ、光栄も東京地裁の訴訟で立派に原告として参加している訳だし、そうして開発力に差が開いていき、日本では海外と勝負ができるゲームが作れなくなったとしても自業自得と評価するべきなのだろう。
付記。MOD チップに関してはカリフォルニア連邦地裁での賠償命令判決 [URI] があるようだ。ただし、SCE は「ゲームやろうぜ」プロジェクト等で、Homebrew 系の人材を拾おうと一定の配慮を行っていた。
他に Homebrew を動かす手段がある状況で、あえて無許諾複製物を動作させる機能のある MOD チップを売っていたのだとすると、それは規制されたとしても同情には値しないと私は考える。
なんとか週末までにテープ起こしを終わらせたので第 4 回のまとめを公開。[URI]
本当は何とか 2 日後ぐらいには公開したいと思っていたのだけれども……帰宅 -> 風呂が沸いたら中でやろう -> 風呂から上がったら気合いを入れて作業しよう -> 汗が引くまでベットで少し休もう -> あれ、何時の間に朝になってるの? というコンボが炸裂してしまい、1 日あたり 20〜30 分相当しか作業が進まなかったのでこんなに遅くなってしまった。
で、感想は……あまりこういうこと不真面目なことをやると自分の主張の説得力を下げるだけだと判ってはいるのだが、どうしても我慢できなかったのでやってしまう。
____
/ \ /\ キリリッ
. / (ー) (ー)\
/ ⌒(__人__)⌒ \ <フィンガープリントと照合して削除することを想定してますので、
| |r┬-| | そもそも一般的な監視義務にあたらないと理解しております。[URI]
\ `ー'´ /
ノ \
/´ ヽ
| l \
ヽ -一''''''"~~``'ー--、 -一'''''''ー-、.
ヽ ____(⌒)(⌒)⌒) ) (⌒_(⌒)⌒)⌒))
本当はこのあとのプ、クスクスまで貼りたかったのだけどそれは流石に自重。ちょっぴり奈良参事官のことが好きになりはじめてきた。
真面目な感想に移る。当日感想 [URI] でも触れた点だけれども、大谷委員の発言 [URI] 平野委員の発言 [URI] 森田委員の発言 [URI] に感謝を。
これらの発言がなければ「個人の回避行為も規制対象」にという形で中間報告となってしまったかもしれないので。特に問題の本質をきちんと貫く形で口火を切ってくれた大谷委員にはいくら感謝してもしたりないと考えている。
後でまた他の発言に関するコメントを追加する。
第四回の感想の続き。今回 ISP 規制に関して事実レベルでの認識の相違が目立った。
このうち、最初の「接続プロバイダは関係役務提供者にあたるか」に関しては、質問 [URI] した森田委員が二宮課長および土肥座長からの「接続プロバイダも関係役務提供者にあたるが、その後の "技術的に可能な場合" によって、接続プロバイダは "技術的に可能" でないので常に免責される」という回答で納得しているので問題は解決している。
だが、二つ目のフィンガープリント技術が一般監視に当たるかどうかに関しては、事務局のみが「あたらない」と主張していて他の委員および総務省は「あたる」と判断している。
フィンガープリント技術というのは動画共有サイトに上がっている全動画に対してアップロード時点でフィンガープリントを算出して、あらかじめ権利者側から提供されているフィンガープリントと一致するかどうか判定し、一致していれば権利者側にアップロードの事実を通知するものだから、私の判断でもフィンガープリント技術は一般的な監視にあたるだろうと考えている。
事務局の方が「公開されている動画に対する処理だから一般監視じゃない」という発言 [URI] をして、平野委員から「それは検閲じゃないと言ってるだけで、検閲と一般監視を混同してないか」と突っ込み [URI] を受けているわけだが、この辺のやり取りを聞きながら「メディア良化法キター」とか考えていたのは私だけだろうか。(図書館戦争は良い作品なので未読の方は読んでみると楽しめると思う)
三つ目の警告メール転送に関しても、守秘義務のある電気通信事業者から情報を出さずに済ます為に、メール転送を行う行為が通信の秘密を犯す事に相当するとはあまり思えないのだけれど、憲法上認められた権利の解釈を慎重にしたいということであれば批判はしづらい。そのうちそれなりに結論に落ち着くのだろうから、見守る方針でいる。
で最後の山本委員からの「現行プロバイダ責任制限法の発信者情報開示請求に際しての条件は、憲法上認められている裁判を受ける権利を侵害しているのではないか」という問題提起に関して。
正直山本委員のことは嫌いじゃないのだけど、これはどーなのかなと思う。例えば次のような例を考えてみよう。
個人的にはこの思考実験での知的財産戦略本部事務局の対応は何も批判されるところがない妥当な対応に思えるのだが……山本委員の主張は「真摯に訴訟を行おうとしてればそれだけで発信者情報を開示すべきだ」というもの [URI] なので、その通りだとすると上記ケースでは発信者情報開示を行わなければならなくなってしまう。
それは流石に権利の乱用なのではないかと思えるのだが……山本委員としては上記ケースで発信者情報が開示されるべきだと思われるのだろうか。私としては北山委員の「本訴訟を起こすのに意味がある程度の侵害の明白性が必要だろう」という意見 [URI] の方が妥当だと考えている。
今日は会社の方で特に打ち合わせ等入っていなかったので一日有給を取ってネット著作権侵害対策 WG の傍聴へ。以下、恒例の録音データ。今回は実質 1 時間 20 分程度で終了したのでいつもよりもサイズは小さめ。
……前回の土肥座長の発言 [URI] を聞いて、もう少し文面が変わってくるんじゃないかと期待したんだけどなぁ。とりあえずインラインでも引用。
第三の回避行為それ自体についてはですね、もちろん何を持って原則にするかという問題がある訳でございますけれども、委員の中に極めてアクセスコントロール回避行為それ自体を規制することに対する、情報アクセスに対する慎重な御意見等々もございますので、これを導入する方向で検討する際には十分この行為を規制する場合の様々な影響とか、情報アクセスの自由とか、そうしたことを検討した上でこの方向に入って行くべきではないかと。そういう方向で取りまとめていければと思います。
うーん。なるべく冷静に聞いてたつもりだったのだけど、自分の聞きたいものだけを聞く罠に囚われていたのだろうか。今日決まった中間取りまとめ案は非常に残念だった。
もう事務局ページ [URI] に上がっているので、興味がある人は直接読んでもらうことにして「必要な対処」レベルでより慎重方向に文言修正が入るかと期待していたのだけれどもそちらはほぼ修正なしで「留意事項」にのみ記述追加と。
基本的に個人のアクセスコントロール回避行為も規制しますからねという方向の中間取りまとめになってしまったので非常に残念かつ期待はずれ。詳細な感想と、ISP 規制側に関してはテープ起こしを終わらせてから書くことにする。
会議の時間が 1 時間 20 分とこれまでよりも大幅に短かったので、さほど時間を消費せずにテープ起こし版の作成が終了した。というわけで公開 [URI] する。それでも二日後の公開になってしまっているので、当日休みを取った割にはちと作業が遅めかと思う事もあり。当日購入した本を読んでたせいもあるで以後気をつけよう。
感想なのだが……最初におふざけで、北川委員の著作権団体の評価したフィンガープリント技術の精度に関しての発言 [URI] を取り上げて「不正開示行為で入手した営業秘密情報を開示する、不正競争防止法 2 条 1 項 8 号で規定されている不正競争行為を実施した!!」とあげつらおうかと思ったのだけど、あまり笑える文章にならなかったので止めておく。
当日感想にも書いたことだが、個人によるアクセスコントロール回避行為に関して、中間取りまとめ案の「必要な対処」レベルで「刑事罰化まではしないものの違法行為とする」形でまとめられてしまったのが非常に残念。
「留意事項」としていくつ文章が付いたとしても「必要な対処」の記述の方が重く受け止められるだろうと私は考えているので、ある意味、慎重派委員の意見が事務局の意見のまとめ方針に敗北したのだと評価している。
まだ森田委員は「個人の回避行為を規制の対象にすることについて、立法性・必要性が必ずしも確認が十分にされてない」ので「色々な可能性が留保されている」と評価 [URI] しているようだけど、私は可能性が大きく狭まったとものと評価している。いや、「必要性が疑問」なことであっても「必要な対処」に書かれて、それが「やっぱやーめた」になるとは思えないので。
うーん ISP 規制と違って、各委員が個人的に恩恵を受けてないものだから、やっぱりアクセスコントロール回避規制は切実性が違うんだよなぁなどと考えていたり。知的財産戦略本部ではパブコメとは別に常時意見募集をしている [URI] ようなので、この流れに疑問を感じる人は意見を入れてください。私ももう少し主張を整理してから意見投げてみる。
True Tears Blu-Ray BOX [URI] が届いて仕合せな気分でパッケージを開きつつも、見る為の時間が確保できない悲しみを噛みしめている日常。とうとう録画鯖から視聴用 PC に移動した未視聴分も 50 時間に達してしまった。
先週末から 3 月末にあるまじき寒さに苦しめられていたりもするのだけれども、そう。3 月は JVA (社団法人日本映像ソフト協会) [URI] が昨年一年間の売上統計を発表する月なので、昨年 [URI] に引き続き、デジタル放送のコピー制御ルールがどれだけクリエイターへのリスペクトに結実しているか確認しよう。
繰り返しになるけれど、縦軸が売上高で目盛の単位は億円。横軸が年度で、赤で塗りつぶした 2002 年は中古ゲームソフト訴訟で「映画の著作物の頒布権は最初の販売時に消尽する」という最高裁判決が確定した年で、青で塗りつぶしたのが無料広告放送にコピー制御が導入された年。
うん。ここまで予想通りに進むと面白みが無いけれど、無料広告放送へのコピー制御の導入以降物理メディアの映像ソフト市場は着実に縮小を続けている。実にクリエイターへのリスペクトと対価の還元に寄与しているようで喜ばしい限り。流石年間 100 億を投じて B-CAS システムを維持しているだけのことはある。
あまりやりすぎて、私が「コピー制御があることによって市場が縮小している」と信じていると誤解されるのはまずいので、冗談はこのぐらいにしてジャンル別売り上げの推移を見てみる。
昨年は国内音楽だけが (PV 付 CD がカウントされる為に) 上昇して、それ以外のジャンルは横ばいか下落という惨憺たる状況だった。で 2004 年以降の下落に関しては、一昨年の 9 月に書いた [URI] ように、海外映画がシェアを失いながら値下げでも顧客を取り戻せずにいるのが主因で、無料放送のコピー制御ルールとはほぼ無関係な出来事だ。
実際に、放送コンテンツの二次利用市場にあたる「国内アニメ」「国内ドラマ」「国内子供向け」「芸能・教養」を取り出して積み上げグラフを描くと次のようになる。
このグラフを見て「コピー制御の導入直後に市場規模が 200 億拡大してるじゃないか」「やっぱりコピー制御は対価の還元&リスペクトに効果があるんだ」とか言い出されても困るので、一応指摘しておくと JVA は国内アニメに関しては劇場版とテレビを区別していないので、これは劇場アニメも含んだ数字になってしまっている。
さらに、2005 年の上記 4 ジャンルの市場拡大が約 200 億に対して国内アニメ単独の市場拡大は約 250 億。オリコン年鑑 2006 を見ると判るように 2005 年には「ハウルの動く城」がリリースされておりそれだけでかなりの売り上げを叩きだしている。
250 億の全てがハウル要因だとは考えていないが、翌 2006 年の売上減の報道発表の際に「この減少については、2005年発売の宮崎駿監督作『ハウルの動く城』のDVDビデオ発売により、売上額が増加していたことが要因。これまでも宮崎監督の新作の有無によって市場では年間約1割程度の増減が発生している」と説明 [URI : Impress AV Watch の記事] されているように、70〜80 億程度はハウル要因なのだろうと考えている。
残りの 150 億にしても、ジャンル「アニメ」の 2004 年発売件数 1097 件に対して 2005 年の DVD 発売件数 1402 件 (Impress AV Watch DVD発売日一覧 [URI] にて調査) を思えば、発売本数を増やしたものの、顧客は追随せずに売上総量は期待ほど増えなかったという評価が適切に思える。
前置きが長くなりすぎた。今回取り上げたかったのはジャンル別売上高での「芸能・教養」について。このジャンルについて、正直昨年まではそれほど重要なものだとは思っていなかった。
しかし、オリコン年鑑を眺めてみると「バラエティ」に分類されるものがそこそこ上位の本数を売り上げていることに気がついて、これが JVA の調査ではどこに相当するのだろうと考えてみると「芸能・教養」なのだろうということで、今回のグラフでは放送系コンテンツの中に入れることにした。
国内ドラマについては、対 2004 年比で見ると 2009 年でもそれなりに健闘しているものの、「芸能・教養」ジャンルは売上が半分を切るまでに縮小と非常に苦しい状態にあることが伺える。
このジャンルはほぼダウンタウンだけが一本柱で「水曜どうでしょう」がだいぶ遅れて続いているような状態だった。しかし「あるある事件」等あれこれとあってバラエティ番組の質が低下していくうちに、視聴者もバラエティから離れるようになっていった。そういう状況を表わしているのが、この「芸能・教養」ジャンルのビデオソフトの売上低下なのではと考えている。
デジコン委の第四次・第五次中間答申によると、視聴者に高付加価値な番組を届け続ける為にも無料広告放送であってもコピー制御が必要だということらしいのだけど、それならばどうして、マーケットが半減してしまうほどにバラエティ番組の質は低下しているのだろう。